症状があって動物病院を受診するとステロイド剤を処方されることがあると思います。
ステロイド剤はあまり使わない方がいいという情報が出回っていることもあり、不安に駆られる飼い主さんも多いと聞きます。
処方されることの多いステロイド剤ですが、確かに副作用も存在します。
一方で、正しく使えば愛犬の生活の質を高めてくれるとても良いお薬でもあります。
そこで今回は、ステロイド剤の副作用や注意点について詳しく解説していきます。
ステロイド剤とは?
まず、ステロイド剤は「副腎皮質ホルモン」といい、糖質コルチコイドという成分が入っているお薬です。プレドニゾロンが動物医療界では有名どころです。
抗炎症効果と免疫抑制効果があり比較的即効性のあるお薬なので、アレルギー症状や副腎皮質機能低下症でよく用いられるお薬です。
さまざまな症状の緩和に役立つステロイド剤は優秀な反面、使い方を誤れば副作用を招いてしまいます。
特に、ステロイド剤の長期投与には注意が必要ですので、獣医師と相談しながら用量の調節をしていく必要があります。
ステロイドが効果的な病気
主にステロイド剤が処方されることが多い病気をご紹介します。
中にはステロイド剤の投与が避けられない、付き合っていく病気もあるため、理解しておきましょう。
アレルギー性疾患
ステロイド剤が使われる病気としては、アレルギー性疾患があります。
ステロイドは痒みや炎症にも効果があり、アレルギーによる皮膚症状の改善も見込めます。
比較的短期間の投与で改善が見込めるケースと継続投与が必要なケースは、犬によって異なります。
頓服的な投与でステロイド剤を使用することは有効的でしょう。
しかし、アレルギーでの長期投与はおすすめできません。
アレルギーでお悩みの飼い主さんは、オクラシチニブなどの副作用の少ない内服薬を使用したり、スキンケアやサプリメントによる免疫のサポートをしたりすることで改善することもあります。
ステロイドの長期投与になりそうな場合は、セカンドオピニオンなども視野に入れ、獣医師に相談することをお勧めします。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)
アジソン病ではステロイド剤が必須の病気になります。
副腎皮質ホルモンが足りなくなる病気で、高齢の犬で発症することが多いです。
足りなくなってしまった副腎皮質ホルモンを補う治療がメインになります。
適切なタイミングで検査などのフォローアップを行い、十分に獣医師と相談して、用量を調整していきましょう。
関連記事:犬のアジソン病とは?症状や余命は?治療の方法や費用は?
慢性腸症・胃腸炎
慢性腸症や胃腸炎などの炎症にもステロイドが良く使われます。
ステロイド反応性の消化器症状であれば、症状の緩和が見込めます。
獣医師によっては腸症などの症状に対してステロイドを選択する際は、同時に胃薬を処方する病院もあります。愛犬のステロイド服用に不安がある飼い主さんは、相談してみてはいかがでしょうか。
椎間板ヘルニア
ダックスフントなどに多い、椎間板ヘルニアでもステロイドが使用されることがあります。
抗炎症作用に優れているステロイドはヘルニアの痛みにも効果があり、第一選択にされることもあります。しかし、ヘルニアは手術や長期的治療が必要になる場合もあり、継続的な投薬がいるケースは非ステロイド性抗炎症剤や神経痛に効くお薬に変更することも多いので獣医師と相談の上決めていきましょう。
症状が軽度な段階から、サプリメントを使用するのも良いでしょう。
昨今では、再生医療治療などにより神経の炎症を緩和する方法も注目されています。
関連記事:愛犬が椎間板ヘルニアになったらどうする?
免疫介在性溶血性貧血・免疫介在性血小板減少症
自己免疫が悪さをして病気になってしまうことを自己免疫性・免疫介在性疾患といいます。
ステロイドは免疫抑制作用があるので、免疫が悪さする病気には有効なことが多いです。
この際も、ステロイドの用量は獣医師と相談の上、治療と副作用を考慮したうえで決めていく必要があります。
関連記事:犬の免疫介在性溶血性貧血は治る?症状や必要な検査は?
リンパ腫・肥満細胞腫などの腫瘍
リンパ腫や肥満細胞腫などの悪性腫瘍の際にもステロイド投与が行われることがあります。
ステロイドの作用よって食欲増進や抗炎症作用が期待できるので、最初は積極的に使っていくケースもあります。
しかしながら、抗がん剤ではないため悪性腫瘍の完解は見込めず、使い方次第では1ヶ月程度で薬の耐性もでき始めます。
投与は慎重に進めていく必要があります。
関連記事:犬の肥満細胞腫とは?イボや脂肪腫との違いは?治療の費用は?
ステロイドの副作用
正しく使えば優秀な医薬品であるステロイドです。
よく使われるお薬ですが、注意すべき副作用について紹介していきます。
感染症
ステロイド剤には免疫抑制作用があるため、長期投与によって免疫力の低下が起こり得ます。そのため、感染症のリスクは高まります。
ステロイドを長期投与している場合は、犬の集まる場所へのおでかけなど感染の危険性が高まる行為は控えましょう。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎皮質ホルモンが過剰に出てしまう病気をクッシング症候群といいます。
犬では少なくない病気ですが、ステロイドの長期投与が原因でなってしまうケースもあります。
ステロイドは別名副腎皮質ホルモンですので、脳の下垂体が正常でも、副腎皮質ホルモンを投与することにより体は過剰と判断するため、症状が現れるのです。
関連記事:犬のクッシング症候群とは?症状や検査は?適切な治療方法は?
糖尿病
ステロイドに含まれる糖質コルチコイドには血糖値をあげる働きもあります。
そのため長期投与や過剰摂取によって糖尿病を発症してしまうこともあります。
また、上記のクッシング症候群を治療しないでいると糖尿病に移行してしまうリスクが高くなってしまいます。
ステロイドの投与は用量と期間を決め、長期的な投与になる場合は定期的に検査モニターを実施することが大切です。
多飲多尿
副作用の代表的なものの一つに多飲多尿があります。
比較的飲み始めて初期のころから出る副作用です。
単発投与でも、たくさん飲んでたくさんおしっこする症状が現れることがあります。
お留守番の際もお水を切らさないよういつもより多めに入れておくといいですね。
関連記事:犬が水を飲み過ぎるのはなぜ?ストレス?病気?副作用?
食欲増進・肥満
初期の副作用として食欲増進がでます。
食欲不振時に、食欲をあげるためにあえて投与する治療もありますが、アレルギー症状など内臓系に問題ない場合は、いつもよりも食欲が高まり多食になり体重が増えてしまうこともあります。
肥満にならないようにしっかりと管理しておきましょう。
また、食欲増進により人の食べ物やゴミ箱などを漁ってしまい誤食事故が起こることもあります。
お留守番中などは特に、十分注意しておきましょう。
肝障害
肝臓は、あらゆる物質を代謝する機能を担っています。
そのため、ステロイド剤を代謝するのにかなりの労力を強いられてしまいます。
正しい用量を短期間であれば大きな問題になることはほとんどありませんが、
長期投与になると肝臓への負担が高まり、肝臓肥大や肝酵素の上昇を招いてしまうことがあります。
長期投与の際は副作用チェックとして肝臓の数値をモニターすることが重要です。
腹囲膨満
腹囲膨満とは、お腹が張ってパンパンになっている状態のことを指します。
これは上記の多飲多尿・多食・肝臓の肥大などによって胃や肝臓、膀胱が張った状態になり、お腹が圧迫されてしまうこと等により引き起こされます。
クッシング症候群でも腹囲膨満の症状がでるので、一概に副作用だと判断せずに獣医師に相談しましょう。
呼吸促拍
ステロイドを服用していると息遣いが荒くなることがあります。
これは気管支などに石灰沈着がおこることが理由の一つといえます。
呼吸の異常は危険な状態であることが多く、単純な副作用だと決めつけないようにしましょう。
一刻を争う事態になる可能性もあるため、呼吸が荒い時は即獣医師に相談することをおすすめします。
関連記事:犬の息が荒いのはなぜ?ストレス?病気?その見分け方とは?
脱毛
代表的な副作用のひとつに毛が抜けることが挙げられます。
特徴的なのは左右対称に抜けてくるという点です。
ステロイドを休止することにより元に戻るケースが多いです。
消化器疾患(下痢・嘔吐)
ステロイドの用量が過剰だと消化器に負担がかかり、下痢や嘔吐などの消化器症状が現れる可能性があります。そのため、胃が荒れないように胃薬もつけて処方する病院も多いです。
精神疾患
精神的に落ち込んでしまうのも副作用のひとつです。
ステロイドは脳内ホルモンの分泌に関与するため、神経に作用しうつ状態などの神経症状を呈する場合もあります。
しかし、犬の精神症状はなかなか気づくのも判断するのも難しく対処するのが遅くなるケースが多いので、少しでも気になることがあれば獣医師に相談してみましょう。
副作用はいつまで続く?
ステロイド投与による一時的な副作用は、基本ステロイドの投与を休止することで改善することが多いです。
しかし、クッシング症候群や糖尿病などの病気を発症してしまった際は、疾患の治療が必要になります。
ステロイド投与中に定期的な血液検査を実施するなど、モニターをすることが必要と言えるでしょう。
予防法と対策
お薬には少なからず副作用が存在します。
その中でも、ステロイドは多方面に効果がある優秀なお薬である反面、副作用も多いです。
副作用を完全に取り除くことは難しいですが、獣医師と連携して正しく投薬を行うことで病状を適切にコントロールすることができます。
ステロイド投薬中に注意しておく点を理解しておきましょう。
長期投与中は定期的な血液検査をおこなう
完全に副作用を取り除くことは難しいですが、副作用と治療の効果とを天秤にかけ、用量を決めていく必要があります。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)や免疫介在性血小板減少症などの病気ではステロイドが第一選択薬となることも多いです。
易感染性やクッシング症候群・糖尿病や肝障害などの副作用がきちんとコントロールできているか定期的に動物病院でチェックするようにしましょう。
そこでステロイドの用量を調節して副作用との兼ね合いをみていくのが求められます。
サプリメントで代用する
抗炎症作用を目的にステロイドを飲み続ける選択をしている場合は、副作用の少ないサプリメントに切り替えることで、症状を和らげるサポートをする方法もおすすめです。
例えば、高齢犬に多い退行性関節炎などの炎症に対してステロイドを使用するのであれば、グルコサミン・プロテオグリカン・コンドロイチンなどの成分が配合されているサプリメントを、消化器症状で悩ましい場合はオリゴカッサライドが配合されているサプリメントなどがおすすめです。
サプリメントはお薬に比べて即効性はないですが、継続的に飲むことで健康をサポートしてくれます。
薬剤の減量にも繋がる可能性があるため、長期投与が心配な飼い主さんは相談してみると良いですね。
まとめ
ステロイドは獣医療界でも良く使われる薬剤です。
強い抗炎症効果や免疫抑制効果など、幅広く使える即効性のあるお薬なのでさまざまの症状で処方されます。
しかし、副作用もあり、用量や投与期間などに気をつけながら使う必要があります。
定期的に血液検査で用量を調節したり、サプリメントで健康をサポートしたり、なるべく副作用が少なく済むようにしていくことが大切です。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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