老犬の糖尿病の食事はどうする?食材や食べない時の対処法を獣医師が解説
愛犬が糖尿病と診断されると、今後の食事管理が心配になりますよね。
そんなとき、
「何を食べさせればいいの?」
「療法食を食べないときはどうすればいい?」
「ご飯を食べないのにインスリンを打って大丈夫?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、糖尿病は食事管理がとても重要となる病気です。
また、老犬では食欲の低下や持病の併発も多く、成犬よりも食事管理が難しくなる傾向があることをご存知でしょうか?
この記事では、老犬の糖尿病における食事管理のポイントや、食べてよいもの・避けたいもの、ご飯を食べないときの対処法について獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、老犬の糖尿病の食事管理にお役立ていただけたら幸いです。
老犬の糖尿病の食事の基本とは?
糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が体内で不足したり、十分に働かなくなったりすることで、血糖値が高くなり尿中に糖が排出される病気です。
犬の糖尿病では、体内でインスリンが不足するタイプであることが多く、インスリン注射による治療が必要になります。
しかし、いくらインスリンで治療を行っても食事により血糖値が大きく乱れてしまうと、適切に治療を行うことができません。
そのため、犬の糖尿病においては食事管理が重要です。
食事内容や食事量が毎日大きく変わると血糖値も乱れやすくなり、治療効果が十分に得られなくなります。
特に老犬では年齢に伴い、
- 食欲の低下
- 消化機能の衰え
- 筋肉量の減少
- 腎臓病や膵炎などの併発
などがみられることも多く、より慎重な栄養管理が必要です。
老犬の糖尿病の食事の注意点とは?
では、実際に老犬の糖尿病では、どのような点に注意するべきなのでしょうか?
具体的には、
- 療法食を使用する
- 食事の量や時間・回数を守る
- 与えてよいものを決める
- 適正体重を維持する
といったものが挙げられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①療法食を使用する
糖尿病用の療法食は、食後の血糖値の急上昇を抑えることができるため、基本的には療法食を中心に食事管理を行いましょう。
一般的に糖尿病用の療法食は、
- 低~中程度の脂肪
- 低炭水化物
- 高タンパク質
の設計で、かつ食物繊維が多く配合されています。
表1 一般的な糖尿用の療法食における各成分の目安量
| 成分 | 乾物量分析値 |
|---|---|
| タンパク質 | 25~35% |
| 炭水化物 | 35~40%以下 |
| 脂肪 | 8~14% |
| 繊維分 | 5~10% |
(参考:動物医療従事者のための臨床栄養学)
ただし、老犬では必ずしも糖尿病用の療法食だけを使用するとは限りません。
愛犬の体調や合併症に応じて調整が行われるため、愛犬が療法食を食べない場合は、獣医師と相談して代わりとなるフードを検討しましょう。
②食事の量や時間・回数を守る
糖尿病では、毎日同じ種類のフードを、同じ量で同じ時間に与える、規則正しい食生活が治療に重要だと考えられています。
食事の量や種類が日によって大きく変わると、インスリンの量とのバランスが崩れやすくなります。
どのフードをどれくらい与えるか悩んだときは、自己判断せず獣医師に相談するよう心がけましょう。
③与えてよいものを決める
糖尿病の食事管理では、あらかじめ与えてよいものの種類や量を、獣医師と相談のうえで決めておくことが大切です。
糖尿病では、与える食材によっては、血糖値に大きく影響することが少なくありません。
そのため、フードのみならず、トッピングやおやつについても管理を行う必要があります。
④適正体重を維持する
肥満は、インスリンの働きを悪くする原因になることがあります。
一方で、老犬では、筋肉量が減り体重が減ることも少なくありません。
このように、体重が増減することが、糖尿病の治療が難しくなる一つの原因であることも珍しくありません。
定期的に体重を測定し、適正な体重を維持できるよう、食事管理を行うことが大切です。
糖尿病の老犬が食べていいものとは?
では、実際に糖尿病の老犬が食べていい食材としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①良質なタンパク質を含む食材
低脂質・低炭水化物で、良質なタンパク質を含む食材は、糖尿病の老犬にも与えることができます。
また、筋肉量を維持するためにも、良質なタンパク質はとても重要です。
具体的には、
- 鶏ささみ
- 白身魚
- 卵
といった食材が挙げられます。

ただし、与える前には必ず加熱し、味付けはせず与えましょう。
また、慢性腎臓病やアレルギーを併発している場合は悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
これらの食材を与える前には、自己判断せず一度獣医師と相談しましょう。
②食物繊維が豊富な食材
食物繊維は、食後の糖の吸収を緩やかにすることが知られています。
また、適正な体重を維持することにも繋がるため、食物繊維が豊富な食材は糖尿病の老犬にも適した食材です。
具体的には、
- ブロッコリー
- キャベツ
- 白菜
などが挙げられます。

ただし、与える前には必ず加熱し、味付けはせず与えましょう。
また、尿石症や慢性腎臓病を併発している場合は、ミネラル分を多く摂取する可能性があるため、注意が必要です。
③低GIの食材
GI(グリセミック・インデックス)とは、食後の血糖値の上がりやすさを示す指標のことです。
ブドウ糖(GI=100)を基準として、数値が55以下の食材が、一般的に「低GI」と呼ばれます。
具体的には、
- キャベツ
- ブロッコリー
- 大根
- なす
- もやし
- 豆腐
などが挙げられます。
ただし、与える前には必ず加熱し、味付けはせず与えましょう。
また、尿石症や慢性腎臓病を併発している場合は、ミネラル分を多く摂取する可能性があるため、注意が必要です。
糖尿病の老犬が食べてはいけないものとは?
糖尿病の老犬に与えてはいけない食材としては、
- 高GIの食材
- 高脂肪な食材
- 一部のセミモイストフード
- 人間用のお菓子や加工食品
- 犬に中毒を起こす食材
が挙げられます。
これらの食材は、糖尿病の食事管理に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
①高GIの食材
高GIの食材は、食後の血糖値を急激に上昇させる可能性があります。
具体的には、
- バナナなどの果物
- カボチャやイモ類など
- 白米やパン
などが挙げられます。
これらの食材は、トッピングとして使用することも避けましょう。
②高脂質な食材
脂質が多く含まれる食材は、肥満や膵炎のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
具体的には、
- 脂の多い牛肉や豚肉
- ベーコンやソーセージなどの加工肉
- 揚げ物
- バター
といったものが挙げられます。
特に、盗み食いによる誤食が起こらないように注意する必要があります。
③一部のセミモイストフード
フードの水分保持剤として使用される「単糖類」や「プロピレングリコール」は、食後の血糖値を上昇させる原因となる可能性があります。
セミモイストフードとは、フードに水分量として25〜35%程度含まれるものをいい、いわゆる半生タイプのフードです。
一部のセミモイストフードには単糖類やプロピレングリコールが含まれ、糖尿病の食事管理に適さない場合があります。
④老犬に中毒を起こす食材
老犬の食欲がない場合、ついさまざまなものを与えたくなってしまいますよね。
しかし、糖尿病に関わらず、
- タマネギ
- チョコレート
- キシリトール製品
- ぶどう
- アボカド
といった食材は、老犬に中毒を引き起こす可能性があるため、少量であっても与えないように注意しましょう。
老犬が糖尿病用のご飯を食べない時の対処法
では、もし老犬が糖尿病用のご飯を食べない時は、どのように対処したらいいのでしょうか?
インスリンを投与する前には、基本的にご飯を食べてもらう必要があります。
そのためには、
- フードを温める
- ウェットタイプを試す
- トッピングを使う
- 愛犬が好む総合栄養食を与える
といった対処をすることがおすすめです。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①フードを温める
電子レンジなどでフードを人肌程度に温めると香りが立ち、食欲が刺激されることがあります。
特に老犬では、嗅覚が低下しているケースがあるため効果的です。
②ウェットタイプを試す
ドライフードを食べない場合はウェットフードが有効なことがあります。
老犬では、硬いドライフードが食べにくいことも少なくありません。
また、お湯でふやかすことで食べやすくすることも一つの方法です。
同時に水分摂取も可能であるため、脱水予防にも役立ちます。
③トッピングを使う
前述した、糖尿病用の老犬に与えていい食材を、少量のトッピングとして使うことも対処法の一つです。
また、ウェットフードをトッピングのように使用する方法もあります。
ただし、これらの対処法を行う前には、一度獣医師に相談したうえで行うことをおすすめします。
④愛犬が好む総合栄養食を与える
老犬では、糖尿病用の療法食をどうしても食べない場合、まずは必要な量のフードを食べることを優先する場合があります。
そのため、無理に療法食にこだわらず、愛犬が好む総合栄養食を与えることも対処法の一つです。
その際は、
- 低炭水化物
- 高タンパク質
- 低〜中脂肪
- 中〜高繊維
を意識した総合栄養食を選ぶとよいでしょう。
まとめ
老犬の糖尿病管理では、インスリン治療と同じくらい食事管理が重要です。
基本は糖尿病用療法食を使用し、毎日同じ量を規則正しく与えることが理想ですが、老犬では食欲の低下がみられることも多く、療法食を食べないケースも少なくありません。
その場合は無理にこだわりすぎず、獣医師と相談しながら食べやすいフードを検討しましょう。
また、ご飯を食べない状態でのインスリン投与は低血糖を招く危険があります。
食欲不振時の対応については事前に獣医師へ確認しておくことが大切です。
さらに、ご飯を食べないときの対処法についてもしっかりと理解しておくことが、適切な食事管理をするうえでとても重要です。
愛犬の体調や食欲を日頃から観察し、獣医師と連携しながら適切な食事管理を続けていきましょう。
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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