犬の息が荒いのはなぜ?
今年の夏もとても暑いですね。
わんちゃんも人も、この暑さにはバテてしまいますよね。
わんちゃんは暑いとき、口で呼吸することで熱を発散します。
夏はよく、口で息をしていて息が荒いように感じることが多いと思います。
もちろんそれは、生理的に正常な行動ではありますが、実は病気が隠れていて、息苦しさを感じているサインかもしれません。
ここでは、病気で息が荒くなる原因について解説していきます。
犬の息が荒い原因とは?
犬の息が荒くなってしまう原因として、病的ではないものとしては、温度(高温)や緊張、不安、肥満などが挙げられます。
これらの場合は、息が荒くなる前に、運動をしていたり、知らない人と会ったり、雷や地震などのイベントがあったりなど、きっかけがあると思います。
ストレスや不安が原因となっている場合は、息が荒い他に、小刻みに震えていたり、落ち着きが無かったり、どこかに隠れようとするしぐさも一緒に見られることがあります。
また、口を閉じた状態でする「逆くしゃみ」のように、喉に一時的な刺激があると起こる生理的な反応も、息が荒いように見えてしまいます。
その場合は、安静にして時間とともに息の荒さは治まっていくと思われます。
病気である場合に考えられる原因としては、
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- 熱中症
- 体の痛み
- 短頭種気道症候群(外鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、喉頭虚脱、喉頭小嚢外反、気管低形成など)
- 気管虚脱や気管内異物、腫瘍などの気管の病気
- 鼻腔内の異物や腫瘍などの鼻の中の病気
- 肺炎や肺水腫、ARDS、肺血栓塞栓症などの肺の病気
- 胸に水が溜まっている(胸水)
などが挙げられます。
息が荒い他に、元気が無い、嘔吐や下痢がある、倒れる、呼吸の音が異常などの他の症状がみられることがあります。
ケースによっては救急の対応が必要になる場合があり、特に、安静時の呼吸回数が1分あたりに40回以上だと、肺水腫である可能性が高いと言われています。
様子を見すぎずに、すぐに病院に連れていきましょう。
病気が疑われるケースとは?
上記の通り、息が荒くなるイベントが無いにもかかわらず、安静時の呼吸回数が多い場合は病気である可能性が高くなります。
ここでは、よく遭遇する病気について解説していきます。
①熱中症
熱中症とは、暑熱の暴露または身体運動による体熱産生の増加がきっかけとなり、高体温になり全身の臓器に影響を与え、症状が引き起こされる状態とされています。
原因は、高温多湿の環境の他、過度な運動や長時間にわたるけいれん発作などが原因となります。
人は汗をかくことで熱の放出を行いますが、犬は汗腺が少ない為、パンティングにより熱の放出を行います。そのため、周囲の温度が高いとパンティングでの熱の放出が上手くいかず、すぐに熱中症になってしまいます。
特に鼻の短い短頭種に起こりやすいとされています。また、水分補給がされず脱水になると、さらに熱の放出の効率が悪くなり、状況が悪化します。
どんどん脱水が進行していくと、臓器への血液供給が減少し、低血圧となりショック状態となり、最悪死に至ります。
ショック状態になる前に、急性腎不全や不整脈、けいれん発作、血栓の産生などにより、急に状態が悪くなることがあります。
②短頭種気道症候群
フレンチブルドッグやパグ、ペキニーズ、シーズーなどの鼻が短い短頭種において、外鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、喉頭虚脱、喉頭小嚢外反、気管低形成などが認められる状態を総称して「短頭種気道症候群」と言います。
短頭種では、先天的に外鼻腔狭窄(鼻の穴が狭くなっている)や軟口蓋過長症(軟口蓋が正常より厚く長くなっている)が存在すると、息を吸うことに抵抗力が生まれてしまい、それに伴って喉頭虚脱や喉頭小嚢外反などが引き起こされると言われています。
症状としては、いびき、ストライダー、睡眠時無呼吸症候群、咳、運動不耐などが挙げられます。
③気管虚脱
気管虚脱とは、喉と肺を繋ぐ、1本の「気管」と呼ばれる管が、正常な状態より細くなっている状態をいいます。
軽度であれば症状は認められないのですが、細くなればなるほど咳が出たり、息が荒くなったりしてしまいます。
④誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、肺に異物が入ってしまい、そこから感染、炎症を起こし肺炎になった状態をいいます。
犬においては主に、嘔吐した吐物が気管の方に入り込むことで生じることが多いとされています。
嘔吐があった後から息が荒くなった場合は、誤嚥性肺炎の可能性が高まります。
⑤肺水腫
肺水腫とは、本来空気で満たされているはずの肺の中に、水が溜まってしまうことを言います。
肺は、空気中の酸素を体内に取り入れる働きをしていますが、肺に水が溜まってしまうと、酸素の取り込みが阻害され、息が荒くなってしまいます。
肺水腫の原因として、心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)、発作、感電、頭部の外傷、肺の陰圧(短頭種気道症候群やマズルコントロールなど)などが挙げられます。
特に、小型犬においては、僧帽弁閉鎖不全症から肺水腫になるケースが非常に多く経験されます。
⑥胸水
胸水は肺水腫と異なり、胸の中に水が貯留することを言います。
右心不全や胸の腫瘍、肺葉捻転、外傷、特発性乳び胸などで水が貯留することが多いです。
肺が正常より膨らまなくなることで、息が荒くなってしまいます。
治療は?
犬の息が荒い場合は、緊急性が高い場合が多く、早急な治療が必要になります。
普段の病気は、問診や身体検査、各種検査を行い、診断を行ってから治療をする流れですが、息が荒い場合は、状況により診断を行うよりも前にまずは「酸素投与」を行います。
酸素を直接鼻に嗅がせたり、酸素テントに入れたりし、様子が安定したところで原因を考えていきます。
様子が安定しないまま、レントゲン検査や無理な処置を行ってしまうと、さらに息が荒くなって、最悪呼吸停止になってしまう可能性がある為です。
①熱中症
まずは体温を確認し、体温が40~41℃以上であれば、すぐに冷却措置を取ります。
冷水のシャワーをかけたり、扇風機を当てたり、氷をあてがったりして、体温を下げます。
また、体温の下がりすぎも良くないので、定期的に体温を測りながら処置を行います。
既にショック状態にある場合は、点滴も行います。その他、けいれん発作などが起きていれば、それに対する治療を行います。
②短頭種気道症候群
短頭種気道症候群は、基本的に手術による治療が行われます。
外鼻腔狭窄であれば、鼻の穴の一部を楔形に切除し縫合することで、穴を広げます。
軟口蓋過長症であれば、軟口蓋を適切な長さに切断します。
喉頭虚脱であれば、喉頭を本来の位置に戻すような手術(披裂軟骨側方化術)を、喉頭小嚢外反であれば外反した喉頭小嚢を切除する手術を行います。
現在どの異常が生じているかにより、上記のような手術を組み合わせて治療を行います。
③気管虚脱
軽度であれば、気管を広げるお薬や、炎症を緩和するお薬・サプリメントにより、症状が緩和するか見ながら治療を行います。
重度であったり、お薬に反応しなかったりなどのケースにおいて、外科的に気管を広げる手術が行われることもあります。
④誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、基本的には肺炎に対する治療を行います。
酸素テントなどで継続的に酸素投与を行い、抗菌薬で肺炎の原因の菌を排除し、気管を広げて呼吸を楽にする注射を行います。
概ね入院での治療になることが多いです。
⑤肺水腫
肺水腫の原因が何かにより治療方法が異なりますが、まずは酸素テントなどで継続的に酸素投与を行います。
もし、酸素テントなどでも酸素供給が十分でない場合は、気管挿管を行い、人工呼吸をするケースもあります。
原因が僧帽弁閉鎖不全症である場合は、肺の水を尿として排出させるために利尿剤の投与を行い、心臓からの血液の流れを良くするために、強心剤や血管拡張薬を使用します。
肺水腫から離脱した後も、僧帽弁閉鎖不全症であれば継続してお薬による治療が必要になってしまいます。
このような時に用いられるサプリメントとしては、「ピクノジェノール(フランス海岸松樹皮抽出物)」などが挙げられます。
⑥胸水
胸水の場合は、注射針である程度の水を抜去することが可能です。
そうすることにより、息が荒い様子も改善することが期待できます。
しかし、胸水がたまる原因となっている病気を治療しない限り、また徐々に溜まっていくことが多いです。
右心不全であれば、心臓の機能を改善するお薬を使用したり、肺葉捻転であれば、手術で捻転を整復するか、または肺葉を切除したりして、原因の治療を行います。
胸水が貯留する腫瘍として、肺腺癌や中皮腫、リンパ腫、悪性腫瘍の肺への遠隔転移などが挙げられます。それぞれの腫瘍に適した治療を選択する必要がありますが、サプリメントとして、「タヒボエキス」や「担子菌抽出エキス」などが使用されることがあります。
まとめ
犬の息が荒い時は、場合により緊急の処置が必要になることがあります。
病気ではないことが予測され、安静にして落ち着く場合はさておき、あまり様子を見すぎず早めに受診することが重要です。
また、そうならないように、日頃の温度管理を行ったり、適切な運動習慣をつけたりして体調管理を行っていきましょう。
参考資料
・雑誌「Surgeon」Vol.23 No.4
・雑誌「Clinic note」 No.156
・治療ガイド2020発刊記念オンラインセミナーVol.4
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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