老犬の僧帽弁閉鎖不全症の食事とは?NGな食材と食べない時の対処法を獣医師が解説
愛犬が高齢になり、動物病院で「僧帽弁閉鎖不全症の疑いがある」と言われたら、とても心配になりますよね。
そんなとき、
「心臓に悪い食材って何?」
「療法食やサプリメントは必要?」
「食べないときはどうしたらいい?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、僧帽弁閉鎖不全症の老犬に与えない方がいい食材は、身近に多く存在しています。
そのため、フードはもちろんのこと、おやつやトッピングにも注意が必要なことをご存知でしょうか?
今回は、僧帽弁閉鎖不全症の老犬における食事管理のポイントや避けたい食べ物、ご飯を食べないときの対処法について詳しく解説します。
最後までお読みいただき、僧帽弁閉鎖不全症を抱える老犬の食事管理の一助になれば幸いです。
老犬の僧帽弁閉鎖不全症における食事管理の注意点とは?
では、僧帽弁閉鎖不全症の老犬では、食事に関してどのような点に注意すべきなのでしょうか?
僧帽弁閉鎖不全症での食事管理のポイントは、
- 栄養バランスのとれたフードを選ぶ
- 低ナトリウム食を検討する
- 心臓の働きをサポートする栄養素を摂る
といったものが挙げられます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①必要なエネルギーを補える栄養バランスのとれたフードを選ぶ
肥満は心臓に負担をかける一方で、過度なカロリー制限は「心臓性悪液質」を起こすきっかけとなることも少なくありません。
僧帽弁閉鎖不全症は、病状が進行するに伴い、筋肉量や体重が減少する心臓性悪液質を起こすことがあります。
その理由は、
- 交感神経の緊張過多によるタンパク異化亢進
- 腸循環の減少による消化吸収障害
- 炎症性サイトカインの影響
といったものが考えられています。
また、心臓性悪液質は、僧帽弁閉鎖不全症の予後にも悪影響を及ぼすと考えられています。
そのため、必要なエネルギーを補える、栄養バランスのとれたフードを選ぶことがポイントです。
②低ナトリウム食(減塩食)を検討する
僧帽弁閉鎖不全症の老犬で推奨される食事は、低ナトリウム食(減塩食)が基本と言われています。
ナトリウムは本来、体内に水分を保持する役割を持っているため、塩分を多く摂取すると循環血液量が増加し、心臓への負荷が増加すると考えられています。
その結果、血圧の上昇や病態の悪化につながることも珍しくありません。
一般的に心臓病用の療法食では、乾物量ベースでナトリウムが0.08〜0.15%程度に調整されていることが多いです。
ただし、軽度の心臓病では過度な塩分制限は行わず、0.15〜0.25%程度に調節することもあります。
しかし、ナトリウムを制限すると、その分嗜好性が低下することも知られています。
そのため、僧帽弁閉鎖不全症が軽度である老犬では、極端な減塩よりも栄養バランスを重視することも少なくありません。
また、注意したいのがおやつやトッピングです。
せっかく療法食を与えていても、塩分が多く含まれる食材を与えてしまうと、療法食の効果が薄くなってしまう可能性があります。
③心臓の働きをサポートする栄養素を摂る
僧帽弁閉鎖不全症の老犬では、
- タウリン
- L-カルニチン
- オメガ3脂肪酸
- コエンザイムQ10
- フランス海岸松樹皮抽出物
といった栄養成分が注目されています。
これらの成分は治療薬の代わりになるものではありませんが、フードやサプリメントで補うことで、心臓の健康維持をサポートすることが期待されます。
僧帽弁閉鎖不全症の老犬にNGの食材とは?
では、実際にどのような食材を与えてはいけないのでしょうか?
具体的な理由も含めて、それぞれの食材を詳しく見ていきましょう。
①塩分が多く含まれる食材
塩分を摂り過ぎると、心臓への負担が増える可能性があります。
そのため、
- チーズ
- 煮干し
- 犬用のジャーキー
- 味付けされた人の食べ物
- ちくわ、はんぺんなどの練り物
- ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉
といったものは、僧帽弁閉鎖不全症の老犬には与えないようにしましょう。
②カロリーが多く含まれる食材
脂質が多く含まれる食材を与えると、体重が増加し心臓への負担が増える可能性があります。
具体的には、
- 揚げ物
- バター
- 脂の多い牛肉や豚肉
- さつまいもやトウモロコシなどの野菜
といったものが挙げられます。
特に、盗み食いによる誤食が起こらないように注意する必要があります。
③老犬に中毒を起こす食材
僧帽弁閉鎖不全症の老犬では、薬の種類が多くなることで、投薬の際についさまざまなものを与えたくなってしまいますよね。
しかし、僧帽弁閉鎖不全症に関わらず、
- タマネギ
- チョコレート
- キシリトール製品
- ぶどう
- アボカド
といった食材は、老犬に中毒を引き起こす可能性があるため、少量であっても与えないように注意しましょう。
老犬が僧帽弁閉鎖不全症でご飯を食べない原因とは?
老犬は、さまざまな原因で食欲が低下することが少なくありません。
その原因の一つに、病気が悪化することで食欲が低下するケースがあります。
では、どのような理由でご飯を食べなくなるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①呼吸が苦しくて食べられない
僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、小さな動作ですぐに呼吸が苦しくなり、食欲が低下することが珍しくありません。
その場合は、僧帽弁閉鎖不全症の治療を見直す必要があります。
特に、呼吸数の増加や咳が見られる場合は、呼吸が苦しい可能性があります。
そのような場合は、様子を見ずに獣医師に相談しましょう。
②薬の副作用
僧帽弁閉鎖不全症の治療で用いる血管拡張薬や利尿剤の影響で、
- 脱水
- 腎臓病の悪化
- 消化管へのダメージ
といったことが起こり、食欲が低下することがあります。
また、食事に薬を混ぜることによって、食事の風味が変わりご飯を食べなくなることも少なくありません。
そんなとき、自己判断で休薬してしまう飼い主様も多いですが、まずは獣医師に相談するよう心がけましょう。
③血流低下による胃腸機能の低下
心臓のポンプ機能が低下すると、胃や腸などの消化器への血流も減少します。
その結果、吐き気や食欲不振が起こり、ご飯を食べなくなる可能性があります。
また、慢性腎臓病や膵炎などの他の病気が併発することにより、ご飯を食べなくなることも少なくありません。
後述するさまざまな対処法を行っても食欲が改善しないときは、一度獣医師に相談することがおすすめです。
老犬が僧帽弁閉鎖不全症でご飯を食べないときの対処法とは?
前述した僧帽弁閉鎖不全症による食欲低下が原因ではない場合は、与え方を工夫することで、ご飯を食べることがあります。
具体的には、
- フードを温める
- フードをふやかす
- ウェットタイプを試す
- トッピングを使う
- 一時的に愛犬が好むフードを与える
- 食事回数を増やす
といった対処法が挙げられます。
老犬では、状況によっては、厳密な食事管理より「食べるものを優先する」判断が必要な場合も少なくありません。
まとめ
老犬の僧帽弁閉鎖不全症の食事では、単純に塩分を減らすだけでは十分とはいえません。
心臓への負担を軽減しながらも、
- 必要なエネルギーをしっかり摂る
- 筋肉量や体重を維持する
- 心臓をサポートする栄養素を補う
- 水分摂取を確保する
- 腎臓病などの併発疾患にも配慮する
といった総合的な栄養管理が重要になります。
また、病気が進行した老犬では食欲が低下することも珍しくありません。
そのような場合は、療法食にこだわり過ぎるあまり何も食べなくなってしまうよりも、「まずは食べてもらうこと」を優先した方がよいケースもあります。
特に、呼吸が苦しそう、急に食欲が落ちたといった症状がみられる場合は、病気の進行や薬の影響が隠れている可能性があります。
自己判断で食事内容や薬を変更せず、早めに動物病院へ相談しましょう。
毎日の食事は、治療薬と同じように愛犬の健康を支える大切なケアのひとつです。
愛犬の年齢や病状に合わせた適切な食事管理を行い、少しでも長く穏やかで快適な時間を過ごせるようサポートしてあげましょう。
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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