全身麻酔という言葉は人の医療でもよく使われる言葉のため、意味はみなさん理解していることかと思います。
しかし、実際に自身の愛犬に全身麻酔が必要と言われたら不安になったり、悩んだりしてしまうと思います。
全身麻酔にはリスクが有るとも言われているので、当然かと思います。
高齢だけど大丈夫かな?全身麻酔をかけないといけないのかな?など、心配な気持ちがある飼い主さんへ、この記事では全身麻酔のリスクについて詳しく解説していきます。
全身麻酔とは?

麻酔の種類には2種類あり、全身麻酔と局所麻酔に分けられます。
局所麻酔は一部分のみを麻酔し、痛覚を無くして処置を行うことで、全身麻酔は全身に麻酔をして意識も消失させる医療行為です。
犬の獣医療界では基本的に全身麻酔がメインとなり、局所麻酔は稀となります。
人と違って大人しくしていられないことが多いためです。
全身麻酔のリスクが高い犬種・特徴
全身麻酔はどの犬種、その犬にでもそれなりのリスクがありますが、特に気をつけたい犬の特徴としては以下の点が挙げられます。
愛犬に当てはまっていれば、全身麻酔の機会にはよく注意し獣医師に不安なことはしっかりと訪ねて、納得したうえで全身麻酔に挑みましょう。
短頭種の犬種

短頭種と呼ばれる鼻の短い犬種は、麻酔のリスクが高いと言われています。
気道が扁平していることが原因だと考えられています。
代表的な短頭種は以下のとおりです。
- パグ
- フレンチブルドッグ
- ボストンテリア
- ペキニーズ
- 狆
- チワワ
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- シーズー
高齢の犬

高齢の犬も麻酔のリスクは上がると言われています。
麻酔からの目覚めも若齢の犬と比べると遅くなる傾向にあり、これは内臓や心機能などの衰えによります。
緊急の手術や尿路結石などの、有無を言わせず麻酔が必要な時は仕方がないですが、避妊手術や去勢手術、スケーリングなどは若齢での手術を検討し、少しでも麻酔のリスクを下げることも大切でしょう。
心臓病を患っている犬
心臓病を患っている犬もリスクが高くなります。
一番多いのは僧帽弁閉鎖不全症といわれる心臓の病気かと思いますが、高齢の多くの犬で発症します。
心機能が低下していると麻酔で心臓に負担がかかり、リスクは高まります。
高齢の犬で、心臓病を患っている犬は、麻酔をかける機会があるなら獣医師とよく相談の上実施することが大切ですね。
持病がある犬
心臓病以外にも、持病がある犬も全身麻酔は慎重に行う必要があります。
例えば、肝臓に疾患がある犬は特に要注意とされています。
肝臓は、解毒作用を行う重要な臓器です。
麻酔の解毒が追いつかず、肝臓が悪い犬では麻酔がハイリスクなケースが多くなります。
手術の検討をしている場合はよく考えて決断するようにしましょう。
全身麻酔が必要な例
では、全身麻酔が必要になる事例はどんなものがあるでしょうか。
避妊手術・去勢手術
一番はじめに直面する全身麻酔をかける機会は避妊手術・去勢手術ではないでしょうか。
現在では、ほとんどの動物病院が若齢での避妊・去勢手術をすすめると思います。
しかしながら、いくら1歳未満の若齢だとはいえ全身麻酔のリスクがゼロというわけにはいきません。
とはいえ、きちんと術前検査を行い疾患がないようであれば、今後の病気のリスクも鑑みると、全身麻酔をかけて手術に挑むほうが長寿を目指す犬にはメリットが大きいと考えます。
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病気由来の手術
腫瘍の除去やヘルニアなどの病気でも手術を勧められることがあります。
病気での手術は、年齢や持病なども考慮し、手術のメリットのほうが大きいかどうか判断するのが重要です。
小さな腫瘍の除去手術だとしても、基本的には局所麻酔ではなく全身麻酔を行います。
軽い鎮静で行える処置もありますが、痛みや恐怖を感じる犬にとっては苦痛である可能性があります。
麻酔をかけたくない気持ちもわかりますが、そこは愛犬の気持ちになって検討してくださいね。
歯石取り(スケーリング)
歯石取りを行う犬はかなり多いです。
歯石取りには、無麻酔歯石取りと謳っている施設もありますが、基本的には全身麻酔下で行います。
麻酔をかけずに行う場合は、表面の歯石は取れても歯周ポケットの歯石や歯垢は綺麗にならないため、根本的な治療にはなりません。
また、意識のある状態で口の処置を平然と受け入れる犬は多くありませんし、恐怖や痛みが伴うためおすすめできません。
スケーリングやポリッシング(研磨し磨き上げる処置)は年齢や歯肉の悪さによって行うかどうかの判断が重要になります。
たかが歯周病でも、高齢になると歯周病が原因で敗血症となり死に至ってしまうケースも有るため、慎重に相談して判断しましょう。
尿路閉塞
尿道や膀胱内に結石ができ、その結石のせいで道がふさがり、おしっこが出ない状態を尿路閉塞といいます。
これは緊急疾患ですぐに閉塞解除を行う必要があります。
おしっこが出ない状態で2〜3日経過すると尿毒症という状態になり死亡してしまいます。
そうならないためにも、全身麻酔をかける判断はなるべく早く行うことが求められます。
尿路閉塞は尿道が細く長い男の子に多く、多くの犬が罹患します。
日頃から尿検査を定期的に実施し、兆候がないかどうかはチェックしておくと良いですね。
CT・MRIなどの精密検査
CTやMRIを利用した検査は、みなさんご存知かと思います。
人間の場合、人間ドックや健康診断でも気軽に用いられる検査ですよね。
ただ、動物の場合は簡単に行える検査ではないのです。
人であれば、大きな音がなっていても固定して寝転んでおくことは可能ですが、動物は画像を撮影している間、ずっとじっとしておくなんてことは不可能なのです。
そのため、動物医療の世界では、CTやMRIの検査が必要な時も、全身麻酔を行うことが主流です。
さらに、CTやMRIの検査を行える動物病院は多くないため、大学病院や動物医療センターなどの大きな動物病院を受診する必要があります。
検査を検討している場合は、全身麻酔のリスクなども考えてしっかりと相談した上、判断するようにしたいですね。
全身麻酔のリスクを下げるための予防策
どうしても全身麻酔をかける機会をゼロにするのは難しいかもしれませんが、予防策を実施することで可能性を下げることはできます。
できることから取り入れてみましょう。

必ず術前検査を行う
多くの動物病院で実施されるかとは思いますが、全身麻酔をかける前の術前検査は必ず行うようにしましょう。
術前検査は血液検査やレントゲン検査など、麻酔をかけても大丈夫かという大事な検査です。
費用はかかりますが、若齢だからといって飛ばさないようにしましょう。
肝臓の異常や臓器の数値の異常が発見された際には、延期できる手術であれば延期をしたり、とにかく安全に全身麻酔をかけるように調整しましょう。
気になる症状がある場合は、その旨を必ず事前に伝え、検査項目にも不足がないようにしておきたいですね。
絶食絶水で当日を迎える
基本的には、手術当日・全身麻酔の当日は絶食絶水の指示が出されることかと思います。
これは、安全に麻酔をかけるためなので、空腹が可哀想だと思っても必ず守りましょう。
麻酔をかけると覚醒後、うまく嚥下ができなくなってしまいます。
また、機能も低下しているため胃に内容物があると嘔吐してしまった際に、気管に入ってしまい誤嚥を招いてしまう恐れがあるためです。
麻酔は何が起こっても不思議じゃないため、大丈夫だろうと思わずに獣医師の指示にしっかりと従い、愛犬を守ってくださいね。
日頃はしっかり食べて体力をつけておく
麻酔には体力も必須です。
体力が低下している中麻酔をかけるにはさらにリスクが伴います。
日頃からしっかりと飲んで食べて、体力を維持しておきましょう。
緊急手術となってしまった場合にも、体力の有無で麻酔の心配度が左右されます。
延期できる内容の手術であれば、食欲がなかったり元気がなかったり、下痢や嘔吐など症状があれば無理に決行せずに、日にちを改めて万全な状態で全身麻酔に挑みましょう。
また、悪性腫瘍の除去手術などでは、これから体力の衰えが進んでいくことも考えると、症状の有無と進行具合などで、じっくりと獣医師と相談して判断する必要がありますね。
歯磨きなどのデンタルケアをする
犬で麻酔をかける機会は、実は避妊手術・去勢手術に続いて多いのが犬の歯石取り(スケーリング)だと言われています。
80%以上の犬が歯周病になるというデータがあるように、犬は口腔内の健康維持が難しいです。
そのため、スケーリングを提案されることが多いです。
犬の歯の健康を保つためには、デンタルケアに力を入れることが大切です。
1日2回、歯磨きを実施することが一番のケアとなりますが、なかなかコンスタントにできるご家庭は少ないですよね。
愛犬の性格や生活リズムなどによって、できることが限られるかもしれませんが、歯ブラシでの歯磨きが難しければ指やシートを使った魔磨き・歯茎のマッサージ、次にデンタルガムなどのおやつやウォーターデンタルグッズなどのデンタル商品、デンタルおもちゃなどの使用でケアをすると良いでしょう。
全身麻酔にかかる費用の目安
全身麻酔にかかる費用の目安としては大体30,000円前後と言われています。
麻酔の金額だけでなく、手術の費用・抜歯の費用や入院費用などが追加されるため、手術や治療の内容によっては100万円近くすることもあります。
全身麻酔は、麻酔をかけるだけを目的とすることはまずありえませんので、最低金額として30,000円と認識しても良いかもしれませんね。
まとめ
犬の全身麻酔には、もちろんリスクが伴います。
特に気をつけたいのは、短頭種の犬種・高齢の犬・心臓などに持病を患っている犬などです。
全身麻酔の機会としては避妊去勢手術・スケーリング(歯石取り)・腫瘍切除などの病気由来の手術やCT・MRIなどの検査・尿路閉塞が挙げられます。
麻酔のリスクを少しでも下げるために、術前検査は欠かさず行うこと・体調の悪いときには無理して挑まないこと・体力をつけておくこと・デンタルケアを日頃から実施しておくことなどが、飼い主さんにできることと考えます。
全身麻酔は、簡単なことではないので、しっかりと獣医師と相談の上、慎重に決断するようにしましょう。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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