犬の去勢手術には、病気の予防や問題行動、ストレスの軽減にもなります。
しかし、その一方で麻酔のリスクもあります。
そのため、去勢手術に悩んでいる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は犬の去勢手術をおこなうことによるメリットとデメリット、手術に適した時期、術後の注意点、費用の目安など、飼い主さんが不安に感じやすいことについて詳しく解説します。
犬の去勢手術とは?

犬の去勢手術とは、陰嚢から精巣を取り出して、繁殖ができないようにする手術です。
また、繁殖能力をなくすだけでなく、オス特有の病気や繁殖に伴う問題行動の軽減、それに関連するストレスを減らす効果が期待できます。
通常は避妊手術のように開腹することはありませんが、全身麻酔でおこなわれるため多少のリスクは避けられません。
とはいえ、上述のようなメリットがあるため、繁殖を望まない場合は去勢手術をおこなうのが一般的です。
犬の去勢手術にはどのようなメリットがある?
去勢手術はオス犬にとって健康面、精神面のほか、行動においてもさまざまなメリットがあります。
行動においては犬はもちろんですが、飼い主さんにとっても大きなメリットがあると言えます。
それでは、犬の去勢手術で得られるおもなメリットについて見ていきましょう。
オス特有の病気を予防できる
去勢手術をおこなうことで、オス特有の病気の予防につながります。
予防できる病気には以下のものがあげられます。
- 精巣腫瘍
- 前立腺肥大
- 会陰ヘルニア
- 肛門周囲腺腫
- 停留睾丸(潜在精巣)からの腫瘍
これらの病気は5歳頃から発症リスクが高まり、歳とともにリスクが増していきます。
また、ある程度成長してもお腹の中や鼠径部に睾丸が留まったままになってしまう停留睾丸の場合は、将来的に腫瘍化するリスクが高いため、去勢手術をすすめられるのが一般的です。
発情期の問題行動やストレスをなくせる
去勢していないオス犬は、発情期のメス犬のニオイを感知することで、落ち着かなくなったり、問題行動を起こしたり、ストレスを溜めたりしてしまうことがあります。
たとえば、近所に発情期を迎えたメス犬がいると、そのニオイに反応して脱走することがあります。
発情期のメス犬を見つけたオス犬は、飼い主さんを驚かせてしまうほどの力と執念で脱走をはかるのです。
散歩中に発情中のメス犬を見かけたときには、交尾をしようと追い掛けまわし、メス犬をめぐってほかのオス犬とケンカに発展してしまうかもしれません。
また、交尾できないストレスで攻撃的になる場合もあるでしょう。
去勢手術はこれらのストレスから愛犬を守ると同時に、問題行動に悩まされる飼い主さんを守る手段でもあるのです。
マウンティングやマーキングを減らせる
オス犬の飼い主さんを悩ませる行動として、マウンティングやマーキングがあげられます。
これらの行動も性的な本能に関連しています。
マウンティングとは、ほかの犬や人、ものなどにしがみついて腰を振る行動です。
じゃれているだけのこともありますが、性的欲求の場合もあり、ほかの犬や人にしてしまった際には、トラブルの原因にもなり得ます。
また、縄張りを主張するために、片足をあげて高い場所におしっこをかけるマーキング行動も状況によっては問題となります。
これらの行動は、去勢手術をおこない男性ホルモンの分泌を抑えることで頻度を減らすことができると考えられています。
犬の去勢手術にはどのようなデメリットがある?
犬の去勢手術はメリットばかりではありません。
当然デメリットもあります。
去勢手術を検討する際は、可能性のあるデメリットについても知っておくことが大切です。
太りやすい体質になる
犬は去勢手術をおこなうと、ホルモンバランスが変化し、必要とするカロリーが30%ほど少なくなるとされています。
そのため、太りやすくなるのが一般的です。
また、去勢手術後に食欲が旺盛になる犬も多く、要求に応えてフードの量を増やすと肥満の原因になってしまいます。
去勢手術後は、これまで以上にしっかりとした食事管理が求められるでしょう。
手術にはリスクがつきもの
犬の去勢手術はそれほど難しい手術ではありませんが、リスクがないわけではありません。
去勢手術は全身麻酔でおこなわれます。
そのため、犬によっては麻酔に対してアレルギー反応を起こし、血圧や呼吸が低下する可能性が考えられます。
手術前には必ず麻酔に耐えられるかなどの検査をおこない、手術中もモニタリングをするなど安全に留意するとは言え、リスクをゼロにすることはできません。
また、パグやブルドッグなどの短頭種は、手術のあとで気道閉塞を起こす場合があるため、術後の経過観察、体調管理がより重要になります。
関連記事:犬の全身麻酔のリスクはどれくらい?高齢の場合は危ないの?
子孫を残せない
去勢手術をおこなうと繁殖能力を失い、もとに戻すことはできません。
そのため、手術後は子供を作ることができなくなります。
もし愛犬の子供がほしいという気持ちが少しでもあるのなら、慎重に検討する必要があるでしょう。
犬の去勢手術に適した時期はいつ?
犬の去勢手術は、生後6〜12ヶ月までにおこなわれるのが一般的です。
ただし、大型犬は小型犬と比べて体の成長がゆっくりなので、少し遅めの時期をすすめられる場合もあるでしょう。
去勢手術に適した具体的な時期については、体の成熟度合にもよりますので、獣医師に相談するのが確実です。
なお、犬は生後6ヶ月ごろから性成熟がはじまり、この頃からマウンティングやマーキングなどの行動が見られるようになることが多いです。
これらの行動をやめさせたい場合は、早めの時期に去勢手術をおこなうのがよいとされています。
犬の去勢手術の流れ
去勢手術では当日だけでなく、事前の検査が必要な場合もあります。
術後もできれば、数日は様子を見ていられると安心です。
無理なく予定を組むためにも、手術の流れを知っておきましょう。
ここで紹介するのは一般的な流れとなります。
詳しくはかかりつけの動物病院で確認してください。
1.手術前検査
去勢手術は全身麻酔でおこなわれます。
安全におこなうためには、手術の1週間ほど前に、麻酔を使用しても大丈夫か、手術に耐えられるかを確認する必要があります。
手術前の検査では、一般的に「血液検査」や「レントゲン検査」などを年齢や健康状態などに合わせておこなうことになるでしょう。
2.手術前日は絶食
犬の去勢手術は全身麻酔でおこなわれるため、手術前は12時間以上の絶食が必要です。
前日の夕食は、いつもどおり食べさせてもかまいませんが、深夜以降は食べ物は与えられません。
また一般的に、水は当日の朝まで飲ませることができます。
正確な時間については、獣医師に確認してください。
もし誤って飲食をさせてしまった場合、手術中に吐いてしまったもので窒息のリスクがあります。
必ず申告しましょう。
3.手術当日〜抜糸
去勢手術では、手術が成功し、麻酔の覚醒にも問題がなければ、当日に退院するのが一般的でしょう。
麻酔が覚めたあとはいつもどおり遊びたがるかもしれませんが、術後10日ほどは激しい運動を避けて、できるだけ安静に過ごしましょう。
縫合に解けない糸が使われている場合は、1週間後くらいに抜糸をおこないます。
犬の去勢手術後の注意点
去勢手術後の過ごし方
手術後はできるだけ安静にし、激しい運動は避けてください。
また、傷口からの感染を避けるため、傷口をなめたりしないようにエリザベスカラーの着用が推奨されます。
もし、以下のような症状が見られたら速やかに獣医師に連絡し動物病院を受診しましょう。
- 傷口が開いている
- 傷口からの出血
- 食欲や元気がない
- 精神的不安定
- 発熱
また、手術後はストレスや疲れで元気がなくなることがあります。
いつも以上に愛犬の様子に気を配るようにしましょう。
ストレスを軽減したり、疲労回復に効果が期待できるサプリメントを与えるのも良いかもしれません。
食事管理を徹底して肥満を予防
犬の去勢手術後は、ホルモンバランスが変化することで、基礎代謝が低下し、一方で食欲が増す傾向があります。
そのため、これまでと同じように食べさせていると太ってしまう可能性が高いでしょう。
体重を維持するためには、避妊・去勢後用や体重管理用の低カロリーなドッグフードに変更するのがおすすめです。
1日の給与量を守るのはもちろんですが、おやつの与え方にも注意しましょう。
おやつは1日に必要な摂取カロリーの10〜20%程度に抑え、その分食事を減らすようにします。
ドッグフードや種類や与え方に悩んだときは、早めに動物病院で相談しましょう。
さらに、肥満防止には適度な運動も大切です。
毎日の散歩のほかに、たまにはドッグランで思いっきり走らせてあげるのもおすすめです。
行動が改善しない場合もある
マウンティングやマーキング、そのた発情に伴う問題行動の改善を期待して犬の去勢手術を選択する飼い主さんも多いのではないでしょうか?
ただ、残念なことに行動が改善しない犬もいます。
行動が改善するかどうかは犬にもよりますし、手術をしてみないとわかりません。
手術をおこなう際はあまり期待しすぎないようにしたうえで「行動が改善するかも」くらいの気持ちでいるのが良いでしょう。
犬の去勢手術の費用は?
犬の去勢手術の費用は、動物病院や住んでいる地域、犬の大きさによって差が生じますが、目安は以下となります。
| 大きさ | 手術費用の目安 |
| 小型犬 | 20,000円〜 |
| 中型犬 | 25,000円〜 |
| 大型犬 | 30,000円〜 |
このほかに手術前検査で1万円ほどかかるのが一般的です。
そのほか、入院や投薬が必要かどうかなどによって金額は異なります。
まとめ
犬の去勢手術では、病気の予防や問題行動の改善、ストレスの軽減など大きなメリットがあると言えるでしょう。
また、望まない妊娠や発情中のメスに誘われて脱走するなどのリスクもなくなります。
その一方で、デメリットもあります。
手術中には麻酔のリスクがありますし、術後は太りやすくなるため、肥満に注意しなければいけません。
犬の去勢手術は一生にかかわることですから、家族ともよく話し合い、メリットやデメリットを含めて検討したうえで決めましょう。
迷ったときは、獣医師へ相談するのもおすすめです。
関連記事:犬の避妊手術の適切な時期は?知っておきたいメリットとデメリット
======================
この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
======================







コメント