犬の関節ケアが注目される理由
近年は高齢の犬が増えており、それに伴って関節のトラブルも増加傾向にあります。
さらに、関節のトラブルは若い成犬でもよく起きており、特に小型犬の膝蓋骨脱臼や、大型犬の股関節形成不全などが代表的な病気です。
最近では治療の補助や日常ケアとして、関節のサプリメントを取り入れる飼い主様も増えています。
この記事では、関節のサプリメントとしてよく用いられるグルコサミン・コンドロイチン・プロテオグリカンといった成分の違いやそのほかの代表的な関節サプリメントの成分、関節の病気、サプリメント以外の日常ケアのポイントなどを獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、関節のサプリメント選びの一助になれば幸いです。
グルコサミンの働きと特徴
グルコサミンは、関節軟骨の基礎的な成分であるグリコサミノグリカン(GAG)を構成する成分の1つです。
簡単に言うと、関節軟骨をつくるための材料となる成分です。
関節軟骨は、関節の動きをスムーズにする、クッションのように衝撃を吸収する、といった働きをしていますが、加齢や運動時の負荷によって減少してしまいます。
グルコサミンには、サプリメントとして関節軟骨の材料を補うことで、関節の健康をサポートする働きが期待されています。
グルコサミンは甲殻類の殻から抽出されることが一般的ですが、最近では、植物由来のグルコサミンが含まれた製品も発売されています。
両方とも副作用として、原材料である甲殻類や植物にアレルギー反応を起こすことがありますので、愛犬のアレルギーが心配な場合は原材料を確認してから使用することが重要です。
コンドロイチンの働きと特徴
コンドロイチンは、関節軟骨を構成する成分のひとつで、ムコ多糖の一種です。
関節軟骨の中で水分を引き寄せるように働き、関節軟骨の保水性や弾性を保つことで関節の動きを滑らかにする効果が報告されています。
また、コンドロイチンには軟骨の破壊を抑制する効果も期待されていて、さまざまな関節の病気に使用できると考えられています。
相乗的な効果が期待されることから、サプリメントではグルコサミンと併用することが一般的です。
コンドロイチンでは、魚(サメやサケ)や豚、鶏などの軟骨が原材料に用いられています。
副作用は比較的少なく安全性が高いと言われていますが、時におなかの調子を壊すことがあります。
また、グルコサミン同様、原材料へのアレルギー反応には注意が必要です。
プロテオグリカンの働きと特徴
プロテオグリカンも、関節軟骨を構成する成分のひとつです。
関節軟骨を構成する成分は、水を除く成分の約75%がⅡ型コラーゲン、15%がプロテオグリカンであるといわれています。
上記のグルコサミンやコンドロイチンはこれらの材料となる成分です。
プロテオグリカンの原材料としては、サメやサケの軟骨が用いられています。
グルコサミンやコンドロイチンと同様に、原材料によるアレルギーには注意が必要です。
プロテオグリカンの働きは、関節の健康をサポートするほかに、皮膚の健康をサポートすることも知られています。
また最近では、痛みを緩和する効果があるとする報告も出てきています。
他の成分との併用も可能で、グルコサミンやコンドロイチンと併用することで、より幅広いケアが可能です。
その他の関節サプリメントの成分
現在、犬の関節サプリメントで使用されている成分は、上記の他にさまざまなものがあります。
では、それらの成分はどのような点に違いがあるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1.MSM(メチルスルフォニルメタン)
MSMはイオウ化合物の1種で、関節の炎症や痛みを鎮める働きがあると言われています。
関節の炎症から痛みが起こるような病気に使用されています。
2.ASU(アボカド大豆不鹸化物)
ASUは、関節の炎症を軽減する、軟骨を保護するといった効果が知られています。
こちらも、関節の炎症から痛みが起こるような病気によく使用されています。
3.オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は抗炎症作用があるとされ、関節の痛みや炎症の緩和のほか、皮膚や被毛、脳、心臓、腎臓などの健康維持への効果が知られています。
関節のトラブル以外にも病気を抱えている犬には、こちらの方が幅広く健康をサポートしてくれるでしょう。
犬の関節サプリが使われる病気
ここまでは、各種サプリメント成分の効果や副作用について解説しました。
では、これらのサプリメントはどのような病気に使用すればよいのでしょうか?
犬においてよく見られる、関節サプリメントを使用する病気は以下のようなものが挙げられます。
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靭帯断裂
- 股関節形成不全
- 変形性関節症
- 免疫介在性多発性関節炎
- リウマチ様関節炎
中でも、膝蓋骨脱臼や変形性関節症は小型犬でも多くみられます。
特に変形性関節症は「軟骨の変性」が病気の中心であるので、軟骨を再生させ完治させるということが難しい病気です。
一度発症すると、軟骨へのさらなるダメージを防ぎ、痛みをコントロールすることが治療の中心になります。
関節のトラブルは、人と同様に犬の生活の質を大きく低下させる要因になります。
小さなサインを見過ごさず、お薬またはサプリメントなどによる治療を早めに行ってあげましょう。
犬の関節サプリを与えるときの注意点
1. 与える目的を明確にする
犬の関節サプリメントを、「なんとなく良さそうだから」という理由で与えるのは避けましょう。
サプリメントでは、目的によって選ぶべき成分が異なります。
例えば、膝蓋骨脱臼で今後の関節軟骨の摩耗をケアする目的であれば、グルコサミンやコンドロイチンなどが使用されます。
変形性関節症などで炎症から痛みが生じている場合は、MSMやASUといった成分を選ぶべきでしょう。
愛犬のコンディションに合わせて、サプリメント成分を選んであげましょう。
2.与えるタイミングを確認する
一部のサプリメント成分は、空腹時に与えることが好ましいとされていたり、ほかのサプリメント成分との併用ができなかったりします。
使用するサプリメントの用量・用法を必ず確認し、必要に応じてかかりつけの獣医師や販売・製造元に確認しましょう。
3.併用するサプリメントや薬との相互作用
薬を服用している犬にとっては、サプリメントの使用も慎重になる必要があります。
一部のサプリメント成分は、薬の吸収や代謝に影響を及ぼす可能性が知られています。
薬と相互作用がないか確認したうえで使用しましょう。
4.原材料や製造元を確認する
犬のサプリメントは、厳密な法規制がなされていないため、製品により品質にばらつきがあります。
製造元や原産国などを確認し、原材料に不要な香料や着色料、保存料が少ない製品を選ぶことがひとつのポイントです。
犬の関節サプリ以外の関節ケア
1.体重管理
体重過多は全身の関節への負荷となります。
まずは、適正な体重と1日の摂取カロリーを計算し、フードやおやつの量を見直しましょう。
適正体重を維持するだけで、症状が緩和するケースも少なくありません。
ダイエットフードや低カロリーのおやつを上手に使うとよいでしょう。
2.床環境の工夫
特にフローリングは滑りやすく、滑った際の関節への負担やケガへのリスクが高まります。
また、階段やベッドへの飛び乗り、飛び降りも同様です。
フローリングであればカーペットやマットを敷く、段差にはスロープを設置する、階段を上らせないなどの対策を行うことを推奨します。
3.運動
体重管理のためにも、適度な運動はとても重要です。
ただし、痛みがある状態での運動や激しすぎる運動(ボール遊び、ドッグランなど)は、かえって症状を悪化させるおそれがありますので注意が必要です。
目安としては、平地で15~30分程度の運動ですが、愛犬の状態を見ながら判断する必要があります。
迷ったときは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
まとめ
犬の関節サプリメントは、どの成分も比較的安全性が高く、関節の健康を維持するうえでとても有効な成分ばかりです。
しかし、それぞれの成分で効果や目的が異なりますので、愛犬の体調に合った成分を適切に選ぶことが大切です。
また、まれにアレルギーなどの副作用が出ることがあり、飲み薬や他のサプリメントとの飲み合わせにも注意が必要なので、獣医師と相談したうえで使うことを推奨します。
愛犬の年齢や体調に合わせて、無理のない範囲で取り入れていきましょう。
======================
この記事を書いたのは

獣医師:浅川雅清
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
======================







コメント