獣医師が解説 犬の歯周病とは?症状は?麻酔ができない場合は?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

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犬の歯周病とは?

犬において歯周病とは、歯肉が赤く腫れて炎症を起こす「歯肉炎」と、その進行により歯を支えている歯周組織が破壊される「歯周炎」という病態を総称した言葉です。

犬の年齢が上がるにつれて増加し、3歳の犬で75~85%で認められると報告される、非常に多い病気です。

重度になると、頬の皮膚に穴が開いて膿が出たり(根尖膿瘍)、顎の骨まで溶かされて下顎骨折が起こったりする、非常に怖い病気です。

進行する前のデンタルケアと、定期的な歯のチェックが重要な病気ですので、若い頃から意識して観察してあげましょう。

好発犬種としてミニチュアダックスフンド、トイプードル、イタリアングレーハウンドなどが挙げられます。

 

犬の歯周病の原因は?

犬の歯周病の原因は以下のようなものが挙げられます。

歯石

歯石は、蓄積した歯垢が石灰化し、石のように固まったものです。

犬もフードを食べると、必ず歯垢が沈着します。

その歯垢を、適切なデンタルケアで除去することができないままだと、約3日で歯石へと変化すると言われています。

これは、人間と比べて圧倒的に早いスピードです。

これが、こまめなデンタルケアが必要な一つの理由となっています。

歯石は、単に歯垢が石になったものと思いがちですが、その中に多くの「細菌」が含まれています。

ですので、その細菌の塊が歯肉の近くに残存することで、歯肉に炎症を起こし歯周炎となり、進行すると歯周炎となっていくのです。

歯の破折

歯が折れると、本来ツルツルである歯の表面がザラザラとなり、歯石・歯垢が沈着しやすくなります。

また、歯の中(歯髄)には神経や血管が通っており、そこから細菌が感染することで歯周病となる可能性もあります。

歯の破折の多くは、不適切なおやつや習慣が原因となっています。

よく、「馬の蹄」や「牛のアキレス」のような商品が発売されています。

飼い主様は、「固いものを噛むのはストレス発散で、歯にもいい」と思いこんで、良かれと思って与えている方が多くいます。

しかし、固すぎると結果、犬の奥歯(特に第四前臼歯)が破折してしまうというケースには非常に多く遭遇します。

その他、ケージや小石を噛ませたり、固いおもちゃを多く使用していたりなど、歯に悪い習慣が原因となり歯が破折します。

異物の残存

こちらは私自身の経験ではありますが、口臭がするとのことで相談を受けて診察を行ったところ、奥歯の隙間に金属の「バネ」が挟まって口臭の原因となっていました。

結果その子は、全身麻酔でバネの除去とその周囲の歯の抜歯を行いました。

バネに歯垢がたまり、そこから周囲の歯に歯周病を起こしていました。

このように、誤飲や不適切なものを噛ませるなどで、異物がきっかけで歯周病になるケースも存在します。

不正咬合

不正咬合とは、歯の嚙み合わせが正しくない状況を表します。

短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズー)など、犬種的にアンダーショットである子で多く認められます。

乳歯遺残

乳歯は、犬であれば1歳頃までにはすべて永久歯に置き換わります。

しかし、小型犬では比較的多く乳歯遺残を経験します。

去勢・避妊手術の際に抜いていれば問題ないのですが、去勢・避妊手術を行っていなかったり、抜歯せず放置していたりすると、歯周病の原因になります。

乳歯と永久歯の間の隙間に歯垢がたまりやすく、そこから歯石がたまり、歯周病になります。

 

犬の歯周病の症状は?

犬の歯周病の症状は以下のよう症状が挙げられます。

  • 口臭
  • 口や歯の汚れ
  • 食欲がない
  • 食べこぼす
  • 食べる時に痛そうにする
  • 歯肉が腫れる
  • 歯肉から出血する
  • 頬や下あごから膿が出る
  • しつこいくしゃみや鼻水、鼻血

歯石は細菌の塊なので、生臭いような不快なにおいがするため、口臭が目立つようになります。

また、歯石は茶色~黒色をしている為、飼い主様によっては「虫歯になった」と来院されるケースも経験しています。

歯周病になると固いものを噛むと痛みが生じることがあり、そこから食欲が落ちたり、食べこぼしたり、食べにくそうにするしぐさが認められることがあります。

さらに進行し重度になると、頬の皮下に膿が出たり、鼻腔に感染が貫通しくしゃみや鼻汁を出したり、下顎の骨を溶かして下顎骨折(病的骨折)を起こしたりします。

その他、症状は出なくても健康診断やトリミングの際に指摘され、気づくケースもあります。

関連記事:犬が口臭い原因は?病気の可能性はある?

 

犬の歯周病の診断に必要な検査は?

犬の歯周病があるかないか、に関しては、概ね視診のみで判断がつきます。

しかし、それだけではどこまで歯周病が進行しているのか、判断がつきません。

まず、犬の顔の全体を視診・触診します。

頬が腫れていないか、鼻汁や排膿が認められないか、食べ方は問題ないか、顎のリンパ節は腫れていないかなどを確認します。

次に、口の中を視診・触診します。

不正咬合が無いか、歯石がどれくらい沈着しているのか、歯肉の腫れや赤みはどうか、異物や乳歯はないか、しこりはないか、歯は折れていないかなどを確認します。

ここでブラックライトを使うと、歯垢・歯石の確認が容易となります。

一般的な動物病院ではここまでで治療方針を決めることもありますが、歯科用レントゲンで正確な診断をすることもあります。

意外と、目で見た歯石の量が少なく、歯肉炎が軽度でも、レントゲンを撮ると歯肉の中で炎症が進み歯周病になっているケースがあります。

また、歯周病の進行程度によっては抜歯が必要になる為、その判断を行うためにも、レントゲン検査を行う必要があります。

さらに、歯周病として治療が必要と判断された場合は、基本的に麻酔下での処置となる為、全身の状態を把握するために一般的な血液検査やレントゲン検査などの検査も必要となるでしょう。

 

犬の歯周病の治療と予後は?

歯周病そのものは、歯のトラブルである為、生命予後に直接的な影響を与える疾患ではありません。

しかし近年、歯周病に関する細菌が、全身的な病気を引き起こしている可能性が示唆されています。

特に、心臓病や肝疾患、腎疾患との関連や、敗血症のリスクの増加などが報告されています。

そのような意味では、犬の健康の為にも歯のケアというのは非常に重要です。

実際に歯周病と診断された場合は、その進行具合により治療が必要となってきます。

歯石が少量で、歯肉炎にまで至っていない場合は、治療というより自宅でのデンタルケアが中心となってきます。

ケア用品としては、歯ブラシが理想的とされています。

歯ブラシも人間用ではなく、犬用に小型化された歯ブラシを用いると良いでしょう。

その他、ガーゼタイプ、指サックタイプ、水に溶かす液状タイプ、フードに振りかける粉末タイプなど、様々な形状のデンタルケア用品が発売されています。

歯ブラシのトレーニングはもちろん重要ですが、ご自身で行えるケアにあったケア用品を選ぶことも重要です。

例えば、粉末タイプなどで食べてケアするサプリメントとしては、以下のようなものが使用されています。

  • グロビゲンPG
  • 小麦発酵抽出物(パントエア菌LPS)
  • アスコフィラムノドサム
  • ラクトフェリン
  • デルモピノール
  • 乳酸菌

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歯石が多く沈着し、歯肉炎が認められてくると、歯石除去(スケーリング)が必要になってきます。

スケーリングは基本的に全身麻酔下で行います。

最近、無麻酔でのスケーリングも多く見かけるようになりましたが、獣医療としては推奨されていません。

無麻酔でのスケーリングは、見えている部分の歯石しか除去できず、歯周ポケット内の歯石・歯垢は除去することが難しいです。

見た目はキレイになったように見えますが、歯周ポケット内での炎症は持続してしまい、最悪見逃しに繋がる可能性がありますので、注意が必要です。

全身麻酔をかけた後、スケーリング・ルートプレーニング・ポリッシング・キュレッタージなどの処置を行います。

さらに歯周病が重度になり、歯槽骨まで溶けて歯がぐらついている場合は、抜歯が適応になります。

しかし、老犬になり、または心臓病や腎臓病を患い、全身麻酔をかけるのが難しい状況にもよく遭遇します。

そのようなケースで、かつ歯に痛みを感じていたり、頬から排膿していたり、くしゃみが多く出ていたりする場合は、抗生物質やステロイドで一時的な治療を行うこともあります。

その他、最近ではインターフェロンを用いて歯肉の炎症を治療するようなお薬も使用できるようになっています。

 

犬の歯周病の治療費の目安は?

犬の歯周病の治療費は、歯周病の程度や動物病院により大きく異なります。

歯肉炎が軽度で、全身麻酔の上スケーリング、ポリッシングを行う場合、術前検査の費用を含め概ね5~6万円程度と思われます。

歯周炎を起こし、抜歯が必要である場合は、その金額からまたさらに抜歯の料金が追加されます。

もし、麻酔をかけずにお薬のみでの治療を行う場合、抗生物質やステロイドによる治療を行うと、1週間で概ね5000円~6000円程度と思われます。

 

まとめ

犬の歯周病は、日常的に非常に多く遭遇する病気です。

治療を行っても、日頃のデンタルケアができないないとすぐ再発してしまう病気でもあります。

デンタルケアやサプリメントなど、自宅で行えるケアが非常に重要ですので、取り入れられるケアから始めてみましょう。

参考資料
・悩ましい歯周病の対処法セミナー 戸田 巧 先生
・歯周病の病態・検査・治療セミナー 戸田 巧 先生

関連記事:3歳以上の猫の80%が歯周病ってホント?症状・治療・予防について

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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