獣医師が解説 犬の頻尿の原因は?ストレス?副作用?高齢では注意が必要!

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

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犬の頻尿とは?

犬において、正常な一日の尿量は、体重あたり約25~50mLほどと言われています。
また、尿の回数は年齢により少しばらつきがあり、子犬で1日に7~10回ほど、成犬では1日に3~5回ほど、高齢犬では1日に5~6回ほどと言われています。

その排尿の回数が、いつもより多くなっている状態を「頻尿(頻回尿)」と言います

犬において、尿に関する病気はよく発生します。
特に高齢である場合は注意が必要で、最近頻尿かな?と思った際には、是非一度受診しましょう。

ここでは、犬が頻尿になる主な病気について解説します。

 

犬の頻尿の症状とは?

上述の通り、排尿の回数が増加した状態を言いますが、頻尿と同時に別の症状が認められることもしばしばあります。

具体的には、

  • 排尿の姿勢を取るものの、少量しか尿が出ない
  • 排尿の姿勢を取るものの、全く尿が出ない
  • 一回の尿は大量に出るが、よく水を飲み、その分何度も排尿する
  • 尿に血が混じっている
  • 尿もれやおもらしをしてしまう
  • 尿が臭い
  • 頻尿とともに、元気がなく食欲がない、嘔吐や下痢もしている
  • 尿の色が薄い
  • トイレ以外の場所で排尿してしまう
  • トイレシーツがキラキラしている

などが挙げられます。

そのような、頻尿以外の症状が診断のカギになることもありますので、受診の際は詳細に様子を伝えるようにしましょう。

 

犬の頻尿の原因とは?

犬の頻尿の原因としては、以下のような病気が主な原因となることが多いです。

①細菌性膀胱炎

細菌性膀胱炎の原因菌は、主に大腸菌(Escherichia coli)であり、次いでブドウ球菌(特に、S. intermedius Group)、腸球菌(特に、Enterococcus faecalis)となっています。
これらの細菌が、陰部から上行性に感染を起こし、膀胱で炎症を起こしたものを「細菌性膀胱炎」と言います。
細菌性膀胱炎になると、膀胱で尿を貯めることに違和感が生じ、こまめに排尿したり、尿に血が混じったりします。

多くは尿検査を行うことで診断ができます。

尿道が短いメスでの発生が多く、健康な犬でも時折発症しますが、以下のような基礎疾患があるとより繰り返して発症しやすくなります。

  • 免疫抑制剤や抗癌剤の投与
  • 内分泌疾患(糖尿病、クッシング症候群など)
  • 尿石症
  • 前立腺炎
  • 膀胱の機能不全や膀胱憩室
  • 椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患
  • 尿道カテーテルの留置

関連記事:犬の膀胱炎はどのくらいで治る?原因はストレス?おすすめのフードはある?

②腎盂腎炎

多くは膀胱炎などの下部尿路疾患からさらに上行性に細菌が侵入し、腎臓で炎症を起こすと「腎盂腎炎」と呼び名が変わります。
この場合は、発熱を起こしたり、嘔吐などの急性腎不全の症状を示したりする可能性があります。

③膀胱結石

膀胱内に結石がある場合、その結石による物理的な刺激で膀胱に炎症が起きたり、結石に細菌が定着したりすることで、膀胱炎が起きやすくなります。

犬における膀胱結石の種類は、主に「リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石」や「シュウ酸カルシウム結石」であることがほとんどです。
ストルバイト結石は食事による治療が可能なケースがありますが、シュウ酸カルシウム結石の場合はほとんど手術による治療が中心となります。

特にオスの場合、小さな膀胱結石が尿道につまり、尿道閉塞になることがしばしばあります。膀胱炎の症状に似ているからといって、そのまま放置してしまうと命に関わることもありますので、注意が必要です。

④膀胱腫瘍

膀胱にできる腫瘍を一括りで「膀胱腫瘍」と言いますが、よく発生するのは「移行上皮癌」という悪性の腫瘍です。

膀胱の粘膜上皮から発生する腫瘍で、膀胱の出口である膀胱三角に発生しやすいとされています。尿道や前立腺に浸潤することも多く、尿が出せなくなることで、水腎症や排尿困難で体調が悪くなってしまうことが多いです。

腫瘍においては、持続的に炎症が起きてしまうため、膀胱炎に似た症状が出たり出なかったりを繰り返すことが多いです。

⑤慢性腎臓病

加齢や遺伝、腫瘍、薬剤などにより、腎臓がダメージを受けて、腎臓の機能が低下すると、よく水を飲んでよく排尿するようになります。
そのことから、一回の尿の量は多いが、一日の排尿回数が増えることで頻尿という症状が出てくることがあります。

関連記事:犬の慢性腎臓病の症状や余命は?どんな検査をすればいいの?

⑥内分泌疾患

犬においては、糖尿病や副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症で、慢性腎臓病と同様に、よく水を飲んでよく排尿するようになります。
そのことから、一回の尿の量は多いが、一日の排尿回数が増えることで頻尿という症状が出てくることがあります。

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犬の糖尿病は余命が短い?原因や症状を徹底解説
犬の甲状腺機能低下症とは?症状や薬、治療の費用は?

⑦薬剤の副作用

上述の通り、免疫抑制剤や抗がん剤などを服用している場合、膀胱での細菌感染がおこりやすくなってしまい、副作用として膀胱炎が起きる可能性があります。

その他、「プレドニゾロン」などのステロイド剤を服用している場合も、よく水を飲んでよく排尿する副作用が出る可能性があります。

関連記事:犬のステロイドの副作用は?いつまで続く?症状や対策

また、アレルギー性皮膚炎の治療としてよく使用する「オクラシチニブ」にも、副作用として膀胱炎が起きるケースがあります。

心臓が悪く、利尿剤を服用している犬も、尿量が増え頻尿のように感じることもあるでしょう。

あとは、抗がん剤の一種で「シクロホスファミド」という抗がん剤は、特有な「無菌性出血性膀胱炎」という副作用があります。シクロホスファミドの代謝産物が慢性的な膀胱炎を起こすことが知られています。

 

犬の頻尿の治療とは?

治療に関しては、頻尿の原因により大きく異なります。

ここでは、「細菌性膀胱炎・腎盂腎炎」、「膀胱結石」、「膀胱腫瘍」の治療法について解説します。

①細菌性膀胱炎・腎盂腎炎

細菌性膀胱炎、腎盂腎炎ともに主な原因は細菌感染となりますので、感受性のある抗菌薬(アモキシシリン、エンロフロキサシンなど)による治療が中心となります。

通常、2週間ほどの治療を行い、尿検査や血液検査を行い完治したか確認します。

もし、完治しにくかったり、繰り返したりするようであれば、内分泌疾患をはじめとした上述した基礎疾患が隠れていないか、精査が必要です。

②膀胱結石

リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石に関しては、尿pHがアルカリに傾く、尿中のマグネシウムの量が多い、細菌感染があるなどが結石になる素因と言われています。
ですので、尿pHを適正(6.0~6.5)にする、飲水量を増やす、細菌感染の治療を行うことで、食事療法などで内科的に治療が可能なケースがあります。

しかし、あまりに結石の大きさが大きかったり、数が多かったりする場合は、膀胱切開の手術による摘出が必要な場合もあります。

シュウ酸カルシウム結石の場合は、尿pHが酸性に傾く、尿中のシュウ酸やカルシウムの量が多い、尿の比重が高いなどが結石になる素因と言われています。
食生活や元々の体質的な側面、血液中のカルシウムの量が多くなる疾患(上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍、慢性腎臓病など)などがその原因となることがあります。
シュウ酸カルシウム結石は食餌療法などで溶解することは基本的にはできません。手術による摘出が治療となります。

③膀胱腫瘍

膀胱にできる「移行上皮癌」は悪性の腫瘍で、治療の中心は手術となります。
しかし、膀胱三角という手術がしにくい部分での発生が多く、また発見時には転移が起きているなどして、積極的に手術ができないケースが多々あります。

その場合は、抗がん剤による内科治療での緩和療法が主に選択されます。
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)単体や、抗がん剤単体、またはその二つを併用することで治療を行っていきます。
NSAIDsであればピロキシカム、デロキシカム、フィロコキシブなどが用いられます。
抗がん剤としてはカルボプラチン、ミトキサントロン、ビンブラスチンなどが用いられます。
近年、クロラムブシルによるメトロノミック療法や、トセラニブやラパチニブなどの分子標的薬の有用性も報告し始められています。
放射線治療は一般的ではありませんが、治療効果があった報告もあるようです。

もし、腫瘍が尿道を閉塞してしまった場合は、尿道ステント術、バルーン拡張術、膀胱腹壁瘻など、対症療法としての手術が適応となるケースもあります。

 

犬の頻尿の予防法とは?

予防方法としては、どの病気も日頃から飲水をしっかりしてもらうことが重要でしょう。
あまり日頃水を飲まないわんちゃんに関しては、ウエットフードを使ったり、ササミのゆで汁などを薄めて飲水を促したりすると良いでしょう。

また、結石や腫瘍に関して、検査をしないと見つけられないことも多いので、定期的な健診が重要です。

実際に、膀胱炎や膀胱結石になってしまった場合は、「ウラジロガラシエキス末」のようなサプリメントでケアしてあげることもおすすめです。
尿量の増加が期待され、膀胱内での細菌の繁殖や結石の形成に対し、健康維持をサポートしてくれることが期待されます。

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犬の頻尿の治療費は?

細菌性膀胱炎に関しては、2週間ほど抗生剤による治療を行った場合は、検査費用も含め1万円前後と思われます。

ストルバイト結石に関しては、食事療法で治療が行えるようであれば、使用するフードの値段により変動します。

シュウ酸カルシウム結石含め、手術による治療を行う場合は、概ね10万円前後となります。

膀胱腫瘍であれば、どのような治療を行うかにより大きく変動します。
NSAIDs単体による治療であれば、月に1~2万円程度と思われます。
抗がん剤単体による治療であれば、使用する抗がん剤により大きく変動しますが、月に2~4万円程度と思われます。

 

まとめ

犬において、上述の疾患はよく遭遇します。

症状が似通っているので、膀胱炎だからといって様子を見ると、重要な疾患を見過ごす原因となります。

定期的な検査を行うとともに、繰り返す場合はサプリメントやフードを上手に使用し、わんちゃんの健康をサポートしてあげましょう。

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参考
・雑誌Vet-i No.18
・雑誌Veterinary Oncology No.17

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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