副鼻腔炎という病名は聞いたことがあるでしょうか?
その名の通り鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起きる病気です。
猫では稀ではありませんが、放って置くと慢性化し完治が難しい病気でもあるため、早期発見早期治療が大切になります。
そこで今回の記事では、猫の副鼻腔炎について症状や原因・治療法・予防法などを詳しく解説していきます。
副鼻腔炎とは?

副鼻腔炎は、鼻の周りの空洞、副鼻腔と呼ばれる場所に何らかの原因で炎症が起きる病気です。
猫の場合、慢性鼻炎が副鼻腔にまで進行することが多く、主に鼻詰まりなど、人の鼻炎と同じような症状が出るのが特徴です。
慢性化すると完治は難しく付き合っていく病気となってしまうため、早期発見早期治療が大切な病気でもあります。
副鼻腔炎になりやすい猫種・特徴

短頭種の猫
短頭種に分類される猫種では、鼻腔が他の猫に比べて低いため、副鼻腔炎になりやすい傾向があります。
短頭種で知られる猫種として代表的なのは以下の2つの猫種が挙げられます。
- ペルシャ(チンチラ)
- エキゾチックショートヘア
その他にも日本猫や雑種でも、他の猫に比べると鼻が低い子も注意して見ておきたい猫種ではありますね。
スコティッシュフォールド
大人気の猫種、スコティッシュフォールドも鼻腔が狭いため副鼻腔炎になりやすいとされています。スコティッシュフォールドは性格もよく、可愛いフォルムがとても人気ですが、実は遺伝性疾患などの病気になるリスクが高い猫種でもあるため、健康管理には特に気を使いたいですね。
副鼻腔炎の原因
ウイルス・細菌・真菌の感染
副鼻腔炎の原因としては一番に感染が考えられます。
中でも、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスを原因とした感染症が多く見られます。
上記のウイルス感染症は、飛沫感染や接触感染でうつることがあるため、多頭飼育の家庭では特に注意したいですね。
細菌や真菌なども原因として挙げられるので、完全室内飼育を徹底して、猫同士の接触なども控えるようにしましょう。
関連記事:猫のヘルペスウイルス感染症って?多頭飼いでは要注意?寿命や人にうつるのか解説
異物混入
鼻の中に異物が入った時も副鼻腔炎の原因となるケースがあります。
例えば、ほこりや植物の花粉・毛などが鼻腔に入った際に起こることが多いです。
異物が長期間鼻腔で停滞していると、それにより二次疾患が起きることがあるため、異物が原因での副鼻腔炎には特に注意したいですね。
歯周病
歯周病が原因で副鼻腔炎を発症するケースもあります。
一見、関係ないように感じますが、歯周病が進行してしまうと、口と鼻腔を隔てる骨に穴が開いてしまい、口腔内の細菌が副鼻腔に侵入して副鼻腔炎を引き起こすことがあります。
猫は犬に比べて歯石がつきにくいといわれていますが、歯肉炎を発症する猫はかなり多く珍しくありません。
そのため、歯周病も侮ってはいけない病気の一つなのです。
日頃からデンタルケアを習慣化できるといいですね。
関連記事:3歳以上の猫の80%が歯周病ってホント?症状・治療・予防について
腫瘍
鼻腔内の腫瘍でも副鼻腔炎を発症する原因となります。
鼻腔内腫瘍は、悪性率が非常に高く鼻血などが症状として見られます。
筆者の愛猫も、鼻腔内の悪性腫瘍と闘っていました。
副鼻腔炎も併発しており、鼻腔内の治療はかなり困難を極めました。
鼻が通らず食欲もゼロに近いため、猫にとっても苦しいと思います。
なるべくQOLの向上に務めてあげたいですね。
関連記事:猫の鼻腔内腫瘍の最善の治療とは?必要な検査や費用とは?
副鼻腔炎の症状

鼻水
まず多い症状が鼻水です。
鼻水は鼻腔内の炎症がある際に最も見られる異常であり、鼻詰まりは食欲不振の原因にも繋がります。
猫は普段鼻水を垂らすことはないため、鼻が出ていることが確認できたら、早めに獣医師に相談しましょう。
感染症のリスクも考え、多頭飼育の場合は、鼻水症状がある猫と隔離しておくことをおすすめします。
くしゃみ
次に、くしゃみもよく見られます。
副鼻腔炎だけでなくアレルギー症状や猫風邪の症状でもくしゃみや鼻水は出るため、一概には言えませんが、どれにしても早めに治療に取り掛かることが大切です。
くしゃみをよくしているなと感じたら、受診してみることを考えましょう。
関連記事:猫がくしゃみをするのは花粉症?アレルギー?花粉症の症状や対策解説
食欲不振
副鼻腔炎では、食欲不振も見られます。
鼻水や炎症などで鼻腔が狭くなり鼻詰まりが起きることで、ニオイを感じなくなり食欲がわかないことが原因と言われています。
この場合の食欲不振は、鰹節やトッピングでも効果が見られないため、非常に厄介になります。
さらに、猫が長期間絶食状態になると「肝リピドーシス」という病気になって命にも関わるため、工夫して食事を取らすこともとても大切です。
開口呼吸
鼻詰まりが原因で、開口呼吸という口を開けて呼吸する状態になります。
人も、鼻詰まりの時は寝る時も口を開けて呼吸しますよね。
しかし、犬ではよく見られる開口呼吸(パンティング)ですが、猫が開口呼吸をしている時は緊急性が高いことが多いです。
迷うことなく動物病院へ駆け込みましょう。
副鼻腔炎の治療法

内服薬の投与
基本的に、副鼻腔炎の治療は内服薬の投与がメインとなることが多いです。
原因となっている細菌感染やウイルス感染に対しての抗菌薬・抗生物質を投与します。
また、抗炎症剤も同時に処方されるケースが多いです。
内服薬だけでなく点鼻薬の処方もされる場合があり、薬での治療は1週間〜3週間ほど続くと想定されます。
また、ネブライザーという気化した薬を吸入する処置も効果がある場合があります。
薬を飲ませることが困難な愛猫にはネブライザーに通うという方法も選択肢になりますので、愛猫の性格とストレスとを考慮して獣医師に相談してくださいね。
外科手術
薬や吸入治療でも効果が見込めない場合や、腫瘍が原因で副鼻腔炎になってしまっている際は、外科手術も検討されます。
慢性化して蓄膿状態になると完治は難しいため、手術が第1選択肢となることもあります。
手技としては、内視鏡を用いて副鼻腔内に蓄膿している膿を除去したり、炎症を起こしている粘膜を除去したりするのが一般的な手術方法です。
また、再発を防ぐため、副鼻腔内の出口を広げる処置を施すこともあります。
鼻腔内洗浄
副鼻腔内に蓄膿している膿を洗い流し、症状を改善するために行われる処置のひとつです。
人でいう鼻うがいのようなものですね。
洗浄後は、詰まりが改善され、症状が緩和されることが多いです。
ただ、根本的な手術ではないため再発するリスクは高く、注意深く管理していく必要があります。
また、鼻うがいと簡単にいっても、猫では鼻にチューブを挿入して洗浄を行うため、麻酔をかける必要があります。
麻酔のリスクも考慮して決断したいですね。
副鼻腔炎は完治する?
基本的に、早期治療で完治する病気にはなります。
しかし、副鼻腔炎は慢性化しやすく完治が難しくなるケースが圧倒的に多いです。
内科療法でうまく行かない場合は、外科手術の検討になるかと思いますが、外科手術が成功して術後管理がうまく行けば慢性化した副鼻腔炎も完治することもあります。
愛猫に鼻水などの鼻症状が見られた際は、早めに受診することをおすすめします。
副鼻腔炎の予防法

免疫力を高める
副鼻腔炎の原因は主に感染症だとお話ししました。
そのため、日頃から免疫力を高めておき感染症に打ち勝つことが予防策と言えます。
毎日の食事管理と環境の整備、適度な運動などをきちんと行いましょう。
しっかりと食事を取り、体力をつけておくことが重要です。
お部屋の環境も、適度に掃除をしてきれいな環境を維持しておくことも感染症対策として効果的です。
また、多頭飼育の家庭であれば症状が出た猫と早めに隔離をして猫同士で感染を防ぐことも大事な予防策といえます。
ワクチン接種
ワクチン接種を行うことも大切です。
副鼻腔炎を直接的に予防するワクチンは今のところ存在しないのですが、副鼻腔炎の原因となるヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎)を予防するにはワクチン接種が有効です。
猫は3種〜5種混合ワクチンの接種が推奨されており、ヘルペスウイルスは3種混合ワクチンでも入っているため、負担をかけたくない飼い主さんは3種を選択するとよいでしょう。
ワクチンの種類に関しては、お住いの地域や生活環境によって推奨が異なるため、獣医師と相談の上検討しましょう。
関連記事:猫の予防接種とは?種類・頻度・副反応・予防できる6つの感染症について
サプリメントの使用
免疫力を高めるためにサプリメントを使用するのもおすすめです。
核酸(DNAやRNA)配合のサプリメントも免疫力をサポートしてくれるので、健康維持に役立ちます。
サプリメントはお薬と違って即効性がないため、継続して飲用することが大切です。
薬剤よりも優しい健康管理法なので、猫に優しい予防策と言えるでしょう。
副鼻腔炎の治療にかかる費用の目安
副鼻腔炎の治療にかかる費用は、重症度や治療内容によって大きく異なります。
早期治療で軽症の場合は、内科療法のみで約3,000円〜8,000円前後が一度の通院でかかる目安となります。
軽症の場合は1〜2回の通院で終わるケースがありますが、症状が重い場合は1ヶ月単位で見ていく必要があります。
また、外科手術や鼻腔内洗浄を行うと約40,000円〜100,000円が相場となっており、入院日数や手術内容によってさらに加算されます。
また、動物病院によって設定されている値段が異なるため、経済的な不安も獣医師にしっかりと確認して相談しましょう。
まとめ
猫の副鼻腔炎は感染症や異物混入・腫瘍・歯周病が原因でなる猫が多い病気です。
ペルシャやエキゾシックショートヘアなどの短頭種の猫種やスコティッシュフォールドがかかりやすいとされており、症状としては鼻水やくしゃみを始め、食欲不振や開口呼吸が主に見られます。
治療は基本的に薬剤による内科療法が第一選択ですが、腫瘍による副鼻腔炎や内科療法で症状が緩和しない、慢性化した重度な副鼻腔炎の場合は外科手術や鼻腔内洗浄を行うことがあります。
予防法としては免疫力を保つことやワクチン接種が効果的で、しっかりと食事を取り生活環境を綺麗に保っておくことが大切です。
また、副鼻腔炎は早期治療で完治する病気ですが、慢性化すると完治が難しい病気ですので、愛猫の異常に気づいたら早めに受診することをおすすめします。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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