痙攣とは?
痙攣とは医学用語において、「中枢神経の障害により、不随意かつ発作性に筋肉が収縮する現象」と定義されています。
つまり、自分の意志とは関係なく、突然筋肉が動いてしまう状況を指します。
犬を含め、人間でも認められる症状です。
似た言葉に「発作」という言葉がありますが、こちらは「物事が急に起こること」を示し、必ずしも痙攣のみに使われる言葉ではありません。
「痙攣発作」の他、「心臓発作」や「喘息発作」、「てんかん発作」など、様々な使い方があります。
また、痙攣の種類として、以下のようなものが知られています。
- 全身性痙攣:全身の筋肉が痙攣する
- 局所性痙攣:体の一部分のみが痙攣する
- 間代性痙攣:伸筋と屈筋が交互に痙攣する
- 強直性痙攣:筋肉の収縮が持続的に一定時間続く痙攣
人間において、痙攣の原因はさまざまで、てんかん・脳腫瘍・頭部外傷・電解質異常・低血糖などの頻度が高いとされています。
犬の痙攣とは?

犬においても、子犬から成犬、老犬まで様々な年齢で痙攣が認められます。
人間と同様に、全身が痙攣する場合もあれば、部分的に痙攣を起こすこともあります。
また、犬には病的な痙攣と見間違えてしまうような、まるで寝てる時に夢を見ているかのような「ピクピク」という動きや、高齢で多い原因不明の「特発性振戦」による震えも存在します。
しかし、病的な痙攣が持続すると、その後死亡してしまうような命に関わるケースもあります。
今回は、病的な痙攣とはどのような症状で、どのような対処法が必要になるのか解説します。
犬の痙攣の原因とは?
犬の痙攣の原因は多様で、以下のようなものが知られています。
関連記事:犬のてんかん発作とは?その原因や診断方法、治療の費用を解説
特発性てんかん
てんかんの定義とは“24時間以上の間隔をあけて、少なくとも2回以上の(非誘発性の)てんかん発作が認められる脳の病気”と言われています。
犬においては比較的よく起こるてんかんです。
また、脳以外の異常から起こる発作を「誘発性(反応性)の発作」と言い、てんかん発作と区別されています。
てんかんは、「特発性てんかん」と「構造的てんかん」に分けられます。
特発性てんかんは、主に遺伝が関連していると予測されている、原因がはっきりしないてんかんを指します。
遺伝的な異常は、ラゴット・ロマニョーロの「LGI2遺伝子」、ベルジアン・シェパードの「ADAM23遺伝子」、ローデシアン・リッジバッグの「DIRAS1遺伝子」といった遺伝子にて同定されているようです。
発症する年齢は概ね2~3歳で、多くは6か月~6歳までにてんかん発作を起こすと言われています。
MRI検査や脳脊髄液検査で脳に明らかな異常は見られないが、脳波検査に異常があることが多いとされています。
構造的てんかんは、以下に示す脳神経の病気により起こるてんかんを指します。
脳神経の病気
犬において痙攣を起こす脳神経の病気は、脳腫瘍、脳炎、脳の奇形(水頭症など)、脳血管障害(血栓など)などが挙げられます。
てんかんのうち「構造的てんかん」に含まれ、MRIや脳脊髄液検査にて診断がつけられることが多い病気です。
特に高齢の犬では腫瘍が原因のことが多く、高齢になって初めて起きた場合はMRIによる検査が推奨されます。
脳に発生する各種の腫瘍を総じて「脳腫瘍」と呼び、主な腫瘍の種類としては「髄膜腫」という、脳の「クモ膜」という部分の細胞から発生するものや、「グリオーマ」という、脳の神経細胞そのものから発生する腫瘍などが挙げられます。
関連記事:犬の脳腫瘍はどんな病気?余命や治療は?
脳以外の異常から起こる発作を「誘発性(反応性)の発作」と言い、以下のような原因が挙げられます。
中毒
犬が食べてはいけないものを食べ、中毒を起こした時にも痙攣は起こります。
有名なものだと、チョコレート(テオブロミンによる交感神経の興奮)、ガム(キシリトールによる低血糖)、殺虫剤(有機リン中毒による)、トリカブト(アコニチンによる)、人薬などが原因となります。
低血糖
特に生後間もない子犬に多く、何かしらの原因で栄養が摂取できない場合、短時間で低血糖から痙攣を起こすことがあります。
その他、膵臓の腫瘍であるインスリノーマや、糖尿病の治療として用いるインスリンの過剰投与などが低血糖の原因となります。
肝性脳症
肝性脳症とは、アンモニアを分解する臓器である肝臓の機能が低下し、脳に影響を及ぼし痙攣を起こします。
特に肝臓の病気がある犬で時折認められます。
尿毒症
尿毒症とは、体内の老廃物を尿に排出する役割を持つ「腎臓」という臓器の機能が低下し、毒素が体内に蓄積することで全身に影響を及ぼす状況を指します。
脳に影響を及ぼすと痙攣を起こす原因となります。
犬においては、急性腎障害、慢性腎臓病(腎不全)、尿路閉塞などの際に起こることがあります。
頭部外傷
交通事故や高所からの落下などで頭部に外傷を受けた場合、脳にダメージが生じて痙攣を引き起こすことがあります。
犬の痙攣に伴う症状とは?
痙攣に伴って、以下のような症状が出ている場合は、病的な痙攣の可能性が高まります。
- 嘔吐や下痢をしている
- 元気が無い
- ぐったりしている
- 食欲がない
- 発熱している
- 歩けない/立てない
- 誤食してしまった
- 粘膜の色が黄色い(黄疸)
- 意識がない
- 目が見えていない
- 物にぶつかる
- 瞳孔が開いている
- 発作を起こしている
特にてんかん発作に関しては、特徴的なパターンが知られています。
発作前期
発作の前兆として、落ち着きが無くなったり、息が荒くなったりする様子が認められます。
発作
多くは「強直間代性」と言われる、四肢を突っ張りバタバタと動かすような痙攣や遊泳運動などが認められます。
その際に口から泡やヨダレを出す、尿や便を失禁するといったことも多々認められます。
発作後期
発作が終了し、ウロウロと歩き回る、ぼーっとするなどの行動の異常が認められます。
その他、部分発作(焦点発作)であれば、後ろ足や片足だけが痙攣発作を起こしたり、フライバイトのように宙を見上げる異常な行動を示したりします。
犬の痙攣の対処法は?

犬が痙攣を起こした時は、まずは安全な場所に移動させましょう。
その後発作を起こす場合は、物にぶつかってケガをする可能性がある為、家具や壁などから距離を取ります。
飼い主自身もケガをする恐れがある為、不用意に犬に近づかないことも大切です。
次に、痙攣や発作がどれくらい続いているか時間を確認することが重要です。
特に、発作が5~10分以上続いている場合は「発作重責」と呼ばれる状況になっている可能性が高い為、早急に動物病院にて治療を行う必要があります。
もし手元に予め処方されていた、痙攣や発作時に使用する坐薬や点鼻薬があれば使用することも検討しましょう。
一度痙攣や発作が収まったものの、間隔を空けて1日に何回も痙攣や発作が起きる場合に関しては「群発発作」である可能性があり、こちらも早急に受診するべき状況です。
もし可能であれば、痙攣や発作の様子を動画に収めると、今後の診断や治療に重要な手掛かりとなります。
また、無理に水や食べ物を与えてしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
犬の痙攣の診断に必要な検査は?
犬の痙攣の原因を特定するには、上述の病気を検査にて鑑別する必要があります。
しかしまずは、痙攣がどのような痙攣で、どのような状況で起きたかを明確にすることが、不必要な検査を回避するために重要です。
すなわち、犬種や年齢、体のどこの痙攣か、どれくらいの時間の長さの痙攣か、痙攣の頻度はどれくらいか、痙攣より前の出来事は何か、痙攣以外の症状はあるか、現在治療中の病気はあるか、といった情報である程度の病気の予測をすることが出来ます。
一般的な動物病院にはMRIの設備が無いことが殆どである為、まずは全身の身体検査と一般血液検査などを行い、脳以外からの痙攣が起きる原因が無いかを検査します。
その上で異常が無い場合は、MRI検査を行うかどうか検討します。
痙攣や発作が起きた回数が1回だけであれば、一般的にはすぐMRI検査を行う、という流れにはならず、2回目の痙攣や発作が起きた際にMRI検査を行うことが多いです。
犬の痙攣の治療は?
犬の痙攣の治療は、その原因により様々です。
痙攣が脳以外から起きている場合は、それぞれの病気に合った治療を行います。
特発性てんかんから痙攣を起こしている場合は、概ね6か月に2回以上のてんかん発作が起きている場合は治療対象となります。
その他、群発発作や発作重責も治療対象となり、抗てんかん薬であるゾニサミドやフェノバルビタール、臭化カリウム、レベチラセタムなどを使用します。
脳腫瘍から痙攣を起こしている場合は抗てんかん薬の他、ステロイド剤や抗がん剤(ロムスチン、ヒドロキシウレアなど)、外科手術、放射線治療などを併用して積極的な治療を行おうこともあります。
脳の病気において使用されるサプリメントとしては、
- 中鎖脂肪酸(MCT)
- カンナビジオール
- ω3脂肪酸
- ピクノジェノール(フランス海岸松樹皮抽出物質)
などが挙げられます。
まとめ
犬の痙攣は日常よく遭遇する症状です。
様子を見てよい痙攣もあれば、すぐさま受診すべき痙攣まで様々です。
特に高齢になればなるほど要注意の症状ですので、日頃から対処法を覚えておくと、もしもの時に役立つと思います。
参考資料
・日本救急医学会 医学用語集
・犬と猫のてんかん読本 第3版
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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