犬の白内障とは?
白内障とは、「水晶体が何かしらの原因により混濁した状態」と定義づけられています。
水晶体とは、ラグビーボール状をしていて、網膜にピントを合わせるレンズの役割を担う器官です。
65%が水分、35%がタンパク質でできており、血管が通っておらず無色透明の器官です。
水晶体への栄養は、眼内を流れる「眼房水」というものから供給されています。
同じく水晶体が白濁する病気として「核硬化症」というものがありますが、こちらは白内障には含めません。
核硬化症は主に加齢性変化で、5歳を過ぎたころから、水晶体中央が青白く見えるようになります。
水晶体上皮細胞が生涯にわたって作り続ける線維細胞の蓄積と、不溶性タンパク質の増加などが原因とされる水晶体核の老化現象と言われています。
左右対称に生じるのが通常で、基本的に視覚に影響を及ぼさない為、治療対象にはならないとされています。
対して白内障は、程度により視覚に影響を及ぼす為、治療を行っていきます。
日頃診察を行う上で、両者を混同している飼い主様が多くいらっしゃいますので、白内障と核硬化症の違いは覚えておくとよいでしょう。
なりやすい犬種としては、ゴールデン・レトリーバー、ノーフォーク・テリア、パグ、パピオン、トイ・プードル、ボストン・テリア、ボーダー・コリー、ポメラニアン、ミニチュア・シュナウザー、ラブラドール・レトリーバーなどが挙げられます。
犬の白内障は、以下のように段階的な分類がされています。
| 初発白内障 | 白濁が水晶体の10%未満 |
| 未熟白内障 | 白濁が水晶体の10%~99% |
| 成熟白内障 | 白濁が水晶体の100% |
| 過熟白内障 (モルガニー白内障) |
成熟白内障の進行により水晶体の吸収が始まり、透明性の回復や前嚢の皺、皮質内結晶用物質を認める。 |
白内障を放置すると、水晶体の内容物が目の中へ漏れ出し、水晶体起因性ぶどう膜炎や緑内障などを引き起こし、治療が出来ず失明となることもありますので、注意が必要です。
犬の白内障の原因は?
犬の白内障の原因は、多くは加齢性及び遺伝性と言われています。
その他、他の目の疾患(ぶどう膜炎、緑内障、腫瘍、進行性網膜萎縮など)に併発する、外傷、薬剤、放射線、糖尿病などで水晶体のタンパク質が変性して生じると言われています。
特に糖尿病における白内障は進行スピードが早いと言われていて、様々な原理が報告されていますが、浸透圧により水晶体が膨張する、糖アルコールが蓄積して水晶体が白濁する、酸化反応が関係している、などが理由とされています。
その他、若齢で発症した白内障は進行スピードが早いと言われていますので、注意が必要です。
犬の白内障の症状は?
犬の白内障は、多くは「目が白い」と飼い主様が気づいて発見されることが多いです。
白内障そのものは痛みを伴わない為、目をしばしばしたり充血したりすることは少ないです。
ですが、成熟白内障であれば、視覚を喪失し物にぶつかる、おもちゃに気づかないなどの目が見えない症状が出ます。
また、さらに進行し、水晶体起因性ぶどう膜炎などを起こすと、目に痛みがでてしばしばする、白目が赤い、緑内障であれば目が大きくなったなどの症状がでることもあります。
犬の白内障に必要な検査は?
犬の白内障に必要な検査は、肉眼で白内障が白濁しているか確認することから始まります。
まず、眼内全域を確認するために、瞳孔を開く散瞳剤の点眼を行います。
次に、ペンライトやスリットランプを用いて、水晶体の白濁を確認します。
核硬化症ではない白濁が確認された場合は、白内障と診断します。
白内障の診断の他、上述した併発疾患が無いかの確認も重要です。
緑内障、ぶどう膜炎の判断の為に「眼圧測定」、目に外傷がないか確認する「フルオレセイン染色」、進行性網膜萎縮、網膜剥離など網膜の病気がないか確認する「眼底検査」、水晶体の厚さの測定や眼内腫瘍の有無などを判断するために「超音波検査」、視覚の有無を判断するために「網膜電位図」など、眼科の検査だけでも追加の検査が必要になります。
その他、糖尿病などの基礎疾患が無いか判断するために、一般的な血液検査から尿検査などの全身の検査も必要になる場合もあります。
犬の白内障の治療と予後は?
犬の白内障は、無治療だと高い確率で、点眼のみだと約60%で上述した併発疾患をおこすと言われているものの、寿命には大きく影響しないと思われます。
犬の白内障には、目薬による治療と、手術による治療があります。
ピレノキシン点眼
キノイド物質がα-クリスタリンのSH基と付加物を作り、白内障が発症するという理論に基づいて開発された薬剤で、キノイド物質とα-クリスタリンの結合を阻害するという作用機序です。
点眼薬として、動物用医薬品として「ライトクリーン」という商品が発売されています。
動物病院により人薬を使うケースもあると思います。
効果としては、「白内障が治る」というよりは、「これ以上の進行を遅らせる」目的で使用します。
多くの動物病院でメジャーに使われている目薬だと思います。
初期の白内障である場合は、この点眼薬からスタートすることが多いと思われます。
グルタチオン点眼
グルタチオンが水晶体可溶性タンパク質のSH基がS-S結合となり、不溶性タンパクになるのを防ぐ作用機序となります。
また、基本的には点眼薬での治療が中心となりますが、内服として以下のような治療も紹介されています。
唾液腺ホルモン投与
白内障がカルシウムイオンの増加によるという理論に基づいて開発された薬剤で、カルシウムイオンの濃度調節により予防できると言われています。
チオプロニン
水晶体タンパクの凝集化と不溶化を抑制することで透明性を維持すると言われています。
実際に、水晶体の白濁を取り除くとなると、全身麻酔下での外科手術が適応になります。
手術の目的は、現在の視覚を維持、または回復し、上述した併発疾患のリスクを下げることにあります。
ですので、続発症(ぶどう膜炎、緑内障、網膜剥離、水晶体脱臼など)で不可逆的な視覚喪失となった場合、手術は不適応になります。
また、手術をしても10~20%で失明してしまうこともあるようです。
手術の術式としては、超音波乳化吸引術(水晶体の除去)+人工レンズ挿入術(水晶体の代わりのレンスを挿入)を行うことが多いと思われます。
その他、よく使用されるサプリメントとしては、
- フランス海岸松樹皮抽出物(ピクノジェノール)
- プロアントシアニジン
- クルクノミド
- アスタキサンチン
- ビタミンE
- アントシアニン
- ルテイン
などが挙げられます。
目薬と併用することも可能ですので、愛犬の目が心配な飼い主様におすすめです。
犬の白内障の治療費の目安は?
犬の白内障の治療費は、選択する治療方法や動物病院により大きく異なります。
白内障の診断を行うにあたって、一般的な血液検査、簡易的な眼科検査であれば概ね2~3万円程度と思われます。
初期の白内障で、ピレノキシンの点眼のみでの治療を行う場合は、月5000円前後と思われます。
もし手術を行う場合は、専門的な眼科検査が必要になる可能性があります。
手術代のみであれば、片眼のみで約30~40万円、両眼であれば約50~70万円前後と思われます。
また、数日の入院も必要で、目を掻かないようにエリザベスカラーを長期に装着する必要があります。
まとめ
犬の白内障は、どのわんちゃんにも発生する可能性があり、また日常的によく診察する疾患です。
「年だから仕方ないよね」と放置されている白内障のわんちゃんや、ケアしてあげたくても目薬ができないわんちゃんは多くいると思います。
サプリメントであれば、おやつやフードに混ぜてケアすることができるので、とてもオススメです。
また、白内障は進行する前に治療を行ってあげることが重要ですので、「白くなってきたな?」と気づいた際は動物病院を受診しましょう。進行した白内障でも、放置は禁物です。
参考資料
・物産アニマルヘルス株式会社 疾病解説シリーズ|犬の白内障
・千寿製薬株式会社主催 オンラインセミナー第4弾
・目の治療マニュアル
関連記事:犬の緑内障はどんな病気?原因や初期症状、予防法など
======================
この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
======================







コメント