犬の関節のトラブルは気づきにくい?
犬は痛みを隠す習性があるため、関節の違和感があっても我慢して歩くことがあります。
また、初めて犬を飼う飼い主様も、もともと愛犬の歩き方が異常であったとしても「犬はこの歩き方が普通なんだ」と思い込んでしまうことも多いです。
さらに、関節のトラブルの初期は、階段を嫌がる、散歩の途中で止まる、寝起きがゆっくりになるなどといった、気づきにくい小さな変化であることも少なくありません。
私自身、「高齢だから仕方ない」と見過ごされて、すでに病気が進行してから受診されるケースも多く経験しています。
このように、さまざまな要因で飼い主様が愛犬の関節のトラブルに気づかないことも多く、症状がはっきり出てから動物病院を受診するケースが少なくありません。
また、関節の靭帯や軟骨は一度ダメージを受けると再生することは少なく、治療も大がかりになる場合が多いです。
だからこそ、若くて元気な時期から関節のケアを始めることで、将来的な愛犬の関節の健康をサポートしてあげることが大切です。
愛犬の関節を守るための5つの習慣
では、どのようにしたら愛犬の関節のトラブルを早期に気づき、ケアをしてあげられるのでしょうか?
実は、日常生活で小さなことに気を付けるだけでも、愛犬の関節をケアしてあげることができます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. 体重管理で関節への負担を減らす
愛犬の体重が増えると、全身の関節にかかる負担が増加します。
フードの量やおやつの与え方を見直し、日々の体重管理を習慣にしましょう。
2. 毎日の散歩で運動習慣をつける
犬の関節は動かすことで健康が維持されます。
もちろん過度な運動は必要ありませんが、毎日の散歩は関節の可動域や筋肉の維持、体重管理にもつながります。
小型犬の散歩の目安は平地で15~30分程度の運動ですが、愛犬の状態を見ながら判断してあげましょう。
3. 食事やサプリメントで必要な栄養を補給する
関節に異常がない犬にも、すでに関節のトラブルを抱えている犬にもおすすめしたいのが、関節の健康をサポートする成分を日常的に取り入れることです。
最近では、フードだけで補いにくいそれらの成分をサプリメントとして与える飼い主様が増えています。
その他にも、低カロリーでかつ関節をケアする成分が含まれたドライフードも発売されており、食事から関節のケアを行うことも可能です。
4. 定期的な運動器検診を受ける
関節のトラブルというと、高齢の犬で起こるイメージがあると思います。
しかし実際は、若い成犬でもよく起きており、特に小型犬の膝蓋骨脱臼や、大型犬の股関節形成不全などが代表的な病気です。
これらの病気は、成長期の子犬でも、症状がない犬でも罹患していることが多々あります。
特に症状がない場合は、飼い主様もその病気に気づいていない、というケースも多いです。
定期的に動物病院を受診し、視診や触診、レントゲン検査などで関節の状態を確認してもらう「運動器検診」を行うと、より愛犬の関節の状態を知ることができます。
さらに、愛犬の関節の状態から、予防的なケアについてもアドバイスしてもらうとよいでしょう。
5. 床の環境を工夫する
特にフローリングは滑りやすく、滑った際の関節への負担やケガへのリスクが高まります。
また、階段やベッドへの飛び乗り、飛び降りも同様です。
フローリングであればカーペットやマットを敷く、段差にはスロープを設置する、階段を上らせないなどの対策をしてあげましょう。
関節のサプリメントを活用するメリット
では、関節のサプリメントを与えることにどのようなメリットがあるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. 不足しやすい栄養を安定して摂取できる
ドライフードだけでは十分に摂取しづらい成分も、サプリメントなら十分量を継続して与えることができます。
2. さまざまなサプリメント成分を摂取できる
サプリメントの成分は、概ね安全性が高く他の成分と併用することが可能です。
さまざまな成分を摂取することで、多角度的に関節のケアをすることができます。
犬の関節サプリメントによく使われる成分とその働き
ここまでは、関節のケア方法とサプリメントのメリットについて解説しました。
では、実際にどのようなサプリメント成分が使用されているのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. グルコサミン
グルコサミンは、関節軟骨の基礎的な成分であるグリコサミノグリカン(GAG)を構成する成分の1つです。
簡単に言うと、関節軟骨をつくるための材料となる成分です。
関節軟骨は、関節の動きをスムーズにする、クッションのように衝撃を吸収する、といった働きをしていますが、加齢や運動時の負荷によって減少してしまいます。
グルコサミンには、サプリメントとして関節軟骨の材料を補うことで、関節の健康をサポートする働きが期待されています。
グルコサミンは甲殻類の殻から抽出されることが一般的ですが、最近では、植物由来のグルコサミンが含まれた製品も発売されています。
両方とも副作用として、原材料である甲殻類や植物にアレルギー反応を起こすことがありますので、愛犬のアレルギーが心配な場合は原材料を確認してから使用することが重要です。
2. コンドロイチン
コンドロイチンは、関節軟骨を構成する成分のひとつで、ムコ多糖の一種です。
関節軟骨の中で水分を引き寄せるように働き、関節軟骨の保水性や弾性を保つことで関節の動きを滑らかにする効果が報告されています。
また、コンドロイチンには軟骨の破壊を抑制する効果も期待されていて、さまざまな関節の病気に使用できると考えられています。
相乗的な効果が期待されることから、サプリメントではグルコサミンと併用することが一般的です。
コンドロイチンでは、魚(サメやサケ)や豚、鶏などの軟骨が原材料に用いられています。
副作用は比較的少なく安全性が高いと言われていますが、時におなかの調子を壊すことがあります。
また、グルコサミン同様、原材料へのアレルギー反応には注意が必要です。
3. プロテオグリカン
プロテオグリカンも、関節軟骨を構成する成分のひとつです。
関節軟骨を構成する成分は、水を除く成分の約75%がⅡ型コラーゲン、15%がプロテオグリカンであるといわれています。
上記のグルコサミンやコンドロイチンはこれらの材料となる成分です。
プロテオグリカンの原材料としては、サメやサケの軟骨が用いられています。
グルコサミンやコンドロイチンと同様に、原材料によるアレルギーには注意が必要です。
プロテオグリカンの働きは、関節の健康をサポートするほかに、皮膚の健康をサポートすることも知られています。
また最近では、痛みを緩和する効果があるとする報告も出てきています。
他の成分との併用も可能で、グルコサミンやコンドロイチンと併用することで、より幅広いケアが可能です。
4. MSM(メチルスルフォニルメタン)
MSMはイオウ化合物の1種で、関節の炎症や痛みを鎮める働きがあると言われています。
関節の炎症から痛みが起こるような病気に使用されています。
5. ASU(アボカド大豆不鹸化物)
ASUは、関節の炎症を軽減する、軟骨を保護するといった効果が知られています。
こちらも、関節の炎症から痛みが起こるような病気によく使用されています。
6. オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は抗炎症作用があるとされ、関節の痛みや炎症の緩和のほか、皮膚や被毛、脳、心臓、腎臓などの健康維持への効果が知られています。
関節のトラブル以外にも病気がある犬でも、幅広く健康をサポートしてくれるでしょう。
元々脂由来の成分であることから、お腹の調子が悪くなり嘔吐や下痢が起こるといった副作用が時々見られます。
犬の関節サプリメントが使われる病気
ここまでは、各種サプリメント成分の効果や副作用について解説しました。
では、これらのサプリメントはどのような病気に使用すればよいのでしょうか?
犬においてよく見られる、関節サプリメントを使用する病気は以下のようなものが挙げられます。
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靭帯断裂
- 股関節形成不全
- 変形性関節症
- 免疫介在性多発性関節炎
- リウマチ様関節炎
中でも、膝蓋骨脱臼や変形性関節症は小型犬でも多くみられます。
特に変形性関節症は「軟骨の変性」が病気の中心であるので、軟骨を再生させ完治させるということが難しい病気です。
一度発症すると、軟骨へのさらなるダメージを防ぎ、痛みをコントロールすることが治療の中心になります。
関節のトラブルは、人と同様に犬の生活の質を大きく低下させる要因になります。
小さなサインを見過ごさず、お薬またはサプリメントなどによる治療を早めに行ってあげましょう。
まとめ
犬の関節のトラブルは、症状が出てからの改善よりも「予防」のほうが愛犬への負担が少なく、効果も出やすいです。
まずは愛犬の関節の状態を確認するために運動器検診を受診し、どのような対策が必要か判断してもらいましょう。
犬の関節サプリメントは、どの成分も比較的安全性が高く、関節の健康を維持するうえでとても有効な成分ばかりです。
また、まれにアレルギーなどの副作用が出ることがあり、飲み薬や他のサプリメントとの飲み合わせにも注意が必要な場合もありますので、獣医師と相談したうえで与えることを推奨します。
もちろんサプリメントだけに頼るのではなく、体重管理や食事の見直し、適度な散歩といった日頃からのケアも重要です。
これらを組み合わせることで、愛犬の関節の健康をより長くサポートしてあげましょう。
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この記事を書いたのは

獣医師:浅川雅清
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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