獣医師が解説 犬の白血病とは?症状や治療、余命は?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
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白血病とは?

白血病とは、骨髄由来の細胞(白血球、赤血球、リンパ球、血小板)が腫瘍化し、骨髄で増殖する悪性の腫瘍です。

白血病は、腫瘍細胞の由来により「骨髄性」と「リンパ性」に分けられており、また腫瘍細胞の分化状態により「急性(未熟な分化段階で腫瘍化)」と「慢性(成熟した分化段階で腫瘍化)」に分けることで病気の名前が決まっています。

似た病名で「リンパ腫」というものがありますが、こちらは骨髄以外の組織・臓器でリンパ球が腫瘍化した場合を指し、リンパ性白血病と区別されています。

関連記事:犬のリンパ腫とは?余命や費用、抗がん剤の副作用は?

 

犬の白血病とは?

犬の白血病の発生頻度は、リンパ腫と比べかなり少ないとされています。

白血病は、大きく以下の4つに分けられています。

  • 急性骨髄性白血病(AML)
  • 急性リンパ芽性白血病(ALL)
  • 慢性骨髄性白血病(CML)
  • 慢性リンパ球性白血病(CLL)

 

急性骨髄性白血病は、犬での発症年齢は7~8歳と言われており、腫瘍化する細胞の形態により以下のようにさらに細分類されています。

  • 急性未分化白血病(AUL)
  • 微分化型骨髄性白血病(M0)
  • 低分化型骨髄芽球性白血病(M1)
  • 分化型骨髄芽球性白血病(M2)
  • 前骨髄性白血病(M3)
  • 骨髄単球性白血病(M4)
  • 単球性白血病(M5)
  • 赤白血病(M6)
  • 赤血病(M6-Er)
  • 巨核芽球性白血病(M7)

 

急性リンパ球性白血病は、細胞の表面にリンパ球マーカーを発現しています。

T細胞型とB細胞型に分類され、犬ではB細胞型が多いとされています。

 

慢性骨髄性白血病は、主に好中球が増加するパターンが多いとされています。

単球が増加するケースは「慢性単球性白血病(CMOL)」、好中球も単球も増加するケースは「慢性骨髄単球性白血病(CMML)」と呼ばれますが、どちらもまれな疾患と言われています。

 

慢性リンパ球性白血病も同様にT細胞型とB細胞型に分類されます。

慢性リンパ球性白血病はジャーマンシェパードやゴールデンレトリバーが好発犬種と報告されていますが、B細胞型では小型犬で好発するとも報告されています。

平均10~11歳で発症することが多いとされていますが、イングリッシュ・ブルドッグでは比較的若い年齢(平均6歳)で発症すると報告されています。

 

犬の白血病の原因は?

犬の白血病において、その具体的な原因は明らかになっていません。

発がん物質や放射線などによる遺伝子へのダメージや、家系などの遺伝的な素因、腫瘍に対する免疫力の低下など、様々な原因が推測されます。

ヒトの慢性骨髄性白血病は、9番染色体と22番染色体の転座により、Philadelphia染色体が形成されたときに生じるBCR-ABL遺伝子が原因と言われています。

犬の慢性骨髄性白血病でも、9番染色体と26番染色体の転座によりRaleigh染色体が形成されBCR-ABL遺伝子が生じる症例が報告されているそうです。

 

犬の白血病の症状は?

犬の白血病の症状はその他の病気と似通っていており、特有の症状はあまり示しません。

元気が無い、食欲がない、発熱、嘔吐、下痢などの症状から、リンパ節の腫脹、貧血があれば粘膜の色が白くなる、血小板が少なくなれば点状出血があるなどの症状が認められることがあります。

また、慢性の場合であれば、目立った症状が無く健康診断で見つかるケースもあります。

 

犬の白血病の診断に必要な検査は?

犬の白血病の診断は、まずは血液検査から開始することが多いです。

血液中にどの細胞が多いのか、減っているのかを分析します。

血液中に腫瘍細胞が出現している場合は、血液塗抹にて細胞の形態を確認することで、白血病かどうかの手がかりをつかむことも可能です。

もし、リンパ節の腫脹がある場合は、リンパ節の細胞診も行います。

これは、似た病気であるリンパ腫との判別にも必要な検査になります。

 

血液検査で白血病の疑いがある場合は、次は骨髄検査を行います。

白血病の大前提として、骨髄での腫瘍細胞の増殖を確認する必要があるので、必ず行われる検査です。

骨髄で、実際に腫瘍細胞がどれくらい増殖しているか、何の細胞が増殖しているかを確認することで、白血病なのか、白血病であればどのタイプの白血病なのかを診断します。

 

骨髄内で、赤芽球系が50%未満で、かつ芽球比率が30%を超すと急性白血病と診断されます。

また、赤芽球系が50%を超すと赤白血病(M6)となります。

 

急性白血病のなかで、骨髄性なのかリンパ性なのかを判断するには、それぞれの細胞の特徴を捉える必要があります。

「ペルオキシダーゼ染色」と呼ばれる、骨髄球系を染色する染色方法を行い、染まった芽球が3%未満であればリンパ性、3%以上であれば骨髄性と分類します。

その他、スダンブラックB、非特異的エステラーゼ染色などの染色方法や、遺伝子検査によるリンパ球マーカーの検出などを行うこともあります。

 

犬の白血病の治療と予後は?

犬の白血病の治療と予後は、白血病の分類により大きく異なります。

急性骨髄性白血病(AML)

あまり有効な治療がないのが現状ですが、抗がん剤による治療が試みられることが多いです。

抗がん剤はドキソルビシンやシクロホスファミド、ビンクリスチン、シトシンアラビノシド、プレドニゾロン(ステロイド)などが用いられますが、効果が無く余命は短いケースが多いようです。

その他、貧血や血小板減少があれば、輸血による対症療法が、好中球減少があれば感染予防に抗菌薬が使用されます。

表1 抗がん剤プロトコルの1例

 

第1週

ドキソルビシン 単回 静脈内投与
シトシンアラビノシド 単回 静脈内投与
プレドニゾロン 1日1回 経口投与
第2週 副作用の確認のための身体検査、血液検査
第3週 効果判定(継続できれば最大6サイクル継続)

余命に関して、生存期間中央値は治療を行っても0.5~2か月程度、積極的な治療を行わず輸血や抗菌薬のみの治療では1~2週間程度と報告されています。

急性リンパ芽性白血病(ALL)

一般的に、急性骨髄性白血病よりは抗がん剤に反応すると言われており、こちらも主に抗がん剤による治療が試みられることが多いです。

貧血や血小板減少、好中球減少が認められることが多い為、輸血や抗菌薬も使用されます。

COPプロトコル(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)での奏効率は約29%、生存期間中央値は4か月程度と報告されています。

表2 抗がん剤プロトコル(COP)の1例

 

第1週

ビンクリスチン 単回 静脈内投与
シクロホスファミド 単回 経口(静脈内)投与
プレドニゾロン 1日1回 経口投与
第2週 ビンクリスチン 単回 静脈内投与
プレドニゾロン 1日1回 経口投与
第3週 ビンクリスチン 単回 静脈内投与
プレドニゾロン 1日1回 経口投与
 

第4週

ビンクリスチン 単回 静脈内投与
シクロホスファミド 単回 経口(静脈内)投与
プレドニゾロン 2日に1回 経口投与
第5週 プレドニゾロン 2日に1回 経口投与
第6週 プレドニゾロン 2日に1回 経口投与
 

第7週

ビンクリスチン 単回 静脈内投与
シクロホスファミド 単回 経口(静脈内)投与
プレドニゾロン 2日に1回 経口投与
第8週 プレドニゾロン 2日に1回 経口投与
第9週 プレドニゾロン 2日に1回 経口投与

 

慢性骨髄性白血病(CML)

こちらは治療のタイミングが明確にされておらず、症状が出ない場合は定期検査を行い経過観察となることも多いとされています。

臓器やリンパ節の腫大、貧血や血小板減少、血球数の増加など、活動性の病態に変化した際に治療がスタートされます。

稀な疾患であるため余命について多くわかっていませんが、1年以上生存できるケースもあれば、早期に急性転化し亡くなってしまうケースもあるようです。

慢性リンパ球性白血病(CLL)

こちらも症状が出ない場合は定期検査を行い経過観察となることも多いとされています。

臓器やリンパ節の腫大、貧血や血小板減少、リンパ球数の増加などが認められたら抗がん剤による治療がスタートされます。

抗がん剤は主にクロラムブシルやプレドニゾロンが用いられます。

表3 抗がん剤プロトコルの1例

クロラムブシル 1~2日に1回 経口投与
プレドニゾロン 1~2日に1回 経口投与
※7~21ごとに、症状や副作用、血液検査を見ながら調節

一般に進行が遅い病気である為、診断後1年以上治療なしで過ごせることが多いようです。

また、細胞の種類により余命にも違いがあり、生存期間中央値はB細胞型の場合は480日程、T細胞型は930日程と報告されています。

 

もちろん抗がん剤には副作用もある為、必ずしも抗がん剤治療が適応にならないケースもあると思われます。
その場合は、ステロイド単体による治療や、サプリメントでの体調のサポートを行うことも選択肢だと思われます。
サプリメントとしては、腫瘍には「タヒボエキス」などがオススメです。

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犬の白血病の治療費の目安は?

犬の白血病の治療費は、その病期や行う治療、病院により大きく異なります。

診断にあたり、一般的な血液検査、細胞診、骨髄検査を行った場合、概ね5~6万円程かと思われます。

白血病と診断がつき、抗がん剤治療を行う場合は、プロトコルにより異なりますが概ね月6~10万円程かと思われます。

ステロイド単体での治療の場合は、月5000円~7000円程度と思われます。

 

まとめ

犬の白血病は比較的珍しい病気です。

急性の場合特に、治療を行っても余命が短いケースが多いとされています。

しっかりと診断し、かかりつけの先生と相談の上、無理のない治療を選択していくことが大事だと思います。

参考資料
・獣医腫瘍学テキスト 第二版
・Oncology No.31

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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