犬にお風呂は必要か?
わんちゃんにも、人と同様に、スキンケアが必要です。
皮膚というのは、全体重の12%を占める最大の臓器で、乾燥や紫外線、微生物、化学物質、寄生虫などから身を守る役割を果たしています。
その役割を適切に果たすためには、スキンケアがとても重要と言われています。
ただし、人でいう「お風呂=入浴」に関しては、必ずしも必要ではなく、どちらかというとシャワーでのシャンプーが中心となります。
現在、わんちゃんにおいて皮膚の病気はとても多く発生しています。
その背景に、不適切なスキンケアやアレルギー体質などの原因によく遭遇します。
ですので、正しい知識を持ったスキンケアがとても重要です。
ここでは、わんちゃんにとっての適切なスキンケアを解説していきます。
健康な犬のお風呂のペースとは?

健康なわんちゃんのシャンプーの頻度は、基本的に月に1回が目安とされています。
時折、毎日お風呂に入れています、というお話をお伺いしますが、入れすぎることも皮膚トラブルに繋がりますし、全く入れないということも皮膚トラブルに繋がります。
あとは、皮膚のコンディションを見ながら、1頭1頭シャンプーの間隔を決めていきます。
例えば、皮膚の感染症がある子であれば週に2回行ったり、皮膚が乾燥していたり脂っこくなっている子であれば週1回から2週に1回行ったりします。
また、季節によっても頻度が変わります。それは、温度・湿度の影響で皮膚が乾きやすかったり汗をかきやすかったりするからです。
夏は汗を流すために、冬は保湿をするために、適切なシャンプー剤を選び、適切な頻度を決めていく必要があります。
お風呂に必要なグッズ、最適な温度とは?
使用するお湯の温度は、皮膚のバリア機能の観点から、微温湯(35~37℃程度)がよいとされています。
人間の感覚だと、40~42℃程度に設定しがちですが、ぬるま湯程度を意識しましょう。
シャンプーに必要なものは以下になります。
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- シャンプー剤
- バスタオル
- ドライヤー
- ブラシやコーム
- 洗面器
- スポンジや泡立てネット
こちらは最低限用意しておきましょう。
また、皮膚の状態によっては、入浴やクレンジングが必要になる場合があります。
その際は、バスタブやクレンジング剤、保湿剤なども必要になると思われます。
シャンプー剤を塗る際は、直接皮膚に塗るのではなく、一度スポンジや泡立てネットで泡立ててから塗布するとよいでしょう。
その後、十分にすすいだ後、バスタオルでしっかり吸水して、熱くないドライヤーで乾かしてあげましょう。
その際、ただ乾かすのではなく、ブラッシングを行いながら乾かすことで、きれいにかつスピーディに乾かすことができます。
お風呂に入れすぎるとどうなるのか?
シャンプーの後は、人と同様にどうしても皮膚が乾燥してしまいます。
わんちゃんも同様で、シャンプー後に皮膚のうるおいが戻るまでは数日時間を要します。
そのような状態で繰り返し短期間でシャンプーをしてしまうと、皮膚が乾燥することによりバリア機能が低下してしまい、皮膚トラブルに繋がります。
皮膚の状態を正確に把握して、適切なシャンプーの頻度を決めていきましょう。
皮膚病の子のお風呂はどうするのか?
皮膚に病気があるわんちゃんのシャンプーは、適切な診断の元、理論的にケアを考えていく必要があります。
今回は、よく遭遇する「アトピー性皮膚炎」、「脂漏症」、「マラセチア皮膚炎」、「膿皮症」、「脱毛症」について解説します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、環境中のアレルゲン(ハウスダストマイト、植物など)が引き金となり皮膚炎が生じます。
まずはそのアレルゲンを除去するという意味で、シャンプーによる洗浄は有用です。
その際、推奨されるシャンプー剤は、刺激性の低いアミノ酸系界面活性剤をベースとした保湿力の高いシャンプー剤になります。
もし、シャンプーのみでのケアでは足りない場合は、シャンプー前に入浴(バスタブにお湯を張って行う)を併用することも有用です。炭酸泉や食塩泉、保湿浴の他、マイクロバブル浴などが挙げられます。
もし、ブドウ球菌やマラセチアが増殖している場合は、ケースにより抗菌成分が含まれたシャンプーを使用することもあります。
シャンプー後は保湿を行うことが重要です。
上述の通り、シャンプー後は皮膚が乾燥する上、アトピー性皮膚炎では角質のセラミド量が減少している為、より乾燥しやすいとされています。
セラミドやコレステロールエステル、遊離脂肪酸などの保湿剤を積極的に使用しましょう。
もちろん、シャンプー後以外にも、こまめに保湿することが重要です。
関連記事:犬のアレルギー検査はやるべき?意味ない?何歳からできるの?
脂漏症
脂漏症とは、皮膚における皮脂のバランスが崩れている状態を指します。
それが原因で、表皮のターンオーバーが短縮し多量のフケを生じたり、皮膚がベタベタしてしまったりします。
高温多湿の夏に悪化しがちで、犬種的になりやすかったり、ホルモンの病気や食生活でなりやすかったりすると言われています。
また、その脂を好んでマラセチアの増殖が認められることがしばしばあります。
まずは、皮脂汚れやフケ、マラセチアを除去する目的で、シャンプーを行います。
皮脂やフケを効率的に除去するためには、高級アルコール系界面活性剤配合のシャンプーが推奨されますが、アトピー性皮膚炎を併発している場合は、アミノ酸系界面活性剤配合のシャンプーから始めることもあります。
その他、硫黄、乳酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸なども効果的な成分です。
また、過酸化ベンゾイル、二硫化セレンは強力な脱脂作用を持ちますが、皮膚への刺激が強くなる為、部分的な使用に留めた方がいいとされています。
マラセチア皮膚炎
マラセチアは、皮膚の表層に常在する酵母様の真菌です。主に皮脂を利用して生活をしています。
そのマラセチアによる皮膚障害やアレルギー反応で起きてしまう皮膚炎を「マラセチア皮膚炎」と呼びます。
まずは、原因となるマラセチアを除去しつつ、皮脂やフケを管理するためにクレンジング剤、入浴(重曹泉、硫黄泉など)、シャンプーが有用です。
皮脂汚れをしっかり除去するためには高級アルコール系界面活性剤、角質溶解剤、脱脂剤などを含んだシャンプーを用いると良いとされています。
しかし、アトピー性皮膚炎の併発が疑われる症例では、アミノ酸系界面活性剤および保湿剤配合シャンプーから始めた方がいいとされています。
その他、マラセチアへの抗菌作用が期待できる物質には、クロルヘキシジン、ミコナゾールなどが挙げられます。
それらを配合したシャンプー剤を使用するのも効果が期待できるとされています。
シャンプーや入浴による洗浄の頻度は、週に2回から開始し、良好に管理できた場合は、5~7日に1回程度に頻度を下げて管理を行います。
膿皮症
皮膚の表層に常在するブドウ球菌が原因となる皮膚炎を「膿皮症」と言います。
その背景に、多汗症やアトピー性皮膚炎などが存在することがあるので、その原因に合ったスキンケアを行うことが重要です。
ブドウ球菌に対して効果が証明されている消毒成分はクロルヘキシジンですので、それが配合されたシャンプーを使用することも可能です。
脱毛症
脱毛症には様々な種類があり、パターン脱毛や淡色被毛脱毛症、季節性脱毛症などが挙げられます。
どの脱毛症に関しても、基本は毛に栄養や刺激を与えて育毛を促すこと、皮膚バリア機能を補填することが目的になります。
まず、入浴は血流改善を促す効果があるため、毛への栄養供給が期待できます。特に炭酸泉は血流改善効果が高い入浴法です。35~38℃程度の微温湯で10~15分ほどの入浴を検討します。
シャンプーに関しては、毛を失った状態では、皮膚バリア機能が低下していることが予測されますので、できるだけ刺激の少ないアミノ酸系界面活性剤や保湿剤を配合した製剤から使用するのが良いでしょう。
保湿に関しては、血流改善効果を期待できるヘパリン類似物質が有用です。そのほか、細胞間脂質成分、多価アルコール、油性成分などを組み合わせて保湿を行っていきましょう。
皮膚病の子はお風呂だけで改善するのか?
今回は、よく遭遇する皮膚病のシャンプーについて解説しましたが、もちろんそれだけで完璧に症状が管理できるケースは多くはありません。
お薬による治療や、サプリメントでの内側からの皮膚のケアにより改善することも多くあります。
去勢・避妊手術後のお風呂はいつからか?
手術後のシャンプーに関しては、まずはかかりつけの先生に相談しましょう。
去勢・避妊手術ほどの術創であれば、概ね抜糸後1週間ほどでシャンプーを行うことが可能でしょう。
しかし、手術の種類や術創の大きさ、状態により、さらに時間が必要なケースもありますので、確認が必要です。
まとめ
人と同様に、わんちゃんも正しいスキンケアが必要です。
やり方によっては、より皮膚のコンディションを悪化させてしまうケースもあります。
特に、皮膚に異常があるわんちゃんだと、入念にケアを選ぶ必要があります。
迷ったら一度、獣医師と相談してみましょう。
参考
・アジア動物スキンケア検定公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド
・犬のスキンケアパーフェクトガイド
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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