猫の高血圧はあまり話題になりませんが、実はかなり身近な健康問題なのです。
猫も人間と同じく高血圧になる可能性があります。
しかも、一説によれば高齢の猫の20%が高血圧とも言われているほどですから、飼い主さんにとっても無視はできませんよね。
また、猫に多い慢性腎臓病が高血圧の原因としてあげられていて、腎臓を患っている猫の多くが高血圧だとも言われています。
今回は、そんな猫の高血圧について原因となる病気や注意したい臓器障害、治療法、予防法などについて詳しく解説していきます。
猫の高血圧とは?
高血圧とは血圧が高い状態のことで、その状態が慢性的に持続し目や脳、心臓といったさまざまな臓器に影響をおよぼす状態を「高血圧症」といいます。
ACVIMのガイドラインによると、猫の場合は、収縮期血圧が160mmHg以上で高血圧とされ、正常から重度まで以下のように分類されています。
| 血圧の分類 | 収縮期の血圧 | 臓器障害のリスク |
| 正常 | 140mmHg以下 | 最小 |
| 前高血圧 | 140〜159mmHg | 中程度 |
| 高血圧 | 160〜179mmHg | 重度 |
| 重度高血圧 | 180mmHg以上 | 深刻 |
160mmHg以上になると健康にも影響をおよぼす可能性が高くなるため、治療が必要となります。
また140mmHg以上の場合は、今後さらに高くなるか定期的に確認する必要もあるでしょう。
ただし猫は、緊張やストレス、怒りなどの感情の変化で血圧が高くなることがあるため、数値が持続的なものなのか一時的なものなのかを見極めなくてはなりません。
猫の高血圧の原因
猫の高血圧は、原因が特定できない特発性と基礎疾患が関係する二次性に分類できます。
猫の高血圧の80%はなんらかの病気が引き鉄になって高血圧になる二次性だと言われており、おもに以下の病気が影響していることが知られています。
- 慢性腎臓病
- 甲状腺機能亢進症
- 原発性高アルドステロン症
- 副腎皮質機能亢進症
そのほか副腎ホルモン剤、造血ホルモン、非ステロイド系消炎剤などを服用している場合にも高血圧となる可能性があります。
また、年齢を重ねるにつれて血圧が高くなるとの報告もあるようです。
なお、人間の場合は肥満や塩分の摂取過多、生活習慣病などが高血圧の原因としてあげられますが、猫においては関連性が認められていません。
猫の高血圧を引き起こす病気
猫の高血圧の原因には、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症などの特定の病気が影響していることがわかりましたね。
では、これらの病気がどのように高血圧を引き起こすのでしょうか?その仕組みについて紹介します。
慢性腎臓病
猫の宿命とも言える慢性腎臓病。
腎機能が少しずつ低下していく進行性の病気です。
腎臓には、おしっこをろ過するはたらきのほか、体内の水分量を調節して血圧をコントロールする役割もあります。
そのため慢性腎臓病になり機能が低下すると血圧が上昇してしまうのです。
しかも、血圧の上昇によって腎臓の組織が破壊され、そのために腎機能が低下してさらに血圧が上昇するという悪循環におちいります。
関連記事:高齢の猫は腎不全(腎臓病)に注意!ステージごとの症状・治療法・食事について
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて、代謝が活発になる病気です。
高齢の猫に多く見られます。
代謝が活発になることで食欲が増し、活動的になることから、一見すると元気になったように感じられるかもしれません。
そのせいで病気の発見が遅れやすくなり、気づかないうちに高血圧になっていることも多いのです。
この状態を放置すると、さまざまな臓器の機能が低下し機能不全におちいり命にかかわります。
関連記事:猫の甲状腺機能亢進症は治らない?余命は?特徴的な症状と治療法
原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症とは、腎臓の横にある副腎でつくられる、副腎皮質ホルモンの一種であるアルドステロンが過剰に分泌されることで引き起こされる病気です。
おもな症状には、全身性の高血圧があります。
アルドステロンには、ナトリウムを保持しカリウムの排出を促すはたらきがあるため、原発性アルドステロン症になると体内にナトリウムが溜まり、高血圧を引き起こすと言われています。
猫の高血圧の症状
猫の高血圧には特有の症状はないとする意見もあります。
その一方で、症状が進行すると、臓器の障害によりさまざま症状があらわれる場合があります。
ここでは高血圧が引き起こす臓器障害の症状を高血圧のおもな症状として紹介します。
また、あわせて障害を受ける臓器とその症状についても見ていきましょう。
高血圧のおもな症状
高血圧になると、眼、腎臓、脳、心臓が障害を受けます。
この状態を標的臓器障害といいます。
とくに細い静脈が多くある目の網膜や、体中に血液を送り出す心臓は影響を受けやすく、網膜剥離、失明、頻脈といった症状が起こる場合があります。
また脳に障害が起こると神経症状があらわれます。
以下は、高血圧のおもな症状です。
- 目が赤くなっている
- 目が見えていない
- 元気がない
- 食欲がない
- 痙攣発作を起こした
- 心臓の鼓動が速い
- 首が傾いている(斜頚)
ただし高血圧はある程度進行するまでは目立った症状があらわれないことが多いようです。
飼い主さんが異常に気づくきっかけとしては、突然の眼底出血や失明があげられます。
愛猫の些細な変化を見逃さず、少しでも気になる様子が見られたときには獣医師に相談するようにしましょう。
高血圧の影響を受ける臓器
猫が高血圧になると「目、腎臓、脳、心臓」などの臓器に障害が起こる可能性があります。どのような症状が出るのかもう少し詳しく見ていきましょう。
目
高血圧の影響をもっとも受けやすいと言われているのが目です。目の奥にある網膜には細い血管が多く、血圧が高くなるほど障害を受けやすいと言われています。
血圧が180mmHg以上の重度になると毛細血管が破れて出血したり、浮いて剥がれたりして失明の原因になります。
ただし猫によっては160mmHg程度でも症状があらわれる場合があるようですから、中程度の高血圧であってもけっして油断はできません。
腎臓
血圧が高くなると、腎臓にも影響があらわれます。
慢性腎臓病の猫の約65%に高血圧が認められたという報告もあるくらいですから、腎臓と高血圧には深い関係があると言えるでしょう。
上にも書いたように、腎機能が低下すると血圧が上がり、血圧が上がると腎組織が破壊されて腎機能が低下するという悪循環が生じます。
腎臓は一度傷つくと治ることはありません。
症状は少しずつ悪化していくことになります。
そのため慢性腎臓病を疑う症状があらわれたら、早めに動物病院を受診し、少しでも進行を遅らせるようにコントロールすることが大切です。
慢性腎臓病の特徴的な症状には、水をたくさん飲んでおしっこをたくさん出す「多飲多尿」があります。
日頃から愛猫のおしっこの回数や量を記録しておくと、いち早く異常に気づけるようになるでしょう。
脳
高血圧の臓器障害でも注意が必要なのが脳への損傷です。
脳内の圧力が上昇することで脳が損傷して、出血や脳梗塞の原因になります。
脳神経に損傷が生じると「麻痺、運動失調、痙攣」などの症状が見られるほか「混乱、異常な発声、沈鬱」といった症状が見られる場合もあります。
脳への障害は早急な対処が必要なことも多く、放置すると命に関わる可能性が高いです。
おかしいと感じたらすぐに動物病院を受診してください。
心臓
血圧が高くなると、血液を体に送り出す際に大きな力が必要になり、心臓への負担が大きくなると言われています。
その結果「不整脈、左心室肥大、心雑音、心不全」などを引き起こします。
また逆に心臓病が高血圧の原因になる場合もあります。
高血圧症になりやすい猫種
高血圧になりやすい特定の猫種はありませんが、以下のような猫はリスクが高いとされており注意が必要でしょう。
- 高齢の猫
- 慢性腎不全の猫
- 甲状腺機能亢進症の猫
- 原発性アルドステロン症
- 心臓病の猫
猫の高血圧の治療法
血圧が160mmHgの場合は治療の対象となります。
猫の高血圧は基礎疾患が原因となっている二次性高血圧が多いため、基礎疾患の治療と並行して血圧を下げる降圧剤を使用するのが一般的です。
降圧剤を使用する際は、血圧が下がりすぎないように慎重に投与しなければいけません。
はじめて薬を飲ませたあとは、元気や食欲に変化がないか注意深く観察し、異常があれば速やかに動物病院を受診しましょう。
投薬後しばらくは、こまめに血圧を測定しながら薬の量を調整します。
また高血圧のサポートを目的としたサプリメントもありますので使用を検討するのもよいでしょう。基礎疾患がある猫は、それぞれの病気をサポートする効果が期待できるサプリメントとの併用もおすすめです。
猫の血圧のはかり方
猫の血圧を測定する方法はいくつかありますが、ここでは「オシロメトリック法」と「観血的血圧測定」について紹介します。
オシロメトリック法は猫の血圧測定でいちばんポピュラーな方法です。
人間が血圧を測る際は腕に「カフ」と呼ばれる帯状の器具を巻いて測定しますが、その猫版といってよいでしょう。
猫の場合はカフを手足の先やしっぽの付け根に巻いて計測します。
ただし、オシロメトリック法にはデメリットもあります。
猫の緊張度合やカフの巻き方によっては血圧を正確に計測することができません。
そのため数回計測して判断するのが一般的です。
正確な数値を知るために日を改めて測定する場合もあります。
観血的血圧測定は、動脈にセンサーのついた針を刺して血圧を測定する方法です。
正確な血圧を知ることができる一方、熟練した技術を必要とするため普及していません。
猫の高血圧の予防法
猫は人間のように生活習慣や塩分の取りすぎなどが高血圧の原因になることはないと言われています。
そのため残念ながら猫の高血圧を予防する方法はないと考えられています。
その一方で、猫の高血圧に多いとされる二次性高血圧の原因となる病気を予防できれば、高血圧のリスクは低下します。
たとえば慢性腎臓病は、水分摂取量を増やすことで腎臓への負担を減らすことができ、リスクを低減できます。
さらに二次性高血圧の原因となる病気の予防効果が期待できるサプリメントを摂取して健康に留意するのもおすすめの方法です。
まとめ
猫の高血圧も人間と同じく、初期では目立った症状が見られません。
そのため知らず知らずにうちに症状が進行し、気づいたときには失明していた、内臓を損傷していたというケースも少なくありません。
高血圧を見つけるには、健康診断に血圧測定を組み込むなどして、定期的に血圧を測定することが大切です。
また高血圧の原因となる病気の検査を同時におこなうのもおすすめです。
猫の高血圧を直接予防する方法はありませんが、飼い主さん次第でリスクを減らすことはできるでしょう。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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