猫の死因でガンと並んで多いのが「腎不全(腎臓病)」です。世界的に見ても多くの国で猫の死因の1〜3位となっています。
また7歳を超えた猫の53%、15歳を超えた高齢猫では80%が腎不全を患っているとも言われています。猫にとって腎不全はそれくらい身近な病気なのです。
今回は、そんな猫の腎不全とはどんな病気なのか、ステージによってどのような症状が出るのか、どんな治療をするのか、食事療法について詳しく解説していきます。
猫の腎不全(腎臓病)とは

腎不全とは、なんらかの原因で腎臓がダメージを受けて、十分に機能しなくなった状態を言います。
猫の腎不全には、数時間から数日のうちに急激に腎機能が低下する急性腎不全(急性腎障害)と、3ヵ月以上にわたってダメージを受け、腎機能が低下していく慢性腎不全(慢性腎臓病)があります。
慢性腎不全は初期症状が分かりにくく、腎機能の75%以上がダメージを受けるまでは目立った症状があらわれません。そのため異常に気づいて受診したときには、すでにかなり進行している場合も多いと言われています。
猫の腎不全(腎臓病)の原因
猫は、腎不全になりやすい動物です。その原因はまだまだわかっていないことも多いのですが、いくつかの説が考えられています。
急性腎不全(急性腎障害)の原因
急性腎不全の原因には、中毒物質の摂取やほかの病気などがあります。
- 出血・脱水・血栓などが起こり腎臓に流れる血液が減少
- ユリ科の植物・ぶどうなど中毒を引き起こす植物の摂取
- エチレングリコールなどの中毒物質の摂取
- 尿道や尿管の閉塞などでおしっこが出ない
- 腎臓病や細菌感染による腎臓へのダメージ
このように原因はさまざまですが、腎臓に負担をかけたり、ダメージをあたえたりすることが引き金となります。
慢性腎不全(慢性腎臓病)の原因
慢性腎不全の原因は、生活環境や食事、薬の影響など諸説ありますが、そのひとつに水分摂取量の少なさがあげられています。
水分摂取量が少ないと尿路結石症などの泌尿器系の病気の原因となります。泌尿器系の病気をきっかけに腎不全に移行するケースが多いこともあって、水分摂取量が少ないと腎不全のリスクが高まる可能性があると考えられています。
また、最近では東京大学の研究チームが「猫は腎機能が落ちたときに回復を促すためのタンパク質(AIM)が先天的に機能しにくいため、腎不全になりやすい」ということを発表しました。これにより、猫の腎不全の原因として「AIMがうまく機能していない」が加わったのです。
猫の腎不全(腎臓病)の症状
上述のとおり、猫の腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全の2種類があります。ここでは、それぞれの症状について、詳しく解説します。
急性腎不全(急性腎障害)の症状
猫の急性腎不全は、中毒物質の摂取やほかの病気などが原因となり、以下のような症状が見られます。
- 突然ぐったりする
- おしっこが出ない
- 食欲不振
- 嘔吐
- 脱水
- 痙攣
- 体温の低下
初期では、食欲不振や元気がないといった症状があらわれ、おしっこの量が減る、まったく出ないなどの症状が見られるようになります。
さらに進行すると脱水や体温の低下、痙攣などの重篤な症状を引き起こします。
慢性腎不全(慢性腎臓病)のステージ別の症状
猫の慢性腎不全では、病状の進行度合いによって4つのステージに分けられています。ステージごとのおもな症状について見ていきましょう。
なお、以下の表はそれぞれのステージで見られるおもな症状をまとめたものです。
| ステージ | クレアチニン値 | おもな症状 | 腎機能 |
| ステージ1 | 1.6未満 | 症状なし
尿検査や腎臓の形状に異常が見つかる場合がある |
正常時の3分の1程度まで |
| ステージ2 | 1.6〜2.8 | 多飲多尿などの症状が見られる場合がある | 正常時の4分の1程度まで |
| ステージ3 | 2.9〜5.0 | 食欲不振・嘔吐・脱水・尿毒症など
血液検査で数値の上昇が認められる |
正常時の4分の1未満 |
| ステージ4 | 5.0より上 | 尿毒症がさらに進行する血尿・無尿・痙攣・意識レベル低下など
積極的な治療なしでは生命維持が困難 |
ステージ1の症状
腎機能が正常時の3分の1程度まではとくに症状はなく、血液検査でも異常は見つかりません。そのため、この段階で腎機能の低下に気付くのは難しいでしょう。
ただし、尿検査で尿比重や蛋白の数値、超音波検査などで腎臓の形状に異常が見られることがあります。
ステージ2の症状
ステージ2では、多飲多尿が見られる場合があります。ただし、食欲や元気には変化が見られないため、まだ気づかない飼い主さんも多いです。腎機能は正常時の4分の1程度まで低下しています。
多飲多尿とは、水をたくさん飲んで、おしっこをたくさん出す状態のことです。
慢性腎臓病で腎機能が低下すると、おしっこを濃縮できなくなるため、薄いおしっこを大量に出すようになります。すると、体内の水分が不足し、それを補うために水をたくさん飲むようになるのです。
猫の慢性腎不全において、多飲多尿は初期に見られる重要なサインです。高齢の猫が「前よりもたくさん水を飲むようになった」と感じたら要注意です。
ステージ3の症状
ステージ3ではさらに脱水しやすくなり、腎機能が悪化して尿毒症を起こします。その結果、食欲不振、体重減少などのわかりやすい症状があらわれるようになります。ここで、はじめて異常に気づく飼い主さんも多いです。この段階では、腎臓の75%以上がダメージを受けています。
ステージ3のおもな症状としては以下です。
- 食欲不振
- 体重減少
- 多飲多尿
- 口内炎
- 嘔吐
- 脱水
また、ステージ3では血液検査で「CREA(血清クレアチニン)」の上昇が認められるようになります。CREAは腎機能が4分の1以下になってはじめて数値が上昇します。つまり、CREAの上昇はかなり症状が進行しているということを意味します。
ステージ4の症状
ステージ4は命にかかわる状態で、終末期となります。さらに尿毒症が進行し、積極的な治療なしでは生命維持が難しい状態です。猫自身も辛いと感じていると考えられます。
ステージ3の症状に加えて以下の症状が見られるようになります。
- 血尿
- 無尿
- 痙攣
- てんかん
- 意識レベル低下
ステージ4と診断されると、余命は3ヶ月程度と言われています。
腎不全(腎臓病)になりやすい猫腫
猫の慢性腎不全はどの猫にもリスクはありますが、以下の猫種はとくになりやすいと言われています。
- アビシニアン
- ロシアンブルー
- チンチラ
- ペルシャ
- ヒマラヤン
- シャム猫
雑種でもこれらの猫の血統をひいている場合は腎不全になりやすいので、注意が必要でしょう。
また、高齢の猫も腎不全のリスクが高いです。7歳以上で35%、15歳以上の高齢の猫では80%が腎不全だと言われています。
腎不全は早期発見・早期治療が大変重要な病気です。気になる症状があれば早めに獣医師に相談しましょう。
猫の腎不全(腎臓病)の治療法
急性腎不全と慢性腎不全では、治療法が異なります。急性腎不全では、原因に対しての治療をおこないますが、慢性腎不全ではステージごとにそれぞれの症状に合わせた治療がおこなわれます。
急性腎不全(急性腎障害)の治療法
急性腎不全は一般的に入院をして、腎不全を引き起こした原因を治療することになります。
最初に、原因を特定するために、血液検査や尿検査、レントゲン検査、超音波検査などがおこなわれます。原因が判明すれば、それぞれの原因に合わせた適切な治療をおこないます。
急速に症状が進行する猫の急性腎不全では、どれだけ早く治療をはじめるかが重要です。早期に適切な治療がおこなえれば、腎機能が回復する可能性があります。
慢性腎不全(慢性腎臓病)の治療法
猫の慢性腎不全では、ステージごとに治療法が異なります。
また、慢性腎不全の場合は、1度ダメージを受けた腎機能を回復することができません。そのため、治療は治すことではなく、病気の進行をゆるやかにすること、生活の質を維持することが目的となります。
ステージ1の治療法
タンパク尿などの異常が見られなければ、とくに治療はおこなわれません。十分な水分摂取を心がけて、脱水にならないように注意しましょう。
ステージ2の治療法
状況に応じてリンの摂取を制限した療法食の開始を検討し、場合によってははじめます。慢性腎不全において食事療法はとても重要です(詳しくは後述)。
ステージ1と同様に、十分な水分摂取を心がけてください。
そのほか、症状に応じた治療がおこなわれます。
ステージ3の治療法
ステージ2の治療をおこないつつ、腎臓病用の療法食をはじめます。さらに、脱水を防ぐための点滴をしたり、貧血への対処をしたりなどの積極的な治療がおこなわれるようになります。
点滴は、週2〜3回のペースでおこないますが、同時に十分な水分を摂取できるように、ウェットフードを与えるなどの工夫も必要になるでしょう。
なお、通院しての点滴が難しい猫には、飼い主さんが自宅で点滴をおこなえる場合もあります。獣医師に相談してください。
ステージ4の治療法
ステージ4になるとできる治療はほとんどありません。できるだけ苦しまずに穏やかに過ごせるようにサポートをしていきます。
たとえば、食事や水分補給ができなくなった場合は、脱水の予防、脱水の症状を回復するために点滴をします。
猫の慢性腎不全(慢性腎臓病)の食事とサプリメント
慢性腎不全の猫にとって、食事はとても重要です。動物病院では、腎臓への負担軽減を目的にした、腎臓病用の療法食をすすめられることが多いでしょう。
また、食事のほかにリンを吸着するサプリメントなどを使用する場合があります。
ここでは、それぞれについて知っておきたい基礎知識を紹介します。
慢性腎不全(慢性腎不全)の食事の基本
慢性腎不全の猫の食事は「リン」と「タンパク質」を制限した療法食が基本です。リンを制限した食事は、腎不全の猫の寿命を延命させることが実証されている唯一の治療法とされています。
ステージ1では、高リン、高タンパク質の食事を避け、ステージ2になったら、緩やかにリンの制限をします。ステージ2から、療法食の使用を検討し、猫の状態によっては、あたえはじめることになるでしょう。
ステージ3になると、療法食をあたえるようになります。食事中のリンの制限、中程度のタンパク質の食事をあたえるようにします。
ステージ4では、リンの制限のほか、アミノ酸バランスにも配慮した食事がおすすめです。ただし、ステージ4ではご飯を食べなくなる猫も多いです。療法食にこだわらずに食べさせることを優先する場合もあります。
早期ステージの慢性腎不全(慢性腎臓病)の食事管理
腎不全だからといって、早期ステージから専用の療法食をあたえなければいけないわけではありません。最近は、腎不全でも、過度にリンやタンパク質を制限してはいけないと考えられるようになりました。
早期の腎不全では、高リン、高タンパクのキャットフードを避け、十分な水分を摂取できるように配慮します。たとえば、タンパク質40%などのあきらかな高タンパクのキャットフードは避けるようにしましょう。水分摂取量を増やすために、ウェットフードを取り入れるのもおすすめです。
また、早期ステージ向けの療法食を販売しているメーカーもありますので、検討しても良いかもしれません。
療法食を食べてくれないときの対処法
腎臓病の療法食を食べずに飼い主さんを悩ませる猫は、意外と多いようです。というのも腎臓病の療法食は、タンパク質とリンはもちろん、ナトリウムも控えめになっているため、嗜好性が落ちてしまうのです。
とは言え、食べてくれないのも困りますから、以下の方法を試してみましょう。
- ほかの療法食を試す
- ウェットフードを混ぜる
- 好物をトッピングする
- リンの少ないキャットフードを試す
これらの方法を試す際は、かならず事前に獣医師に相談してください。ささみなどリンが豊富に含まれている食材もありますので、くれぐれも自己判断で与えないようにしましょう。
関連記事:猫の療法食って?与え方は?いつまであげる? 療法食の基礎知識を徹底解説
慢性腎不全(慢性腎臓病)のサプリメント
最近では、猫の慢性腎不全の治療をサポートするサプリメントもたくさん販売されています。食事療法とあわせて活用するとよいでしょう。
慢性腎不全におすすめのサプリメントには、リンの摂取量を制限・吸着するサプリメントや尿毒素や老廃物を吸着する活性炭入りのサプリメント、腎機能をサポートするアミノ酸サプリメントなどがあります。
猫の腎不全(腎臓病)の予防法
猫の腎不全を完全に予防することは難しいでしょう。しかし、以下のことに注意、実践するだけで、リスクを減らすことはできるはずです。
- 十分な量の水分を摂取させる
- ウェットフードを取り入れる
- 良質なタンパク質がたっぷりのキャットフードをあたえる
- 歯磨きで歯周病を予防する
- 毒性のある植物・化学物質を持ち込まない
一見すると歯周病は無関係に思えるかもしれませんが、中度以上の歯周病の猫は、腎不全のリスクが1.5倍になるという報告があります。歯周病の原因となっている細菌が血液を介して体中に広がり、腎臓にも影響をあたえるためです。
関連記事:3歳以上の猫の80%が歯周病ってホント?症状・治療・予防について
また、腎不全は早期発見が重要な病気です。しかし、初期では目立った症状がなく、かなり進行するまで気づかないことがほとんどです。上記の予防法と同時に、7歳を超えたら定期的に健康診断や検査を受け、早期発見に努めましょう。
猫の腎不全(腎臓病)の治療にかかる料金の目安
急性腎不全の治療は、入院が基本となるため、5〜15万円と高額になりがちです。
一方、慢性腎不全の場合は、ステージや検査内容、通院頻度によって大きく異なります。目安としては、1回の通院で数千円から2〜4万円ほど見ておくとよいでしょう。
また、人工透析をおこなう場合は、1回で3万円ほどかかります。週に1〜2回おこないますので、1ヶ月の治療費は12〜24万円ほどと高額になります。
まとめ
高齢の猫の80%が患っていると言われる慢性腎不全は、猫の宿命とも呼べる病気です。
慢性腎不全は、時間の経過とともに徐々に悪化していきます。しかも、かなり悪化するまで症状があらわれません。そのため、症状に気づいたらすぐにでも治療を開始する必要があります。
慢性腎不全の早期発見、早期治療のためにも、7歳をすぎたら定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
また、急性腎不全は急激に症状が悪化し、命にもかかわります。気づいたら早急に動物病院を受診してください。
関連記事:犬の慢性腎臓病の症状や余命は?どんな検査をすればいいの?
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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