2025年版 獣医師が解説 犬の心臓病は弁膜症以外にもある?症状や治療も違う?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
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犬の心臓病とは?

血液を全身に送るポンプ機能の担っている心臓に、何かしらの病気が起こった場合、心臓病と表現します。

心臓病は、腎臓病、腫瘍と並ぶ犬の三大死因の一つと言われており、老犬においてはよく遭遇する疾患です。

ここでは、よく遭遇する犬の心臓病について解説します。

犬の心臓病で多い病気は以下のような病気が挙げられます。

動脈管開存症

犬で最もよく見られる先天性の心臓病とされています。

犬の胎生期には、肺動脈と大動脈を繋ぐ動脈管という管がありますが、生後数時間で閉鎖します。

そうすることで、肺動脈と大動脈は交わらなくなるのですが、それが上手く閉鎖せず、生後も大動脈から肺動脈へ血液が流れてしまう状態になります。

好発犬種はマルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、トイプードル、ミニチュアダックスフンドをはじめとした小型犬から、シェルティ、ラブラドールレトリバー、キースホンドなども発生が認められるようです。

罹患率はオスよりメスの方が2~3倍高いと言われています。

右大動脈弓遺残

胎生期において本来、左側の大動脈弓が発達し大動脈へと成長していくのですが、何かしらの原因で右側の大動脈弓が発達し大動脈へと成長することで、動脈管と大動脈に食道が挟まれる形で成長してしまいます。

そうなると、固形物を食べ始め離乳すると、食道で上手く通らず吐出してしまう病気です。

好発犬種はジャーマンシェパード、アイリッシュ・セターなどと言われています。

心房中隔欠損症

犬の胎生期には、左心房と右心房を隔てる壁(心房中隔)に穴が開いています。

こちらは成長とともに塞がるのですが、何かしらの原因で塞がらない場合は「心房中隔欠損症」と病名がつきます。

穴が小さい場合は無治療で過ごせることもありますが、血液が左心房から右心房へ流れてしまい、正常に血液を循環させることが出来なくなり、体調に異常をきたしてしまいます。

発生頻度は多くないものの、好発犬種はサモエドと言われています。

心室中隔欠損症

こちらも、先天的に左心室と右心室を隔てる心室中隔に穴が開いている場合、「心室中隔欠損症」と病名がつきます。

穴が小さい場合は無治療で過ごせることもありますが、血液が左心房から右心房へ流れてしまい、正常に血液を循環させることが出来なくなり、体調に異常をきたしてしまいます。

発生頻度は比較的多く、好発犬種はイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、イングリッシュ・ブルドッグと言われています。

ファロー四徴症

胎生期に、心臓に4つの異常(肺動脈狭窄、心室中隔欠損症、大動脈騎乗、右心室肥大)が起こる病気です。

好発犬種はキースホンド、イングリッシュ・ブルドッグ、ミニチュアシュナウザーなどと言われています。

フィラリア症

犬のフィラリア症は、蚊を媒介とする感染性の疾患です。

犬糸状虫(Dirofilaria immitis)が原因の病気で、蚊が犬を吸血した際に侵入し、成長した後肺動脈に寄生します。

初期症状は無症状であることも多いですが、感染数が増えるにつれて症状が出てきます。

現在はフィラリア予防薬が普及し、症例の数は少なくなってきました。

関連記事:犬のフィラリアってどんな病気?予防はいつから?予防薬とその費用は?

僧帽弁閉鎖不全症

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、犬において代表的な疾患で、老犬でよくよく遭遇します。

左心房と左心室を隔てる「僧帽弁」という弁において、本来は心房から心室へ一方通行で流れる血液が逆流してしまう病気です。

全身へとめぐるべき血液が滞ってしまうことで、様々な症状を呈します。

好発犬種として、キャバリア、マルチーズ、ヨークシャーテリア、シーズーなどが挙げられます。

関連記事:僧帽弁閉鎖不全症の犬が気をつけることは?余命は?

拡張型心筋症

拡張型心筋症は、心臓の筋肉の運動性が低下し、心臓から血液を拍出しにくくなる病気です。

進行すると心臓の筋肉が菲薄化し、治療が困難であることが多い病気です。

好発犬種はドーベルマン、ボクサー、レトリバーなどの大型犬で多いとされています。

心臓腫瘍

犬の心臓には様々な腫瘍の発生が認められています。

中でも、血管肉腫と心基底部腫瘍(ケモデクトーマなど)の発生が多いとされています。

手術が行うことが難しく、また抗がん剤も効きが悪い腫瘍の種類が多く、治療が難しいとされることが多いです。

 

犬の心臓病の原因は?

先天性の疾患や拡張型心筋症の場合は、好発犬種が認められることから遺伝が関与している可能性があるとされています。

僧帽弁閉鎖不全症においては、主に粘液腫様変性と呼ばれる、加齢に伴う弁の変性によるところが多いとされています。

その他、感染性の心内膜炎、先天的な心臓病(ファロー四徴症、心室・心房中隔欠損症など)、拡張型心筋症からの二次的な発生などが挙げられます。

近年では、歯周病に関連する細菌が原因とも言われ始めているようです。

心臓腫瘍においては、原因が特定されていないものの、加齢や、発がん物質や放射線などによる遺伝子へのダメージや、家系などの遺伝的な素因、腫瘍に対する免疫力の低下など、様々な原因が推測されています。

 

犬の心臓病の症状は?

どの心臓病においても、血液の循環が悪くなることにより、もしくは心臓が大きくなることにより症状を示すことが多いです。

以下のような症状が認められることが多いとされています。

  • 咳をするようになった/咳がひどい
  • 呼吸が早い/苦しそう(肺水腫)
  • ふらつく/倒れる(失神)
  • お腹が膨らむ(腹水)
  • 疲れやすい/お散歩を嫌がる
  • 舌の色がおかしい(チアノーゼ)
  • 吐く

上記のような症状がある場合は、心臓病のサインである可能性がありますので、早めの受診を心掛けましょう。

 

犬の心臓病の診断に必要な検査は?

犬の心臓病の診断には、様々な検査が必要になります。

まず、身体検査において、心臓の聴診を行います。

心臓病から血液の流れに乱流が生じていると、「心雑音」が聴取されます。

犬の心臓病においては心雑音が聴取される場合がほとんどですが、例えば動脈管開存症の一時期では、心雑音が聴取できなくなるタイミングがあると言われているので、注意が必要です。

次に、心臓病が存在するかどうか、レントゲン検査や超音波(エコー)検査を行います。

レントゲン検査では、心臓の形や大きさ、肺水腫や胸水の有無を確認します。

犬の心臓病においては、レントゲン検査では心臓が大きくなることがほとんどですが、病気の初期段階や、心臓の腫瘍が小さい場合などでは大きくならないこともありますので、注意が必要です。

エコー検査はレントゲン検査と異なり、心臓の内部の構造を確認する検査です。

心筋の厚さや内腔の拡張の程度、血液の速度や乱流の有無、心臓の腫瘍の有無、欠損孔の有無を確認します。

その他、病気の進行具合や合併症の確認のために、一般的な血液検査や血圧検査も行います。

腹水に関しては腹部のレントゲン検査やエコー検査、フィラリア症に関しては専用の血液検査で診断を行います。

動脈管開存症や右大動脈弓遺残などでは、異常血管の確認の為、CT検査などを行う可能性もあります。

しかし、犬によっては性格上、上記のすべての検査が正しく行えない場合も多いです。

その場合は、スクリーニング検査として、血液検査で心臓のバイオマーカー「NT-pro BNP」などを測定し、早期発見に繋げることもあります。

 

犬の心臓病の治療と予後は?

動脈管開存症

診断時の進行具合にもよりますが、手術による治療が第一となります。

動脈管を結紮する方法や、コイルでの塞栓術などがあります。

予後(余命)に関しては、治療しない場合だと、一年以内に半数が亡くなってしまうと言われています。

右大動脈弓遺残

食道を挟んでいる動脈管索の切断(血管輪切離術)という手術が第一となります。

心房中隔欠損症/心房中隔欠損症

欠損孔が小さい場合は治療が必要ないケースもありますが、大きい場合は手術が第一になります。

病状が進んでいる場合は、手術適応とならず、強心薬や利尿剤などで症状を緩和する治療が行われます。

フィラリア症

犬のフィラリア症の治療は困難であると言われています。

手術によるフィラリア成虫の除去もありますが、一般的には行われていないことが多いです。

フィラリアの予防薬を通年で飲みながら、フィラリア成虫が自然と死滅するのを待つ治療などが行われます。

僧帽弁閉鎖不全症

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、ACVIMからステージ分類が提唱されており、それによる予後(余命)が様々報告されています。

ある論文では、ステージB2において、無治療で生存期間中央値が約2年、ピモベンダンによる治療を行うと約3年と報告されています。

他の論文では、ステージCにおいてピモベンダン、フロセミドで治療を行うと、生存期間中央値が約7か月と報告されています。

治療は、外科治療と内科治療があります。

外科治療とは、弁を人工物に置き換える根治的な治療になります。

内科治療とは、強心薬や利尿剤、血管拡張薬などを中心としたお薬による治療で、症状を緩和させる治療になります。

拡張型心筋症

拡張型心筋症は、一度罹患してしまうと完治は難しいとされています。

心臓の運動性を改善する強心薬や、不整脈に対しての抗不整脈薬。
うっ血性心不全に対する利尿剤などを用いて、お薬で症状を改善させます。

比較的進行が早い場合は、予後(余命)が短いケースも多くあるようです。

 

また、お薬以外の治療法としては、以下のようなものがあります。

・食餌療法
適切なタンパク質を摂取し、合併した慢性腎臓病が重度でない限り低タンパク食は避けるべきとされています。
心臓病用のドッグフード(療法食)がおすすめです。

・サプリメント
オメガ 3 脂肪酸の他、フランス海岸松樹皮抽出物質(ピクノジェノール)などもおすすめです。

・シャンプー
基本的には問題ないのですが、温度により血管拡張や心拍数などの血液動態に影響を及ぼす可能性があります。
一部の犬用入浴剤には、心疾患のある症例には使用しないよう記載があるので注意が必要です。

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犬の心臓病の治療費の目安は?

犬の心臓病の治療には、外科治療と内科治療があります。

僧帽弁閉鎖不全症を例にとると、外科治療は100~300万円程度の費用が必要となるようです。

内科治療は、ステージB2で強心薬のみの投与の場合は、薬代が1か月1~2万円ほどになると思われます。

そこに、利尿剤や血管拡張薬、もしくは呼吸器のお薬も加わると、薬代が1か月2~4万円ほどになりうると思われます。

 

まとめ

犬の心臓病は、先天的な病気から高齢での病気まで様々なものがあります。

どの病気も早期発見・早期治療が重要な病気ですので、気になる症状があった際は、早めの受診を心掛けましょう。

 

参考資料
・愛玩動物看護師の教科書 第五巻
・ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs
・Effect of Pimobendan in Dogs with Preclinical Myxomatous Mitral Valve Disease and Cardiomegaly: The EPIC Study-A Randomized Clinical Trial
・Efficacy of adding ramipril (VAsotop) to the combination of furosemide (Lasix) and pimobendan (VEtmedin) in dogs with mitral valve degeneration: The VALVE trial

関連記事:犬の心臓弁膜症とは?症状や余命、治療費は?

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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