高カルシウム血症という病名はみなさん聞いたことがあるのではないでしょうか。
人の病気でもよく耳にすることかと思います。
犬でも高カルシウム血症にかかる子は珍しくなく、決して稀な病気ではないといえます。
といっても、高カルシウム血症になる原因は食べ物なのか、症状はどんなの?など、詳しくは知らない方も多いと思います。
そこで今回の記事では、犬が高カルシウム血症になる原因や症状・治療法や予防方法などを解説していきます。
高カルシウム血症とは?

高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が正常範囲を超えて高くなった状態のことを表します。
犬の場合、血清カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)以上になると高カルシウム血症と診断されます。
高カルシウム血症になる原因としてはさまざままな病気が起因していると考えられており、治療が必要な病気です。
高カルシウム血症の原因
高カルシウム血症になる原因として、多くの病気が起因しているといわれています。
病気と並行して高カルシウム血症のコントロールが必要とも言えますね。
以下で、代表的な原因となる病気をいくつかご紹介します。
上皮小体機能亢進症
上皮小体機能亢進症は、副甲状腺から分泌される上皮小体というホルモンが過剰に分泌されることで、血液中のカルシウム濃度が異常に高くなる病気です。
上皮小体は、血中のカルシウム濃度を調整するホルモンを出す役目を担っています。
そのため、上皮小体に異常があり、分泌がおかしくなることで、血中カルシウム濃度の調整がうまくいかなくなるメカニズムです。
高カルシウム血症の犬では多い原因といえますね。
悪性腫瘍
悪性腫瘍が原因で高カルシウム血症になる犬もいます。
特に、リンパ腫や肛門嚢腺癌・多発性骨髄腫などが原因となることが多いです。
悪性腫瘍から、血中カルシウム濃度を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることで、高カルシウム血症が発生してしまうケースです。
この場合は、悪性腫瘍の除去と高カルシウム血症の治療を行うことで高カルシウム血症自体は改善が見込めることもあります。
ビタミンDの過剰摂取
ビタミンDには、カルシウムの吸収を促進する作用があります。
そのため、ビタミンDの過剰摂取は血液中のカルシウム濃度を異常に上昇させ、高カルシウム血症になる原因となります。
犬用の総合栄養食のドッグフードのみを食べている犬では問題ありませんが、手作り食や人の食べ物を食べる犬では要注意です。
魚類やきのこ類・卵や乳製品に多く含まれているため、ドッグフード以外を食べさせている家庭では、栄養素を気にしてあげるといいですね。
また、ビタミンのサプリメントを使用している場合も、過剰摂取にならないか見ておきましょう。
関連記事:犬に手作りご飯は良くない?メリット・デメリット紹介
腎臓病
腎臓病を患っている犬でも高カルシウム血症になるリスクが高いです。
腎臓病が進行すると、カルシウムを体外へ排泄する機能ががうまく働かなくなり、血液中のカルシウム濃度が上昇することがあります。
腎臓病は完治しない病気なので、高カルシウム血症も合わせて付き合って治療していく必要があります。
関連記事:犬の慢性腎臓病の症状や余命は?どんな検査をすればいいの?
アジソン病
アジソン病とは、副腎皮質から分泌されるホルモン不足により、様々な症状を引き起こす病気です。
高カルシウム血症は、その症状の一つとして現れることがあります。
副腎皮質から出される副腎皮質ホルモンであるアルドステロンが不足することにより、電解質バランスが崩れ、高カルシウム血症になるといわれています。
アジソン病は放って置くと命に関わる病気ですので、おかしな点があればすぐに受診することをおすすめします。
関連記事:犬のアジソン病とは?症状や余命は?治療の方法や費用は?
高カルシウム血症になりやすい犬種・特徴

高カルシウム血症はどの犬種・年齢の犬でもかかることがあり、特別にかかりやすい犬種としては特にありません。
どの犬種の犬でも、上記の病気にかからないような予防策を取りリスクを下げることが重要だといえるでしょう。
高カルシウム血症の症状
では、高カルシウム血症の際の症状はどんなものがあるでしょうか。
高カルシウム血症は早期発見が難しい病気でもあるため、以下のような症状が見られたら早めに動物病院を受診しましょう。
食欲不振・元気喪失
血中カルシウム濃度が高くなると、食欲不振や元気喪失が現れます。
ただし、食欲不振や元気喪失はどのような病気でも多く見られる症状なので、一概に高カルシウム血症とは言い難く、さらに数日であれば様子見をする飼い主さんも多いため、早期発見が難しい病気でもあります。
早めに血液検査やレントゲン検査などをして確定診断を行えると良いですね。
便秘・下痢

便秘や下痢などの消化器症状が出る場合もあります。
下痢や便秘状態は、愛犬にとって腹痛や排便痛などの痛みに繋がるので、あまり様子見をしすぎずに獣医師に相談しましょう。
また、便秘状態を放って置くと命に関わる事態となってしまうため、特に要注意です。
ふるえ・けいれん
ふるえやけいれんは、高カルシウム血症でよく見られる症状の一つです。
高カルシウム血症が進行すると、筋肉を動かしづらくなってしまうため、ふるえたり痙攣したりすることがあります。
ふるえは他の原因でも起きることがあるため、愛犬が震えていたらなにかのサインだと感じて、把握してあげるようにしましょう。
関連記事:高齢の犬が痙攣を起こしたらどうすればよい?原因や対処法を解説
多飲多尿
お水をよく飲み、おしっこをいっぱいする症状「多飲多尿」も見られることがあります。
これは、血中のカルシウム濃度が上昇すると、腎臓での水分の再吸収の働きが低下し、結果として多尿になり脱水状態になるため、身体が水を欲してより多くの水を飲むようになるためです。
多飲多尿は、糖尿病やクッシング症候群などの代表的な病気の症状であることもあるため、高カルシウム血症だけでなく多飲多尿が見られたら早めに検査をすることをおすすめします。
関連記事:犬が水を飲み過ぎるのはなぜ?ストレス?病気?副作用?
高カルシウム血症の治療法
高カルシウム血症の際の治療はどのように行われるのでしょうか。
原因となっている疾患の治療と並行して、高カルシウム血症に対して行われる治療をいくつかご紹介します。
外科手術
高カルシウム血症の治療として外科手術が選択される場合は、上皮小体機能亢進症と腫瘍が原因のケースです。
ホルモンを過剰に出している副甲状腺を除去して、そもそものホルモンの分泌を抑制する効果が期待できます。
また、腫瘍が原因の場合は、原因となっている腫瘍を摘出することでカルシウムの数値も安定していくことが見込めます。
輸液療法
皮下輸液を実施して症状を緩和させるケースも珍しくありません。
腎臓由来の高カルシウム血症だった場合には、有効な治療法です。
腎臓に影響する高カルシウム血症状態を少しでも緩和し、脱水症状を防ぐ目的で行われます。
また、全身症状が出ている際にも、栄養補給のための輸液が実施されることも多く、メジャーな処置のひとつといえるでしょう。
薬剤の投与
利尿剤やステロイド剤などを用いて、カルシウムを体外に排出する働きを助けるお薬を処方されることも多いです。
また、輸液と並行してなるべく多く早く排出させるために利尿剤が処方されるケースが良く見られます。
また、リンを含むサプリメントをおすすめされることもありますが、リンの過剰摂取はまた病気の原因となってしまうため、獣医師の指示のもと服用してくださいね。
高カルシウム血症の予防法
高カルシウム血症を予防する方法としては何ができるでしょうか。
日々の健康を維持するためにも大切なことですので、ぜひ見直してみてくださいね。

食事管理
高カルシウム血症のリスクを下げるには食事管理も大切です。
総合栄養食のドッグフードのみを与えている犬であれば問題ありませんが、手作り食など人の食べ物を食べている場合は、栄養素に気を配る必要があります。
カルシウムが多く含まれる食材を食べさせることで、高カルシウム血症になってしまう恐れもあります。
乳製品や魚介類などは特に注意し、しっかりと栄養バランスを考えた食事を取らせるようにしてくださいね。
サプリメントの使用を見直す
愛犬が服用しているサプリメントはありますか?
サプリメントの中には、カルシウムが配合されているものもあり、身体に良いと思っていても実は高カルシウム状態にある場合もあります。
また、ビタミンDの過剰摂取によっても高カルシウム血症になってしまうとお話しました。
そのため、ビタミンのサプリメントも配合をよく見て与える必要があります。
飲んでいるサプリメントがあれば、獣医師にみてもらうようにすると良いですね。
高カルシウム血症の治療にかかる費用の目安
高カルシウム血症の治療にかかる費用は、重症度や原因によって大きく変動します。
診断にかかる検査費用としては平均6,000円〜20,000円程度が相場となっており、輸液療法・薬剤療法を行うと1回につき3,000円〜7,000円程度かかることがあります。
また、外科手術の場合は10万円〜30万円になることも多く、入院費用も追加になるため、高額になるケースが多いです。
まとめ
犬の高カルシウム血症は、さまざまな病気が原因で発症してしまうことが多い疾患です。
多い原因としては上皮小体機能亢進症・悪性腫瘍・ビタミンD中毒・腎臓病・アジソン病が挙げられます。
中でも上皮小体機能亢進症と悪性腫瘍が原因の高カルシウム血症の際は、治療として外科手術が選択されることも多く、一般的には輸液療法や薬剤療法での治療がメインとなります。
また、高カルシウム血症の症状としては、食欲不振や元気喪失・便秘や下痢などの消化器症状・ふるえやけいれんなどがよく見られます。
いろいろな病気の症状として現れるものが多いため高カルシウム血症は早期発見が難しいとも言えます。
少しでもおかしいなと感じたら早めに検査をしてもらうことをおすすめします。
予防法として、サプリメントの使用を見直すことや食事管理が大切になります。
今一度愛犬が口にしているものの見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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