2025年版 獣医師監修 命にかかわる犬の子宮蓄膿症とは?症状や手術、予防法について

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

ご相談窓口

「お腹が膨らんでいる?」「またトイレ?」そんなふうに感じたときは、メス犬特有の子宮蓄膿症が疑われます。

避妊手術をしていない高齢の犬に多い子宮蓄膿症は、放置していると命を落とす可能性もある病気です。
その一方で、なかなか気づきにくく、気づいたときには重症化していたということも少なくありません。

今回は、子宮蓄膿症の原因や症状、治療法について解説します。
あわせて、受診の目安や予防法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

犬の子宮蓄膿症とは?

子宮蓄膿症とは、細菌感染によって子宮内膜が腫れ、子宮内に膿が溜まる病気です。
出産経験のない犬や長年出産をしていない犬がかかりやすいとされます。

発症のタイミングは、発情出血が見られてから1〜2ヶ月後が多い傾向です。

原因となる細菌としては大腸菌、レンサ球菌、ブドウ球菌などがあげられます。
これらの細菌が子宮に侵入して繁殖し、毒素を出すことで犬の全身状態を悪化させます。

子宮蓄膿症が悪化すると血栓や腎不全の原因となり、場合によっては命に関わる重篤な症状を引き起こすため注意が必要です。

子宮蓄膿症の予防には避妊手術が有効です。
後述の予防法の項で詳しく解説します。

 

犬の子宮蓄膿症の原因

犬の子宮蓄膿症の原因は、子宮の細菌感染です。

子宮と外の世界をつなげる膣には、大腸菌・レンサ球菌・ブドウ球菌などの常在菌がいます。
通常は悪さをすることはありませんが、発情周期に伴ってホルモンバランスが変化すると、これらの細菌が子宮に感染しやすい状況になります。

子宮蓄膿症の発症に関わっているのは卵巣から分泌される女性ホルモンの一種である「黄体ホルモン」で、子宮の免疫力低下、子宮内膜の肥厚を引き起こし、細菌感染の原因になるのです。

また、発情期には、子宮の入り口である子宮頸管が緩むため、細菌が侵入しやすい状況になります。
これも、子宮が細菌感染を起こす原因だと言われています。

 

犬の子宮蓄膿症の症状と受診の目安

犬の子宮蓄膿症の症状は多岐にわたります。
また、犬の子宮蓄膿症では「開放性子宮蓄膿症」と「閉塞性子宮蓄膿症」の2つの型があり、それぞれで特徴的な症状が見られます。

ここでは、子宮蓄膿症のおもな症状と、それぞれの型の特徴について見ていきましょう。
また、受診の目安についても紹介します。

子宮蓄膿症のおもな症状

犬の子宮蓄膿症の初期はこれといった症状は見られません。
たまに食べムラが見られる程度であるため、気づきにくい病気と言えます。

しかし、症状がある程度進むと、多飲多尿、食欲低下、嘔吐などのさまざまな症状が見られるようになります。

  • 食欲がない
  • 元気がない
  • 多飲多尿
  • 嘔吐
  • お腹が大きく膨らんでいる(腹部膨満)
  • 陰部から膿がでる
  • 陰部が腫れる
  • 発熱している

発情出血から1〜2ヶ月後にこれらの症状が見られたら要注意です。

関連記事:犬のヒートはいつまで続く?陰部の腫れや前兆はある?

治療が遅れると、子宮で繁殖した細菌が毒素を出して、血栓や腎不全を引き起こすことがあります。
命に関わる場合もありますので、気になる症状が見られたら速やかに動物病院を受診しましょう。

「開放性子宮蓄膿症」と「閉塞性子宮蓄膿症」の症状

開放性子宮蓄膿症と閉塞性子宮蓄膿症では、共通の症状もありますが、それぞれ異なる特徴的な症状が見られます。

開放性子宮蓄膿症では陰部から膿が排出されますが、閉塞性子宮蓄膿症の場合は子宮内に溜まった膿はほとんど排出されません。
そのため、閉塞性子宮蓄膿症は、病気に気づくのが遅れがちで、重症化した状態で発見されるケースが多いと言われています。

閉塞性子宮蓄膿症の特徴的な症状には、お腹が大きく膨れる「腹部膨満」があります。
膿が排出されずに溜まることで子宮が膨らんでしまうためです。
また、溜まった膿で膨れ上がった子宮が破れてしまう子宮破裂が起きやすい傾向もあります。

子宮が破裂すると中に溜まっていた膿が腹腔内に広がってしまい、腹膜炎を起こして命を落とすこともあります。

こんな様子が見られたら子宮蓄膿症かも!すぐに受診を

子宮蓄膿症は、早期発見・早期治療が大変重要な病気のひとつです。
しかし、ある程度病気が進行するまで目立った症状が見られないために、受診が遅れてしまうことも少なくありません。

避妊手術していない犬に以下のような様子が見られたら子宮蓄膿症を疑いましょう。

  • 最近水をよく飲む、おしっこが増えた
  • おしりが汚れている
  • 陰部を気にする
  • 元気がないと感じる
  • 食欲がなく食べムラが見られる
  • 好きなものしか食べない
  • 嘔吐・下痢が見られる

犬の子宮蓄膿症は、治療が遅れると重症化や後遺症のリスクが高まり、命にもかかわります。
日頃から愛犬の様子を観察し、気になる症状が見られたら早めに受診してください。

 

犬の子宮蓄膿症になりやすい犬の特徴

子宮蓄膿症になりやすい犬には、出産経験がない犬や長期間出産していない高齢犬という特徴がありますが、年齢に関係なく起こるとも言われています。

なかでも高リスクなのが不妊手術を受けていない6歳以上のメス犬で、4匹に1匹の割合で発症すると言われるほど高い確率となっています。
とくに、中高齢で出産経験がない、または長期間繁殖をおこなっていない犬に多い傾向です。

なお、特別に発症しやすい犬種は存在しません。
避妊手術をおこなっていないすべての犬に子宮蓄膿症を発症するリスクがあります。

関連記事:犬の避妊手術の適切な時期は?知っておきたいメリットとデメリット

 

犬の子宮蓄膿症の診断方法

犬の子宮蓄膿症の診断では、問診や画像診断、血液検査などがおこなわれます。

問診で生理(発情出血)があったのはいつか、現在の様子などを確認します。
子宮蓄膿症は発情期と関連性があるため、最後の生理がいつあったかは重要な情報です。
陰部からの分泌物の有無も確認されるでしょう。

画像診断では、レントゲン検査やエコー検査で子宮が大きくなっていないか、膿が溜まっていないかを確認します。
さらに血液検査によって、白血球数の増加、炎症マーカーのCRP(体内で炎症が起きると血液中で上昇するたんぱく質)の上昇、内臓機能が低下していないかを見ていきます。

 

犬の子宮蓄膿症の治療法

犬の子宮蓄膿症では、外科治療として手術がおこなわれるのが一般的です。
また、状況によっては、薬を使った内科治療がおこなわれる場合もあります。
それぞれどのような治療がおこなわれるのか解説します。

外科治療

犬の子宮蓄膿症では、卵巣と子宮を摘出する手術をおこないます。
手術自体は避妊手術と同様ですが、子宮に膿が溜まっている状態での摘出になること、全身状態が悪くなっている可能性があることもあり、避妊手術よりも麻酔管理、術後管理は慎重におこなわれます。

術後は入院になりますが、経過に問題がなければ、数日で退院できるでしょう。

一方で、手術が成功しても原因となった菌の種類によっては、血栓を作ったり、腎不全を起こす場合があります。
また、細菌が作り出す毒素でショック症状を起こし、敗血症を発症して命を落とすこともあるため注意が必要です。

内科治療

状況によっては内科治療がおこなわれます。
内科治療が選択されるのは、たとえば、開放性子宮蓄膿症で全身状態が良く、子宮内に溜まっている膿の量が少ない、あるいはすぐに手術できない、高齢で麻酔に耐えられない可能性があるといった場合などです。

内科治療では、抗生物質とホルモン剤が注射されます。
ホルモン剤は、子宮を収縮させて、膿を排出させるために使います。

ただし、内科治療は治るまでに時間がかかることが多く、治らない、再発する可能性が高いなどのデメリットもあります。
そのため、外科手術をすすめられるのが一般的です。

 

犬の子宮蓄膿症の予後と死亡率

犬の子宮蓄膿症は、早期に手術をおこなえば予後は良好です。
しかし、閉塞性子宮蓄膿症や進行した子宮蓄膿症では、命を落とすリスクがあります。

子宮蓄膿症を放置した場合の死亡率はほぼ100%で、手術での死亡率は5〜10%程度と言われています。
そのうち、50%が腹膜炎に起因します。

また、重症化すると敗血症や腎不全を引き起こす可能性が高くなり、非常に危険です。

犬の子宮蓄膿症の予後はいかに早く発見し、早い段階で治療を開始したかで決まると言えます。

 

犬の子宮蓄膿症の予防法

犬の子宮蓄膿症は、避妊手術をおこなうことで100%予防ができます。

犬の避妊手術とは、子宮と卵巣の摘出をおこない、妊娠ができないようにする手術です。
避妊手術をおこなうと、子宮と卵巣がなくなるため、望まない妊娠を予防できるほかにも、卵巣や子宮、乳腺の病気の予防に効果があるとされています。
子宮蓄膿症のほかには、乳腺腫瘍、乳腺炎、卵巣嚢腫などの予防になります。

関連記事:犬の乳腺腫瘍とは?悪性が多いの?症状や治療、余命は?

とくに、乳腺腫瘍は早く避妊手術をおこなうほど予防効果が高く、2歳半を過ぎてからの手術では効果がないと言われています。
病気予防を目的とした避妊手術は、最初の発情が来る前の生後6ヶ月ごろにおこなうのが効果的です。

避妊手術を希望する場合は、早めに獣医医師に相談し、適切なタイミングでおこなえるようにしましょう。

 

犬の子宮蓄膿症の治療にかかる料金の目安

犬の子宮蓄膿症の治療費は、重症度によって大きく異なります。
子宮が破裂して、腹膜炎を起こしているような場合は、どうしても高額になってしまうでしょう。

一般的には、数日の入院も含めて「20〜30万円」ほどが目安となります。

同じように子宮と卵巣を摘出する避妊手術の目安が「小型犬:3万〜6万円」「大型犬:6万〜8万円」ですから、かなりの高額と言えるでしょう。

 

まとめ

犬の子宮蓄膿症は、重症化すると敗血症や腎不全、腹膜炎を起こして命にも関わる重篤な病気です。
避妊手術をしていない中高齢の犬では4匹に1匹の割合で発症するとも言われており、けっして珍しい病気ではありません。

しかし、避妊手術をおこなうことで、100%予防できる病気でもあります。
健康な体にメスを入れることに抵抗のある飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、避妊手術では、子宮蓄膿症のほかにも、子宮や卵巣、乳腺のさまざまな病気を予防する効果もあります。

愛犬の健康のためにも、繁殖を望まないのであれば、ぜひ避妊手術を検討してください。

======================
この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
======================

コメント

タイトルとURLをコピーしました