腫瘍とは?
腫瘍とは、「本来自己の体内に存在する細胞が、自律的に無目的にかつ過剰に増殖する状態」と定義されています。
すなわち、正常な細胞が何かの原因で、必要以上に分裂・増殖してしまっている状態を指します。
そうすることで、生体の正常な機能を損なってしまい、様々な症状を引き起こすこととなります。
腫瘍は、全身のどの部位にも発生することがあり、犬や猫において三大死因のひとつと言われています。
うさぎの死因はまだ判明していないことが多いですが、うさぎにおいても腫瘍は多く発生しているようです。
特に子宮、卵巣、乳腺、体表の皮膚での発生が多く、その他に精巣、腎臓、肝臓、肺など、全身の臓器で発生が認められています。
うさぎに起こる腫瘍の種類とは?
犬や猫と同様に、うさぎにも様々な種類の悪性・良性腫瘍の発生が知られています。
よく起こる腫瘍の種類やその発生部位などは、以下のように知られています。
子宮腫瘍
子宮とは、メスのお腹の中に存在する臓器で、妊娠した際に胎児を育てる器官になります。
子宮角が左右に分かれている「重複子宮」という構造をしています。
その子宮に腫瘍ができることが、うさぎにおいてはとても多いとされています。
品種としては、ダッチ、ドワーフロップ、イングリッシュ、ネザーランドドワーフ、タン、フレンチシルバー、ハバナ、ポーリッシュなどが発生しやすいと言われています。
過去に妊娠したかにどうかは、発症にあまり関係がないようです。
発生率として、3 歳以下で 4%以上、5 歳以上で 50%以上との報告があるそうです。
必ずしも、高齢になってからでないと発生しない、という訳ではなさそうです。
発生する腫瘍の種類として、腺腫(良性)、腺癌(悪性)がそれぞれ全体の約1/3の確率で、その他に平滑筋腫(良性)、平滑筋肉腫(悪性)などが発生するようです。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍も同様に、特に避妊手術を行っていないメスのうさぎによく見られます。
性ホルモンに関連して発症することが疑われているようです。
うさぎのお腹にある左右4対の乳頭の付近にしこりが発生する病気です。
炎症による腫れ(乳腺炎)であることもあれば、乳腺の過形成や腺腫(良性)、腺癌(悪性)といった腫瘍が発生することもあります。
毛芽腫
毛芽腫とは、基底細胞腫とも呼ばれる良性の腫瘍で、皮下で毛包を構成する細胞が腫瘍化ししこりを形成します。
胸の側面部や背中側に発生しやすいと言われていますが、お腹に発生した症例も報告されています。
リンパ腫
白血球の1種である「リンパ球」が、骨髄を除く臓器を中心として腫瘍化してしまう病気です。
犬や猫でもよく見られる病気で、うさぎでも時折見られるようです。
皮膚型リンパ腫、盲腸のリンパ腫などが論文として報告されています。
胸腺腫
胸腺は、心臓の頭側、胸骨の裏あたりにある免疫を担当する臓器です。
ヒトにおいては年齢とともに退縮する臓器ですが、うさぎにおいては成長が終わってもあまり退縮しないと言われています。
その胸腺の上皮の細胞から発生する腫瘍を胸腺腫と呼び、良性の腫瘍と言われています。
主に高齢になってから発生することが多いようです。
その他、扁平上皮癌、悪性黒色腫、肛門粘膜乳頭腫、骨肉腫、肺腫瘍など様々な腫瘍が報告されています。
うさぎの腫瘍の原因とは?
うさぎに腫瘍が発生してしまう原因は、いまだ特定されていないものが多いのが現状です。
加齢や遺伝、紫外線など、様々な要因が推察されています。
例えば上述の子宮腫瘍であれば、性ホルモンとの関係が推測されています。
早期に避妊手術を行うことが対策の一つだと言われています。
また、顔や口腔内などによく認められる「乳頭腫」に関しては、ウィルス感染との関係が示唆されています。
どの腫瘍も早期発見・早期治療が重要ですので、日頃からからだを触ってあげたり、サプリメントなどで免疫力をサポートしてあげたりしましょう。
うさぎの腫瘍の症状は?
うさぎの腫瘍の症状は、その腫瘍の種類や発生部位により様々です。
子宮腫瘍
子宮腫瘍における症状で一番多いのは「陰部からの出血」と言われています。
ある報告では、約50%の確率で認められたと言われています。
次いで多いのが食欲不振で約22%、乳腺の腫れが約71%であったようです。
その他、元気がなくなる、お腹が膨れる、腹痛、多飲多尿、下痢などの症状が認められることがあります。
特に、陰部からの出血は一見「血尿」に見えてしまい、膀胱炎かな?とご来院されるケースも多々あります。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、偶発的に乳腺にしこりが触れて気づくことがあります。
その他、乳腺から分泌物が認められたり、腫瘍が自壊して出血したりして気づくことがあります。
初期のうちだと、元気や食欲に異常が認められないケースも多々あります。
毛芽腫
こちらも、偶発的に体表にしこりが触れて気づくことがほとんどで、目立った症状を示さないことが多々あります。
胸腺腫
胸腺は非常に特徴的な症状を示します。
軽度では無症状か、元気や食欲の低下などが認められることもあります。
しこりが大きくなってくるに従い、隣接する肺や血管を圧迫することにより、瞬膜の突出、眼球の突出、呼吸が早くなるなどの特徴的な症状が認められ始めます。
稀ですが剥離性皮膚炎という免疫異常による皮膚病が起こる場合もあります。
うさぎの胸は狭い為、重症化すると呼吸困難に陥ってしまいますので注意が必要な疾患です。
うさぎの腫瘍の診断に必要な検査は?
うさぎの腫瘍の診断は、犬や猫とほぼ同様のステップで行われます。
まずは上述のような、品種・年齢・しこりの部位・症状から、大まかに腫瘍の種類を推察します。
次に、細胞診が行える部位であれば、注射針を用いて細胞を回収し、顕微鏡で確認します。
取れてきた細胞によって、さらに腫瘍の種類の特定に近づくことができます。
ただし、胸腺腫や子宮腫瘍のように、レントゲン検査や超音波検査でないとその存在が確認できない腫瘍が疑われる場合は、細胞診を実施しないこともあります。
最終的には、その腫瘍を摘出し、病理学的な検査を行うことで腫瘍の種類を特定します。
ただし、腫瘍の摘出は全身麻酔下で行われることがほとんどです。
うさぎは犬や猫と異なり、健康でも麻酔のリスクが高い動物として知られています。
健康を害さない腫瘍と推察されるのであれば、無理な検査や手術を行わず、一度経過観察となるケースもあるでしょう。
うさぎの腫瘍の治療と余命は?
うさぎの腫瘍の治療は、犬や猫と同様に手術が中心となることが多いです。
抗がん剤や放射線による治療については、まだ有用なエビデンスがなく、確立された治療がないのが現状のようです。
特に子宮腫瘍や乳腺腫瘍、毛芽腫、乳頭腫などでは、診断を兼ねて手術による摘出を行うことが多いでしょう。
しかし、肺を含めた遠隔転移が見つかった場合は、手術不適応となるケースがほとんどです。
遠隔転移が見つからなかった場合でも、乳腺癌のように悪性度が高い腫瘍の場合は、術後に抗がん剤治療を組み合わせるケースもあるようです。
ドキソルビシンやビンクリスチン、カルボプラチンなどが用いられるようです。
また、リンパ腫に関しては、犬や猫において抗がん剤治療が中心となる腫瘍として知られており、うさぎにおいても同様のようです。
ただし、犬や猫と異なり、どの抗がん剤を用いてどのようなプランで治療を行うのか、確立した方法はいまだ無いようです。
胸腺腫に関しても、犬や猫では手術を行うことが多いですが、全身麻酔のリスクが高いうさぎにおいてはステロイドによる内科的な治療を行うのが一般的なようです。
余命に関しては、どの腫瘍もあまりまとまった報告がされていないのが現状です。
一般的に子宮腺癌であれば、数か月~1年ほどの余命と言われています。
子宮腫瘍が放置された場合は、慢性の食欲不振や、持続的な陰部からの出血、癌性腹膜炎、子宮破裂などにより命を落とすとの報告がされています。
上記のようなお薬による治療の他、早期の不妊手術による病気の予防も重要であり、サプリメントでの日々の体調管理も重要です。
うさぎの腫瘍に使用されるサプリメントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- タヒボエキス
- アガリクス
- 冬虫夏草
- プロポリス
うさぎの腫瘍の治療費の目安は?
うさぎの腫瘍の治療費は、しこりの部位や大きさ、術前検査の内容、治療の内容、動物病院により大きく異なることが予想されます。
手術を行う場合は、術前検査で血液検査やレントゲン検査、エコー検査、細胞診を行うと約3~4万円程と思われます。
例えば子宮腫瘍であれば、開腹し子宮卵巣全摘出術を行ったとすると、麻酔や入院、手術の費用で10~15万円程と思われます。
さらに、術後抗がん剤治療を加えた場合はその費用が追加でかかります。
胸腺腫において、ステロイドによる治療のみを行う場合であれば、月5000円~7000円程度と思われます。
まとめ
獣医療の発達により、犬や猫と同様にうさぎも長寿になってきました。
それに伴い、腫瘍などの疾患も多くなっています。
元気で長く一緒にいる為には、日頃のスキンシップで病気を早期に発見することはもちろんのこと、サプリメントなどで体調を整えてあげることが重要です。
些細な事でも、異変に気づいたら早めに受診するよう心掛けましょう。

参考資料
・一般社団法人日本コンパニオンラビット協会
・獣医腫瘍学テキスト第二版
・三鷹獣医科グループ/ウサギの飼育と病気
・ウサギの子宮腫瘍36
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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