「精巣腫瘍」インコを飼っている飼い主さんは、一度は耳にしたことがある病名なのではないでしょうか?
セキセイインコでは多く発症する病気で、予後・余命や治療法、予防法などが気になるところですよね。
そこで今回の記事では、インコの精巣腫瘍について症状などを始め、余命なども解説していきます。
精巣腫瘍とは?
精巣腫瘍とは、その名の通り精巣にできる腫瘍のことで、別名精巣がんと呼ばれています。
オスのインコで発症しやすく、初期ではあまり症状がないことから、早期発見が難しい病気でもあります。
精巣に腫瘍ができることで、後期にはさまざまな症状が現れます。
精巣腫瘍になりやすい鳥種

全鳥種で掛かる可能性のある精巣腫瘍ですが、圧倒的にセキセイインコの罹患率が高いというデータがあります。
セキセイインコのオスを飼っている飼い主さん、これからセキセイインコを飼おうと思っている方は、精巣腫瘍の好発鳥種であることは念頭においておくのが大事ですね。
精巣腫瘍の原因
原因としては、実際のところ明確にはわかっていないのが現状です。
しかし、いくつか原因となるのではと謳われている事があるので、ご紹介します。
遺伝的要因
セキセイインコの多くは遺伝性疾患があることがわかっています。
生まれつき精巣腫瘍になる確率が高いという状態です。
回避する術はないですが、全員がなるわけではないため、セキセイインコを飼う時は頭の片隅において予防策なども取り入れて愛情を持って育てましょう。
高齢
人でも同じくガンは高齢になるにつれてリスクが高まって来ますよね。
インコも同じです。
高齢のインコはとくに気にして見ておいてあげましょう。
インコの寿命は10年程度といわれていますが、5歳を超えたくらいから警戒しておくと良いかもしれませんね。
環境温度
精巣は熱さに弱い特徴があります。
そのため、高温の環境では精巣腫瘍化しやすいと言われています。
夏場は適温になるようにクーラーを使用し、冬場でもヒーターのつけすぎなどは注意しましょう。
寒さもしのげる場所を提供しつつ、室温は一定に保って快適な居住空間を作りましょう。
また、放鳥中も暖房器具や火の側で止まらないようにチェックしておくと良いですね。
精巣腫瘍の症状
では、精巣腫瘍の症状とは一体どんなものがあるでしょうか。
基本的に初期段階はあまり症状が出ない病気のため、早期発見が難しい疾患でもあります。
少しでもおかしいと気づいたときには、すぐに獣医師に相談してくださいね。
メス化
精巣腫瘍は性ホルモンが重要になります。
そのため、女性ホルモンの影響でメス化してしまうことがあります。
わかりやすいのは、蝋膜(ろうまく)の色が褐色化してしまう現象です。
蝋膜というのはくちばしのうえの鼻のような器官のことです。
通常の色から変化してきたかなと感じたら、早めに獣医師に相談してくださいね。
また、太りやすくなったり体力が低下したり、飛ぶ様子がいつもと違ったりする可能性もあります。よく観察しておきましょう。
過剰な発情行動
発情行動が見られることがあります。
交尾許容姿勢を取ったり、発情していると飼い主さんがわかるくらいの過剰行動が現れます。
精巣の腫大につながるので、なるべくは発情を制御できると好ましいですね。
肥大化
腫瘍が成長してしまうと、肉眼的にも体が大きくなってくるのがわかります。
精巣は背中側にあるため、背骨のあたりがまん丸く、またいびつな形に感じることもあります。
肉眼的にわかるようになってくると、末期に近づいていることになってしまうので、それより早くに気づけると良いですね。
消化器症状(排便困難)
精巣腫瘍が大きくなることで消化器が圧迫され、排便が困難になってしまう症状も出ることでしょう。
排便が困難になると便秘に繋がったり、食欲低下に繋がったりと、全身状態の悪化に起因してしまいます。
しかし、腫大化してしまった腫瘍を根本的に取り除くしか緩和させる方法がないため、対症療法で排便のサポートもしておく他ないともいえます。
呼吸困難
腫瘍が腫大化してしまうことで、体が圧迫され最終的には呼吸困難を起こしてしまいます。
呼吸困難は緊急状態です。
一刻も早く動物病院で処置してもらいましょう。
鳥類は、呼吸の確認が難しいですよね。
よく観察して早めの行動を心がけましょう。
精巣腫瘍の治療法
精巣腫瘍はどのような治療法があるのでしょうか。
人の医療のガンと同じように考えると理解が深まるかもしれませんね。

外科手術
第一選択は、腫瘍そのものを取り除く外科手術です。
腫瘍がまだ小さく、他への転移が認められない場合は外科手術がおすすめです。
しかし、小さな鳥類の精巣腫瘍摘出術はかなり難しく、手術中に命を落とすインコも珍しくありません。
健康状態の良いインコでも成功率は60〜70%と言われています。
外科手術のリスクや成功率、予後などを詳しく聞いたうえで、獣医師や家族とよく相談して決断しましょう。
抗癌剤治療
精巣腫瘍、いわゆるガンに対しては抗がん剤治療が選択されることもあります。
もちろん、人の医療と同じく副作用があり、決して楽な治療ではありません。
愛鳥の体力面や経済面、治療後の生活の変化など、あらゆる方向性を加味して考慮しましょう。
対症療法
外科手術も抗癌剤治療も選択しない際は、対症療法で延命する方法があります。
食欲の低下が見られれば補液や栄養補給、消化器症状があればその治療、食事介護や排便介助などの介護をしておく形になります。
お薬やサプリメントを使用して、少しでも体力をキープするのも良いですね。
この治療は精巣腫瘍を治すことではなく、苦しくなく痛くなく日々を過ごせるように向き合っていく治療ともいえますね。
精巣腫瘍の予防法
では、そんな精巣腫瘍にかかりにくくする予防法はあるのでしょうか。
セキセイインコでは、遺伝的要因が大きいため予防法を実施しても病気になってしまうこともありますが、できる対策は取り入れて愛鳥の健康を守りましょう。
生活環境(温度管理)を徹底する
インコの健康を保つためには、生活環境を整えることがとても重要です。
とくに、精巣腫瘍の予防には温度管理が大切です。
精巣は熱に弱く高温の環境では腫瘍化を助長してしまう危険性があるとご説明しました。
そのため、一定の温かい空間は必要ですが常に高温になりすぎないようにしておく必要があります。
鳥かご内では、寒さをしのげる場所も暑さから逃げられる場所も用意し、インコの判断で体温調節をできるようにするのが好ましいですね。
清潔な居住空間を保つ
精巣腫瘍の予防法だけではありませんが、居住空間を常に清潔にしておくのも大切です。
当たり前ですが、日々の清掃と消毒は欠かせません。特に止まり木などの汚れを見落とすことがありますが、毎日キレイに拭いてあげましょう。
お水やご飯の入れ物も清潔にし、糞もこまめに掃除しましょう。
当たり前にやるべきことで、インコの健康が保たれることに大きく関わってきますので、怠らずにおこないましょう。
食事管理
食事管理も立派な予防法のひとつです。
毎日新鮮できれいな飲水を用意し、ご飯の量や種類などもきちんと管理しましょう。
複数羽で飼っている際は、ひとりひとりがちゃんと食事を取れているかどうか把握する必要があります。
また、栄養面にも十分気を配り、ご飯で健康が保たれるように心がけたいですね。
また、精巣腫瘍になってしまったあとでも、進行すると食欲不振が出てきてしまいますが、外科手術・抗がん剤治療においても体力面はとても重要視される事項です。
しっかりと食べさせて体力の維持を目指しましょう。
定期的な診察
精巣腫瘍の症状は、初期ではあまり出てこない特徴があり、発見時にはかなり進行していることが見受けられます。
そのため、健康なときにも健康診断や定期的な診察を受けておくことが大切です。
特に5歳を超えているインコは3ヶ月に1度は獣医師に診てもらうと安心でしょう。
人も1年に1〜2回の健康診断を受けますよね。
それと同じでインコの病気も早期発見のため日々の健康診断は欠かせないと言えますね。
精巣腫瘍の余命(予後)
結論からいうと精巣腫瘍と診断されたインコの余命はあまり良くないことがほとんどです。
ガンと聞くとみなさん想像ができやすいと思いますが、治療によって大きく余命は左右されます。
しかし、精巣腫瘍のインコの死亡率は非常に高く、かかりたくない病気の代表とも言えるでしょう。
精巣腫瘍の治療にかかる費用の目安
精巣腫瘍の治療費としては、外科手術の実施でおおよそ15万円程度が相場です。
もちろん、手術が成功しても術後管理があり入院は免れないため、入院費用として1日7,000円〜15,000円程度と言われています。
そのため、元気で帰宅できるためには20〜30万円ほどかかることが予想されます。
また、外科手術でなく抗癌剤治療や対症療法を選択した場合にも1ヶ月で平均60,000円〜10万円程度の費用がかかることもあります。
人でもがん治療はかなりの高額となりますよね。
インコの世界では人のように高額医療制度などの支援がないため、家族で話し合ってみなさんが納得したうえで治療の決断をするのが良いかもしれませんね。
まとめ
インコの精巣腫瘍はいわゆるガンで、セキセイインコに多く見られる病気です。
発症すると予後はあまり良くなく、外科手術・抗がん剤治療などが治療法として選択されます。
外科手術の手技は難しくインコの体力面・経済面・成功率や余命なども考慮し、治療の判断をするとよいですね。
原因としては遺伝的要因が多いと言われていますが、高齢であることや高温環境に身をおいておくことでも発症するリスクが高まると言われています。
そのため、居住空間の温度設定はきちんと管理し、また、衛生面や食事管理にも気を配りましょう。
また、健康状態を維持できるように健康なうちから定期的な診察を受けることをおすすめします。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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