猫と暮らしていると、壁や家具に少量の尿がかけられていることに気づいて「これってトイレの失敗?」と戸惑った経験がある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
それは「スプレー行為」と呼ばれる行動かもしれません。
猫のスプレーはニオイがきつく、飼い主さんを悩ませる問題行動のひとつとしてあげられることもあります。
今回は、猫がスプレー行為をする理由とやめさせる具体的な方法までを詳しく解説します。
猫のスプレー行為とは?
猫のスプレー行為は、トイレとは異なる目的でおこなわれる行動です。
ここでは、スプレー行為とはどのような行動なのか、なぜおこなわれるのかなど、スプレー行為の基本について解説します。

猫のスプレー行為とはどんな行動?
猫のスプレー行為とは、猫が壁や家具などの垂直な面に向かって、ニオイの強い少量のおしっこを吹きかける行動を指します。
一般的な排尿とは異なり、スプレー時の猫は立ったままおしっこを霧状に放出します。
この行為は、マーキングや性的なアピールなどが目的とされています。
おもに、未去勢のオス猫に見られる行動ですが、去勢したオス猫の10%、避妊したメス猫の5%でも見られると言われています。
スプレー行為は、外で暮らす猫はもちろん室内飼いの猫にも見られます。
強いニオイを発するため、飼い主さんを悩ませる問題行動のひとつとしてあげられることも少なくありません。
猫のスプレー行為と排尿の違い
スプレー行為と排尿は、行動の目的が根本的に異なります。
トイレの失敗と勘違いされることも多いため、行動の違いをよく観察し、適切に対処することが必要です。
| スプレー行為 | 通常の排尿 | |
| 姿勢 | 立ったまま、尻尾を震わせる | 座っている |
| 尿の量 | 少量(スプレー状) | 通常量 |
| 対象物 | 壁、家具などの垂直面、決まった場所 | トイレ、床などの水平面 |
| 行動の目的 | マーキング、自己主張 | 排泄、生理現象 |
スプレー行為の際は、立った状態で尻尾を持ち上げて、少量のおしっこを後ろに向かって噴出します。
スプレー行為のあとは、尻尾の先を曲げて震わせて、足踏みをする様子が見られますので、見ていれば簡単に見分けがつくでしょう。
ただし、猫によっては水平面に向かってする場合もあるため注意が必要です。
猫がスプレー行為をするのはなぜ?
猫がスプレー行為をする理由はさまざまですが、大きく分けて3つの要因が挙げられます。
- 性的アピール
- 縄張りの主張
- ストレスや不安
これらは猫の本能に基づく自然な行動です。
スプレー行為は、問題行動と捉えられることも多いのですが、猫にとっては重要なコミュニケーション手段のひとつとなっているのです。
それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
性的アピール
とくに、未去勢のオス猫に多く見られるのが、性的アピールとしてのスプレー行為です。
発情期になると、オス猫は自分の存在をメス猫に知らせるために尿をスプレーすると言われています。
室内飼育であっても外の猫のニオイを感じ取って、本能的にスプレー行為をすることがあるため注意が必要です。
縄張りの主張
猫は縄張り意識が非常に強い動物です。
そのため、家の中でほかの猫や動物の気配を感じると、自分のニオイを強調する意味でスプレー行為をすることがあります。
これは「自分の居場所を守りたい」という本能による行動です。
また、模様替えや家具の移動など些細な変化も、猫にとっては縄張りの危機と捉えられ、マーキングの理由になります。
そのほか、外を知らない猫が通った、新入りのペットが加わったというときにもスプレー行為をする可能性が高まります。
ストレスや不安
猫は環境の変化に敏感で、ストレスや不安を感じるとスプレー行為をしやすくなります。
たとえば、以下のような些細なできごとが猫の精神状態に影響し、スプレー行為の原因になり得ます。
- 引っ越し
- 家族構成の変化
- 見慣れない来客
- 大きな音
猫は自分のニオイをつけて安心を得ようとして、スプレー行為をおこなうのです。
また、構ってもらえない寂しさや孤独感からくるストレスが原因となることもあります。
猫がスプレー行為をするのはどんなとき?
猫がスプレー行為をする理由について解説しました。
では、実際にどのようなときにスプレー行為をおこなうのかを紹介していきます。
やめさせるための手がかりにもなりますので、ぜひ知っておきましょう。

多頭飼いをしている
多頭飼いをしている家庭では、猫同士の縄張り意識や優劣関係がスプレー行為の引き金になることがあります。
数が多くなるとその分スプレーのリスクが高くなり、10匹以上の多頭飼いでは100%スプレー行為をするというデータもあるようです。
とくに、新しい猫を迎え入れた直後や、猫同士の相性があまり良くないとき、「自分の場所」を主張するスプレー行為が多く見られます。
相性の悪い猫を追い出そうとする意識のあらわれでもあります。
窓の外を野良猫が通った
室内飼いの猫であっても、窓越しに野良猫が通ることで強いストレスを感じ、スプレー行為をおこなうことがあります。
これは、自分の縄張りに見知らぬ猫が侵入してきたと感じて、縄張りを主張するための行動です。
侵入者を追い払おうとしていると考えられます。
とくに、未去勢のオス猫が外にいる場合、スプレー行為の原因になりやすいでしょう。
環境の変化によるストレス
猫は日常のパターンや環境の安定を好む生き物です。
そのため、家具の配置変更や引っ越し、飼い主さんの生活リズムの変化、来客などの外的要因によって強いストレスを感じることがあります。
こうしたストレスを抱えると、自分のニオイを使って安心感を得ようとし、スプレー行為をおこなうようになります。
変化があった直後に、特定の場所でのスプレー行為が増えたような場合は、ストレスのサインかもしれません。
発情期に自分の存在をアピールする
発情期を迎えた猫は、自分の存在を異性に知らせるために積極的にスプレー行為をおこなうことがあります。
とくに、未去勢・未避妊の猫で多く見られ、性フェロモンを含んだ尿を使って自分の状態や存在を周囲に伝える役割を果たします。
たとえ、完全室内飼いであっても、外部からのニオイや音に反応してスプレー行為が誘発される場合があります。
猫のスプレー行為を止めさせる方法
猫のスプレー行為は、原因を理解したうえで適切に対処すれば、改善できる可能性があります。
スプレー行為をやめさせるための具体的な方法について見ていきましょう。
去勢手術をおこなう
性的な理由でおこなわれるスプレー行為は、去勢手術を受けることで性的衝動が減少し、90%の猫がしなくなると言われています。
とくに、性成熟前に去勢するとスプレー行為を抑えることができます。
すでにスプレー行為の経験がある猫では効果が期待できない場合もありますが、それでもニオイが軽減される、頻度が減る可能性がありますので、去勢手術を検討する理由になり得るでしょう。
また、メス猫のスプレー行為にも避妊手術が効果的です。
メス猫では稀ですが、発情期にスプレーをおこなう個体がいます。
困っている場合は、獣医師に相談することをおすすめします。
不満やストレスを取り除く
不満やストレスが原因でスプレーしている場合、その原因を取り除くことが根本的な解決につながります。
原因としては、引っ越しなどの環境の変化、新たな猫が増えた、トイレ環境が気に入らないといったことが考えられます。
猫の不満やストレスを減らすためには、原因を特定して対策するのはもちろん、落ち着ける空間を確保することも大切です。
できれば、猫が安全に隠れられる高い場所があると良いでしょう。
また、同居の猫に不満がある場合は、時間をかけて慣らす必要があります。
場合によっては、生活空間を分けることも検討しましょう。
ご飯をあげる・ベッドを置く
一般的に猫は、食事の場所では排泄をおこないません。
そのため、スプレー行為にも一定の効果が期待できる可能性があるでしょう。
いつもスプレーをしている場所に、ご飯や水皿を置いて様子をみます。スプレーの場所が複数ある場合は、すべての場所に置きます。
また、猫はきれい好きなため、自分の寝床でも排泄しません。
スプレーをする場所にベッドを配置することで、その場所を「快適な生活空間」として認識させ、スプレー行為を抑える効果が期待できます。
フェロモン製剤を使用する
動物病院では、猫のストレス軽減やスプレー行為の抑制を目的としたフェロモン製剤を処方することがあります。
猫が安心できる環境をつくる手助けになり、マーキング行動を抑える補助的な効果が期待されます。
代表的な製品にはフェリウェイ(Feliway)があります。
ただし、体質や状況によって効果が異なるため、使用前には必ず獣医師の指導を受けましょう。
そのほか、気持ちを落ち着かせる効果が期待できるサプリメントの活用もおすすめです。
猫のスプレー行為がなおらない場合は?
対策を試してもスプレー行為がなかなかなおらないこともあります。
そんなときは、少し視点を変えて、掃除の徹底や環境を整えるようにすることも大切です。

ニオイが残らないように徹底的に掃除する
猫は一度スプレーをした場所に再びマーキングしやすい習性があります。
これは、残された自分のニオイを手がかりに同じ場所を自分の縄張りと認識するためです。
スプレーされた場所は、徹底的にニオイを消すようにしましょう。
丸洗いができるものは酵素系の洗濯洗剤で洗い、洗えない場合はすぐに水拭きをして、仕上げにアルコールやペット用の消臭剤を使用するのが有効です。
そのほか、クエン酸、重曹を使って掃除をするのもおすすめです。
スプレー行為をしてもよい居場所をつくる
完全にスプレー行為をやめさせるのが難しい場合には、スプレーしてもよい場所を用意するという方法もあります。
見た目は悪くなるかもしれませんが、いつもスプレーをする場所にトイレシーツを貼り付けるのがよいでしょう。
トイレシーツなら、スプレーのおしっこをキャッチでき、ニオイの付着も防げます。
また、汚れたシーツを交換するだけで済みますので、面倒な手間もありません。
猫のスプレー行為を止めさせる際の注意点
猫のスプレー行為に対して絶対にやってはいけないのが叱ることです。
スプレー行為は本能ですから、叱ったからといってやめられるものではありません。
そもそも、猫は罰を与えられてもなぜ怒られているのか理解できないのです。
飼い主さんに突然叱られてもわけがわからず、ストレスを与えてしまうだけになってしまう可能性があります。
場合によっては、飼い主さんを怖い人と認識して、これまでに築いてきた信頼関係を壊してしまうかもしれません。
猫の気持ちに配慮した対応を心がけましょう。
まとめ
猫のスプレー行為は本能に根ざした行動であり、決してトイレの失敗ではありません。
縄張りの主張や発情のアピール、ストレスなどさまざまな理由でおこなわれるもので、飼い主さんがその背景を正しく理解し、適切に対処することが問題解決の第一歩です。
猫のスプレー行為は、去勢手術や環境の見直し、消臭・掃除の工夫などで多くの場合は改善が期待できます。
大切なのは、スプレー行為をする必要がない環境づくりであり、またスプレー行為をされても大きな問題にならないような工夫をすること。
愛猫も飼い主さんも快適に暮らせるような対策が求められます。
関連記事:猫にトイレのしつけはいらない?しつけの方法やしつけスプレーの効果解説
======================
この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
======================








コメント