かつては犬の死因1位だったフィラリア症も、今は予防薬の投薬が一般的になり、感染リスクは低下していると言われています。
しかし、発症してしまえば命にかかわる重篤な病気であることにはかわりません。
今回は、そんな犬のフィラリア症について、予防はいつからするの?どんな予防薬があるの?費用はどのくらい?といった疑問にお答えしながら、フィラリアの基礎知識について解説します。
犬のフィラリア症とは?

犬のフィラリア症は、フィラリアの感染によって引き起こされる病気です。
「犬糸状虫症(いぬしじょうちゅうしょう)」とも呼ばれています。
フィラリアに感染すると、重い肺疾患や心疾患を引き起こすほか、腎臓や肝臓などにも影響を及ぼします。
病気がある程度進行するまで目立った症状が見られないため、感染初期にフィラリアの感染に気づくのは困難です。
また、フィラリア症は発症すると、駆虫や治療が難しく、命にもかかわる病気です。
犬のフィラリア症の症状
フィラリアに感染すると、時間とともに以下の症状があらわれるようになります。
- 咳をするようになる
- 食欲がなくなる
- 元気がなくなる
- 呼吸が苦しそう
- お腹が膨らむ
- おしっこが赤くなる
フィラリア症に気づく最初の症状は「咳」で、その後に元気がなくなり散歩を嫌がるといった様子が見られるようになるでしょう。
このときには、すでに心臓や肺、血管にもダメージが及んでいます。
進行するとお腹に水が溜まってぽっこり膨れたり、脚がむくんだりするほか、激しい運動中に失神する、咳の際に血が混じるなどの症状も見られます。
また、稀なケースですが、突然真っ赤なおしっこをして、1週間ほどで死亡するケースもあります。
犬のフィラリア症の原因と感染経路
犬のフィラリアは、蚊を媒介して感染を広めます。
直接犬から犬に感染することはありません。
フィラリアに感染している犬の血液中には、フィラリアの幼虫(ミクロリラリア)がおり、その犬の血を吸った蚊が次に刺した犬にミクロフィラリアを移すことで感染が成立します。
具体的な感染サイクルは以下となります。
- ミクロフィラリアを持った蚊がほかの犬の血を吸う
- ミクロフィラリアが体内に入り感染する
- ミクロフィラリアが成虫に成長する(感染後約6ヶ月)
- メスの成虫が血液中に卵を産む
- 蚊に血を吸われる際に蚊の体内に移動する(1に戻る)
このように、フィラリアの感染には蚊が関係しているため、蚊が活発になる春から秋にかけては、感染のリスクが高まります。
フィラリアは人間やほかの動物にも感染する
フィラリアは、犬の病気と思われがちですが、実は犬のほかにも猫やフェレット、キツネなど30種類以上の動物に感染する可能性があり、種類によっては人間にも感染します。
人間に感染することはまれですが、海外では現在も感染の報告があります。
人間は最終宿主ではないために体内で成虫に成長できず、問題になることはほとんどありません。
ただし、運悪く幼虫が肺に到達してしまった場合は、咳や胸痛などの症状を引き起こすことがあるため注意が必要です。
犬のフィラリア症の治療法と費用

犬のフィラリア症のおもな治療法は、以下の2つとなります。
- フィラリア予防薬の長期投与
- 外科手術による摘出
このほかに、成虫駆除薬を投与する治療もおこなわれていましたが、現在はおこなわれていないようです。
それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。
フィラリア予防薬の長期投与
フィラリア予防薬の長期間投与では、成虫が増えないように予防薬でミクロフィラリアを駆除しながら、感染している成虫が寿命で死んでいくのを待つことになります。
成虫の寿命は、5〜6年ほどとなりますので、長期戦覚悟の治療といえるでしょう。
また、ミクロフィラリアが大量にいる状態で予防薬を使用するとアナフィラキシーショックを起こすことがあるため注意が必要です。
アナフィラキシーショックを防ぐためステロイドを同時に投薬し、注意深く経過を観察しながら治療が進められます。
治療費の目安は、月に1,000~6,000円ほどとなります。
外科手術による摘出
心臓に寄生したフィラリアを手術によって摘出します。
治療期間は短くすみますが、すべての犬がおこなえるわけではありません。
VCS(大静脈症候群)などの急性フィラリア症を発症し、緊急を要する場合におこなわれます。
手術後は、フィラリア予防薬を投与し幼虫を駆除します。
ただし、手術には特殊な器具と高度な技術が必要なため、対応できる動物病院は多くありません。
治療費の目安は、手術費用が7万円ほど、そのほかに予防薬の費用などがかかります。
成虫駆除薬の投与
かつては、フィラリアの成虫を駆除する薬を投薬する治療をおこなっていたこともありましたが、現在日本では成虫の駆除薬が販売されていません。
そのため、基本的にはおこなわれない治療法です。
この治療法は成虫を死滅させるため、心臓や血管、肺に負担をかけてしまう可能性があります。
また、治療期間も数ヶ月から1年半と長期にわたります。
犬のフィラリア予防について
犬のフィラリアは、予防薬を投与することで発症を防げます。
ここでは、予防の重要性から具体的な予防の方法や注意点までを解説します。
フィラリア予防の重要性
犬のフィラリア症は、発症すると命にかかわる危険な病気です。
治療も長期間の投薬が必要になるなど、飼い主さんにとっても負担が大きいでしょう。
そんなフィラリアも適切に予防することで、ほぼ100%防ぐことができると言われています。
フィラリアは、治療をして治ったとしてもダメージを受けた心臓や肺を治すことはできません。
愛犬の健康を守るためにも、ぜひ予防をおこないましょう。
予防薬の投薬にはフィラリアの検査が必須
フィラリアの予防薬を投与する際には、血液検査をおこないフィラリアに感染していないことを確認する必要があります。
フィラリアの予防薬とはいいますが、実際には体内に入ってしまったミクロフィラリアを駆除し、フィラリア症を発症させないための薬です。
すでにフィラリアに感染している状態でこの薬を使用すると、成虫が産んだ大量の幼虫が一気に死滅してアナフィラキシーショックを起こし、最悪は命を落としてしまう可能性もあります。
「検査をせずに薬だけほしいけどダメなの?」と言う飼い主さんの声も聞かれますが、このような理由から検査せずに投薬するのは絶対にやめましょう。
フィラリアの予防期間
フィラリアの予防はいつからはじめたら良いのでしょうか?
予防期間は一般的に、蚊が発生した1ヶ月後から、蚊がいなくなった1ヶ月後までとなっています。
蚊がいなくなったからと投薬をやめる飼い主さんもいるようですが、体内にいるミクロフィラリアを駆除するのが目的となりますので、確実に予防するためには、いなくなってから1ヶ月後まで投薬をする必要があります。
目安としては、5〜12月が一般的ですが、沖縄は通年、鹿児島県は4〜1月、東北・北海道は6〜11月が一般的です。
ただし、実際の投薬期間は蚊の発生時期によりますので、目安とズレが生じる可能性もあります。
獣医師の指示に従って投薬してください。
通年予防がニュースタンダードになる?
一般的な投薬期間は上述のとおりですが、最近では通年投与という考え方が出てきているようです。
温暖化による気候の変化や、住宅環境の改善などで、蚊の活動期間が長くなり、冬でも活動をする可能性が否定できなくなっているためとされています。
今後は、沖縄以外の地域でも1年を通してのフィラリア予防が推奨されるようになるかもしれません。
予防薬の投薬を忘れたときはどうする?
予防薬を飲ませ忘れると、フィラリアの感染リスクが上昇しますので、忘れずに毎月1回確実に投薬する必要があります。
もし、飲ませ忘れてしまった場合も、数日程度なら気づいた時点で飲ませても問題になるとは考えにくいですが、1〜2ヶ月忘れた場合は、獣医師に相談し指示に従いましょう。
逆に間違って多く飲ませてしまった場合は、基本的には様子見になると思われますが、気づいた時点ですぐに獣医師に相談してください。
犬のフィラリア予防薬の種類

フィラリアの予防薬にはさまざまなタイプがあります。
- 錠剤タイプ
- チュアブルタイプ
- スポットオンタイプ(滴下型)
- 注射タイプ
予防薬は適切に投薬されないと効果がなくなってしまいますので、確実に投薬できる予防薬を選択する必要があります。
それぞれの特徴について詳しく紹介します。
錠剤タイプ
錠剤タイプはアレルギーのある犬にも安心して与えられるというメリットがあります。
一般的には、食事に混ぜたり、直接口の奥に入れて飲ませたりしますが、神経質な犬は飲ませるのが難しい場合もあるでしょう。
また、ノミ・ダニや消化管内の寄生虫には効果がありません。
必要に応じて複数の駆虫薬を飲ませることになります。
チュアブルタイプ
薬が苦手な犬におすすめなのがチュアブルタイプの予防薬です。
チュアブルタイプの駆虫薬は、犬が好むニオイや味にしてあるため、おやつ感覚で与えられます。
犬にも飼い主さんにも負担が少なく、美味しく予防ができるのが特徴です。
ノミやダニ、消化管内寄生虫などの予防が可能なオールイワンタイプが一般的ですので、夏の寄生虫予防はこれだけでも安心です。
ただし、食物アレルギーのある犬には注意が必要な場合があります。
スポットタイプ(滴下型)
薬を飲むのが苦手、食物アレルギーがあるという犬には、スポットタイプの予防薬が良いでしょう。
首の後ろに液体の薬を塗るだけでフィラリア予防ができるお手軽な薬です。
同時にノミやミミヒゼンダニなどの予防などができるタイプがあります。
ただし、塗る際に毛をかき分けて確実に皮膚に塗る必要があるため、抵抗されると難しいかもしれません。
また、皮膚が弱いと使えない場合も。
注射タイプ
これらのほかに、注射の予防薬もあります。
年に1回注射をするだけで、確実に通年予防ができるのがいちばんのメリットです。
ただし、錠剤タイプと同じく、フィラリア以外の寄生虫には効果がありません。
必要に応じてほかの予防薬を使用することになるでしょう。
犬のフィラリア予防にかかる料金の目安
予防薬の費用は使用する薬の種類や犬の体格などによって大きく異なります。
以下は、費用の目安です。
| 錠剤タイプ | 900〜2,500円程度/月 |
| チュアブルタイプ | 2000〜4,000円程度/月 |
| 滴下タイプ | 2000〜4,000円程度/月 |
| 注射タイプ | 7000〜1,5000円程度/年 |
錠剤タイプは安価ですが、飲ませるのが難しい犬も多いでしょう。
注射タイプは金額は大きくなりますが、年に一度ですむというメリットがあります。
金額だけにとらわれずに確実に投薬できる方法を選択することが大切です。
まとめ
犬のフィラリア症と予防法について紹介しました。
犬にとってフィラリアは、治療が難しく、しかも命にかかわる感染症ですが、予防薬を適切に投与することでほぼ100%予防することが可能です。
確実に予防するためには、愛犬の性格や好みに合った予防薬を選ぶことが重要です。
また、予防期間は地域によって異なりますので、わからない場合は早めに獣医師に確認することをおすすめします。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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