猫にアレルギーはある?症状や原因、アレルギー検査を獣医師が解説
愛猫に皮膚のかゆみやくしゃみなどのアレルギーを疑う症状が見られると、とても心配になりますよね。
そんなとき、
「猫にアレルギーってあるの?」
「どんな症状が出るの?」
「アレルギー検査をした方がいいの?」
といった疑問をお持ちではありませんか?
実は、猫にもアレルギーがよく起こります。
一方で、猫ではまだ精度の高いアレルギー検査が確立されていないことをご存知でしょうか?
今回は、猫でのアレルギーの原因や症状、アレルギー検査、治療法などについて獣医師が分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛猫のアレルギーとの上手な付き合い方の一助になれば幸いです。
猫にアレルギーはある?
結論から申し上げますと、猫にもアレルギーがあり、さまざまな症状を引き起こすことが知られています。
そもそも「アレルギー」という言葉は、1906年にクレメンス・ピーター・フォン・ピルケ(Clemens Peter von Pirquet)が「奇妙な反応」という意味で使ったのが始まりです。
現代において「アレルギー」とは、本来は病原体から体を守るように働く「免疫」というシステムが、ある特定のアレルゲンに対して過剰に反応することで、さまざまな症状が引き起こされることをいいます。
猫のアレルギーとは?
では、猫ではアレルギーはどのように分類されているのでしょうか?
2021年に、ノミや食物アレルギーが関与せず、痒みが生じる皮膚炎を「猫アトピー性皮膚症候群(FASS)」と呼ぶよう提案がなされました。
その論文ではその他に、呼吸器症状が出るものを「猫喘息」、食べ物のアレルギーに関連したものを「食物アレルギー」と分類しています。
さらに、これら3つを合わせて「猫アトピー症候群(FAS)」と呼ぶようになりました。
猫のアレルギー症状とは?
では、猫アトピー症候群には、どのような症状が見られるのでしょうか?
猫アトピー性皮膚症候群の症状は多彩で、かつ犬と症状の出方が異なるため、その点も未解明なことが多いのが現状です。
猫アトピー症候群では、
- 皮膚症状
- 呼吸器症状
- 消化器症状
のいずれか、または複数が現れることが一般的です。それぞれを詳しく見ていきましょう。
皮膚症状
猫アトピー症候群のなかでも、特に皮膚に症状が出やすい猫アトピー性皮膚症候群では、以下のような症状が認められることが多いです。
頭頸部掻爬痕(FHNP)
特に顔面や首といった部分に、痒みからひっかいてできる外傷が生じます。下顎や目の上から耳の付け根にかけて、頬などに外傷が見つかることが多いです。
粟粒性皮膚炎(MD)
耳、背部、腰部、下腹、大腿などに、1~2mmの赤い丘疹(ブツブツ)が認められます。
外傷性脱毛(SIAH)
痒みに伴って、過剰にグルーミングを行うことにより毛がちぎれ、脱毛が認められます。下腹や大腿に多く見られますが、前肢や体幹に起こることもあります。
好酸球性肉芽腫(ECG)
好酸球と呼ばれる白血球の一種が多数認められる病変を指します。口唇の粘膜によく起こる「無痛性潰瘍」や、直線状に真皮が肥厚する「線状肉芽腫」、隆起した潰瘍部が見られる「好酸球性局面」などが該当します。
呼吸器症状
猫アトピー症候群のなかでも、特に呼吸器に症状が出やすい猫喘息では、
- 咳
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)
- 呼吸が苦しそう
といった症状が、慢性的に見られることが多いです。そのほか、鼻炎を伴った場合は、くしゃみや鼻水、目やになどが同時に見られることも珍しくありません。
消化器症状
猫アトピー症候群のなかでも、特に消化器に症状が出やすい食物アレルギーでは、
- 嘔吐
- 下痢
- 血便
- 軟便
といった症状が、慢性的に見られることが多いです。また、前述の皮膚症状を同時に伴うことも少なくありません。
猫のアレルギーの原因とは?
では、猫アトピー症候群の原因としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?
猫アトピー症候群の原因となるアレルゲンの一例を、以下の表にまとめました。
表1 猫における検査可能なアレルゲンの例
| 環境・吸入アレルゲン | |
|---|---|
| 節足動物 | ヤケヒョウヒダニ, コナヒョウヒダニ, アシブトコナダニ, ノミ, 蚊 |
| キク科植物 | ヨモギ, オオブタクサ, アキノキリンソウ, タンポポ, フランスギク |
| 真菌(カビ) | アスペルギルス, アルテナリア, クラドスポリウム, ペニシリウム |
| イネ科植物 | カモガヤ, ハルガヤ, オオアワガエリ, ホソムギ, ギョウギシバ |
| 樹木 | ニホンスギ, シラカンバ, ハンノキ |
| 食物アレルゲン | |
|---|---|
| 魚肉 | カツオ, マグロ, サケ, タラ |
| 肉類・卵類 | 鳥肉・卵:鶏肉, 卵白, 卵黄, 七面鳥, アヒル 獣肉:牛肉, 羊肉, 豚肉 乳:牛乳 |
| 植物系 | 小麦, トウモロコシ, 米, 大豆, ジャガイモ |
しかし、それだけではなく、特定の品種(アビシニアン・ヒマラヤン・ペルシャなど)に多く発生すると報告されていることから、犬と同様に遺伝性疾患の可能性が考えられています。
また、IgE抗体が関係することは判明しているものの、どのような経路で、どのような反応が起きるかなど、細かい点はまだ判明していないのが現状です。
猫のアレルギー検査とは?
では、猫アトピー症候群を疑って動物病院を受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?
それぞれを詳しく見ていきましょう。
問診・身体検査
言葉を話せない猫の診察において、詳細な問診や身体検査が診断に非常に重要です。
具体的には、
- いつから症状が出ているか
- 季節による変化があるか
- 完全室内飼育か
- 現在与えているフードはなにか
- ノミ予防を実施しているか
- 同居動物がいるか
などの内容が問診で質問されます。
受診する前に、これらの内容についてあらかじめまとめておくとよいでしょう。
また、獣医師により、皮膚病変の分布や重症度、全身の状態などの確認が行われ、アレルギー以外の病気との鑑別が行われます。
皮膚検査・画像検査
アレルギーを診断するうえで基本となるのが「除外診断」です。
除外診断とは、それ以外の病気がないか、検査で確かめていく診断方法をいいます。
皮膚に症状がある場合には「皮膚検査」、呼吸器の症状がある場合は「レントゲン検査」、消化器症状がある場合は「腹部超音波検査」といったように、症状に合わせた検査が行われます。
皮膚検査として具体的には、
- 皮膚掻爬検査
- 被毛検査
- 皮膚スタンプ検査
- 真菌培養検査
- 細菌培養検査
などを行い、寄生虫や細菌・真菌の感染といった疾患を除外することが多いです。
アレルギー検査
IgE検査とは、血液中にどれぐらいIgE抗体が存在しているかを測定する検査です。
しかし、猫では検査精度があまり高くなく、
「陽性だからアレルギー」
「陰性だからアレルギーではない」
と短絡的に判断できないケースが多いです。
そのため、IgE検査は診断を確定するためではなく、主にアレルゲンの回避を検討する際の参考として利用されます。
検便・除去食試験
食物アレルギーが疑われる場合には、「検便」や「除去食試験」が実施されることがあります。
慢性的な下痢から食物アレルギーが疑われる場合は、お腹の寄生虫や原虫を除外するために、まずは検便が行われます。
また、除去食試験とは、これまで食べたことのないタンパク質を使用した療法食や加水分解タンパク食を一定期間与え、症状の変化を確認する検査です。
一般的には6~8週間程度継続し、症状が改善した後に元の食事を再度与えることで診断を行います。症状が再発した場合、食物アレルギーの可能性が高いと判断されます。
猫のアレルギーの治療とは?
では、前述のような検査からアレルギーが疑われる場合、どのような治療が行われるのでしょうか?
猫アトピー症候群では、
- 猫アトピー性皮膚症候群
- 猫喘息
- 食物アレルギー
のどれを治療するかによって、治療方法が異なります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
猫アトピー性皮膚症候群
猫アトピー性皮膚症候群の治療は、薬による治療が中心となります。
根本原因であるアレルゲンを完全に排除することは難しく、猫アトピー性皮膚症候群も完治が難しいため、生涯にわたって治療を継続することが多いです。
まず、かゆみを主訴に来院されることが多いため、
- ステロイド剤
- 痒み止め
- 免疫抑制剤
などの薬がよく使用されます。
また、感染が疑われる場合は抗生剤なども併用するケースがあります。
さらに、皮膚の健康維持を目的にサプリメントを併用することもあり、
- ビタミンE
- プロテオグリカン
- ω3脂肪酸
- 植物発酵糖脂質LPS
- フランス海岸松樹皮抽出物(ピクノジェノール)
- 亜鉛酵母
などが使用されることが多いです。
ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、治療の代わりになるものではありません。
また、すべての猫に効果が見られるわけではないため、自己判断で使用するのではなく、事前に獣医師へ相談することが大切です。
猫喘息
猫喘息の治療も、薬による治療が中心となります。
具体的には、
- ステロイド剤
- 気管支拡張薬
- 抗生剤
などが使用されます。
これらは基本的に飲み薬として処方されることが多いです。
しかし、猫は飲み薬が苦手な子が多いのも事実です。
近年では、ネブライザーやスペーサーを用いて、吸入で薬を投与する方法も行われます。
投薬に困った場合は、そちらを検討するとよいでしょう。
食物アレルギー
食物アレルギーの治療の基本は、原因となる食べ物を特定し、与えないようにすることです。
原因として多いとされる食材には、
- 鶏肉
- 牛肉
- 豚肉
- 小麦
- とうもろこし
- 乳製品
などが挙げられます。これらを含まない食物アレルギー用のドライフードや、加水分解のドライフードを使用することで、治療が行われます。
フードのみで症状が治まらない場合は、ステロイド剤や吐き気止め、下痢止めといった薬を併用することも少なくありません。
まとめ
猫にも人や犬と同じようにアレルギーが存在し、皮膚症状、呼吸器症状、消化器症状などさまざまな形で現れます。
しかし、猫ではアレルギーの発症メカニズムがまだ十分に解明されておらず、確定診断が難しい病気です。
また、アレルギー検査だけで診断できるわけではなく、問診や身体検査、皮膚検査、除去食試験などを組み合わせて総合的に診断する必要があります。
治療は主に薬やフードで行われますが、ときにサプリメントを治療の補助として用いるケースも少なくありません。
さまざまな治療法がある中で、今回の記事を参考に、愛猫に合った治療法を見つける一助となれば幸いです。
======================
この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
======================







コメント