2025年版 獣医師が解説 犬の膵炎とは?その症状や原因は?急性、慢性の違いは?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

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膵炎とは?

膵臓とは、犬であればお腹の中で胃と十二指腸に接するように位置しています。

その働きは大きく2つあります。

一つは、内分泌臓器として血糖値を調節するホルモン(インスリンやグルカゴンなど)を血中に分泌する働きです。

もう1つは、外分泌臓器として、十二指腸に消化酵素(アミラーゼやリパーゼなど)分泌する働きです。

膵炎とは、通常であれば膵臓の内では作用することのない消化酵素が、何らかの原因で活性化し膵臓を自己消化し、炎症が生じることを指します。

病期から「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分けられます。

ヒトにおいて、膵炎の原因は、アルコール、胆石、特発性(原因不明)の3つが多いとされています。

膵炎の症状は、腹痛や吐き気、嘔吐、食欲不振などが見られるそうです。

 

犬の膵炎とは?

犬においても、膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分けられます。

急性膵炎の場合は、短期間で激しい症状を起こすことが多く、慢性膵炎では長期間において軽度な症状を繰り返すことが多いです。

ただし、慢性膵炎においては、何かしらのきっかけで突然炎症が激しくなり、急性膵炎のような経過をとることがあり、これを急性増悪といいます。

 

好発犬種はミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリアなどが挙げられます。

また、基礎疾患として、高脂血症や甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病などがあるとより起こりやすいと言われています。

 

犬の膵炎の原因とは?

犬の膵炎の原因は多岐に渡っており、現時点でははっきりとした原因は分かっていません。

ですが、膵臓は脂肪を消化する臓器なので、脂肪分が高い食べ物を食べた際に起こりやすいと言われています。

特に、ヒトの食べ物(揚げ物やチョコレート、牛乳、チーズなどの乳製品など)を誤飲・誤食してしまったり、生肉を多量に食べてしまったりすると、一度に多くの脂肪を摂取し発症する可能性があります。

 

犬の膵炎の症状は?

犬の膵炎の症状は、強い腹痛、嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振などで、強い痛みから「祈りの姿勢」という、頭を下げてお尻を挙げるしぐさをするのが典型と言われています。

その他、震えや血便、黒色便などの症状も認められます。

 

犬の膵炎の診断に必要な検査は?

犬の膵炎の確定診断は、膵臓の一部を回収し病理組織検査で炎症があることを確認することで診断します。

しかし、実際の臨床現場で、毎回病理組織検査を行って診断をすることは現実的ではありません。

ですので、血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを駆使し、診断を行います。

 

血液検査においては、まずは一般的な全身の血液検査を行います。

中でも、膵炎の時によく測定する項目は「リパーゼ」「アミラーゼ」「CRP(C反応性タンパク)」です。

リパーゼとアミラーゼは膵臓から分泌させる酵素で、膵炎の際にはそれらの数値が上昇することが多いとされています。

しかし、リパーゼにおいては、以下のような疾患でも上昇することが知られています。

  • 門脈高血圧
  • 膵臓腫瘍
  • ステロイド剤の投与
  • 胆のう炎
  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • クッシング症候群
  • 炎症性腸疾患
  • 腎臓病

 

合併症が認められる場合は、肝臓の数値が上昇したり、黄疸の数値が上昇したり、血小板が減少したりします。

また、近年はより膵臓特異的なリパーゼとして、「Spec cPL」という、膵炎の犬の循環血中に漏出した膵リパーゼ免疫活性(cPLI)を検出する検査も用いられています。

しかし、それらの数値が100%膵炎を確定させるものではなく、CRPにおいても、膵臓に限らず体の中のどこかで炎症があると上昇しますので、血液検査のみで膵炎の診断を行うことは難しいとされています。

 

そのため、画像検査を行うことでより診断に正確性を高めます。

一般的に行われる検査は「レントゲン検査」と「超音波検査」です。

 

レントゲン検査は、膵炎を検出する感度は高くないとされています。

所見としては、膵臓周囲の炎症によりコントラストが低下します。

その他、胆石や消化管内異物など、膵炎以外の病気が無いかをチェックすることができます。

 

より一般的に行われるのが超音波検査です。

急性膵炎においては、膵臓は腫大し辺縁が不整になり低エコ―(画面上黒く映る)になることが多いとされています。

また、周囲の脂肪が炎症により高エコー(画面上白く映る)のも特徴の一つです。

合併症を併発している場合、胆管の拡張や消化管のコルゲートサインなども併せて認められると言われています。

 

慢性膵炎においては急性膵炎ほど特徴的な所見はありませんが、膵臓の大きさが縮小したり、膵臓のエコー源性が混合パターン(白や黒の不均一な像で映る)であったりするそうです。

 

犬の膵炎の治療は?

犬の急性膵炎の治療法は、基本的には対症療法となります。

嘔吐や下痢といった症状に対し、吐き気止めや下痢止めを使用します。

痛みが強い場合は痛み止め(オピオイド系など)の投与も検討します。

腸内細菌の観点から、抗生物質の投与もしばしば行われます。

点滴が重要な治療となるので、入院での静脈内点滴を行うことが一般的です。

 

以上が古典的な膵炎の治療なのですが、最近では、リパーゼやアミラーゼといった酵素の働きを抑えるタンパク分解酵素阻害薬(カモスタットなど)や、ステロイド剤が使用しにくい状況において、膵炎の炎症を止める「ブレンダZ」といった注射薬を使用することもあります。

 

慢性膵炎の場合は、症状が強い時は急性膵炎と同じような治療を行います。

症状が落ち着いた後は、食事療法や消化管運動改善薬、タンパク分解酵素阻害薬の内服を行うなどして、症状が再燃しないよう治療を行います。

お腹の調子が安定しないようであれば、サプリメントとして「オリゴサッカライド」や「ラクリス菌」などの整腸作用のあるものを使用することもあります。

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また、一度膵炎になった後は、基本的に低脂肪に設計された食事による食餌療法を長期に行うことが多いです。

一度治ったからといって脂肪分が高い食事を与えると、再発が起こりやすいと考えられているので、注意が必要です。

 

表2 低脂肪の療法食と総合栄養食の比較

低脂肪の療法食 総合栄養食
タンパク質 26.1 % 24.3 %
脂質 8.9 % 15.5 %
炭水化物 56.7 % 52.6 %
粗繊維 2.3 % 1.4 %

 

ドライフードのみで食べてくれる場合は、低脂肪の療法食を使用するのが良いでしょう。

もし、ドライフードだけでは食べてくれない場合は、低脂肪のウエットフードをトッピングしたり、ささみなどの低脂肪のトッピングを少量使用したりすると、食いつきが良くなると思われます。

 

初期であれば上記の治療で治ることが多いですが、膵炎の合併症として以下のようなものが知られており、場合によってはそれらの治療も並行して行うことがあります。

・肝外胆管閉塞(EHBO)
膵臓は、総胆管の出口である十二指腸の近くに存在しているため、膵炎の炎症が波及し総胆管を閉塞させることがよく起こります。
そうすると、肝臓の数値が上昇したり、黄疸の数値が上昇したりしてきます。

・播種性血管内凝固(DIC)
膵炎を始めとして、強い炎症が体の中で起こると、血液を固める「凝固系」が活性化します。
そのことにより、微小な血栓を形成やすくなったり、凝固因子を消費することで逆に出血傾向になったりする病態を指します。
死亡のリスクに繋がりやすい危険な状況と言われています。
血液の凝固を防止するようなお薬や、血液凝固因子を補充することで治療を行います。

・門脈血栓症(PVT)
DICが起こり、体の中で血栓が作られてしまい、腸管と肝臓をつなぐ「門脈」に血栓が詰まると「門脈血栓症」を発症します。
それにより、症状の悪化や腹水の出現などを引き起こすとされています。

 

犬の膵炎の治療費の目安は?

犬の膵炎の治療費の目安は、その病態や治療方法、動物病院により値段が大きく異なります。

まず、血液検査や腹部のエコー検査で膵炎の診断を行った場合、概ね2万円前後かかると思われます。

急性膵炎と診断され入院を伴う場合、概ね3~7日間程度の入院が想定され、一日1~2万円程度がかかると思われます。

その後も1~2週間は内服薬や皮下点滴による治療が行われるのが一般的です。

慢性膵炎の場合、内服薬のみで治療を行った場合は、月1~2万円程度と思われます。

 

まとめ

犬の急性膵炎・慢性膵炎は日頃よく遭遇する疾患です。

他の病気と症状が似ている上、確実な診断がしにくい病気でもあるのが難しいところです。

一度発症すると、それ以降は適切な食生活や体調管理が重要になってきますので、正しい知識を持って膵炎と付き合っていきましょう。

 

参考資料
・Vet-i 2014 No.19
・犬の膵炎~その診断と治療の落とし穴~ 坂井 学 先生
・犬と猫の膵炎~多角的視点で評価する~ 金本 英之 先生
・アイデックス ラボラトリーズ株式会社

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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