突然、意識を失って倒れて、痙攣するてんかん。
はじめて見る飼い主さんの多くは、何が起きたかわからずに、動揺してしまうに違いありません。
猫のてんかんは、慢性的な脳の病気で、1度発症すると生涯にわたって治療が必要になるやっかいな病気のひとつです。
今回はそんな猫のてんかんについて、原因や症状、対処法などを詳しく解説していきます。
いざというときに適切に行動できるよう、ぜひ知識として知っておきましょう。
猫のてんかんとは?
猫のてんかんとは、なんらかの原因で脳から発せられる情報を伝達する電気信号に異常が生じて痙攣を起こす慢性的な脳の病気です。
全身が痙攣したり、手足を突っ張ったり、バタバタと動かしたりなどの症状をくり返し起こします。
猫のてんかんは比較的まれで、0.5%(200頭に1頭)とされています。
また、はじめての発作は、生後6ヶ月から3歳ごろまでに起こることが多いようです。
発作の頻度は猫によって異なり、予測が不可能な場合もあれば、月に1回、数ヶ月に1回など定期的に起きる場合もあります。
発作の継続時間は長くても1〜3分程度ですが、重篤になると5分以上も続いたり、短い発作を連続で起こしたりする場合がありますので注意が必要です。
これらの状態を、重積発作や群発発作と言います(詳しくは後述します)。
猫のてんかんの原因
猫のてんかんには、大きく分けて「症候性てんかん(構造的てんかん)」と特発性てんかんがあります。それぞれの原因について紹介します。
症候性てんかん(構造的てんかん)
症候性てんかんは、脳の病気や感染症、外傷が原因で起きるてんかんです。
猫のてんかんの約70〜90%が症候性てんかんだと言われています。
原因となるおもな病気や感染症は以下のとおりです。
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 水頭症
- 脳卒中
- 脳梗塞
これらの病気は、CT検査、MRI検査、脳脊髄液検査、脳波検査などによって診断することができます。
脳腫瘍や脳梗塞などの脳出血は高齢の猫に多く、一方脳炎は比較的若い猫に多いとされています。
特発性てんかん
特発性てんかんは、CT検査やMRI検査などの精密検査をおこなっても脳に異常が見られず、原因が特定できないてんかんです。
以前は「真性てんかん」と呼ばれていました。
特発性てんかんは、現在の技術では検出ができない脳の神経細胞の表面の異常が原因とする説があり、遺伝的要素が関与している可能性が考えられています。
猫のてんかんの症状
猫のてんかんの発作には「全般発作」と「焦点発作」があります。
また、症状が進行すると重篤な発作の症状として「重積発作」や「群発発作」を起こす場合があります。
これらの症状について詳しく紹介します。
全般発作(全身に現われる発作)
猫の全般発作では、脳全体が一斉に興奮した状態になり、意識が朦朧となったり意識を失ったりして、以下のような症状が見られます。
- 全身が激しく痙攣する
- 全身をピーンと突っ張り痙攣する
- 体を反らせて奇声をあげる
- よだれをダラダラと垂らす
- 泡を吹く
- 排便または排尿をする
- 一部または全身の筋肉が瞬間的に大きく収縮する
これらの症状が数十秒から2〜3分ほど続きます。
焦点発作(部分的にあらわれる発作)
猫の焦点発作では、脳の一部が興奮状態になり、その部分に関連した症状があらわれます。
たとえば、以下のような症状が見られます。
- まぶたや顔面が痙攣する
- よだれをダラダラと垂らす
- 体の一部がつっぱる
- 体の一部が痙攣する
- 呼びかけに反応しない
- 瞳孔が開いた状態になる
- 口をパクパクと動かす
これらは一例で症状は多岐にわたります。
猫によっては焦点発作から、全般発作に移行することもあるため注意が必要です。
発作は数秒から数分ほど続きます。
重積発作と群発発作
重篤なてんかん発作として知られているのが「重積発作」と「群発発作」です。
これらの症状が見られた場合は、早急に動物病院を受診する必要があります。
重積発作とは、1回の発作が5分以上続く、または意識の回復を待たずに連続して発作が起こり、自力では発作を止めることができない状態です。
この状態が続くと、脳に大きなダメージを与えてしまう可能性や、命に関わる危険な状態におちいる可能性があります。
一方、群発発作とは24時間以内に2回以上の発作が起きる状態です。
たとえば、朝に発作が起こり、夕方にも発作が起こるといった場合です。
発作を連続して、あるいは短時間でくり返すときは、すみやかに動物病院を受診し発作を止める必要があります。
猫はてんかんで命を落とすことはある?
猫のてんかん発作が直接の死因になることはありません。
また、適切な治療をおこないさえすれば、健康な猫と比べて寿命も大きな差はないとされています。
ただし、上述の重積発作や群発発作を起こした場合は、脳に大きなダメージを受けて命に関わる状態に陥る可能性はあります。
とくに、高い場所で発作を起こした場合には、転落により大けがを負ってしまう場合がありますので注意が必要です。
猫がてんかん発作を起こす前兆
猫が発作を起こす前には、以下のような前兆が見られる場合があります。
- 落ち着きがなくなる
- やたらとハイテンションになる
- 無意味に走り回る
- ボーッとしている
- やたらとご飯を食べる
- 虫を追いかけるような行動をする
これらの行動が見られた場合は、発作の前兆かもしれません。
いつもより注意深く様子を観察するようにしましょう。
また、発作の周期にはある程度の決まりがありますので、発作が起きた日時や症状などを記録しておくと前兆と合わせて判断できるようになりおすすめです。
猫のてんかんの治療法
猫のてんかんの治療では、薬物療法をおこなうのが一般的です。
薬で上手にコントロールできれば、健康的な猫と同じように普通に生活を送ることも可能です。
ここでは、てんかんの薬物療法について、注意点もあわせて紹介していきます。
おもな治療は薬物療法
猫のてんかんのおもな治療は、抗てんかん薬を用いた薬物療法です。
てんかんの治療は完治ではなく、発作を起こさないようにコントロールすることが目的です。
そのため、生涯にわたって投薬をすることになります。
てんかんの治療が必要になるのは、1ヶ月に1回以上のペースで発作が起きている、発作の間隔が徐々に短くなっている、重積発作を起こしたことがある猫などです。
獣医師と相談して治療を検討しましょう。
また、てんかんには「フランス海岸松樹皮抽出物(ピクノジェノール)」が配合されたサプリメントもおすすめです。
治療中の注意点
抗てんかん薬には副作用があり、ボーッとする、ふらふらする、元気がなくなるといった症状が見られる場合があります。
投薬開始後は、愛猫の様子を注意深く観察しましょう。
また、抗てんかん薬は毎日決まった量を、決まった時間に投薬することが重要です。
薬がなくなったからと中断したり、発作が出なくなったからと自己判断で止めたりするのは危険です。
あくまでも、薬で発作が抑えられている状態であって、治ったわけではありません。
そのため、急に薬を止めると、その反動で制御のできない重篤な発作を起こしたり、状態が悪化したりする場合があります。
抗てんかん薬は獣医師の指示に従って正しく投与しましょう。
猫のてんかんを引き起こす要因と予防法
残念ながら、現時点では猫のてんかんを完全に予防する方法はありません。
その一方で、発作を引き起こす要因を抑えることで、予防につながるという意見もあります。
たとえば、てんかんを引き起こす要因である脳の乱れを起こさない生活を心がけることです。
脳の乱れを引き起こす要因としては、なんらかのストレスがあげられることが多いようです。
よくある要因としては、以下があります。
- 大きな音
- 強い光
- 不安や緊張
- 天気や季節の変わり目
このことから、家庭でできる猫のてんかん予防としては、なるべく「大きな音を出さない」「興奮させない」「ストレスを与えない」ことです。
猫が安心して暮らせる環境を整えてあげることが重要と言えるでしょう。
とは言え、猫によって発作の要因はさまざまですから、必ずしも上記の状況で発作が起きるわけではありません。
愛猫がどのような条件で発作を起こしやすいか観察し、適切に対策をおこなうことが大切です。
猫がてんかんを起こした際の対処法
愛猫がはじめてのてんかん発作を起こした際に驚かない飼い主さんのほうが少ないと思います。
ですが、発作時に重要なのは慌てずに冷静に対処することです。
落ち着いて対処するためにも正しい対処法を知っておきましょう。
てんかん発作時の対処と注意点
慌てているとやりがちな「声をかける、体をゆする、抱きしめる」などは逆効果になってしまう場合があります。
また、発作時は意識がないことが多く、噛まれたり引っ掻かれたりしてケガを負ってしまう恐れもあります。
発作がはじまったら危険な物があれば遠くに移動させ、高い場所にいる場合は床などの転落のおそれがない場所に下ろすなどして安全を確保してください。
また、はじめての発作の場合は、症状が落ち着いたらかならず動物病院を受診し、獣医師の診察を受けましょう。
なお、獣医師から発作時に使用する座薬を処方されている場合は、状況に応じて使用してください。
てんかん発作時の様子を記録する
発作中は、以下の点について観察し記録しておきましょう。
受診の際に役立ちます。
- 発作がはじまったときの状況
- 発作の様子
- 発作の継続時間
- 意識の有無
- 発作後の経過
とくに発作の継続時間や発作の様子は重要となります。
可能であれば、発作の様子を動画で撮影しておきましょう。発作の様子を正確に伝えることができます。
猫のてんかんの治療費は?
猫のてんかんでは、原因を特定するためにさまざまな検査がおこなわれる場合があります。
検査費用としては、2〜6万ほどかかることを想定しておく必要があるでしょう。
とくにMRI検査を受けた場合は高額になります。
猫のてんかんでおこなわれる投薬治療は、毎月の薬代が1〜2万円ほどかかります。
そのほか、必要に応じて検査費用がかかる場合もあります。
てんかんの治療は基本的に生涯にわたっておこなうことになりますので、治療費の負担は大きくなりがちです。
いざというときのためにも日頃からしっかりと備えておきましょう。
まとめ
てんかんは慢性的な脳の病気です。
猫のてんかんは犬と比べて少ないと言われていますが、一度かかると完治することは望めません。
しかし、抗てんかん薬の投薬により、発作の頻度や状態を上手にコントロールできれば、健康な猫と変わらない暮らしをすることも可能です。
てんかんの治療は生涯にわたって続きますから、獣医師とよく相談しながらできるだけ負担の少ない方法で治療をおこなうことが大切です。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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