猫はストレスを感じやすい動物です。
人間には些細なできごとも猫にとっては大きなストレスになってしまう場合があります。
また、猫がストレスを溜めるとさまざまな病気の原因になると言われており、今回紹介する「心因性脱毛」もそのひとつとされています。
猫の心因性脱毛はなぜおこるのか、症状や治療法、予防法について詳しく解説していきます。
猫の心因性脱毛とは?
猫の心因性脱毛は、なんらかのストレスを感じて執拗に毛づくろいをすることで起きる脱毛のことで、皮膚炎を同時に引き起こすことがあります。
皮膚炎の猫の5%程度が心因性脱毛だと言われています。
猫には不安やストレスを感じたときに、気持ちを落ち着かせようとして毛づくろいをする習性があります。
猫にとって体を舐めるのは、日常的におこなわれる正常な行動です。
しかし、強いストレスを感じたり継続的にストレスを受けたりしていると、執拗に毛づくろいをおこなうようになり、長くつづくと心因性脱毛発症の原因になり得ます。
なお、このように同じ行動をくり返しておこなうことを「常同行動」といい、猫のストレスサインのひとつだと言われています。
猫の心因性脱毛の症状
ストレスが原因で執拗に毛づくろいをすることで起こる心因性脱毛。
脱毛とは言いますが、毛が抜けるというよりは、ザラザラした舌で舐めたことが原因で、被毛が切れて薄くなるというのが正しいでしょう。
よく見ると、毛の根元で切れているのが確認できるはずです。
心因性脱毛が起きる部位は、猫が舐めやすい「内股・前足・おなか・背中」が多いと言われています。
最初のうちは目立った皮膚症状は見られませんが、ザラザラとした舌でくり返し舐めつづけていると、皮膚が傷つくなどして炎症が生じます。
また、皮膚が傷つくと細菌感染を起こして、赤い発疹や膿を持った発疹が見られるようになることもあります。
さらに、皮膚症状が重症化すると潰瘍になる場合もあり注意が必要でしょう。
執拗に体を舐めているのに気づかずにいると、かゆみや違和感からさらに患部を舐めるようになり、悪循環におちいる可能性があります。
いずれにしても早めの対処が重要だと言えます。
猫の心因性脱毛の原因はストレス
猫は私たちが思うよりもずっと繊細な動物です。
人間にとっては些細な変化も大きなストレスになり得ます。
猫のおもなストレスの原因は、大きく分けると「環境の変化、多頭飼い、騒音」です。
具体的には以下のことが考えられます。
原因の特定は治療に役立ちますので、猫がストレスを感じやすい状況を知っておくと良いでしょう。
- 引越し
- 来客の訪問
- トイレ環境の悪化(掃除がされていない・トイレを変えたなど)
- 食事環境の悪化
- 同居の家族や動物の増減
- 多頭飼いで仲の悪い猫がいる
- 室内の変化(模様替え・新しい家具の購入など)
- 近隣での工事
一般的に、猫はこのようなことにストレスを感じると言われていますが、なににストレスを感じるかは猫によって異なります。
これまでに育ってきた環境なども影響するでしょう。
心因性脱毛を引き起こしたストレスの原因を特定するには、日頃から愛猫の様子をよく観察することが大切です。
心因性脱毛になりやすい猫の特徴
心因性脱毛の原因はストレスです。
そのため、ストレスを感じやすい猫は必然的に心因性脱毛にもなりやすいと言えるでしょう。
猫の心因性脱毛は、猫種に関係なく起こりますが、その一方で、シャムやアビシニアンといったストレスを感じやすい猫種に多いとする説もあります。
また、多頭飼いの環境に置かれている神経質な性格の猫にも多い傾向です。
年齢的には、若い猫のほうが多く、高齢の猫には少ないとも言われています。
つまり、心因性脱毛を起こしやすいのは、ストレスを感じやすい性格の若い猫ということになります。
猫の心因性脱毛の診断
猫の心因性脱毛症の診断をするための検査はとくにありません。
また、ストレスが原因であることを診断するのは難しいため、細菌感染や寄生虫感染、ほかの皮膚病がないかを確認します。
診断のためには、皮膚検査や血液検査をおこなうこともあります。
検査の結果、とくに異常が見つからず、脱毛の原因にストレスが疑われるとなった場合に心因性脱毛と診断されます。
心因性脱毛以外に猫が脱毛する病気は?
猫の脱毛の原因は心因性脱毛だけではありません。
脱毛が見られるときは、心因性脱毛のほかに以下の病気が疑われます。
- 真菌症
- 細菌性皮膚炎
- 寄生虫感染(ノミ・ダニなど)
- アレルギー性皮膚炎
- ホルモン性脱毛症
- 自己免疫疾患
これらの病気の多くでは、心因性脱毛と同様に体をしきりに舐めるといった様子が見られるようになるでしょう。
皮膚病で見られる一般的な症状には、皮膚の炎症、発疹、潰瘍、フケなどがあげられます。
また、脱毛の症状が見られる場合は、皮膚病だけとは限りません。
内分泌疾患や自己免疫疾患が隠れている場合もあります。
心因性脱毛かどうかを見極めるためにも、一度は動物病院を受診し、獣医師の診断を受けるようにしましょう。
猫の心因性脱毛の治療
猫の心因性脱毛の原因はストレスとされています。
そのため、おもな治療法はストレスを取り除き、ストレスを解消することになります。
さらに、状態に応じて皮膚の治療や内科治療を同時におこなうこともあります。
それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。
ストレスの解消
猫の心因性脱毛においては、ストレスの解消がいちばんの対策となります。
まずはストレスの原因を特定することが重要です。
原因さえはっきりすれば、取り除いたり、生活環境を改善したりして、猫のストレスを発散するようにします。
ストレスの原因が引越しや家族の増減などの取り除くことができない場合は、猫が隠れられる場所を用意するなどして安心できる環境を整える、いっしょに遊ぶ時間やスキンシップを増やす、お気に入りのおやつをあげるなど愛猫が喜ぶことをしてあげることで症状の改善が期待できます。
皮膚の治療
皮膚炎や発疹などの皮膚症状が認められる場合は、皮膚の治療も同時におこなわれます。
治療には、皮膚の状態に応じて内服薬や塗り薬が使われます。
また、患部を舐めつづける場合は治療の妨げにならないように、服やエリザベスカラーを使用して患部を保護する必要があります。
ただし、猫によっては服の着用やエリザベスカラーの装着がストレスになって新たな問題に発展してしまう可能性もあり得ます。
治療中の愛猫の様子を観察しながら使用をつづけるかどうか判断することになるでしょう。
内科治療
ストレスの原因が特定できない、上記の治療法では解決しないといった場合には、内服薬を用いた内科治療がおこなわれます。
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 気持ちを落ち着かせるサプリメント
- ストレス軽減効果の期待できるフード
- リラックス作用のあるフェロモン製剤
抗うつ薬や抗不安薬を使用した治療では、長期間の投薬が必要となるケースも多いです。
また、ほかの治療法にもメリットとデメリットがあります。
獣医師とよく相談のうえで治療を進めるようにしましょう。
猫の心因性脱毛の予防
猫の心因性脱毛の予防は、ストレスを与えないことに尽きます。
また、ストレスを感じていることをいち早く察知して対策をすることも重要です。
ここでは、猫が見せるストレスサインとストレスを感じさせないための具体的な対策を紹介します。
ストレスを与えないのが最大の予防法
ストレスの原因には「環境の変化、多頭飼い、騒音」などがありましたよね。
すべてのストレスを取り除くことは容易でなくとも、心がけ次第で軽減することは可能です。
- トイレを常に清潔に保つ
- 静かで落ち着ける環境で食事を与える
- 仲の悪い同居猫とは飼育環境をわける
- 模様替えは少しずつおこなう
- 隠れられる自分だけの場所を用意する
- 部屋を見渡せる高い場所を用意する
- いっしょに遊ぶ
- 必要以上にかまわない
猫にストレスを与えないためには、猫の習性を理解し、猫にとって快適な環境を用意することです。
すべてを完璧にこなすのは難しいかもしれませんが、上記を参考にできる対策からおこなっていきましょう。
とくに、トイレ環境、安心できる室内環境を整えるのはストレス予防に効果的だと考えられます。
また、猫のストレス発散には飼い主さんとの適度なスキンシップや運動なども欠かせません。
ぜひ、時間を作ってあげてください。
猫が見せるストレスサインを知って早めの対処を
残念ながらどれだけ対策をしてもストレスを完全になくすことはできないでしょう。
しかし、ストレスを感じていることを察知して、早めに対策をおこなうことは可能です。
そのためには、猫が発するストレスサインを知っておく必要があります。
猫はストレスを感じると、今回紹介した「執拗な毛づくろい」のほかにも、以下のような行動や体調の変化が見られます。
- 頻繁に鳴く
- 常同行動
- 粗相
- 嘔吐
- 食欲不振
常同行動とは、同じ行動をくり返しおこなう異常行動です。
ストレスが原因の常同行動には、執拗な毛づくろい、同じ場所を行ったり来たりする、自分のしっぽを追いかけて回りつづけるなどがあげられます。
このようなストレスサインが見られたら、原因を特定し早めに対処することが心因性脱毛の予防にもつながります。
また、ストレスは免疫力の低下など猫の健康を脅かす原因にもなりますので、しっかりと対策をしていきたいところです。
まとめ
猫の心因性脱毛は注意していれば予防することができます。
ストレスを溜めない環境作りをする、日常のなかでストレスを発散できるように工夫するなどが効果的です。
加えて、日頃から愛猫の被毛や皮膚の状態を観察し、心因性脱毛を疑われる症状を見つけたらひどくなる前に動物病院を受診することも大切です。
ストレスは免疫を低下させることもあって、心因性脱毛以外にもさまざまな病気の原因になる場合があります。
愛猫の健康のためにも、ストレスフリーな生活を目指しましょう。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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