猫の寿命が伸びたことで、増えている病気のひとつに「癌」があります。
確立された予防法がなく、早期発見が難しい病気であることから、発見されたときにはかなり進行しているケースも少なくありません。その結果、近年では猫の死因の第1位となっています。
とはいえ、日々の心がけ次第で癌のリスクを減らすことは可能です。
そこで今回は、猫がかかる代表的な癌の種類、治療法、そして早期発見・予防のためにできることを紹介します。
猫の癌とは?

癌とは、なんらかの理由により細胞が異常に増殖し、まわりの臓器に広がったり、転移したりする悪性の腫瘍のことです。
腫瘍には良性と悪性があり、良性の腫瘍は大きくなることはあっても、ほかの臓器に広がったり、命を脅かしたりはしません。また、大きくなる速度もゆっくりです。
一方、悪性の腫瘍は、無制限に増殖をくり返し、周囲の臓器に広がり正常な組織を破壊したり(浸潤)、離れた臓器で増殖したり(転移)します。大きくなる速度も速く、猫の命を脅かすことがあります。
猫の癌の原因
猫の癌でおもな原因は「老化」です。高齢になればなるほど癌のリスクが高まると言われています。そのほかにも、以下のようなことが原因となります。
- 遺伝
- 肥満
- 免疫力の低下
- 慢性的な炎症
- ホルモンの影響
- ウイルスの感染
- 化学物質の摂取(たばこ・化学薬品など)
癌の原因となるウイルス感染としては、猫白血病ウイルスの感染(猫白血病)や猫免疫不全ウイルスへの感染(猫エイズ)などがあります。
猫に多い5つの癌
猫の癌にもさまざまな種類がありますが、かかる可能性の高い癌はいくつかに絞られます。ここでは、猫に多い5つの癌について紹介します。
1.乳がん
猫の癌で最も多いのが乳がんです。乳がんとは、乳腺に発生する悪性腫瘍です。
猫の場合、乳腺にできるしこりの8割が悪性であり、そのほとんどがメスです。また、発症年齢は12歳前後が多いとされています。
猫の乳がんでは、2cmを超えると転移率が高くなり、生存期間が短くなります。一方、2cm未満で転移がなければ治療によって長生きできることがわかっています。日頃から乳腺を確認し、しこりがないかチェックしましょう。
また、猫の乳がんは早めの避妊手術で多くが予防可能です。生後6ヶ月以内に避妊手術をおこなうと発症リスクが91%、12ヶ月以内でも86%低下するという報告もあります。
関連記事:猫の乳腺腫瘍とは?余命・予防法・自壊した腫瘍の応急処置について
2.リンパ腫
猫のリンパ腫は、乳がんに次いで多く見られる癌です。血液細胞に発生する癌で、体のどこにでも発生する可能性があります。
近年では、胃や腸にできる消化器型や鼻の奥にできる鼻腔内型リンパ腫が多く見られます。
消化器型リンパ腫のおもな症状は、嘔吐・下痢・体重減少など。鼻腔内型リンパ腫の場合は、鼻水、鼻血、呼吸困難などです。また、鼻腔内型リンパ腫では、顔面が変形する場合もあります。
リンパ腫の悪性度と生存期間は、できた場所によって異なります。
猫のリンパ腫の発症年齢は、3歳と13歳のときにピークがあります。3歳の猫では、猫白血病ウイルス陽性の場合が多く、13歳では陰性の場合が多い傾向です。
飼い主の喫煙習慣も発症のリスクを高めます。
関連記事:猫のリンパ腫はどんな病気?抗がん剤・ステロイド治療や余命など
3.肥満細胞腫
肥満細胞腫という名前から、肥満の猫に発症する癌だと思われることもありますが、体型とはまったく関係がありません。
肥満細胞腫は白血球の一つである肥満細胞が腫瘍化したもので、皮膚にできる皮膚型肥満細胞腫(皮膚型)と内臓にできる内臓型肥満細胞腫(内臓型)があります。
皮膚型は、頭・首・耳介・足に発生し発見がしやすく、ほとんどが根治可能です。内臓型は、脾臓にできることが多く、摘出手術のあとに化学療法をおこなうこともあります。
発症年齢の中央値は、皮膚型が9歳、内臓型が14歳です。皮膚型はシャム猫に多いことがわかっています。
関連記事:猫の肥満細胞腫とは?良性と悪性の違いは?抗がん剤による治療は?
4.扁平上皮癌
扁平上皮癌は、皮膚や粘膜を構成する扁平上皮細胞が腫瘍化した癌です。皮膚にできるものと、口の中にできるものがあります。
皮膚にできる扁平上皮癌は、耳・鼻・まぶたにできることが多くカサカサした瘡蓋のようなものができ、いつまでも治らないのが特徴です。口の中にできる扁平上皮癌の初期は口内炎に似ています。
日頃から、顔に瘡蓋がないか、口の中に異常がないか注意深く観察することが早期発見につながります。
5.注射部位肉腫
注射部位肉腫とは、過去に注射を打った場所に発生する悪性腫瘍です。腫瘍の発生する部位は、肩甲骨の間・首・後ろ足・背中・臀部が多いです。
猫の注射部位肉腫は、腫瘍の根が深いのが特徴で、周囲に広がりやすい性質を持っています。
注射を打ってから1ヶ月〜10年の間に発症すると言われており、必ずしも直近の注射が原因とはかぎりません。
発症年齢の中央値は8歳で、注射を打った1万匹のうち1〜4匹が注射部位肉腫を発症するというデータがあります。
最近では、注射の際に注射部位肉腫が発生しても切除しやすい場所を選ぶ、ワクチンの種類ごとに打つ場所を変えるなどの対策がなされているようです。
猫の癌の検査と診断
癌の検査と診断には、病理検査と画像検査が用いられます。
病理検査では、腫瘍の一部もしくは全部を切り取り、腫瘍の広がり方や癌細胞の悪性度(グレード)、種類を特定します。これは治療方針を決めるための重要な検査です。
また、画像検査では、癌の広がり具合や転移などを確認します。X線検査(レントゲン検査)、超音波検査(エコー検査)がおこなわれ、さらに詳細な情報を得るためにCT検査やMRI検査がおこなわれることもあります。
これらの検査結果を踏まえ、積極的な治療(根治治療)をおこなうのか、どのような治療方法を選択するのかを決定します。
猫の癌の治療法と緩和治療
治療法は癌の種類によって異なります。ここでは、癌の三大治療法として「外科療法」「化学療法」「放射線治療」について紹介します。また、これらの治療法に加えて、癌と共に生きる「緩和治療」についても見ていきましょう。
外科療法
外科療法とは、手術で癌の組織を切り取る治療法です。癌が早期であり、転移していない場合や、組織が一部に限られている場合には、根治の可能性が高くなります。ただし、リンパ腫などの全身性の癌には適用されません。
また、癌を取り除くのが難しい場合にも、症状の緩和や生活の質の改善を期待して外科療法をおこなう場合もあります。
化学療法
化学療法とは、薬を使って癌細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療法です。いわゆる抗がん剤を用いた治療です。薬を全身に行き渡らせることができるため、リンパ腫や白血病などの全身性の癌の治療で選択されます。
ただし、化学療法には副作用があります。猫の場合は、赤血球・白血球・血小板が作られなくなるため細菌に感染しやすくなる(骨髄抑制)、胃腸の粘膜が壊され、食欲不振・嘔吐・下痢(消化器毒性)といった症状があらわれることが多いです。
一方で、人間に見られるような強い吐き気やひどい脱毛といった副作用はほとんど見られません。
なお、癌の症状があらわれているのを化学療法の副作用だと誤認した結果、癌の進行に気づくのが遅れるケースもあるため注意が必要です。
放射線治療
放射線治療は、癌細胞に対して数回から数十回にわたって放射線を照射し、DNAを傷つけて根絶する治療法です。脳や鼻など、手術が難しい部位の癌に対して用いられ、外科療法や化学療法と組み合わせておこなわれることもあります。
また、癌の痛みを軽減して生活の質を向上させるために緩和治療としておこなわれる場合もあります。
放射線治療は、手術が難しい部位の癌や深部の癌にも対応できるのが大きなメリットですが、照射には数回から数十回にわたる全身麻酔が必要です。そのため、繰り返しの全身麻酔に耐えられることが治療の条件となります。
なお、放射線治療をおこなえる動物病院は限られること、費用が高額となることから、残念ながら気軽に選択できる治療法ではありません。
緩和治療
緩和治療とは、根治が望めない場合に癌と共存しながら生活の質を向上させることを目的としたもので、以下の3つの目標があります。
- 痛みや不快感の軽減
- 精神的ストレスの軽減
- 快適な生活を提供する
また、緩和治療においては、体重の減少を防ぐことも重要です。キャットフードは質よりも量とカロリーを重視し、食べてもらうことを優先します。
緩和治療では、基本的に積極的な治療はおこないませんが、生活の質を向上させるために、外科療法・化学療法・放射線治療をおこなうこともあります。
そのほか、腫瘍に対してタヒボエキスなどが配合されたサプリメントも推奨されます。
猫の癌の早期発見と予防のために
猫の癌を完全に予防することはできませんが、少しの注意で癌の早期発見につながったり、リスクを減らしたりすることはできます。ここでは、日常生活において、簡単にできる方法をいくつか紹介します。
体重減少は癌のサイン
どの癌でも共通して見られるサインが「体重減少」です。体重の減少は癌以外の病気でも見られますが、飼い主さんが最も癌に気づきやすいサインです。
健康なときと比べて体重が1割以上減少した場合はなんらかの病気が疑われ、2割以上減少している場合は、確実になんらかの問題があると考えられます。早めに動物病院を受診しましょう。
猫の体重をはかるには、抱っこして体重計に乗り、自分の体重を引く方法があります。抱っこが苦手な猫には、食べ物で誘導して体重計に乗せる方法や、キャリーバッグやカゴなどに入れて測る方法がおすすめです。
日頃から体を触ってチェック
体を触られることを嫌がらないなら、日頃からスキンシップを兼ねて体をチェックしましょう。
体にしこりを見つけた場合は、小さくてもすぐに動物病院を受診することをおすすめします。しこりが大きくなったら受診しようと様子を見ているうちに手遅れになる可能性があります。
とくに、癌が増える高齢の猫は神経質なくらいがちょうどいいでしょう。
定期的に健康診断を受ける
猫の癌を早期発見するうえで欠かせないのが定期的な健康診断です。とくに異常がなくても高齢の猫は半年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。
健康状態や年齢にもよりますが、高齢の猫は身体検査、血液検査、尿検査などの基本的な検査に加えX線検査や超音波検査もおこなうと安心です。
癌予防のためにできることは?
癌を完全に予防することは不可能ですが、リスクを減らすことは可能です。日常生活において以下のことを心がけましょう。
- 完全室内飼育にする(感染症の予防)
- 避妊手術をする(乳がんの予防)
- 食事管理をおこなう(肥満の予防)
- たばこを吸わない
- ストレスがかからないようにする
ストレスを減らすには、トイレ環境を整える、高い場所に登れるようにする、安心して眠れる場所を用意するなど、猫が猫らしく振る舞えるように生活環境を整えてあげてください。
猫の癌の治療費の目安
猫の癌では治療費が高額になるのが通例です。平均的には、年間の治療費が約13万円程度、手術は1回あたり8万〜14万円程度となります。放射線治療の場合は、数十万円から場合によっては百万円以上かかることもあります。
愛猫が癌になった場合にどこまで治療するか、いくらかけられるかを事前に話し合っておくことも大切です。
まとめ
猫の癌は早期発見・早期治療によって寿命に大きな差が生じます。しかし、完全に予防することはできず、早期発見も難しい病気であることも間違いありません。
早期発見・早期治療のためには、日頃から愛猫の様子をよく観察し、異常があればすぐに対応することが重要です。また、定期的な健康診断も欠かさずにおこないましょう。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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