「愛猫がご飯を食べない」それは単なるわがままではなく、深刻な健康問題のサインかもしれません。
猫の体はデリケートで、少しの絶食でも命に関わる病気を引き起こすことがあります。
とくに、24時間以上の絶食は猫の体に大きな負担をかけ、肝リピドーシスのような重篤な病気を引き起こすリスクがあります。
この記事では、猫が絶食することの危険性や原因、病院を受診する目安、そして飼い主さんができる具体的な対策について詳しく解説します。
猫の絶食はなぜ危険なのか
猫の体は人間やほかの動物とは異なり、短い絶食期間でも健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。
猫がご飯をまったく食べない、またはほとんど食べない状態がつづくときは、元気があっても油断はできません。

子猫は低血糖を引き起こしやすい
低血糖とは、血液中のブドウ糖の量が極端に少なくなった状態で、神経症状や意識障害などを起こし、命にかかわることがあります。
猫は犬と比べると少ないと言われていますが、子猫はたった半日程度の絶食でも低血糖に陥ることがあり注意が必要です。
とくに、3ヶ月未満の子猫は、体内に糖を貯めておくことができないため、絶食がつづくと簡単に低血糖を起こすと言われています。
もし、食事が取れていない子猫に以下の症状が見られたら低血糖が疑われます。
- 元気がなくぐったりする
- 下半身が動かない
- 意識障害をおこす
- 痙攣をおこす
脱水や肝リピドーシスなどの原因になる
絶食のリスクは、低血糖だけではありません。
猫の体にさまざまな深刻なリスクをもたらします。
- 脱水症状を起こす
- 肝リピドーシスを起こす
- 消化管の機能低下を起こす
- 栄養失調の原因になる
- 腸内細菌のバランスが崩れる
中でもとくに注意が必要なのが、脱水症状と肝リピドーシスです。
食事が摂れない状態になると、水分摂取量も減少し、急速に脱水症状が進行する場合があります。
絶食と同時に嘔吐や下痢などの症状が見られるときは要注意です。
肝リピドーシスとは、長時間の絶食が原因で肝機能が低下する状態です。
詳しくは後述します。
猫の絶食は何日までなら大丈夫?
愛猫がご飯を食べないとき「一体いつまで様子を見ていいのだろう?」と不安になりますよね。
一般的に、24時間以上食べない場合はすでに注意が必要な段階に入っていると考えるべきです。
そして、36時間を超える絶食は、肝臓に脂肪が蓄積する肝リピドーシスをはじめとする、より深刻な病気を発症するリスクが急激に高まります。
子猫の場合は、低血糖も心配です。
以下のように、月齢が低いほど短時間で危険な状態になります。
| 月齢 | 絶食時間 |
| 生後1ヶ月~2ヶ月 | 8時間 |
| 生後2ヶ月~3ヶ月 | 12時間 |
| 生後3ヶ月~4ヶ月 | 16時間 |
| 生後4ヶ月以上 | 18時間 |
猫が絶食する原因
猫が急に食欲を失ってしまう原因はひとつではありません。
猫の絶食は体の不調から心の状態まで、さまざまな要因が絡み合って発生します。
ここでは、猫の絶食につながる可能性のある、食欲不振の原因を中心に紹介します。

病気・ケガ
猫が絶食するもっとも一般的な理由は体調不良や痛みによるものです。
猫は痛みを隠すのが得意な動物ですが、不調のサインとしてご飯を食べなくなることがあります。
そのおもな原因としては、以下が挙げられます。
| カテゴリ | 具体例 |
| 口腔内の病気 | 口内炎、歯周病、歯の痛み、口の中に異物がある |
| 消化器の病気 | 胃腸炎 |
| 感染症 | ウイルス性鼻気管炎、カリシウイルス感染症、パルボウイルス感染症 |
| 怪我や炎症 | 足の痛み、関節炎、怪我による全身の痛み |
これらの病気やケガは、初期症状として食欲不振が現れることが多いため、早期発見が非常に重要です。
とくに、絶食状態の場合の放置は禁物。
早めに動物病院を受診しましょう。
ストレス
猫は私たち人間の想像以上に繊細で、環境の変化に敏感です。
そのため、体に病気がなくても、ストレスや不安が食欲不振の原因となることがあります。
たとえば、以下が原因となり得るでしょう。
- 環境の変化
- 家族構成の変化
- 新しいペットを迎える
- 飼い主さんの生活リズムの変化
- 季節の変化
とくに、引越しや室内の模様替え、家族の増減、ペットが増えたときは要注意です。
また、飼い主さんが働きはじめるなどして、留守番の時間が増えた、遊ぶ時間が減った、ルーティンが変わったときもストレスを感じやすいと言われています。
食事・食事環境の問題
猫は食事の好みや食事環境に非常に敏感で、こだわりを持っていることも少なくありません。
猫によっては、食欲が落ちるだけでなく、絶食状態になってしまうことも。
たとえば、急にフードを変更すると、警戒心の強い猫はいつもと違うフードに警戒して食べなくなる場合があるでしょう。
フードや食器の感触やサイズが合わない、食器洗い洗剤のニオイがついているなども原因になります。
そのほか、食事場所がうるさい、同居の猫がいて落ち着かないなど食事環境も影響します。
猫が絶食するときに疑われる病気
猫がご飯を食べなくなるその背後には様々な病気が隠されている可能性があります。
絶食を含む食欲不振は、病気のサインとしてよく見られる症状です。
猫の食欲不振を引き起こし、絶食の原因にもなりえる病気を紹介します。
口腔内の問題
猫が食事を嫌がる大きな理由のひとつに、口の中のトラブルがあります。
口の中のトラブルは、痛みを伴う病気が多く、絶食の原因になりえます。
よくある病気には歯周病と口内炎があります。
痛みや違和感から食べたくても食ベられない状態になることが多いです。
歯周病は、歯垢や歯石の付着が原因となり、歯茎などに炎症を引き起こし、重症化すると痛みや歯のぐらつきなどが見られるようになります。
一方、口内炎は、口の中の粘膜に炎症が起こり、強い痛みが伴います。
関連記事:3歳以上の猫の80%が歯周病ってホント?症状・治療・予防について
消化器系の病気
胃腸などの消化器の不調は、猫の食欲不振の代表です。
よくある病気には以下が挙げられます。
- 胃腸炎
- 腸閉塞
- 膵炎
- 便秘
消化器官の病気の症状には、嘔吐や吐き気、腹痛なども多く、猫の食欲にダイレクトな影響を与えます。
感染症やウイルス性疾患
猫が感染症やウイルス性疾患にかかると、食欲不振を引き起こし、絶食の原因にもなりえます。
よくある猫の感染症には、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスが原因で起こる猫風邪があげられます。
感染するウイルスによって症状は異なりますが、おもな症状はくしゃみ、鼻水、発熱、結膜炎などです。
重症化すると肺炎を引き起こし、命にかかわることもあります。
とくに、免疫力や抵抗力の弱い子猫、老猫、持病のある猫は注意が必要です。
絶食で注意したい肝リピドーシス
猫の絶食で、もっとも注意が必要なのは「肝リピドーシス」です。
長期間の絶食が原因で肝臓に過剰な脂肪が蓄積し、肝機能が著しく低下する、非常に深刻な病気です。
ここでは、肝リピドーシスがどのような病気なのか、その症状や発症しやすい猫の特徴について詳しく解説します。

肝リピドーシスとは
肝リピドーシスは、「猫の脂肪肝」とも呼ばれる病気で、猫が食事を摂らない状態が続くことで発症します。
本来、肝臓はエネルギー源として脂肪を適切に代謝する役割を担っていますが、絶食により体内のエネルギーが不足すると、脂肪が肝臓へと過剰に送り込まれ、肝細胞内に蓄積されていきます。
この脂肪の蓄積が肝臓の機能を低下させ、さまざまな問題を引き起こします。
放置すると、黄疸や神経症状を引き起こし、最終的には命に関わる重篤な状態に陥ります。
肝リピドーシスのおもな原因は長時間の絶食です。
上述のとおり猫は絶食に弱く、36時間ほどの絶食で肝リピドーシスを引き起こす可能性が高まり、48時間以上の絶食は危険だとされています。
猫がまったくご飯を食べない、ほとんど食べない、という状態になったときは、早急に動物病院を受診しましょう。
肝リピドーシスの症状
肝リピドーシスの主な症状は、以下のようなものが挙げられます。
- 食欲不振
- 嘔吐・下痢
- 元気消失
- 体重減少
- 脱水
- 黄疸
- 肝性脳症
肝リピドーシスの初期症状として、急激な食欲不振が見られ、数日間の食欲不振ののち、1〜2週間ほどで重度の肝機能障害に進行するケースが多いと言われています。
重症化すると黄疸や肝性脳症を引き起こし、命を落とすこともあります。
発症しやすい猫の特徴
肝リピドーシスは、どのような猫にも起こりうる病気ですが、とくに以下のような特徴を持つ猫は発症しやすい傾向があります。
- 肥満の猫
- 環境の変化があった猫
- 慢性疾患を抱えている猫
この中でも、肥満の猫は要注意と言われています。
絶食時に肝臓へ脂肪が蓄積しやすく、過剰になりがちです。
肥満の猫は24時間ほどの絶食でも危険な場合があります。
食欲不振が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
また、猫は環境の変化に弱く、ストレスを感じやすい動物です。
とくに、引っ越しした、家族構成が変化した、新たにペットを迎えたときは、急に食べなくなることも多く、注意が必要です。
そのほか、腎臓病や糖尿病などの慢性疾患をを抱えている猫も高リスクと言えます。
慢性疾患が原因の食欲不振から肝リピドーシスを発症するケースも見られます。
猫の絶食で病院を受診する目安
猫がご飯を食べない場合、どのタイミングで病院に連れて行くべきか迷う飼い主さんも多いと思います。
以下のような状態が見られた場合は、速やかに動物病院を受診することをおすすめします。
- 24時間以上まったく食事を摂らない場合 (とくに肥満の猫)
- 元気がなくぐったりしている
- 嘔吐や下痢が続いている
- 体重が急激に減っている
- 呼吸が荒い、または息苦しそう
- 便秘や排尿に異常が見られる
食欲がない猫の対策
愛猫の食欲がないと、飼い主としては心配でどうにかして食べさせたいと思うものです。
しかし、無理強いは逆効果になることもあります。
ここでは、食欲不振の猫のために、飼い主さんができる具体的な対策をいくつかご紹介します。

ご飯を温める
温かい食事は、猫の食欲を刺激する非常に効果的な方法の一つです。
温めることでフードの香りが強くなり、猫の嗅覚に働きかけて食欲を誘えます。
ただし、温めすぎると風味や栄養価が損なわれるため注意しましょう。
温かさの目安は人肌程度です。
指で触ってほんのり温かいと感じるくらいが適温です。
とくに、冷たいウェットフードは香りが立ちにくいため、温めることで驚くほど食いつきが良くなることがあります。
好物やおやつをトッピングする
ご飯は食べないけども、好きなものは食べるという猫におすすめの方法がトッピングです。
猫が好きな猫用のふりかけやおやつなどを少量ご飯に混ぜて与えるのが効果的です。
トッピングの量が多くなると、栄養バランスが偏ったり、メインのフードを食べなくなることもあるため、少量にとどめるようにしましょう。
また、かつお節が好きな猫には、出汁パックなどをドライフードの中に入れて、香りをつけるだけでも食べる場合があるようです。
食器や食べる環境を変えてみる
猫は非常にデリケートな動物なので、食器や食事をする場所のちょっとした変化が食欲に影響を与えることがあります。
食器の素材が気に入らない、形が気に入らない、洗剤のニオイがするなどが原因になり得ます。
食器や洗剤を変更した場合は、もとのものに戻して様子を見ることをおすすめします。
また、人通りの多い場所やほかのペットがいる場所では、落ち着かない猫もいます。
安心して食事に集中できる静かな場所で食べられるようにしましょう。
ストレス軽減のための環境整備
ストレスが原因での食欲不振では、猫が安心できる環境を整えることが重要です。
ストレスの原因を排除する、安心できる場所を用意するなどしましょう。
一般的に猫は、狭くて薄暗い場所に安心感を覚えます。
また、多頭飼いで相性が悪い猫がいる場合は、生活空間を完全に分けるなどの対策が必要なことも。
引っ越しによる環境変化の場合は、落ち着くまで無理に構わずに様子を見守りましょう。
フェロモン製剤やストレスを軽減する効果が期待できるサプリメントの活用もおすすめです。
まとめ
猫の絶食は決して放置して良い問題ではありません。
猫は少しの絶食でも命に関わるリスクが高いため、食欲不振を感じたらすぐに原因を探り、必要に応じて獣医師に相談することが重要です。
日頃から愛猫の食事量や行動を観察して異変を見逃さないようにし、早めの対処と適切なケアを心がけるようにしましょう。
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この記事を書いたのは
ネコヤ カエ
愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|
ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
2019年よりフリーライターとしての活動を開始。
ペット専門のライターとしてWebメディアや動物病院HPなどでコラムを多数執筆。
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