獣医師が解説 犬の脱毛症Xは治る?シャンプーやサプリメントはどうしたらいい?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

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犬の脱毛症Xとは?

犬の脱毛症X、通称「アロペシアX(毛周期停止)」は、様々な検査を行っても脱毛の原因が特定できない、特徴的な脱毛症のことを指します。
毛の発育の周期が「休止期」という段階で停止してしまい、新しい毛が生えず脱毛していく病態です。
好発犬種として、ポメラニアン、トイプードル、チワワ、パピヨンなどが挙げられます。
海外では、北方犬種(アラスカン・マラミュート、チャウチャウ、キースホンド、シベリアン・ハスキーなど)での発生が多いとされています。
皮膚の炎症や痒み、全身の体調の変化など、明らかな症状を示すことなく広範囲の脱毛を示すことが特徴です。
一般的に2~3歳の雄で発症が多いとされていますが、雌犬や高齢での発症も報告されているようです。

 

犬の脱毛症Xの原因は?

犬の脱毛症Xの原因は、上述の通り未だ解明されていません。
それが故に、アロペシア(=脱毛症)X(=未知)と呼ばれています。
ただし、上述の通り好発犬種が知られている為、遺伝的な原因がある可能性は考えられています。

 

犬の脱毛症Xの症状は?

犬の脱毛症Xの症状は、典型的な症状は「体幹のみの脱毛」です。
すなわち、前肢や顔などは脱毛が起こらず、胴体部分のみが脱毛を起こします。
場合によっては様々な部位が脱毛するケースもあるようです。
脱毛は、頸部、大腿内側、尾などから始まり、最初は一次毛(オーバーコート)から脱毛が始まります。
一次毛が抜けた段階では仔犬のような柔らかい毛(二次毛)が残り、その二次毛(アンダーコート)も次第に抜けてきます。
進行すると、体幹全体の脱毛が見られるようになってきます。
この脱毛は、左右対称に起きてくることがほとんどです。

また、それに伴い脱毛した部分の皮膚は黒く色素沈着が認められることが多いです。
毛が抜けるとその部位の皮膚は乾燥するため、そこから痒みやふけという症状を呈するケースもあります。
痒くて皮膚を掻くことで、赤く炎症を起こすこともしばしば経験します。

 

犬の脱毛症Xの診断に必要な検査は?

犬の脱毛症Xの診断は、基本的には「除外診断」という方法で診断します。
犬の脱毛症Xは原因不明の為、似たような症状を示す他の病気でないことを証明する(=除外する)ことで診断を行います。
ですので、皮膚検査はもちろんのこと、全身的な検査を行って異常がないか確認する必要があります。

まず、脱毛症Xを疑う症状やシグナルメントを確認することが重要です。
上述の通り、好発犬種と特徴的な脱毛を示すため、それに合致するか確認します。
その上で、下記のような似た症状を示す病気と鑑別の為の検査を行います。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

クッシング症候群とは、副腎という臓器からステロイドホルモンの分泌が過剰に起こる疾患です。
その影響で、左右対称の脱毛が起こるとされています。
犬ではよく起こる疾患で、脱毛症Xを疑う場合、まず真っ先に検査でこの病気を否定する必要があります。
必要な検査は、一般的な血液検査、腹部超音波検査、ACTH刺激試験になります。
それでも完全に否定しきれない場合は、低用量デキサメタゾン不可試験、尿中コルチゾール/ クレアチニン比(UCC)などの追加検査を行います。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症も犬でよく起こる疾患で、甲状腺と呼ばれる臓器からのホルモンの分泌が低下する疾患です。
その影響で、左右対称の脱毛が起こるとされています。
こちらも一般的な血液検査の他、甲状腺ホルモン(T4、FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)などを測定することで診断を行います。

関連記事:犬の甲状腺機能低下症とは?症状や薬、治療の費用は?

パターン脱毛症

パターン脱毛症とは、その名の通り「典型的なパターンの脱毛」を示す疾患で、遺伝の関与が疑われている特発性の非炎症性の脱毛症です。
若齢期に発症し、徐々に進行していくことから、脱毛症Xと似た症状を示します。
しかし、脱毛症Xは毛周期が停止しますが、パターン脱毛症は毛周期が停止しないという違いがあります。
また、好発犬種も、ミニチュアダックスフンド、チワワ、ボストンテリア、グレーハウンドなどの短毛種であり、脱毛症Xと異なります。
脱毛部位も、耳介の外側や太もも、首の腹側、胸の腹側などで、脱毛症Xの典型的な脱毛部位とは異なります。

皮膚の寄生虫

疥癬やニキビダニなどの皮膚に寄生する寄生虫が痒みを起こし、掻くことで脱毛することも鑑別疾患のひとつです。
近年は、イソオキサゾリン系のノミ・マダニ予防薬が普及し、かなり発生率は低下しました。
イソオキサゾリン系のノミ・マダニ予防薬を使用していない場合は、皮膚検査にてこれらの寄生虫が存在しないか検査を行う必要があります。

性ホルモン失調症(セルトリ細胞腫など)

腫瘍や嚢腫などにより、性ホルモンのバランスが乱れることでも非炎症性の脱毛が起こる可能性があります。
こちらも一般的な血液検査、腹部超音波検査の他、エストロジェンやプロジェステロンなどのホルモン検査を行い鑑別します。

淡色被毛脱毛症

淡色被毛脱毛症は、ブルーあるいはフォーンなどの淡色の毛色の犬に、淡色の部分に一致した脱毛が起こる病気です。
遺伝の関与が疑われている疾患で、抜毛検査により「メラニンクランプ」という特徴的な所見を確認することで診断・鑑別します。
若齢期から発症するので、脱毛症Xと似た時期に発症しますが、淡色被毛脱毛症は物理的な外力で脱毛する為、顔や肢端、肘、背中などに好発します。

黒色被毛毛包形成異常症

黒色被毛毛包形成異常症は、2色以上の被毛色で構成される犬において、黒色被毛の部分に一致した脱毛が起こる病気です。
淡色被毛脱毛症と同様で遺伝の関与が疑われている疾患で、抜毛検査により「メラニンクランプ」という特徴的な所見を確認することで診断・鑑別します。

季節性側腹部脱毛症

季節性側腹部脱毛症は、若齢(3~6歳頃)で発症し、秋から冬に脱毛し、春以降に発毛する病気です。
側腹部に左右対称で境界明瞭な色素沈着を伴う脱毛が生じる為、脱毛症Xと似た症状を示します。
こちらも原因は特定されていません。
好発犬種としてボクサー、エアデール・テリア、イングリッシュ・ブルドッグ、シュナウザーなどが知られています。

毛刈り(バリカン)後脱毛症

毛刈り後脱毛症は、手術やトリミングなどで毛を刈った部分の毛が発毛しない状態を指します。
どのようなメカニズムで毛が生えなくなるかはいまだ不明のようです。

関連記事:犬の抜け毛の原因とは?自宅でできるケアとは?

 

犬の脱毛症Xの治療と予後は?

犬の脱毛症Xは、何か体調に異常をきたすような疾患ではなく、外見上・美容上のトラブルと捉えられています。
ですので、治療を行わず経過観察、スキンケアを行うケースも多いです。
また、実際に治療を行っても治らないケース、治療を行わなくても治るケースもあり、治療を行うかどうかはケースバイケースです。
また、一度発毛し治ったように見えても、季節が変わるとまた脱毛する、というケースもあり、予後に関しては予測しづらいですが、基本的に生命予後には影響はないとされています。

治療に関しては、様々な方法が用いられています。

  • 去勢・避妊手術を行う
  • 酢酸オサテロン
  • トリロスタン
  • ダーマローラー

3ヵ月ほど治療を行っても改善がない場合は、他の治療を選択するとよいとされています。
また最近では、ヒトの美容器具であるダーマローラーを用いて、人工的に皮膚を傷つけることにより発毛を促す治療法も考えられているようですが、効果の程は不明とされています。

また、サプリメントとしては以下のようなものが用いられます。

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治療を行っても行わなくても、脱毛があるとその部位が乾燥してしまう為、保湿シャンプーを中心としたスキンケアは必ず必要となります。

皮膚が乾燥してしまうと、そこから痒みや炎症を起こし、皮膚トラブルへと発展してしまうので注意が必要です。

関連記事:犬のお風呂は月1? 週1? 入れすぎはよくない?

 

犬の脱毛症Xの治療費の目安は?

犬の脱毛症Xの治療費は、選択する治療や動物病院により大きく異なります。
まず、脱毛症Xと診断するにあたり、一般的な血液検査、腹部超音波検査、ホルモン検査などの各種検査を行った場合、概ね3~5万円程度はかかると思われます。
去勢・避妊手術を行う場合は、概ね2~5万円程度はかかると思われます。
酢酸オサテロンやトリロスタンなどのお薬による治療を行う場合は、月に2~3万円程度はかかると思われます。

 

まとめ

脱毛症Xは、日頃の診察においてよく遭遇する疾患です。

治療はさることながら、サプリメントやスキンケアなどの総合的なケアが重要になる疾患です。

根気強く付き合っていくことが大事な疾患とも言えますので、迷った際は皮膚科専門の獣医師のアドバイスを参考にするのも良いでしょう。

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参考資料
・SA Medicine Vol.20 No.5

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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