うさぎの歯ぎしりとは?
うさぎは犬や猫と異なり「声帯」が無いため、吠えるなどの声を出すことができません。
その代わり、音やしぐさで感情表現をする生き物です。
「キューキュー」や「ブーブー」、もしくは足ダンなどといった音やしぐさがよく見られると思います。
うさぎにとって歯ぎしりも感情表現の一部であると考えられています。
「ギュッギュッ」「コリコリ」「カチカチ」「ゴリゴリ」など、様々な音が出ると言われています。
その音や、その時のうさぎの様子から、「良い」意味の歯ぎしりなのか、体調不良を訴えている「悪い」意味の歯ぎしりであるのかを読み取ることが可能です。
今回は、そんなうさぎの歯ぎしりについて解説します。
うさぎの「良い」歯ぎしりとは?

うさぎは、以下のような時に歯ぎしりをすることがあります。
- リラックスしている時
- 撫でられている時
- ブラッシングが気持ちいい時
- 眠い時
- 寝てる時
- 嬉しくて興奮している時
その際に聞こえる音としては、軽い感じの「コリコリ」「カチカチ」などの音を細かく鳴らします。
この歯ぎしりをしている時は、目をトロンとさせて、鼻ピクも緩やかで、リラックスしている状態であると思います。
うさぎの「悪い」歯ぎしりとは?

では、うさぎが体調不良であったり、ストレスを感じていたりする時に見られる歯ぎしりはどのようなものでしょうか?
以下のような時に「悪い」歯ぎしりをすることがあります。
- 抱っこが苦手
- ブラッシングが苦手
- 環境が不衛生/高温多湿
- 騒音や知らない動物の臭い、鳴き声
- 環境の変化
- 体調不良による痛み/不快感
その際に聞こえる音としては「ゴリゴリ」「カチカチ」「ギュッギュッ」といった低く激しめの音が聞こえます。
同時に、目を大きく見開いていたり、耳をピンと立てたり、鼻を早くヒクヒクさせていたりすれば、「悪い」歯ぎしりに該当する可能性が高まります。
うさぎの「悪い」歯ぎしりの原因と対処法は?
うさぎがストレスで歯ぎしりをしている場合は、上記のようなストレス要因がないか確認してみましょう。
- 温度、湿度は適切か?
- 大きな音や突然の振動などはないか?
- トイレや床は衛生的か?
- ケージやトイレの位置などに変化はないか?
- 運動不足ではないか?
- 便の大きさに異常はないか?
- 排尿の様子に異常はないか?
- ヨダレが過度に出ていないか?
うさぎの理想的な飼育環境としては、温度は18.3~23.9℃、湿度は30~50%と言われています。
特に暑さ・湿度に弱く、25℃を超えると食欲不振などの症状が出る、湿度が60%近くになると熱中症になると言われています。
トイレは、水やペレットから遠い部分に設置し、一日2回の清掃が推奨されています。
運動に関しても、30分~2時間程度が目安と言われています。
他、体に便や尿が付着し不衛生になっていないか、床が汚れていないかなど、まずはそのような生活環境を今一度見直してみましょう。
気づいた点があれば改善し、それで歯ぎしりが無くなればよいでしょう。
もし、便が大小不同である、尿の色に異常がある、ヨダレが多いなどの症状がある場合は、何か病気で痛みや不快感を感じ、歯ぎしりをしている可能性があります。
体調不良の場合は、以下のような症状が併せて見られることがあります。
- ペレットやおやつ、牧草を食べない
- 軟便が出ている
- 鼻汁やくしゃみが出ている
- 涙が多い/白濁している
- 元気が無い
- 震えている
- 首が傾いている/旋回する
- 眼が飛び出ている
- お腹が張っている
うさぎは体調不良があまり表情に出ず、様子を見ていたら死ぬ直前だった、なんていうことも多々あります。
特に高齢であればあるほど、様子を見ずに早めに受診することを心掛けましょう。
うさぎの不正咬合の原因や治療は?
うさぎの歯ぎしりの原因としてよく多いもののひとつに「不正咬合」があります。
うさぎの歯は「常生歯」と呼ばれる、生涯伸び続ける歯です。
通常であれば、牧草を食べることで伸びた分の歯が適切に削れるので、トラブルになることはありません。
しかし、例えば元々の歯並びが悪い(上顎短小奇形など)、牧草ではなくペレット中心の食生活をしているなどで、歯が適切に削れない場合に、不正咬合を発症します。
切歯であれば、ネザーランド・ドワーフ種などに多く、上顎の成長が短い場合に発生しやすいと言われています。
正常であれば上の切歯が下の切歯より前に存在するのですが、これが逆になり、下の切歯が上の切歯より前に出てしまい不正咬合となるパターンが多いです。
ゆくゆくは臼歯の不正咬合に繋がってしまう、治療が必要な状態です。
臼歯に関しても同様で、食生活やケージを齧るなどのクセ、歯並びの問題で正常に削れない場合、臼歯が不自然に伸びてしまいます。
その結果、上の臼歯は外側に、下の臼歯は内側に尖って伸びてしまいます。
伸びすぎると、舌や頬に当たり、または口内炎を起こすことで食欲がなくなる、便が大小不同になる、ヨダレが多くなるなどの症状が起こります。
切歯、臼歯ともに伸びた歯を適切に切除する必要があります。
切歯に関しては、切歯カッターまたはマイクロエンジンによる切断での治療が行われます。
切歯カッターには、うさぎ用に開発された「清水式切歯カッター」などを用いて処置を行います。
切歯を切る際の圧力が、歯に対し均一にかかるよう設計されている器具で、切る際に縦割れなどのリスクを低減できるようになっています。
通常のペンチなどでの処置は、逆に食欲不振や根尖膿瘍を起こすリスクが高まりますので注意が必要です。
しかし、専用の切歯カッターでも根尖膿瘍のようなリスクがあるので、マイクロエンジンのような振動が少ない処置が理想とされています。
臼歯に関しては、基本麻酔下において、尖った部分を切除します。
吸入麻酔や注射麻酔を用いてうさぎに麻酔をかけ、開口器にて口を保持して臼歯の尖った部分を切除します。
基本的には全身麻酔になりますので、術前検査として血液検査やレントゲン検査で体調の確認を行います。
口内炎が起きている場合は、抗生剤やステロイド剤などによる内科的な治療を併用することもあります。
サプリメントとして、「担子菌抽出エキス(AHCC)」などで日頃からお口の健康を維持することも有用です。
うさぎのうっ滞の原因や治療は?
不正咬合と並んで、うさぎの歯ぎしりの原因になりやすい病気として、「うっ滞」があります。
そもそもうっ滞とは、流れや動きが滞ることを指します。
うさぎにおいて「うっ滞」という場合、概ね消化管の運動が滞っている状態を指します。
結果、胃が拡張したり、便が出なくなったり、食欲がなくなったりなどの症状が認められます。
うっ滞の原因は多様で、以下のようなものが挙げられます。
- 食餌(繊維不足、おやつが多いなど)
- 飼育環境の問題(上述と同様)
- 水分不足(腎不全など)
- ストレス(上述と同様)
- 不正咬合
- 毛球症
- 消化管のトラブル(細菌感染、寄生虫など)
- 誤食/中毒
- 尿石症
- 腫瘍
- 運動不足
治療は、上記の原因への対処、点滴、消化管運動改善薬や抗菌薬の投与が行われます。
うさぎの食餌に関しては、ペレットが中心となっているケースやおやつが多いケースなどにおいて、うっ滞は起こりやすくなります。
ペレットは理想体重の5%までにとどめることが理想的で、牧草を中心とした食餌にできるよう工夫していきましょう。
牧草に関しては、主にマメ科植物であるアルファルファや、イネ科植物であるチモシーが入手しやすい牧草です。
タンパク質やカルシウムといった成分の割合から、アルファルファは成長期に、チモシーは成長を終えた維持期に適切であると考えられます。
維持期においてもアルファルファを中心の生活をしていると、肥満や消化器疾患、尿石症へと繋がる可能性があるので注意が必要です。
不正咬合においては上述の通り、適切に切歯や臼歯を切ることで治療を行います。
毛球症においてよくうっ滞を繰り返すうさぎは、サプリメントとしてラキサトーン(流動パラフィン、白色ワセリン)を使うこともあります。
誤食において、犬や猫と異なりうさぎは嘔吐することが出来ない生き物なので、催吐処置のような対処ができません。
日頃から誤食をしない環境づくりを行うのが非常に重要です。
まとめ
うさぎの歯ぎしりは、うさぎが発してくれる数少ない感情表現のひとつです。
良い歯ぎしり、悪い歯ぎしりがあることをしっかり理解し、日頃の体調管理に役立てましょう。
悪い歯ぎしりかな?と思った時は、様子を見ずに早めに受診することが重要です。
繰り返し悪い歯ぎしりが起こる場合や、不正咬合やうっ滞を繰りかえす場合は、サプリメントなどで体調を管理することを推奨します。
参考資料
・できる!!ウサギの診療
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この記事を書いたのは

浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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