2025年版 獣医師が解説 犬のファンコーニ症候群とは?その原因や症状、治療とは?

この記事の監修者
みつはし

愛玩動物看護師
株式会社スケアクロウにて日々飼い主の皆さまサポートに奮闘中

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ファンコーニ症候群とは?

ファンコーニ(fanconi)症候群とは、腎臓の「近位尿細管」と呼ばれる部分で本来再吸収されるべき物質が、何らかの原因で尿中へ漏れ出てしまう病気です。

水分やミネラル、アミノ酸、ビタミン、ブドウ糖など、体に必要な物質が再吸収されず、体内で不足することにより様々な症状を引き起こすと言われています。

この病気は犬だけではなく、人でも発症することが知られています。

その原因は多岐に渡り、遺伝が関係した先天的なものもあれば、炎症や腫瘍、薬剤の副作用などで後天性に発症することが知られています。

近年では、紅麹を含むサプリメントが原因と疑われる腎障害に関連して、ファンコーニ症候群のような症状を発症した例も知られています。

 

表1 人における先天性ファンコーニ症候群の主な原因

病名 原因遺伝子
Dent病-1 CLCN5
Dent病-2 OCRL1
ミトコンドリア脳筋症 様々な遺伝子
乳児型シスチン症 CTNS
眼脳腎症候群 OCRL1
ガラクトース血症 GALT
遺伝性フルクトース不耐症 ALDOB

 

表2 人における後天性ファンコーニ症候群の主な原因

内因性 外因性
腫瘍(多発性骨髄腫など) 重金属(カドミウム、水銀など)
アミロイドーシス 薬剤

(抗がん剤、抗菌薬、抗けいれん薬など)

ネフローゼ症候群
慢性間質性腎炎

 

症状は多彩で、よく水を飲み尿量が増える「多飲多尿」や、栄養素の喪失によって発育不良やくる病などが見られることもあります。

腎機能の低下が進行し、小児では慢性腎臓病に至る場合もあるようです。

診断は血液検査や尿検査など、様々な検査を用いて行われます。

治療は、原因となる疾患の治療と、尿で喪失した物質の補充が中心となります。

具体的には、カリウムやリンの補充、ビタミン剤の投与、水分補給などが行われます。

予後は原因疾患の種類や重症度により大きく左右されます。

薬剤性の場合は休薬することにより症状が和らぐため、早期発見が重要とされています。

 

犬のファンコーニ症候群とは?

犬のファンコーニ症候群の病態は、腎臓の近位尿細管の再吸収不全症候群と定義されており、その病態は人の場合とほぼ同様です。

バセンジーという犬種に多く認められていることから、遺伝的な要因が関与していると考えられていますが、後天性にも発症することが知られています。

本疾患は早期発見・早期治療が重要で、適切にコントロールすれば10年以上の寿命を全うできると言われています。

 

犬のファンコーニ症候群の原因とは?

犬のファンコーニ症候群の原因は、先天性と後天性に分けられます。

先天性は主に遺伝が原因とされており、海外では遺伝子検査が可能と言われています。

好発犬種はバセンジーが有名ですが他、ノルウェイジャン・エルク・ハウンド、シェットランド・シープ・ドッグ、シュナウザーなどでも報告されています。

アメリカではバセンジーでの有病率は10%以上とも言われています。

 

表3 犬における後天性ファンコーニ症候群の主な原因

内因性
腫瘍(多発性骨髄腫など)
アミロイドーシス
ネフローゼ症候群
間質性腎炎
上皮小体機能亢進症
外因性
重金属
(鉛、水銀、カドミウム、ウラニウムなど)
薬剤
(ゲンタマイシン、セファロスポリン、シスプラチン、ストレプトゾトシンなど)
化学物質
(ライソゾル、マレイン酸など)

 

また、2000年代後半から2010年代にかけて、中国産のペット用ジャーキーを食べた犬が次々と健康被害を受けるという事例が報告されました。

食べ物に含まれる物質が原因となるケースもありますので、注意が必要です。

 

犬のファンコーニ症候群の症状は?

犬のファンコーニ症候群では、以下のような症状が認められます。

  • よく水を飲む(多飲)
  • 頻繁にトイレに行く(多尿)
  • 粗相をするようになった
  • 体重が減ってきた
  • 毛ヅヤが悪くなってきた
  • 後ろ足がふらつく
  • 元気が無い
  • 嘔吐や下痢を起こす

これらの症状が認められず、健康診断で見つかるケースもあります。

また、発症の初期であれば目立った症状が認められず、症状が出たころには進行しているケースもあります。

発症年齢は、バセンジーでは3~11歳と言われています。

早期発見・早期治療が重要となるこの病気においては、気になる症状がある場合は早めに受診することが大切です。

 

犬のファンコーニ症候群の診断に必要な検査は?

犬のファンコーニ症候群の診断には様々な検査を実施する必要があります。

多くの症例では、多飲多尿といった症状を示し来院されることが多いので、まずは他の疾患を除外する為にも血液検査と尿検査が行われます。

血液検査では、肝臓や腎臓などの臓器を含め、電解質やグルコースなど包括的な血液検査を実施します。

典型的なファンコーニ症候群であれば、血糖値は正常である一方、尿中に漏出するため総蛋白(TP)やアルブミン(Alb)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)などは低値を示す傾向があります。

疾患が進行し腎障害を起こしている場合は、尿素窒素(BUN)やクレアチニン(CRE)の上昇が認められます。

しかし、発症初期だと血液検査で全く異常が認められないケースもあります。

また、これらの異常所見は他の疾患でも認められる為、腹部超音波検査やホルモン検査などを追加で実施する場合もあります。

次に尿検査ですが、尿糖と尿蛋白が陽性になる傾向があります。

尿糖が陽性の場合、糖尿病を思い浮かべますが、ファンコーニ症候群の場合は血糖値が正常値である為、糖尿病とは区別されます。

また、尿糖陽性であることから細菌感染を起こしやすくなり、同時に潜血反応が認められたり、細菌の存在が認められたりすることもあります。

ここまでの検査で、犬種、症状、正常な血糖値および尿糖陽性という条件が揃えば、高い確率でファンコーニ症候群の疑いとなります。

最後に、血液ガス検査を行うこともあります。

こちらは一般的な動物病院では設備が無い場合が多く、実施されないこともあります。

ファンコーニ症候群では、尿中に重炭酸イオン(HCO3-)が喪失される為、その数値が低値を示すことがあると言われています。

また上述の通り、海外であれば遺伝子検査も可能で、診断の一助になると思われます。

 

犬のファンコーニ症候群の治療は?

ファンコーニ症候群の治療方針は、その原因が後天性か先天性かによって異なります。

 

後天性のファンコーニ症候群の場合は、その原因疾患により治療方法が異なります。

お薬が原因と疑われるのであれば、お薬の使用を中止し、症状の改善が見られるかを判断します。

原因となる疾患が特定できる場合は、その治療を優先して行います。

 

一方、先天性の場合は、残念ながら完治させることは難しく、尿中に失われる物質を補充していく対症療法が中心となります。

治療の基本方針は以下のようになります。

・新鮮な水を与える
水分は欲しがるだけ自由に与えます。新鮮な水を常に切らさないようにしてあげることが重要です。
結果として多尿になってしまい、つい水分摂取を制限しがちですが、脱水により腎障害が悪化してしまうと言われています。
必要に応じ定期的な皮下点滴を行うのも方法の一つです。

・タンパク質を与える
尿中にアミノ酸が排泄されてしまうため、少量に留めますが加熱した肉やウエットフードなどでタンパク質を添加します。
添加しすぎても腎臓に負担がかかることもありますので注意が必要です。

・総合栄養剤を与える
ビタミンやミネラル、アミノ酸などのサプリメントを使用すると良いとされています。

・腎障害がある場合の対応
腎障害がある場合は、上述の通り、タンパク質を添加することは中止します。
また、リンも過剰になる可能性があるため、リンが含まれるサプリメントは中止します。

また、上述の通り尿中にグルコースが排泄される為、膀胱炎を起こしやすくなります。

その際に使用されるサプリメントは以下のようなものが挙げられます。

  • クランベリーエキス
  • ウロガラシエキス
  • N-アセチルグルコサミン

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その他、血液検査や血液ガス検査で異常が認められた場合は、以下のような治療を追加する可能性があります。

  • 血液ガス検査でHCO3⁻(重炭酸イオン)が低下している場合は、重炭酸ナトリウムを使用する。
  • 血液検査でカリウム、カルシウムが低下している場合、グルコン酸カリウム、活性型ビタミンD3製剤などを使用する。

このように、一般的な血液検査に加え、血液ガス検査をモニタリングし、体重や毛ヅヤなどの犬の状態を総合的に判断し、治療が順調か判断を行い、治療を継続していきます。

 

まとめ

犬のファンコーニ症候群は日本国内では比較的珍しい疾患です。

診断には高度な医療機器が必要となることもあり、かかりつけの動物病院と設備の整った病院の連携も重要となります。

また、飼い主様による日頃の体調管理も重要で、治療が順調に行われているかの指標にもなります。

そのため、良い治療には飼い主様や獣医師の連携が重要と言える疾患だと思われます。

早期発見が重要な病気でもありますので、気になる症状がある場合は早めに受診することを心掛けましょう。

参考資料

  • 小児慢性特性疾病情報センター
  • Infovets No.173

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この記事を書いたのは


浅川雅清
獣医師
2016年、日本大学生物資源科学部獣医学科卒
同年4月から、東京都内のペットショップ併設の動物病院に勤務
犬・猫・ウサギ・ハムスターの診療業務を行う傍ら、
ペットショップの生体管理や、動物病院の求人管理や、自社製の犬猫用おやつやフードの開発に携わる。
2023年から1年間、分院長を経験し、2024年にフリーランス獣医師として独立。
現在は診療業務の他、電話での獣医療相談や、ペット用品の商品監修など幅広い業務を行っている
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