角膜潰瘍(かくまくかいよう)という病気をご存知ですか?
人でもよく聞く病気ですが、犬ではよりメジャーな病気と言えるでしょう。
角膜潰瘍は多くの犬が経験する珍しくない病気ですが、かなりの痛みが伴うため愛犬のQOL(生活の質)の低下に繋がってしまいます。
そこで今回の記事では、犬の角膜潰瘍について原因や治療法・予防法や症状まで徹底解説します。
角膜潰瘍とは?
角膜という眼の表面にある膜が何らかの原因で炎症が起きる病気です。
角膜潰瘍にはいくつか種類があり、表面に少し傷が入る状態を「角膜びらん」しっかりと傷が入ってしまっている状態が「角膜潰瘍」角膜に穴があいてしまっている状態を「角膜穿孔(かくまくせんこう)」といい、穿孔までいってしまうと緊急的な処置が必要になります。
角膜潰瘍の原因

外傷
一番多いのは外傷です。
お年寄りの犬に多いのは壁にぶつかってしまったことによる外傷や
多頭飼育の家庭では喧嘩や遊びの最中に眼を怪我してしまうことです。
また、自身の後ろ足で眼を掻いてしまったりという原因も考えられます。
飼い主さんとのスキンシップ中でも眼を怪我してしまう恐れもあるので気を付けてコミュニケーションを取りましょう。
乾性角結膜炎(ドライアイ)
目が乾いている状態が続くことをドライアイといい、乾性角結膜炎と呼ばれます。
涙の量が少なかったりすると、乾性角結膜炎と診断されることがあり、犬では多く存在します。
ただ、目の渇きは角膜潰瘍につながるリスクが高まってしまうため、ドライアイの犬では眼の保護などのお手入れも積極的に行うことが好ましいですね。
眼瞼内反・睫毛異常(逆まつ毛)
眼瞼内反は内まぶたの中の粘膜が一部ひっくり返り、外に出てしまっている状態のことで、睫毛異常とはいわゆる逆睫毛の状態です。
この2つの疾患は、角膜潰瘍になりやすい原因として考えられており、なるべく対処することが求められます。
シュナウザーなどでは、綺麗な長い睫毛が魅力的ですが、眼の疾患に繋がりそうであれば、カットするなどして健康を第一に考えてあげると良いでしょう。
シャンプーなどの異物混入
犬のお風呂を入れる時、顔周りの洗浄は特に気をつけましょう。
シャンプーが目に入るだけで簡単に目に傷が入ってしまいます。
トリミング施設でしかグルーミングしないご家庭は心配ないかもしれませんが、自宅でお風呂に入れる際は十分注意するか、眼軟膏を入れて水を弾くようにしてから実施すると良いでしょう。
細菌感染
細菌感染が原因でも角膜潰瘍は起こってしまいます。
といっても眼の細菌感染は汚い手で触ったりしない限りは予防策としてめぼしいものはなく、自然となってしまうものなのです。
細菌感染が原因の角膜潰瘍では抗生剤の目薬が処方され、細菌の根絶を目指します。
角膜潰瘍になりやすい犬種・特徴
短頭種

鼻が短い犬種を短頭種といい、ダックスなどの鼻の長い犬と比較すると眼をぶつけやすく、角膜潰瘍になりやすい犬種として知られています。
- パグ
- シーズー
- フレンチブルドッグ
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- 狆(チン)
- ペキニーズ
- チワワ
- コッカースパニエル
などが代表的ですね。
鼻が短いだけでなく眼は落ちそうなくらいまん丸で大きく、可愛いポイントですが、目の怪我には十分注意して過ごしましょう。
難治性(再発性)はボクサー犬・コーギー

難治性といわれる、簡単に治らない角膜潰瘍を起こす犬種はボクサー犬とコーギーだと言われています。
この犬種の飼い主さんは、目の異常を見つけた際、早めに対処し獣医師に今後の予防策について相談すると良いですね。
角膜潰瘍の症状
涙が出る
炎症反応の症状として涙が出てきます。
傷が入ってしまっている方が中心となるため、片目からの流涙が多いです。
普段から涙が多く涙やけに困っている飼い主さんも多いかと思いますが、特に涙の量が多いかなと感じたら獣医師に相談してみましょう。
目やにが出る
涙と同じく、目ヤニも増える傾向にあります。
目ヤニは早めに綺麗にしないと、固くなり取るのが痛く困難になります。
また、目ヤニの色にも注目しましょう。
透明な目ヤニから黄色や緑などさまざまな色の目ヤニが存在します。
正確な治療のためには、目ヤニの色もヒントであることが多いので、しっかりと伝えましょう。
目をショボショボする
眼を痛そうにショボショボして開けづらい状態を「羞明(しゅうめい)」といい、角膜潰瘍時の特徴となる症状の一つです。
角膜潰瘍は痛みを伴う病気ですので、開けづらそうに痛そうにしている場合は、すぐに動物病院を受診してくださいね。
充血
眼が赤くなることを充血といい、角膜潰瘍の犬ではよくみられる症状です。
白目の部分が赤くなっており、気付ける飼い主さんは多いと思います。
角膜潰瘍までいっておらず結膜炎の状態と診断されることも多いですが、痛みを伴うため、治療はしてあげると良いですね。
目の腫れ
目が腫れていることにも気がつくと思います。
目の周りが腫れていたりぷくっと感じる時は、角膜潰瘍になってしまっているケースもあります。
アレルギー症状などでも目の腫れはみられるため、一概に角膜潰瘍とはいえませんが、気がついたときには獣医師に相談してくださいね。
白く濁っている
白内障のように白く濁っているケースもあります。
この場合は、かなり進行していると考えられるため早めに受診をしましょう。
また、眼の大きさが左右で異なる時や眼が突出しているように感じる時も緊急疾患ですので、急いで獣医師に診てもらう必要があります。
角膜潰瘍の治療法

目薬や内服薬の投与
基本的に、角膜潰瘍の治療は目薬などの薬の投薬がメインとなります。
抗炎症剤の目薬や角膜の治癒を早める目薬などが主に使われます。目の保護のための点眼薬や眼軟膏も処方されるケースが多いでしょう。
感染症が原因の場合は、抗菌薬の目薬や内服薬も同時に投与され、治療は難しくはないですが忙しくなることでしょう。
エリザベスカラーの装着
目を守る対策は治療中、必須と言えます。
エリザベスカラーの装着は欠かせません。
治療中も目の違和感や痛みがあり犬は自身の足や爪で掻いてしまいます。
その際に眼を保護しておかなければ、治らないどころか悪化してしまう恐れがあります。
エリザベスカラーの装着にはストレスもかかることもあると思いますが、治療優先で考えてあげてくださいね。
外科手術
重症の場合は外科手術も検討しなくてはなりません。
角膜潰瘍の手術の手技はいくつか種類があり、症状や進行具合で異なります。
難治性の場合は、外科手術を提案されるケースが多いです。
全身麻酔が必要になるため、獣医師と相談の上で決断してくださいね。
コンタクトレンズの装着
犬にもコンタクトレンズを装着して治療する方法があります。
しかし、犬にコンタクトレンズを入れるのは難しく、お手入れや洗浄などの手間もかかります。
コンタクトレンズも立派な治療法の一つですが、犬の性格によっては選択できないこともあるため、慎重に治療方針を決めていきたいですね。
角膜潰瘍の予防法
目を潤しておく
眼が乾燥しているとドライアイとなり、角膜潰瘍を助長してしまいます。
そのため、涙液点眼などで日々潤しておくことも予防法として効果が期待できます。
涙の量があまり多くない犬では、おすすめの予防策と言えます。
ぶつかる危険性のあるのものは撤去する
お部屋の中でぶつかってしまいそうな障害物や家具があれば撤去しましょう。
また、角に緩衝材のようなものをつけるなどして、目の高さにあるもので怪我をしないような部屋の家具の配置を心がけましょう。
顔周りの毛は短くカットしておく
プードル・マルチーズやシュナウザーなどの顔周りの毛が伸びる犬種の犬は特に、目の周りの毛をカットしておきましょう。
眼に毛が入ることでも傷つき、炎症が起きてしまうことが大いにあります。
こまめにトリミングに出すかカットするかしておくことが予防法として効果的と言えます。
お風呂に入れる時は慎重に行う
シャンプーの液が目に入ることで角膜潰瘍を引き起こしてしまうとご説明しました。
そのため、自宅でお風呂に入れる時はくれぐれもシャンプーの液が目に入らないように慎重に行いましょう。
可能であれば、水を弾く眼軟膏をお風呂の前に入れるとよいでしょう。
犬の角膜潰瘍は治らない?
犬の角膜潰瘍は治らないと聞いたことがあるでしょうか。
しかし、それには語弊があり、治る病気ではありますが跡が残ってしまうことが多いというのが本当のところです。
ただ、先述したように難治性・再発性角膜潰瘍を発症している場合は治らないといっても良いかもしれませんね。
角膜潰瘍が治ったあとは、色素沈着といって黒くシミのようなものになるケースが多いです。
視力には問題ない場合が多いですが、見えづらくなることもしばしばです。
角膜潰瘍の治療は早めに取り組み、後遺症が残らないようにしたいですね。
角膜潰瘍の治療にかかる費用の目安
角膜潰瘍の治療は傷をチェックする検査から始まり、目薬や内服薬がメインとなります。
そのため、相場としては5,000円〜8,000円程度の治療費となります。
また、外科手術ではおおよそ手術代として40,000円〜60,000円程度となっており、手技が難しい手術法になると15万円前後になることも予想されます。
症状や進行具合によってまちまちなので、事前に確認しておきましょう。
まとめ
犬の角膜潰瘍は、よくなる病気で珍しい病気ではありません。
難治性などの一部を除いて治る病気ではありますが、跡が残ってしまうことも多いのが特徴です。
なりやすい犬種としては短頭種があげられます。
原因としてはぶつけることによる外傷や感染症・シャンプーが目に入ること・ドライアイや睫毛異常が多いです。
予防策としてはシャンプー時に慎重に行うことや眼の潤いを保つこと・ぶつからない部屋づくりなどが効果的です。
症状としては眼をショボショボすることや充血・涙や目やにが出るなどの目の症状がメインです。
早めに治療を行えるようにしましょう。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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