鼠径ヘルニアという病名を聞いたことはありますか?
ヘルニアという言葉は聞きなじみがあるかと思いますが、鼠径部ってどこだろう?治療した方がいいの?放置で大丈夫って聞いたんだけど…。と悩んだことがある飼い主さんは少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、鼠径ヘルニアの症状や治療法・予防法など詳しく解説していきます。
鼠経ヘルニアとは

ヘルニアとは、本来収まるべき場所から臓器や組織の一部が出てきてしまった状態のことで、鼠経とは、太ももの内側の付け根部分、いわゆる股関節の前方あたりを指します。
統合すると鼠径ヘルニアとは、鼠径部に穴が開いて腸や膀胱などの臓器・あるいは脂肪などの組織が出てきてしまっている状態のことです。
見ためでぷっくりと確認できますが、外からは内容物が何かは判別ができないので、むやみに触ることは控えましょう。
優しく触って痛がらないこと確認して、押して戻せるようなら出てきている内容物をお腹の中に戻してあげましょう。
鼠径ヘルニアの原因
鼠径ヘルニアの原因は大きく分けて2種類です。
先天性とよばれる、生まれつき持っているものと後天性とよばれる、あとから発症するケースとがあります。
先天性
生まれつき子犬の時から穴が開いており、鼠径ヘルニアを患って成長する犬もいます。
子犬の時の鼠径ヘルニアは、自然に成長とともに穴がふさがるケースも多く、生後半年程度では鼠径ヘルニアが消滅することも少なくありません。
大人になっても穴が塞がらないこともありますが、穴の大きさによっては、生涯を通して健康への被害がなく終えることも可能です。
後天性
事故や転落などの外傷で、腹腔内に大きな衝撃が加わると鼠径ヘルニアになってしまうケースもあります。
また、大きな衝撃がなくとも、長年の肥満体型などでお腹に圧がかかってしまって鼠径部にヘルニアができることもあります。
後天性の場合は、子犬と違って自然に消滅することはないので、症状と向き合って治療が必要であれば検討していく形になります。
穴が大きくなればなるほど、腹腔内の内容物が出てきやすくなるため、穴の大きさによっては外科的手術も検討する必要がありますが、愛犬に痛みがなく健康への被害がないのであれば、様子見もできるケースもあります。
鼠径ヘルニアになりやすい犬種や特徴
鼠径ヘルニアは全犬種において発生しますが、とくに気にしておきたい犬種としては下記の犬種が挙げられます。
- ゴールデン・レトリバー
- ダックスフント
- コッカー・スパニエル
- ウェスティ(ウエストハイランド・ホワイトテリア)
- ケアン・テリア
- バセットハウンド
また、年齢や性差でも好発があり、先天性の鼠径ヘルニアは子犬の男の子に多く、後天性は中年齢以降の女の子に多いといわれています。
鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアは自然に塞がることも多く、またヘルニア持ちでも生涯健康に被害を及ぼすことなく寿命を全うできる可能性も大いにあります。
そのため、基本的には無症状のことが多く、それほど気に留めない飼い主さんも多いかと思います。
しかし、穴の大きさや出てくる組織や臓器によっては症状が出ることもあるため、鼠径ヘルニア持ちの愛犬と暮らしている飼い主さんは、よく見ておくことが求められますね。
食欲不振
軽度のヘルニアでも、腸が飛び出ている際は、腸の通過障害が出ることがあり、そのせいで食欲不振が起こることがあります。
軽度のヘルニアは、押し戻すとお腹の中に元通り内容物が戻る状態のことですが、
重度になると押しても戻らず、さらに穴にはまり締め付けられてうっ血や壊死を引き起こしてしまう危険性があります。その際は食欲不振も顕著に現れてきます。
内容物が出ている時は優しく押し戻してみて、戻らなさそうなら命に関わる緊急疾患ですので、早急に動物病院を受診しましょう。
元気喪失
出ている内容物が臓器だった場合に、食欲不振時と同じく腸の通過障害などによって元気がなく感じることがあります。愛犬はなんだか気分が悪くてだるいなと感じているため、あまり動きたくなくなります。
ただ、食欲不振や元気の喪失はどんな病気でもなり得る症状ですので、油断せずに獣医師に相談してくださいね。
嘔吐
腸の通過障害によって吐き気を催し、嘔吐することも考えられます。
消化運動が活発に動いていないと、嘔吐や食欲不振など消化器症状が出やすいため、気にしておきたいですね。
また、基本的には鼠径ヘルニアの内容物は脂肪であることが多いので、出ていると簡単に押し戻せる飼い主さんも多いかと思いますが、
腸や膀胱などの臓器だった場合には、無理に押し戻そうとすることで傷つけたり捻転したりする可能性もあるため、そっと触って確認しましょう。
下腹部痛
膀胱や腸、脂肪などの組織に関わらずヘルニアの穴から内容物が出ていると、少しの刺激でも痛みを伴うこともあります。
小さな穴なら閉塞することも少ないですが、穴が広がったり内容物が詰まって圧迫されたりする際には、処置が必要です。
痛みが出ていると活動性の低下などにも繋がり、心配な症状が増えてしまうので、痛みが出ていそうなら早めに受診をしましょう。
排尿困難
内容物が膀胱の場合は排尿困難や排尿時痛がみられる場合があります。
膀胱が出てきている際は、無理に押し戻すのは膀胱破裂などの危険性があるため絶対にやってはいけません。
おしっこに行きたがらない、トイレのポーズをしているけど出ない、排尿時に悲鳴が上がるなどの異常時はすぐに獣医師に相談しましょう。
鼠径ヘルニアの治療法
鼠径ヘルニアは、基本的に無症状が多く成長とともに穴が閉じて治ることも多い病気ですが、中には治療が必要なケースも少なからず存在します。
そんな鼠径ヘルニアの治療はどのように行われるのでしょうか。
確定診断
まず、治療の前に鼠径ヘルニアであると確定診断することが大事です。
鼠径部の腫れはリンパ腫の腫脹や乳腺腫瘍・皮下腫瘍などとみためでは判断がつきにくいため、エコーやレントゲンなどを通して確認します。
画像検査で判断が不十分であれば、細胞診などの組織検査に移り、確定診断に繋げることもあります。
外科手術
ヘルニアの穴が大きかったり、内容物が戻らなかったりして健康に被害がもたらしそうな場合には、外科手術を提案します。
内容物をもとの位置に戻して、空いている穴を塞ぐ手術を行います。
比較的安全性の高い手術ではありますが、全身麻酔下での処置になるので、リスクは伴います。
また、出てきている内容物によって閉塞を起こしたり、壊死しかけて症状が重度の場合は有無を言わせずに手術を行います。
術後は基本的に安静にしていれば、良好な予後を辿ることが多く、穴が再び開くことのないように健康維持に努めていきましょう。
鼠径ヘルニアの予防法
先天性の鼠径ヘルニアは予防しようがないですが、後天性鼠径ヘルニアはできる対策がいくつか存在します。日常的にできることもあるので、ぜひ簡単なことから取り組んでみてくださいね。
子犬を迎えたら動物病院で検診を受ける
まずは、先天性の鼠径ヘルニアがあるかどうかをチェックしてもらいましょう。
ペットショップから購入する際は、事前に確認できている鼠経ヘルニアはしっかりと通達してもらえると思いますが、ちゃんと獣医師に確認してもらうのも予防の第一歩です。
肥満にさせない
腹部の圧迫は鼠径ヘルニアに繋がる危険性があります。
過度な肥満は腹部に圧力がかかり続けることになり、鼠径ヘルニアになるリスクや、軽度の鼠径ヘルニアが悪化してします恐れがあります。
また、肥満はさまざまな病気の原因になるため、体重管理は日ごろから気を付けておきたいですね。
避妊手術を受ける
女の子の犬は、妊娠することで腹部の圧が増し、鼠径ヘルニアに繋がってしまうことも考えられます。
出産時にも腹部にかなりの力がかかるため、鼠径ヘルニアがある犬の出産は悪化する恐れもあり、要注意です。
妊娠を考えていないのであれば、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍の発生率の低下にもつながるため、避妊手術の実施をおすすめしています。
関連記事:犬の避妊手術の適切な時期は?知っておきたいメリットとデメリット
毎日体を触って確認しておく
鼠径部を毎日触って、ヘルニアがないかどうかはチェックしておきましょう。
日々触れておくことで、異常か正常かの判断が容易につくので、鼠径部だけでなく全身を毎日チェックする習慣をつけるといいですね。
そして、少しでもおかしなものがあればあまり長い期間様子見をせずに、一度獣医師に相談することをおすすめします。
鼠径ヘルニアの治療にかかる料金の目安
鼠径ヘルニアの治療は基本的に無治療または外科手術となっているため、治療にかかる料金の目安は犬の症状や治療が必要かどうかで大きく分かれます。
外科手術は相場として70,000円~120,000円程度となっており、確定診断に繋げるための検査や術前検査などは別途です。
こちらも相場は20,000円~50,000円程度となっています。
外科手術を実施したあとはしばらく経過観察がいりますが、治れば付き合っていく病気ではないため、月に固定でかかる費用はないといえるでしょう。
まとめ
鼠径ヘルニアは先天性(生まれつき)・後天性に分かれます。
基本的に子犬の場合は成長とともに穴が塞がるケースもあり、完全に穴が閉じなくても小さな穴で脂肪などの組織が出ているケースでは無症状・無治療で生涯暮らせる可能性もあります。
しかし、穴が大きめだったり内容物が臓器だったりした場合に、症状を呈することがあり、重度になると消化器症状から始まり、腸閉塞や壊死などが起こってしまい命の危険がでてきてしまいます。
健康に被害が出てくるのであれば、治療として外科手術を検討しましょう。
また、事故などの衝撃でも後天性鼠径ヘルニアを起こすことがあるため十分に注意しましょう。
肥満や妊娠でも腹圧の上昇により鼠径ヘルニアを発症・悪化させる恐れがあるため、体重管理や避妊手術の実施を心がけましょう。
さらに、日ごろから鼠径部を含め体に異常がないかは触る習慣を身に着け、異常に早く気付けるようにしておくことも大切ですね。
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この記事を書いたのは
中村千尋
愛玩動物看護師
大阪ペピイ動物看護専門学校卒業
認定動物看護師資格取得・ペット栄養管理士資格取得
兵庫県内の動物病院で勤務(現在も勤続中)
愛玩動物看護師国家資格取得
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