電車賃もなかった、起業のころ

2004年3月、有限会社スケアクロウを立ち上げました。

場所は神奈川県川崎市。

39歳のときです。

 

きっかけは愛犬ロクでした。

15年の犬生を全うしましたが、最期は乳がんの転移が全身に広がり、どうしようもない状態で息を引き取りました。

手術、抗がん剤、放射線治療。

どれにも限界があり、家族とその子の最期をしあわせには見送らせてくれませんでした。

お薬だけに頼らない方法はないのか。

そこから動物医療の仕事が始まりました。

 

同じ年の6月には、渋谷区円山町に支店を出しました。

7月には日本獣医畜産大学と「犬のがん疾患に対する養子免疫」の研究を始め、10月に動物用サプリメント「パンフェノン(S)」の販売を始めています。

こう書くと順調そうですが、実際は真逆でした。

 

起業からの6年半は、ずっと1人。

いろいろなペット関係の会合に顔を出しては、サプリを試してもらう。

それを続けても、なかなか芽が出ません。

 

これは動物病院に使ってもらうしかない。

そう考えて、営業に回りました。

やがて電車賃もなくなり、沿線の一番遠い駅まで行って、歩いて戻りながら営業とヒアリングを続けました。

それでも売れない。

学会で発表する機会もいただきましたが、評価は良くありませんでした。

 

駅の構内の階段に座り込んで、動けなくなった日があります。

今でも忘れられません。

精神的にも、どうにかなってしまいそうでした。

 

そんな中、初めて大学と共同研究をして、商品を発表する機会を得ました。

すると、驚くように売れ始めたのです。

それが「パンフェノン」でした。

借金も返し、スタッフを雇えるようになり、ようやく軌道に乗りました。

2007年10月には、株式会社スケアクロウに登記を変えています。

 

あれから20年余り。

今では海外23カ国と、国内3,000ヶ所以上の動物病院で製品を扱っていただいています。

 

あの階段に座り込んでいた自分に、教えてあげたいですね。

ロクがずっと背中を押してくれていたのかもしれません。