消化器の病気

■ 胃拡張・胃捻転(いかくちょう・いねんてん)

【原因】

食べ過ぎや胃の中に、発酵したガスや液体が溜まり、急激に腹部が膨張して拡大することを胃拡張といいます。膨満した胃は他の臓器や横隔膜を圧迫し悪影響を及ぼします。胃捻転は膨張した胃がねじれるように回転して、胃の中の空気や水分などが外に出ることができずにますます拡張が進むことにより、引き起こります。血液の供給も止まることで胃の組織が壊死し、胃が破裂することもあり重篤な腹膜炎を起こすこともあります。食後に大量の水を飲んだり、運動をしたりすることが原因で重くなった胃が腸と絡んでしまうことがあります。

【症状】

胃拡張・胃捻転症候群になると、犬は大変苦しみます。食後2~6時間の間に発症することが多く、胃拡張を起こした時は水を大量に飲み、ゲップを繰り返し、やがて嘔吐します。嘔吐物は黄色くなっていることがあります。胃捻転の時は吐こうとしても吐けず、苦しそうにえづいて、大量によだれを流します。また嘔吐できても、嘔吐物はコーヒー色の茶褐色をしていて悪臭もします。腹痛があって落ち着かない様子でお腹を触られることも嫌がり、ショック状態に陥ることもあります。胃拡張と胃捻転はどちらも急激に重篤な状態になります。

【治療・対策】

胃拡張の場合は胃に太い針を刺すか、チューブを通してガスを抜きます。胃拡張を起こしやすい犬の場合、ドライフードは水分でふやかし、一度に大量の食事を食べないように数回に分けて与えます。胃捻転を起こした場合は緊急手術が必要です。手術で胃を元の状態に戻し固定しますが、発見が少し遅れただけでも治療が難しくなり、命に関わる重篤な状態になります。日ごろから食後は安静を心がけ、運動などは避けます。


■ 胃潰瘍(いかいよう)

【原因】

胃潰瘍の原因は様々あり、胃粘膜が胃酸やペプシン、胆汁などで傷つけられて糜爛状になり、それが腫瘍になって悪化します。主な原因としては肥満細胞種という腫瘍や腎不全などがあげられます。また、肝不全や敗血症、低血圧、ショック状態が原因になることや、アスピリンやステロイド剤の投与で粘膜に傷がついて腫瘍になる場合もあります。

【症状】

胃潰瘍を発症すると、食欲がなくなって嘔吐をすることもあります。嘔吐物がコーヒー色になる時は、胃の中で出血していることが考えられ、吐血がみられる時にはいち早く治療することが大切です。色が黒い時は古い出血ですが、鮮血は肺からの出血で重症です。症状が進むと便に血が混じったり、発熱したり、腹部の痛みもみられます。重症化すると胃粘膜や粘膜下層、筋層が破壊されて胃に穴が開き腹膜炎を起こし、重篤な状態になることもあります。

【治療・対策】

検査には胃カメラを使用します。また血液検査で貧血の症状や血液中のたんぱく質濃度なども調べます。胃潰瘍は、様々疾患が要因になっていることが多いので、基礎疾患の治療をします。腫瘍が原因の場合は切除を行い、腎不全や他の疾患があれば症状に合わせて内科的治療を行います。症状が重い場合や再発を繰り返す場合には潰瘍を摘出する手術を行います。高齢になると発症しやすいので、食事の量や内容を一定にして規則正しく与えます。消化の良いフードを選んで、胃に負担をかけない食生活を心がけます。休養や睡眠、適度な運動など飼育環境も整えて、健康的に過ごせるように配慮します。


■ 肝硬変(かんこうへん)

【原因】

肝硬変の原因は、慢性肝疾患が進行した最終段階で繰り返し肝臓に炎症が起こることです。そのたびに繊維組織が破壊された部分を修復しようとして増殖し、最終的に繊維が多すぎて肝臓全体を硬く変質させてしまいます。他の原因としては門脈シャントなどの肝不全や重度肥満、肝腫瘍、胆管結石、胆汁うつ滞、フィラリア感染による血液の循環不全などもあげられます。

【症状】

肝臓が硬く変質してしまう肝硬変は肝機能が極端に低下した状態になります。元気がなくなって、食欲も落ちます。また下痢や嘔吐もあり、体重も減少していって腹水が溜まってお腹を触られることを嫌がります。症状が進むと血便や耳の中や歯茎、白目が黄色くなる黄疸がみられ、皮膚全体の色も黄色くなります。悪化すると肝細胞の合成機能や代謝機能も低下するため、低タンパク症や低血糖症を発症します。アンモニアや他の有毒物質が血液循環で脳に溜まり、肝性脳症を発症することもあります。

【治療・対策】

肝硬変になると、一度壊れてしまった組織を治すことはできず、完治は不可能な病気です。そのため、症状を緩和する治療と、進行させないための治療が行われます。肝硬変にも段階がありますから、他に疾患がある場合は原因疾患の治療を行いこれ以上進行させないようにします。食事療法としては、低脂肪で糖分やビタミンが豊富な栄養価の高い療養食を与え、安静を保ちます。また予防としては、日ごろから欲しがるおやつを与え続けることなく、しっかり栄養管理をして、適度な運動を心がけることも大切です。


■ 肝性脳症(かんせいのうしょう)

【原因】

血液にはさまざまな不純物や毒素が混じっています。肝臓は体内に毒物が回らないようにろ過する働きがありますが、肝臓の機能が低下したことでアンモニアなどの有害物質が解毒されなくなります。そして、有害物質が体内を循環してしまうことで脳も汚染され、さまざまな影響と症状が出ます。肝臓機能が低下する原因としては、肝臓の萎縮や肝硬変、門脈シャントなどの肝不全があげられます。

【症状】

肝性脳症を発症すると、発育不全や虚弱体質などになってしまいます。また食欲もなくなり、体重が減ります。下痢や嘔吐を起こしやすく腹水が溜まることもあり、お水を飲む量が多くなり、多尿になります。脳内に毒素が蓄積されて症状が進むと、ふらふらと歩く様子がみられる場合や、けいれんを起こす場合があり、ひどくなると失明する場合や、昏睡状態に陥る場合があります。

【治療・対策】

肝臓がどのような状態になっているか調べるために、腹部のX線検査を行います。門脈・大動脈などの血管異常や、肝臓の状態をあわせて調べるために、造影剤を使って状態を調べる場合もあります。肝臓に障害を起こしている原因疾患がわかれば、その治療を行います。門脈シャントがある場合は外科的手術で血液の流れを修復します。脳へのダメージを軽減するため、毒素を排泄する内科的治療を行います。食事療法も有効で、食欲のない場合は回数を1日数回に分けて無添加の療養食を与えます。解毒機能が落ちているので、お水も水道水ではなく消毒剤の入っていない天然水を与えます。


■ 急性胃炎(きゅうせいいえん)

【原因】

急性胃炎には様々な原因があります。散歩中に腐った食べ物や水を飲む、ごみや危険な毒物を摂取する、有毒な植物や木を食べるといったことが原因となり、胃の粘膜に炎症を起こして発症します。また、処方された薬が強すぎる場合や、体に合わなかった場合にも同じように胃炎を起こすことがあります。腐った物が原因の場合は細菌や毒素などが複雑に関係するので、症状が悪化し、死に至る場合もあるので注意が必要です。

【症状】

急性胃炎は突然体調を崩し、嘔吐が始まります。激しい嘔吐を繰り返し、脱水から水を多く飲みますが、飲むと水分も吐くということを繰り返し、脱水症状を起こします。脱水症状が進むと皮膚がたるみ、目がくぼんでみえることもあります。胃の痛みや激しい吐き気と腹痛があり、胃の内容物や胃液などすべて吐き出そうとします。吐く物がなくなってからも、吐く動作が治まらないことが多くあります。吐いた物に血が混じる場合や、下痢を伴う場合もあります。

【治療・対策】

胃炎による吐き気かどうか、腹部の触診やワンちゃんの症状から判断しますが、場合によってはX線検査をします。胃カメラで粘膜の一部を撮って調べる、細胞検査をすることもあります。治療は脱水症状がある場合は輸液の補給を行いますが、脱水が重篤なら点滴をします。食事と水分は絶食して胃を休ませます。水分をほしがる時は氷をなめさせる程度で我慢をさせます。予防としては、拾い食いをする癖は直し、食べ物は飼い主さんが与えた物しか食べないように教えます。散歩中も十分気を配り、落ちている物を口にしないようにします。


■ 急性胃腸炎(きゅうせいいちょうえん)

【原因】

犬は食べ物の選り好みをあまりせず、生ごみをあさって食べることもあります。特になんでも口にしたがる癖のある犬はその機会が増えるので、細菌などが増殖したものを誤って食べてしまわないように気を付けなければなりません。また、ストレスや環境条件により体に負担がかかったときも急性胃腸炎にかかりやすくなります。例えば、ペットホテルに数日預けられた場合などに、環境に慣れずストレスがかかることで下痢をする例も多くみられます。細菌による下痢は代表的なものでカンピロバクターやクロストリジウム(芽胞菌)などの増殖が挙げられますが、特定できないものも多いです。その他に、鎮痛剤や抗炎症剤として使用される非ステロイド性抗炎症剤の服用で胃炎が起こることがあります。

【症状】

急に嘔吐や下痢が起こり、食欲不振や元気消失、腹痛などがみられることもあります。症状が出る前に少し元気がない様子がみられることもあるかもしれません。嘔吐や下痢がそれほど頻繁に起きず、症状が軽く元気があり食欲もあることが多いです。あるいは、食欲不振、元気消失、吐血(嘔吐に血が混じる)、血便、お腹がキュルキュルなったり、腹痛を訴えたりします。

【治療・対策】

症状などにより検査が行われます。下痢の場合は診察の直前にしたものがあれば受付で渡し、糞便検査をしてもらいましょう。量が少ない場合や検査のための糞便がない場合は、直腸から糞便を採取する棒で便をとり、糞便検査を行います。血液検査やその他の詳しい検査は、元気や食欲のある軽症の急性胃腸炎で行われることはあまりありません。しかし、活動性や食欲の低下、頻繁な嘔吐やひどい下痢などがあるとき、または異物の誤食など他の疾患が疑われるときは必要に応じて実施されます。犬の急性胃腸炎の予防方法として、まずは生ごみやごみ箱をあさることができないように誤食防止への対策をすることが挙げられます。

また、犬の体や心にストレスがかかりすぎる状況や環境をできるだけ避け、快適に過ごせるようにすることを心がけることも大切です。来客や泊り、ドライブなど普段しないようなことをすると興奮してストレスとなることがあるので、犬が喜ぶことであっても何かのイベントなどの後は体の調子には注意してください。 他には、食事の変更をするときは徐々に行い、食事やおやつを変更した後は便の状態や犬の様子をよく見てあげましょう。急性胃腸炎は通常、経過は良好ですが、子犬では急性胃腸炎でも食欲が落ちて、低血糖、脱水を起こし命を落としかねない状態になることがあります。子犬で下痢や嘔吐が続いたときはすぐに動物病院に連れていき必要な治療を行い、しっかり食事がとれているか確認しましょう。

急性胃腸炎は自然に治っていくことが多いですが、症状や脱水状態などを緩和する治療が必要になることもあります。その場合も治療に良好に反応することがほとんどです。異物など他の原因があればその治療が行われ、輸液療法(主に皮下点滴)、制酸剤(胃液の分泌を抑制)、消化管運動促進剤、・消化管運動抑制剤、抗生剤、制吐剤、下痢止め剤(止瀉薬)、消化管保護剤、プロバイオティクス(乳酸菌など)などを処方します。また、嘔吐が続き内服が難しい場合は通院し、皮下点滴や注射を行います。嘔吐が治まり内服が可能になれば内用薬が処方されます。治療になかなか反応しない場合は単純な急性胃腸炎以外の可能性が疑われるので、さらなる検査や入院が必要になることがあります。急性胃腸炎の際の食事については症状により対処が異なるので、獣医師の指示に従いましょう。食事を与えて嘔吐や下痢がひどくなった場合は動物病院を受診するか、または相談してください。


■ 急性肝炎(きゅうせいかんえん)

【原因】

急性肝炎は何らかの原因で肝臓の細胞が傷つくことで発症し、原因はいくつかあります。鎮痛剤や麻酔薬、ホルモン製剤などの薬剤投与が原因になったり、化学物質や銅、ヒ素、水銀などの毒物が誤って体内に入ったりしたことで、肝臓に障害が起こったことも考えられます。そのほかにウィルスや細菌、寄生虫の感染で肝臓に負担がかかることもあります。また事故や外的要因で肝臓にダメージを負ったことも原因となります。

【症状】

急性肝炎を発症した場合は、元気がなくなり、嘔吐や下痢が続いて食欲が落ちていきます。歯茎や耳の中、白目が黄色くなる黄疸もみられます。お水をたくさん飲んで尿が増える多飲多尿や、肝臓から出血することで黒色便や吐血を伴います。症状が悪化すると、けいれんやお腹に水が溜まる腹水などの症状がみられます。口からアンモニア臭を感じることもあります。数週間以内に肝性脳症といわれる意識障害や昏睡状態に陥ることもあります。

【治療・対策】

急性の場合は、まずは症状の進行を抑えます。肝臓に負担がかからないよう、安静にしながら食事療法を行います。病院で処方される療養食があるので、指示通りに与えます。同時に、感染症などが原因で発症した肝炎の場合はその治療も行います。感染症は予防接種で防げるものもあるので、1年に1度の摂取を心がけます。また、肝性脳症の原因になるアンモニアを抑制する治療も行います。


■ 急性腎炎(きゅうせいじんえん)

【原因】

イヌ伝染性肝炎、子宮蓄膿症、条虫、毒性物質、細菌やウィルス感染などによる免疫反応で、糸球体に異常をきたすことが大きな原因です。通常は症状が軽く、病変もすぐに消えてしまうことのほうが多いのですが、重症な場合、ワンちゃんの臓器に異常が起きて尿毒症などを引き起こすことがあります。遺伝的な要因が発症にかかわることもあり、糸球体腎炎を起こしやすい犬種があげられているので注意が必要です。

【症状】

急性糸球体腎炎とも呼ばれ、腎臓内の糸球体に炎症が起き、血液をろ過する働きが正常にできなくなって血中に老廃物が残留される病気です。尿量減少・尿の色が濃くなる・むくみ・食欲低下・脱水・食欲不振・ぐったりして元気がない・嘔吐・口臭(アンモニア臭)・高窒素血症・尿毒症血尿のほか、痙攣等の神経症状などが起こします。進行すると尿量が増えるので、尿量の変化は大きなサインにもなります。急性腎炎を繰り返すと慢性化することがあります。

【治療・対策】

点滴や食餌療法により、尿量を増やし老廃物を体外に排出させます。高窒素血症の改善を目的に血液の透析・ホルモン剤やカルシウム剤を使用することもあります。別の疾病によって急性糸球体腎炎が引き起こされている場合は、それらの基礎疾患への治療も施します。動物病院での尿検査のほか、尿の回数や色の異常など日常的に尿のチェックをする習慣をつけることで、腎臓機能低、腎不全になる前の早期発見が可能になります。


■ 急性腸炎(きゅうせいちょうえん)

【原因】

急性腸炎の原因はさまざまあります。比較的多い要因としては、腐った食べ物や水を飲んだことによる細菌感染や、ジステンバー、伝染性肝炎、パルボウィルス感染症などがあります。子犬では過食などが原因になることもあります。また、室内でも観葉植物や毒性のある化学物質を口にした場合、おもちゃなどの異物を飲み込んだ場合でも急性腸炎を引き起こします。近年増えているのは、食物アレルギーが原因で起こる腸炎があります。

【症状】

腸の粘膜に炎症が起き、急によだれを垂らすような吐き気や嘔吐が始まります。下痢が伴う場合が多く、軟便や水溶性の便になり、症状が重い場合は便に血が混じる場合もあります。急激に体調が悪化するようなことはなくても、脱水症状が進行する場合があります。腸炎の原因が感染症の場合には症状が重くなりやすく、重篤な状態になる場合もあります。発熱や腹痛はあまり起こしません。

【治療・対策】

原因によって治療方法は異なりますが、異物を飲み込んだ場合は外科的手術で取り除きます。細菌感染が原因の場合は抗生物質や下痢止めなどを投与し、嘔吐や下痢を抑制します。またウィルス感染症は定期的なワクチン接種で防ぐことができるので、1年に1度のワクチン接種を心がけます。予防としては、口にしてはいけないものを食べないように生活環境を整え、拾い食いをしないようにしつけておきます。特に子犬の場合は下痢や嘔吐だけでも様子を見ることなく、早めに受診することで重篤な状態になるのを避けることができます。


■ 急性膵炎(きゅうせいすいえん)

【原因】

膵臓で作られる膵液は十二指腸で腸液と混ざって活性化し、強い消化液になります。急性膵炎は様々な原因で活性化した膵液が膵臓に逆流し、自分の膵臓自体を消化することで生じる病気です。中高齢のワンちゃんに多く発症し、原因のひとつに脂肪分の多い偏った食事やジャンクフードをおやつに食べている場合にかかりやすいとも考えられています。また特定の薬物が原因で発症する場合もあります。抗痙攣剤や利尿薬などは膵炎を起こすきっかけになります。また副腎皮質機能亢進症や上皮小体機能亢進症といった病気や細菌、ウィルス感染などが原因になる場合もあります。

【症状】

急性膵炎を発症すると激しい腹痛を伴って、お腹を抱えるように丸くなる姿勢をとり、歩くことをためらうようになります。元気がなく弱々しくなって、発熱や食欲の低下、嘔吐などがみられます。腹痛や嘔吐などの苦痛から呼吸が浅くなり、重症化した場合は呼吸困難やショック状態になることもあり、命に関わります。黄色い脂ぎった便もみられます。

【治療・対策】

検査では基礎疾患がないかどうか調べ、病気があれば治療します。急性膵炎の治療は特効薬がないため、制吐剤や鎮痛剤で痛みや吐き気を抑え、抗生物質などの投与を行います。軽症の場合は消化しやすい食事を与えて、膵液の分泌を抑えます。また重症の場合は、3日~1週間程度絶食をさせて膵臓を休ませながら炎症を抑え、その間は入院して輸液を投与し、低脂肪・低タンパク食の栄養補給を行います。日ごろから栄養バランスのとれた食事を与え、適度な運動や肥満にならないよう心がけます。


■ 巨大食道症(きょだいしょくどうしょう)

【原因】

原因のひとつである重症筋無力症の場合は、若年齢から全身の筋肉虚弱が始まって全身麻痺が起こる先天性と、局所的に筋肉の虚弱化がみられる後天性があり、食道にだけ症状が出るケースもあります。多発性筋炎で食道に症状が出ると、食餌がうまく流れず咳き込んで吐いてしまいます。副腎皮質機能低下症が原因だと食欲減退、嘔吐、下痢、体重低下、元気がないといった症状があります。慢性化した場合、良くなったり悪くなったりを繰り返し、急性の場合は命に関わる場合もあります。他には食道炎や食道周辺にできた腫瘍なども考えられます。

【症状】

巨大食道症に年齢は関係ありませんが、比較的離乳してまもない子犬に多く発症します。発症すると、食べた食事を嘔吐したり、飲んだ水を吐いたりします。食道の動きが低下しているため、食後まもない時間に吐き出します。十分に栄養を摂取できずに体重減少や吐いた物が鼻や気管、肺に入ってしまって嚥下性肺炎や鼻炎を起こすこともあります。その場合は咳や発熱、鼻汁、呼吸困難などが伴います。この病気で死に至る場合、多くの原因は嚥下性肺炎が引き金といわれています。

【治療・対策】

検査は胸部X線を行います。基礎疾患の病気があれば、その治療から始めます。食道炎や肺炎を起こしている場合、抗生物質などの投与で内科的治療を行い、腫瘍や食道内に異物がある場合には外科的手術で摘出します。食事を与える時は吐き出さないように直立姿勢で与えることで吐き出しを抑制します。食後も15~30分は姿勢を保ち、食物を胃に運びやすくします。巨大食道症は治療が難しい病気ですが、早期発見で体の負担を軽減します。


■ 食道梗塞(しょくどうこうそく)

【原因】

食道は伸縮性があり、ある程度の大きさの物なら胃に運んでくれますが、あまりにも大きな物や、飲み込みにくい形状、固い物などは詰まってしまうことがあります。詰まりやすい物はボール、犬用ガム、骨、おもちゃ、木の枝など多様にあります。遊び好きな子犬に多く、いつどこで飲み込むかの予測は難しいため、屋内でも屋外でも注意が必要です。おもちゃで遊んでいる時やガムを噛んでいる時も、大きな塊を飲み込んでいないか、注意を払います。

【症状】

食道梗塞は、食道に何かが詰まって食堂が塞がってしまう病気です。原因不明の食欲不振や吐き出しがあります。嘔吐ではなく、口にした物を吐き出してしまう様子がみられます。異物の詰まり方によっては苦しそうにすることや、咳き込むこともあります。吐き気を訴える仕草をすることもあり、よだれを垂らしていることもあります。

【治療・対策】

症状や異変に気づいたらすぐに病院を受診します。X線検査で吐出の原因が食道閉塞なのかどうか、異物の存在を確認し、どこで何が詰まっているかを調べます。喉に近い部分であれば喉に移動させて取り除くこともありますが、食道を傷つけることがないように異物を調べてから行います。小さいものなら内視鏡で検査をしながら取り出すこともあります。大きな物などは外科手術で取り出します。予防としては、ワンちゃんが食べてはいけない物を口にしないよう生活環境を整え、遊んでいる時も注意を払うことが大切です。


■ 腸重積(ちょうじゅうせき)

【原因】

腸重積は、腸管の一部が反転して腸の中にはまり込み、重層した状態で抜けなくなる状態が腸重積です。腸閉塞の原因にもなって、腸の中のどの部位でも起こります。腸重積が起こる原因ははっきりとわかっていませんが、腸の動きや何らかの腸管への刺激が原因になることだと考えられています。また、外的要因では糸やストッキングなどの異物を飲み込んだことが原因になることや、寄生虫や腫瘍が原因になることもあります。

【症状】

腸重積によって腸管が狭くなり、食べ物が通過できなくなることでさまざまな症状が出ます。食べたものが少しでも通過できる場合、イチゴゼリー状の粘血便が出ることもありますが、時間がたって重積部分が多くなると嘔吐を繰り返すため元気がなくなり、腹痛も伴って触られるのを嫌がります。食欲もなく、お腹が膨れてくるような症状がみられます。経過とともに悪化して腸閉塞の原因にもなり、ショック症状から重篤な状態になることもあります。1歳未満の幼犬に多く発症します。

【治療・対策】

X線検査やバリウムの投与で閉塞部分を確認し、腸重積が認められれば外科的手術で重積の整復手術を行います。ただ、長時間腸が重積した状態になっている場合や、血管や腸間膜が腸と一緒に入り込み、血液遮断などが要因で腸管に癒着などのダメージを受けている場合は、修復が難しいこともあります。重積した部分が壊死している時や、腸の表面に穴があいて回復が見込めない時は、部分的に切除して腸をつなげます。緊急手術になりますが、閉塞を取り除けば問題ないため、早期発見で苦痛を軽減します。


■ 腸閉塞(ちょうへいそく)

【原因】

腸閉塞は腸に大きな異物が詰まるだけでなく、ティッシュペーパーなどの紙くずや糸くず、ビニールや小さなボタンなどが蓄積して閉塞する場合もあります。また、生理用品など水分で膨張するものが閉塞原因になることもあります。また、ジステンバーなどの感染症や、腸内の寄生虫が原因で腸捻転を起こすなど、リンパ腫や線癌などの腫瘍が腸を閉塞させることもあります。腸周辺の他の臓器が何らかの原因で肥大し、腸を圧迫して起こることもあります。

【症状】

腸閉塞は、閉塞した場所や通過障害の程度によって症状が異なります。障害が軽度の場合は、元気がなくなって食欲も落ち、下痢や嘔吐があり、お腹を触ると痛がって嫌がります。お水をよく飲むようにもなります。腸が完全に閉塞していなければ便は出ますが、便秘のような症状が出ることもあります。閉塞が長く続くと体重も減少し、完全に閉塞すると呼吸が荒くなり、激しい腹痛の症状がみられます。また、腸の血行が阻害されて腸管が壊死してショック状態に陥り、重篤な状態になります。

【治療・対策】

X線検査を行い、写りにくい場合はバリウム造影を行って原因を確認します。脱水症状やショック状態に陥っている場合は、すぐに状態を安定させる治療を行い、場合によっては外科手術で異物を取り除き、腸管の修復を行います。予防は誤飲を防ぐことが大切です。子犬の頃は特に事故も多く、タバコや携帯電話などを壊して誤飲することもあります。犬の手の届く範囲を考慮して小まめに片づけをし、遊んでしまいそうな物は収納するか高い場所に置きます。ワクチン接種や寄生虫駆除も定期的に実施します。


■ 直腸ガン(ちょくちょうがん)

【原因】

ほとんどが大腸ポリープのガン化によるものといわれています。発症の原因の一つには食餌にあるとされ、高脂肪・低線維の食餌をとり続けることで結腸炎等を起こし、直腸の腫瘍に繋がるといわれています。便の通過が悪くなり、増殖性が強い腺ガンを発症するのが代表的なケースです。直腸部分に炎症、ポリープ、腫瘍を作りやすい犬種があり、遺伝的な原因も指摘されています。該当犬種は注意が必要です。

【症状】

下血、血便、排便がしづらい、粘膜便、タール便、便の扁平化などが見られ、便に鮮血が混じっていることで比較的早期に発見できる病気です。出血がひどい場合には貧血を起こすこともあります。症状が悪化していくと下痢や結腸症を起こし、徐々に痩せていきます。リンパ節や肝臓や肺に転移する恐れがあります。早期治療で直腸切除の手術ができる段階であれば、完治の可能性は高くなります。

【治療・対策】

開腹手術やのほか、肛門に近い直腸付近に腫瘍がある場合は、開腹せずに、肛門から直腸を引きずり出し腫瘍を切除、直腸を肛門に縫合されるような手術形態をとるのが一般的です。術後抗がん剤治療を併用することもあります。部位が直腸のため、術後肛門が閉まらず便がもれてしまう後遺症が残る事リスクも報告されています。高齢などの理由で手術に耐えられないような場合には、緩和ケアをすすめられるケースもあります。


■ 慢性胃炎(まんせいいえん)

【原因】

慢性的に胃に負担がかかり、胃の粘膜に異常がみられるのが慢性胃炎です。慢性の尿毒症や胃潰瘍、胃にできた腫瘍などが原因になることもあります。また、はっきりとした原因が突き止めにくい場合は消化不良や胃の運動低下、胃の中に消化されない異物がある、ストレスなどがあげられます。老犬に対して、長期間消化の悪いおやつなどを与えていた場合にも起こりやすい病気です。急性胃炎を放置しておいたことで慢性化してしまった可能性もあります。

【症状】

慢性胃炎は、急性胃炎と違ってあまり症状が出ないのが特徴です。食欲がない、元気がない、毎日ではないが時々吐くなど、元気な時と比べにくく見逃されがちな症状が続きます。食欲がなく体重も減っている場合や、お腹を触ると痛がって触られることを嫌がる場合は注意が必要です。特にお水をたくさん飲む場合や、ゲップが続くような場合は慢性胃炎の可能性があるので、早めに病院を受診してください。

【治療・対策】

原因と症状に合わせて治療をしていきます。内視鏡で胃の内部の検査をします。腫瘍などが発見された場合は、外科的手術で腫瘍を取り除きます。また、別の疾患が慢性胃炎の原因になっている場合は、その治療を施します。ストレスを感じている様子があれば生活環境を見直して、安静に過ごせるように飼育環境を整えます。食事療法を取り入れる場合は高繊維・低脂肪の食事に切り替えて、胃酸の分泌を抑えるステロイド剤などを投与します。


■ 慢性肝炎(まんせいかいえん)

【原因】

慢性肝炎は急性肝炎を見過ごしたり、治療が遅れて炎症が治まらずに長期化したりすることで発症します。また、他の疾患が原因になることもあります。若年齢での発症や慢性肝炎の場合は遺伝性疾患の場合も多くあります。また、銅、ヒ素、水銀などの化学物質や、鎮痛剤やホルモン製剤などが原因になることもあります。ウィルスや寄生虫感染が原因の場合もあります。

【症状】

慢肝臓は解毒やホルモンの生成など100以上の役割を担っているため、肝臓が正常に機能しないことでさまざまな症状が現れます。初期症状はあまり出ませんが、次第に元気がなくなり下痢や嘔吐を繰り返しながら痩せていきます。食欲もなくなって体重が減り、お腹に水が溜まる腹水もみられます。症状が進むと歯茎や耳の中、白目が黄色くなる黄疸が出て、進行すると血液凝固障害や肝性脳症などを発症します。また治療が遅れると、肝硬変へと進行します。

【治療・対策】

治療はまず、慢性肝炎なのか肝硬変まで進行しているかどうかを調べます。成犬でないとどのくらい正常な肝臓が残っているかを調べます。一度壊死した肝臓は元に戻らないので、進行を遅らせて、原因となる疾患があればその治療を行います。また、低下した肝機能を補うための薬物治療や、肝臓に栄養を与える食事療法も行います。脱水内科的治療はステロイド剤や免疫抑制剤もしようとします。


■ 慢性腸炎(まんせいちょうえん)

【原因】

慢性腸炎は炎症性腸疾患といわれ、Tリンパ球、好酸球、プラズマ細胞、肥満細胞(マスト細胞)、好中球、好塩基球などの炎症細胞が腸の粘膜全体に広がったことで慢性的に炎症が起こる病気の総称です。急成腸炎がきちんと治療されずにそのまま不規則な生活を続けていることが原因で、炎症細胞や細菌などの増殖や寄生虫が原因になっていることもあります。寄生虫が原因になっている場合もあります。また、腫瘍ができている可能性もあります。

【症状】

慢性腸炎は、腸内の粘膜が慢性的に炎症を繰り返す症状です。急性腸炎と比べると比較的症状は軽いですが、下痢や嘔吐を繰り返すため、体力が低下したり、栄養不足からさまざまな器官に負担がかかったりします。お腹が大きくなり、口臭も強くなります。また、お水を多く飲むようになるので尿の量が多くなり、元気がないように感じられます。このような症状が、慢性的に繰り返し現れます。

【治療・対策】

検査は内視鏡を使って腸の細胞を採取し、検査をします。治療するにはまず粘膜の炎症を抑える必要があるため、副腎皮質ステロイド剤などを投与します。完治は難しいとされていて、長期間の投薬が必要になる場合もありますが、食事療法や生活習慣を見直すことが改善への近道になります。また、別の疾患が原因で慢性腸炎が引き起こされている場合はその治療を行います。腫瘍が原因の場合は外科的手術での切除や抗がん剤治療を施します。寄生虫が原因であれば駆虫薬で駆除します。


■ 慢性膵炎(まんせいすいえん)

【原因】

慢性膵炎は壮年期から老年期にかけて多くなる病気で、様々な原因があります。脂肪分の多い食事を長く続けたことや肥満、副腎皮質機能亢進症や上皮小体機能亢進症、高脂血症などがあげられます。また、ウィルスなどの細菌感染や寄生虫の感染、薬物投与が原因になることもあり、原因の特定は難しいとされています。急性膵炎から回復した場合でも、膵炎を再発し続ける場合があり、症状が徐々に悪化していくことが慢性膵炎の原因になることもあります。

【症状】

慢性膵炎は他の消化器系疾患と区別しづらい嘔吐や下痢が長く続き、食欲不振もみられます。下痢が原因で脱水症状や体重の減少がみられ、腹痛も続きます。症状が悪化すると低体温や黄疸などの症状も出ます。膵臓が破壊されて深刻な炎症が起こると、インシュリンなどが分泌できなくなり、糖尿病を発症することもあります。また、膵液が膵臓から腹腔内に漏れて、近くにある肝臓や腸などの臓器を消化し始め、他の臓器へ大きな損傷を引き起こす可能性もあります。

【治療・対策】

膵炎を治すための薬はないので、検査をしながら絶食をして膵臓を休ませます。主には内科的治療を行いますが、抗生物質や鎮痛剤などで痛みや嘔吐を抑えます。下痢や嘔吐が続いている場合は脱水症状を起こしていることがあるので、点滴で水分補給を行いながら、低脂肪・低たんぱく質の栄養補給を行います。基礎疾患があれば、その原因を特定して治療を行っていきます。日ごろから栄養バランスのとれた食事を与え、適度な運動を心がけ、原因のひとつとなる肥満にならないよう気をつけます。


■ 肛門のう炎(こうもんのうえん)

【原因】

肛門囊は肛門の下にあり、縄張りを主張するための肛門線を便と一緒に放出する、という臭腺の役割があります。肛門囊は袋状になっていて、自分で便と一緒に放出することができるワンちゃんもいますが、小型犬や中型犬の場合は自分で肛門線を排出する機能を持っていません。下痢や便秘、ストレス、体調不良など代謝の変化で排泄不良を起こしたり、老化などで筋肉が弱まり、絞り出す力が足りず肛門囊に過剰な滞留が起きたりすることもあります。この状態を放置すると肛門囊の開口部が詰まったり、細菌感染から炎症が起きたりします。

【症状】

ワンちゃんの肛門の左右には、肛門囊という自分の匂いをつけるための肛門線という分泌物を出す袋があります。この肛門囊に炎症が起きると、お尻をかゆがって座った姿勢のまま移動して床にお尻をこすり付けたり、お尻を舐めたりする動作をします。自分のしっぽを追いかけるような仕草をすることもあります。肛門周辺に赤みや腫れが出て、痛みを訴えて鳴き続けることもあります。

【治療・対策】

治療は、肛門囊に溜まった分泌物を肛門絞りで排出します。その上で患部を洗浄し、抗生物質の投与など内科的治療を行います。炎症がひどく、肛門囊が破裂してしまった場合や、膿の蓄積が激しい場合は外科的処置を行うこともあります。早く発見すれば処置は簡単で済みます。予防としては、月に1度は肛門線を絞ってお手入れをします。肛門線は貯まりやすい犬とそうでない犬と個体差があります。肛門線絞りはコツがいるので、うまくできない場合はトリミングの際や、獣医師に依頼します。


■ 膵外分泌不全(すいがいぶんぴふぜん)

【原因】

膵外分泌不全の原因は、慢性膵炎の末期症状や膵臓の線房細胞の萎縮など、膵臓の機能不全が原因で消化酵素が十分に生成されなくなることが原因です。慢性膵炎の末期の場合は、糖尿病を併発することもあります。他には膵臓の腫瘍や胃酸過多などが原因になる場合もあります。若齢での発症や膵炎などの疾患との関連性がない場合は、先天性の遺伝疾患の可能性も考えられます。

【症状】

膵臓に萎縮や慢性肝炎などの障害が起こって、消化を行うため必要になる十分な酵素が分泌されなくなる病気です。消化不良を起こしたワンちゃんは、食欲が旺盛でたくさん食べているのに太ることなく痩せていて、大量の便が出ます。便の色は白っぽく、脂を多く含む脂肪便になり、脂が腐ったような異臭がします。下痢に似た症状もあり、未消化物が混じっていることで、まれに自分の糞を食べてしまうこともあります。

【治療・対策】

膵外分泌不全の治療は、不足している消化酵素を補給する必要があります。膵臓から分泌されるはずの消化酵素を毎回食事に混ぜて補います。栄養失調の改善をみながら、投与量は調整できますが、一生与える必要があります。また、消化酵素を働きやすくするために胃酸の分泌を抑える胃酸分泌阻害薬を併用します。脂肪がうまく消化できないので、低脂肪の療養フードを与えます。体重が増加しやすいように消化しやすい1回の食事量を減らして回数を増やすのも有効です。必要に応じてビタミンB12や抗生物質の投与も行います。


■ アレルギー性皮膚炎(あれるぎーせいひふえん)

【原因】

アレルギーの原因には「食物」「花粉や草木」「ハウスダストマイトの糞や死骸」「カビ」などがあります。食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎を区別するためにどのアレルゲンに過剰に反応しているかを知ることは非常に大切です。アレルギー検査には皮内反応検査、アレルゲン特異的IgE検査(血液検査)、リンパ球反応検査(血液検査)、アレルギー強度検査(血液検査)があります。症状や治療反応、また検査費用などを相談して、どの検査を行うか決めていきます。

【症状】

犬がアレルギー性皮膚炎になると、皮膚に炎症が起こり、かゆみを感じるようになります。次のようなしぐさや症状が頻繁にみられた場合は動物病院へ行くようにしましょう。かゆみを感じている犬のしぐさに特徴があり、・体を舐める、かむ・肢で体や頭をひっかく・体を振る・家具や床に体や頭をこすりつけるなど アレルギー性皮膚炎では発疹や脱毛など皮膚状態の明確な変化より、かゆみが先行してみられることも多いです。また、環境アレルゲンに反応する犬アトピー性皮膚炎ではなりやすい犬種があります。 犬アトピー性皮膚炎の好発犬種は、・ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア・柴犬・フレンチブル・ブルドッグ・シーズー・ヨークシャー・テリア・ゴールデン・レトリーバー・ラブラドール・レトリーバー・ボストン・テリア・ミニチュア・シュナウザー・ダルメシアンなど。

【治療・対策】

検査 検査内容
■ 皮内反応検査 皮膚層の中に少量のアレルゲンを注射し、一定時間内に赤みや膨らみの程度によりそのアレルゲンに対するアレルギー反応を判定します。
■ アレルゲン特異的IgE検査 環境中や食物中にある40種類のアレルゲンに対する血清中のIgE抗体の濃度、または量を測定し、アレルゲンを特定します。
■ リンパ球反応試験 食物アレルギーのみに対応する検査で、リンパ球が過剰反応している食物中のアレルゲンを特定します。
■ アレルギー強度試験 皮膚炎を起こすリンパ球を血中から検出します。アレルギーの有無や抗炎症剤(ステロイドなど)の使用を判断する指標になります。

これらアレルギー検査の血液検査は外部検査機関に依頼して行います。採血から約1~2週間程度で結果を知ることができます。また、皮内反応検査は動物病院が抗原を持っていなければ実施できないので、すべての動物病院で行う検査ではありません。アレルギー性皮膚炎は体質的なことが大きく関係するので、まだ発症していない犬に対する明確な予防方法はありませんが、どの犬も同じく予防等をしっかり行い、皮膚に異常が出れば受診することが大切です。

<いつもの生活で気を付けること>
・ノミ・ダニを含め、できる予防はしっかり定期的に行う・皮膚や耳の状態を含め、全身をこまめにチェックする・動物の仕草や行動を観察する・皮膚を清潔に保つ・生活環境を清潔に保つ・良質のドッグフードを与える・おやつを与えすぎない(おやつをあげた後の皮膚状態に注意)・過度のストレスを避ける など。皮膚を考慮したフードは動物病院でも販売しており、サンプルをもらえる場合もあります。

また、単一のタンパク源を長期間食べているとそれに対し食物アレルギーになることもあるので、異なるタンパク源のフードをローテーションで与えるという方法もあります。これについても、予防時などに獣医師に相談してみてください。アレルギー性皮膚炎は季節性、皮膚症状の発生時期、部位、経過、食物(おやつなど)や散歩ルートに関連しているかの詳細が診断や治療の上で大変重要になります。日ごろの観察と把握を心がけましょう。


■ ツメダニ症(つめだにしょう)

【原因】

イヌツメダニという体長0.3~0.5mmのダニが寄生することで発症します。イヌツメダニは肉眼では確認できませんが頭に大きな爪を持っているのが特徴で、畳やカーペットに生息するツメダニとは別のダニです。イヌツメダニは感染しているワンちゃんと接触することで伝染するので、体を痒がっているワンちゃんとの接触を避けます。ワンちゃんと一緒に寝ることや、抱くことが多い場合は人にも感染し、赤い発疹や強い痒みで気づきます。その時は愛犬のツメダニ症を疑います。

【症状】

ツメダニ症はケイレテイラ皮膚炎とも呼ばれ、主に背中など寄生した部分に大量のフケが目立つようになり、強くはありませんが痒みもあります。ワンちゃんが痒がる時に被毛をかき分けて皮膚を見るとたくさんのフケが出ていることで発見できます。子犬の場合は症状が重くなる傾向にあり、疥癬に似た症状がでる場合もあります。抵抗力のある成犬の場合は寄生しても発症しないこともあり、発症しても軽度な場合が多くあります。ワンちゃんとの接触で人にも感染し赤い発疹と強い痒みが出るダニ刺咬性皮膚炎を発症します。

【治療・対策】

ダニの駆除はスポット薬や内服薬の殺ダニ剤を投与し、殺ダニ効果のある薬用シャンプーを使って駆除します。家庭でシャンプーをする場合は、頭から背中の上半身を念入りに洗ってフケを落とします。卵には効果がないので、根気よくシャンプーを続けます。人も感染する寄生虫なので、日ごろからワンちゃんの衛生面には気を配ります。放置しておくとツメダニの生息域が全身に広がって、不快な皮膚の状態や痒みでストレスを溜めてしまいます。症状に気づいた時は早めに病院を受診します。


■ ノミアレルギー性皮膚炎(のみあれるぎーせいひふえん)

【原因】

ノミアレルギー性皮膚炎の原因はノミの唾液です。唾液にはさまざまな物質が含まれており、それがアレルゲンとなり免疫が刺激され、アレルギー反応が誘発されます。ノミが再度寄生し吸血する際に唾液が体内に入ると、ノミの唾液に対し免疫反応も早く、かつ大きくなり、ノミに刺されるたびにかゆみの程度がひどくなっていきます。また、かゆみがひどいと、かきむしって皮膚に傷ができることで細菌が傷口から入るため細菌に感染する可能性があります。皮膚に侵入した細菌は毒素を出すので炎症が起こりさらにかゆみがひどくなります。かゆみが増すことでさらに掻いてしまい、傷が広がるという悪循環を繰り返し症状が悪化します。

【症状】

ノミアレルギー性皮膚炎の症状は大きく分けて次のような症状があります。以下のような症状やしぐさがあればノミやノミの糞がないか、ノミ取りクシや毛をかき分けるなどして確認してください。ノミ取りクシを使う場合、皮膚を傷つけないように優しく使用。ノミアレルギー性皮膚炎の主な症状は、・背中や腰回りの広い範囲の脱毛・激しいかゆみ・尾を追いかけるようにぐるぐる回りながら下半身をかむ・粟(あわ)粒大の発疹が背中や腰回りに多数できる・発疹(ほっしん)のある部位が傷だらけになる、ただれる・かゆみからくる食欲不振。ノミの糞の見つけ方は、体に黒ペンで点描したような大きさの黒い粒がないかを確認します。そのとき、毛をかき分けたり、毛の流れと逆に毛を撫でつけたりして、毛の根元を見ると見つけやすいです。ノミの糞が体上に多くあると、その動物がいたところに黒い粒がたくさん落ちていることもあります。黒い粒を水で湿らせたティッシュで取り潰し、粒の周りが赤茶色ににじんできたらノミの糞です。

【治療・対策】

ノミアレルギー性皮膚炎は激しいかゆみを伴います。このかゆみは寄生するノミの数には関係なく、たった1匹のノミ寄生でも激しく反応します。ノミが寄生していると繰り返しノミに刺されアレルゲンが体内に入り、アレルギー反応からかゆみがひどくなっていきます。そのためノミアレルギー性皮膚炎になった際は動物病院を受診し、ノミを駆除する薬や抗炎症薬、抗生剤を投与する必要があります。
治療費の一例は、(ノミアレルギー性皮膚炎になった小型犬の治療費例)治療期間:1~2週間通院回数:1回 、合計治療費用:6,270円、一通院当たりの治療費例:6,270円(診察料、内用薬、外用薬、ノミダニ駆除薬1回分)
※あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なります。細菌感染が起こっていれば、皮膚の治療が長引く場合もあり、症状が落ち着いた後は決められた用法で定期的にノミの駆除薬を投与し、ノミ感染を防ぎましょう。また、アトピー素因を持つ犬はノミアレルギー皮膚炎にかかりやすいので、ノミの寄生がみられなくても、予防をしっかり行うことが大切です。


■ 脂漏症(しろうしょう)

【原因】

遺伝性疾患の原発性脂漏症と、何らかの原因があって二次的に発症する続発性脂漏症があります。原発性脂漏症は、常染色体の劣性遺伝による遺伝性疾患です。続発性脂漏症の原因には、アレルギーやホルモン異常、加齢による免疫力の低下の他、寄生虫やマラセチアの感染などがあげられます。フードで脂肪分を多量摂取している場合に発症することもあります。

【症状】

ワンちゃんの脂漏症には皮脂が増えることで皮膚や被毛がべたつき、体臭がきつくなる湿性と、皮膚が異常に乾燥してフケが増える乾性があります。全身のどこにでも発症します。脂漏症だけでなく他の皮膚炎を併発していることも多くあり、細菌性感染症を併発すると脱毛や発疹がみられることもあります。強い痒みがあることも特徴で、悪化すると膿皮症を発症する場合もあります。また外耳炎も脂漏症の症状のひとつです。

【治療・対策】

脂漏症の治療は原因を特定して、症状に適した治療を行います。皮膚を正常な状態に戻すよう新陳代謝を促進し、皮脂やフケを減らすために症状にあった薬用シャンプーでの薬浴を行います。シャンプー後はしっかりと乾かして、皮膚を清潔な状態に保ちます。食事管理も必要です。フード脂肪分は多くても少なくても皮膚に影響が出るため栄養バランスを考え、免疫力が高まるような良質のフードを選ぶ必要があります。慢性化すると治療に時間がかかることもあるので、早期発見と治療が必要です。


■ 膵外分泌不全(すいがいぶんぴふぜん)

【原因】

膵外分泌不全の原因は、慢性膵炎の末期症状や膵臓の線房細胞の萎縮など、膵臓の機能不全が原因で消化酵素が十分に生成されなくなることが原因です。慢性膵炎の末期の場合は、糖尿病を併発することもあります。他には膵臓の腫瘍や胃酸過多などが原因になる場合もあります。若齢での発症や膵炎などの疾患との関連性がない場合は、先天性の遺伝疾患の可能性も考えられます。

【症状】

膵臓に萎縮や慢性肝炎などの障害が起こって、消化を行うため必要になる十分な酵素が分泌されなくなる病気です。消化不良を起こしたワンちゃんは、食欲が旺盛でたくさん食べているのに太ることなく痩せていて、大量の便が出ます。便の色は白っぽく、脂を多く含む脂肪便になり、脂が腐ったような異臭がします。下痢に似た症状もあり、未消化物が混じっていることで、まれに自分の糞を食べてしまうこともあります。

【治療・対策】

膵外分泌不全の治療は、不足している消化酵素を補給する必要があります。膵臓から分泌されるはずの消化酵素を毎回食事に混ぜて補います。栄養失調の改善をみながら、投与量は調整できますが、一生与える必要があります。また、消化酵素を働きやすくするために胃酸の分泌を抑える胃酸分泌阻害薬を併用します。脂肪がうまく消化できないので、低脂肪の療養フードを与えます。体重が増加しやすいように消化しやすい1回の食事量を減らして回数を増やすのも有効です。必要に応じてビタミンB12や抗生物質の投与も行います。


■ 耳ヒゼンダニ(みみひせんだに)

【原因】

耳ヒゼンダニの感染経路は、耳ヒゼンダニの主な感染経路・親から子への感染・耳ヒゼンダニが感染している犬との接触・耳ヒゼンダニの成虫や卵が付着したブラシやベッド、敷物などからの感染・犬が多く集まるイベントや施設こまめに耳の臭いや耳垢の量や色をチェックするようにしましょう。耳の中の皮膚は想像以上に繊細です。耳の中まで綿棒などで掃除すると、犬が動いたときに耳の奥まで突いてしまう危険性や、健康な耳の中の皮膚を傷つけて逆に炎症や感染を引き起こしてしまう可能性があります。 通常の耳のケアは、湿らせたガーゼなどで耳の表面の耳垢を優しく拭い取る程度に留めましょう。

【症状】

耳ヒゼンダニに感染する、・頭を頻繁に振る・耳を頻繁にかく・黒い耳垢が大量に出る・耳が臭い・耳をかゆがりこする・耳のあたりを触るのを嫌がるようになる耳ヒゼンダニが寄生すると黒い耳垢が大量に出てきます。耳掃除を何回も行っても耳の穴いっぱいに多量の耳垢が出るのが特徴的です。また、耳を触ると、耳を手にこすりつける、空中をかくように足を動かすような仕草が見られます。耳ヒゼンダニの感染が長期化すると耳の中の皮膚が腫れ、炎症がひどくなり細菌やマラセチアとよばれる酵母(カビの一種)の増殖を引き起こしてしまうこともあります。

【治療・対策】

耳ヒゼンダニの予防方法は、耳の蒸れを避け、耳ヒゼンダニに感染している犬との接触をできるだけ避けることです。耳の穴の入り口に奥が見えなくなるほど毛が生えるトイ・プードルやシー・ズー、ミニチュア・シュナウザーなどはトリミングや動物病院で耳の毛を抜き、衛生的な耳を保つことも大切です。自宅でも定期的に耳のチェックを行うと早期発見につながります。耳ヒゼンダニに感染した場合、駆虫薬を投与して殺虫します。駆虫薬には「セラメクチン、イベルメクチン、モキシデクチン、イミダクロプリド」があります。セラメクチンやイベルメクチン、モキシデクチンを投与する際には、投与前に、十分なフィラリア予防が行われているかを確認し、フィラリア症にかかっている可能性がある場合は検査を行います。なぜなら、これらの薬はフィラリア予防にも用いられ、万が一、フィラリア症にかかっている場合は体内のフィラリアが死んでしまい、ショック症状を起こすことがあるからです。現在ではセラメクチンを首の後ろ側の地肌に滴下するタイプの駆虫薬を使用することがほとんどです。完全に卵が消え、成虫がいなくなると黒い耳垢は出なくなり、かゆみも徐々に治まります。完全に駆虫するまで最低2~3回の滴下を行います。
セラメクチン以外では、イミダクロプリドとモキシデクチンの混合滴下剤も使われることがあります。耳ヒゼンダニ寄生がみられ、激しくかゆがる場合は、細菌やマラセチア(カビの一種)性外耳炎も併発していることが多いので、駆虫と同時に外耳炎の治療を行います。一般的に診察時に外耳道洗浄も行われ、耳ヒゼンダニの温床になる耳垢を除去し、点耳薬の浸透を高めます。その後、1日1~2回点耳薬を耳に入れます。また、イベルメクチンの注射も行われることがあります。ただし、コリー系の犬種(シェルティ、コリー、ボーダーコリーなど)にはイベルメクチンを投与しない方が良いので、セラメクチンが安全です。イベルメクチン投与後は体調変化などに気を付け、嘔吐やよだれが大量に出て垂れる、元気消失、食欲不振などの気になる様子があれば、動物病院にすぐ連絡しましょう。一般的な治療である滴下型セラメクチンを使用した治療費例です。治療期間:4週間、通院回数:3回、合計治療費用:11,556円一通院当たりの治療費例:2,500~5,500円(診察料、両耳洗浄、点耳薬、耳ヒゼンダニ駆虫薬)※実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なります。 耳ヒゼンダニにかかると、犬は耳を痒がり特徴的な耳垢が出ます。放っておくと外耳炎がひどくなり治療も長引きます。何かおかしい様子があれば動物病院に連れて行き、早めに治療しましょう。


■ 内分泌性皮膚炎(ないぶんぴせいひふえん)

【原因】

内分泌性皮膚炎(ホルモン性皮膚炎)は、体内で分泌されている様々なホルモンの分泌量が正常でなくなり、何らかの異常が生じて皮膚に炎症が起きることがあります。皮膚に影響をもたらすホルモンは甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、性ホルモンなどがあげられます。ホルモン異常が起こる原因としては、ストレスや先天性異常、腫瘍などが考えられますが、はっきりと特定できません。

【症状】

内分泌性皮膚炎はホルモン量の異常分泌が原因で、ホルモン異常の代表的な皮膚炎では甲状腺機能低下症があり、鼻や尾、胴体に左右対称の脱毛が現れます。痒みはなく、皮膚が厚みを増す肥厚もみられます。性ホルモンの分泌に異常が生じると、生殖器や肛門周辺に脱毛が集中します。副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)では左右対称性の脱毛が徐々に広がり、脱毛部位の皮膚は血管が透けてみえるほど薄くなることもあります。

【治療・対策】

治療は皮膚の状態や部位、さらに皮膚以外の症状などを確認し、血液検査で分泌異常を起こしているホルモンを特定します。また腫瘍など別の要因でホルモン異常が引き起こされていないか検査をします。治療は足りないホルモンを補ったり、過剰分泌があったりしたの場合は、抑制する内服薬を投与します。ただし副作用も強いため十分な診断と適した治療を判断します。皮膚炎の改善にも時間がかかることがあるので、根気よく治療を行います。


■ 膿皮症(のうひしょう)

【原因】

膿皮症は主に皮膚に常在しているブドウ球菌が異常に増殖することが原因です。皮膚には常に細菌や真菌(カビ)が付着しますが、皮膚の抵抗力(バリア機能)があればその細菌が原因となり炎症を起こすことはほぼありません。皮膚には、バリア機能があります。① 被毛:光や熱の刺激から表皮を保護し皮膚環境を一定に保つ② 表皮:表皮表面の脂質膜や細胞間の皮脂による水分の保持。細菌などの侵入防御③ 表皮の常在菌:他の細菌の侵入防御や増殖抑制④ 免疫防御機構:表皮から侵入した細菌などからの防御。膿皮症の発症にはこのような皮膚のバリア機能を低下させる要因が関与しています。要因が皮膚のバリア機能を下げてしまい、膿皮症を引き起こしやすくなります。 皮膚バリア機能を低下させる要因は、・抵抗力の弱い「若齢犬」「高齢犬」・高温多湿の環境(密な被毛下の皮膚など)・アレルギー性皮膚炎(アトピー、ノミアレルギー、食物アレルギーなど)・外部寄生虫(ノミ、ヒゼンダニ、毛包虫など)・すり傷など物理的障害(しわの部分など)・内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)・自己免疫性疾患・その他の全身性疾患(糖尿病や腫瘍など)・ステロイド剤の長期投与。

【症状】

膿皮症の症状の代表的なものは、・赤い発疹(丘疹)・膿を持った発疹(膿疱)・かゆみ・脱毛 ・発赤を中心に環状に皮膚がめくれる(表皮小環)・色素沈着が起こり、皮膚が薄く黒ずむ。膿皮症はかゆみを伴うので皮膚を引っかいて傷がたくさん入り、発赤(ほっせき)、湿疹、脱毛を起こしてしまいます。膿疱が拡大し破裂すると、発赤を囲んで環状に薄く皮がめくれた状態である表皮小環(ひょうひしょうかん)ができ、表皮小環の段階を過ぎると表皮小環のめくれた皮膚が剥がれ落ちたあと、黒い粒が集まったような色素沈着ができます。この色素沈着は多くは数ヵ月間残りますが、少しずつ薄くなります。

【治療・対策】

膿皮症は細菌感染なので、原因になるブドウ球菌に感受性の高い抗生剤を最低でも2~3週間投与します。症状が良くなっても細菌が潜んでいる場合があるため、3週間は継続することが多いです。 治療を継続しても良化しない場合は、原因菌を特定し、どの抗生剤が最も効果があるかを確認するために「細菌培養検査・薬剤感受性検査」を行い、その結果により薬剤を選択します。 治療費の一例(小型犬の場合)治療期間:2か月、通院回数:8回、合計治療費用:19,118円、一通院当たりの治療費例:3,000~6,000円(診察料、院内薬剤感受性検査、内用薬、消毒薬、サプリメント)※実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なります。 ほかに、抗菌作用のある薬用シャンプー、または消毒薬の薬浴(肢先など部分的な場合)を使用することも膿皮症の治療では重要です。薬用シャンプーは、薬用成分を体に留めるために泡を5~10分ほど置きます。薬用シャンプーを処方された際に、使用方法を動物病院で詳しく聞くと効果的に使用できます。また、被毛も紫外線や刺激などから皮膚を守る機能の一部なので、皮膚を露出させない程度に毛を残すようにしましょう。


■ 皮膚糸状菌症(ひふせんじょうきんしょう)

【原因】

犬の皮膚糸状菌症の原因になる糸状菌はいくつかありますが、そのうちの約70%はMicrosporum canis(ミクロスポラム・カニス)とよばれる真菌です。皮膚糸状菌に感染している犬との接触や環境中のほこり、また汚染した用具や器具により感染すると考えられています。健康な犬は、皮膚糸状菌症にかかることはあまりありませんが、抵抗力が弱い子犬や成犬でも免疫力の低下している犬はかかりやすい傾向にあります。皮膚糸状菌症にかかりやすい犬は、・子犬・老犬・免疫抑制剤や抗がん剤などを投与している犬・内分泌疾患や腫瘍など大きな内科疾患を持つ犬などです。皮膚糸状菌症と診断するのに、特徴的な外観が判断の補助になります。しかし、一般的な皮膚症状しか示さないことも多く、診断には検査を必要とします。皮膚糸状菌を検査には、抜毛検査、ウッド灯検査、培養検査、パンチ生検(まれ)があります。

【症状】

犬の皮膚糸状菌の特徴的な症状は、皮膚の赤みやフケ、かさぶたを伴う円形脱毛です。これが、頭部、顔面、または体幹に1か所~数か所(体全体)に発生します。しかし、初期では脱毛がみられないこともあり、その場合は皮膚の赤み、フケ、かさぶたがごく狭い範囲にみられることが多いです。また、皮膚糸状菌症のほかに細菌感染も起こると炎症が強くなり、患部が腫れ、皮膚から液が出てきます。ほとんどの皮膚糸状菌症は皮膚表面での増殖にとどまりますが、まれに炎症が深部に及び、急激な化膿や赤い隆起(肉芽腫)の形成が引き起こされます。皮膚糸状菌症の主な症状は、・皮膚の赤み ・フケ・かさぶた・水疱・円形脱毛・発疹などです。皮膚糸状菌症が発症しやすい部位は、頭部、顔面、前肢です。次いで首、背中、尾、後肢や腹部と続きます。特に症状が現れやすい部位は、・頭部(耳など)・顔面(眼の周辺部、鼻や口周囲)・前肢(前腕部、肢先)

【治療・対策】

検査内容は、◎抜毛検査:皮膚症状の外周から毛やフケを採取し、顕微鏡で糸状菌がみられないか確認します。◎ウッド灯:特殊な波長の光を出すウッド灯を使い、真菌(Micrsporum canis)感染があるかを調べます。真菌感染がある場合は、その部分が蛍光されて見えます。ただ、分かりづらい場合も多く、検出率はあまり高くありません。◎培養検査(2~3週間):皮膚症状の出ている部分の毛を抜いて、真菌が増殖しやすい培地に毛を置き、培地の変色をもとに病原菌(真菌)の有無を判定します。 ◎パンチ生検(まれ):局所麻酔を行い、6㎜円ほどの皮膚片を取り、病理検査を外部機関に依頼します。これらは、真菌を検出するときに行う検査ですが、真菌のほかに、細菌などの感染が同時に起こっていないか確認するため、ほかの皮膚検査も行います。皮膚糸状菌症の治療は、投薬治療(内用、外用)と抗真菌薬の入った薬用シャンプーを使った薬浴があります。細菌感染を併発している場合には、抗生剤も使用します。皮膚糸状菌症の治療は、・抗真菌薬(内服)・外用薬(抗真菌薬を含む軟膏など)・薬浴です。主に、イトラコナゾールなどの内服の抗真菌薬を処方され外用薬と薬浴を組み合わせますが、症状が軽度であれば薬浴や外用薬のみで対処することもあります。内用薬の場合、症状が治まってもすぐに投薬を中止することはせず、獣医師の指示に従いましょう。 治療費の一例は、(小型犬の場合)治療期間:2か月、通院回数:6回、合計治療費用:14,693円、一通院当たりの治療費例:2,200~4,500円(診察料、皮膚検査、真菌培養検査、内用薬、薬用シャンプー)※実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なります。治療には数週間から数カ月かかります。根気よく治療を行いましょう。 また、家族(人)に皮膚症状が現れた場合も、病院ですぐ受診するようにしてください。


■ 毛包虫症(もうほうちゅうしょう)

【原因】

毛包虫は、子犬が生まれた後に毛包虫を持っている犬と接触することで感染するといわれており、中でも母犬からの感染が最も多いとされています。そのため、1歳未満の若齢犬での感染が多くみられます。毛包虫症は、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティー)などのテリア、若年性の場合は中~大型純血種によく発症します。日本ではシーズーやフレンチブルドッグ、ブルドッグなどの短頭犬種に好発します。高齢での毛包虫症の発症は、他に大きな病気が隠れていることが多いです。毛包虫はもともと毛包に常在する寄生虫なので体調に問題がなければ増殖することはありません。症状が現れるのは、免疫力が低下したときです。1.幼犬の場合(~18ヶ月)皮膚バリアが未熟なため、毛包虫が急激に増えることがあります。・急速な発育・予防接種、環境に対するストレス・内部寄生虫感染 ・食事の量が足りないなどの栄養不足2.成犬の場合、例えば、アレルギー性皮膚炎によりステロイドを長期投与している場合はかかりやすく、再発もしやすいです。・薬剤の使用:ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤など・ストレス:発情、分娩、手術後などです。3.老犬の場合、他の病気や加齢が原因となって免疫力が低下し、発症する場合があります。・内科疾患:腫瘍、肝疾患、クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能低下症など、・加齢に伴う皮膚や全身の抵抗力の低下などです。

【症状】

毛包虫症になると、犬に脱毛などの異常が見られたときは動物病院を受診しましょう。毛包虫症の主な症状は、・目の周りや口の周りの脱毛・足先(特に前肢)の脱毛・色素沈着を伴う脱毛・かゆみや炎症があまりない・発赤や発疹はないことが多いです。毛包虫症が悪化するとあらわれる症状は、・部分的な脱毛ではなく全身に広がる・毛包内で多数の毛包虫が繁殖するため、寄生部位が腫れる・充血、出血が起こる・細菌感染によって皮膚がただれる・かゆみが強くなる※通常毛包虫の感染のみであればかゆみはほぼありませんが、細菌感染やほかの寄生虫の感染が起こるとかゆみが強くなります。

【治療・対策】

毛包虫は皮膚に常在する寄生虫ですが、抵抗力が下がったときに毛包虫症が発症します。抵抗力を下げないように、次の点に気を付けることが大切です。・良質なドッグフードを選ぶ・おやつや人間の食事がメインにならないように気を付ける・快適な湿度温度管理を行う・予防接種やノミダニ、フィラリアなどしっかり予防する・定期的にシャンプーを行い、皮膚を清潔に保つ・体調が悪いときには様子を見ず早めに動物病院を受診すること。このように、健康管理をしっかり行うことで毛包虫症は予防できる可能性が高くなります。毛包虫症を発症したタイミングによって治療法は異なります。1.幼犬の場合は、抵抗力がつくと自然に治る場合があり、局所的な毛包虫症であればシャンプーなどの外用療法を中心に治療を行いながら経過観察をすることもあります。ただし毛包虫症が全身に広がる場合や、細菌感染を伴う場合は積極的に投薬を行い治療しなければなりません。(投薬内容については≪2.成犬の場合≫で解説します。)2.成犬の場合は、殺ダニ効果のあるイベルメクチンやミルベマイシンなどを投与します。イベルメクチンやミルベマイシンは、フィラリア症にかかっている犬は投与後ショック症状を起こすこともあるので投与できません。よって、フィラリア症の可能性がある犬は血液検査で確認してから投薬します。イベルメクチンは投与後に元気喪失や食欲不振、嘔吐やふらつきなどがみられる場合があります。最初は少量から投与し、徐々に薬の濃度を上げていきます。投与量をよく守り、イベルメクチン投与後にはいつもと違う様子はないかしっかり観察しましょう。また、コリー、シェルティ、ボーダーコリー、コリーのミックスなどの犬種にはイベルメクチンは投与しない方が良いといわれています。コリー系の犬種では薬の代謝に必要な遺伝子に欠如や異常がある可能性が高く、薬の中毒を起こしやすいためです。他の治療としては、細菌感染を伴う場合は抗菌薬を使用します。なお、アレルギー性皮膚炎や免疫を低下させるような疾患があると、治りきらない、再発しやすい場合があります。3.老犬の場合は、成犬の場合と治療法はほぼ変わりませんが、内科疾患などの大きな病気が抵抗力を下げる原因になることが多いので、他の病気の検査(血液検査など)も必要であれば行います。毛包虫症を発症、悪化させやすい病気が見つかれば、同時に治療を行います。この場合は再発しやすく、治療も長期化する可能性があります。毛包虫症は現在では治療法も治療薬もさまざまです。治療をしっかり行い、検査で毛包虫(ニキビダニ)がいないか確認しましょう。


■ 疥癬症(かいせんしょう)

【原因】

疥癬症になる原因の多くは、すでに感染している動物との接触によるものと考えられます。また、症状が進行していくとフケやかさぶたが多量に出ますが、体を振ったり、かいたりしたときにそれらが飛び散り、そこから寄生することもあります。ヒゼンダニは犬の体から離れるとしばらくして死にますが、この時間内に新たな動物に寄生することも考えられるので、ドッグランなど複数の犬が同じ場所にいる場合は要注意です。環境中のヒゼンダニは他の宿主を探すので、こまめに掃除をして感染を防ぎましょう。ヒゼンダニが感染してから症状が出るまでの潜伏期間は2~3週間です。この間は感染していても症状がない期間なので、気づかないうちにほかの動物にも感染している可能性があります。寝床や敷物、ブラシなどについている可能性があるので、消毒や処分をし、感染を広げないようにしましょう。

【症状】

疥癬症の主な症状は重度のかゆみと皮膚の炎症です。以下のような症状が現れます。疥癬症の主な症状は、・激しい皮膚のかゆみ・炎症やかさぶたを伴うかき傷や噛み傷・脱毛・フケや多量の黄色がかったかさぶた・顔面(特に耳)、腹部、胸部、肢の内側で起こりやすいです。慢性・重症化した場合は、・リンパ節が腫れる・体重が減る・発熱。疥癬症による行動の変化は、・常に体をかいたり、舐めたりしている・フケなどがある部分を触るとかこうとする・食欲不振、元気消失。保護犬(子犬も)や引き取ったばかりの子犬がずっと体をかゆがってかいていて、病院を受診すると疥癬症だったというケースも多いです。以上のような症状が見られた場合は疥癬症も疑いましょう。

【治療・対策】

ヒゼンダニの感染を防ぐことが一番の予防方法です。犬の生活環境の掃除とシャンプーを定期的に行いましょう。疥癬との区別をしやすくするためにも、日ごろから定期的にノミ・ダニの駆除をきちんと行うことも大切です。また、抵抗力が下がると感染したときに急激に悪化し全身へと広がるので、皮膚を含め体調を観察しましょう。慢性化、重症化すると元気や食欲の低下など全身にも影響を及ぼします。かゆみに気付いた際は動物病院を受診し、「いつから」「どこから始まって」「どのような症状の変化があるか」を伝えましょう。家族(人)にかゆみや発疹などの皮膚症状が出ているかも診断の補助になることがあります。犬が疥癬症になってしまったら、疥癬症になってしまったら、ヒゼンダニを駆虫させるために「セラメクチン、イベルメクチン、ドラメクチン」などの殺ダニ剤を用います。 これらの薬を投与するときにはフィラリア症にかかっていないかを血液検査で確認したうえで投与するようにします。万が一フィラリア症にかかっている場合は体内のフィラリアが死んでしまい、ショック症状を起こすことがあるからです。症状が軽い場合はセラメクチンの滴下型を定期的に数回投与することが多いです。セラメクチンの治療効果が薄い場合や症状の程度により、イベルメクチン、ドラメクチンを使用します。ただ、どの薬をどのように使うかは動物病院や獣医師によって異なります。また、コリー系の犬種(シェルティ、コリー、ボーダーコリーなど)にはイベルメクチンを投与しない方が良いとされています。飲み薬の場合は少量から処方されるので、投与量をよく守ることが重要です。投与後は体調変化などに気を付け、元気消失、食欲不振、嘔吐やよだれが大量に垂れるなどの気になる様子があれば、動物病院にすぐ連絡しましょう。また、滴下型セラメクチンを使用した治療例は、治療期間:7週間、通院回数:5回、合計治療費用:13,716円、一通院当たりの治療費例:1,000~6,600円(診察料、検査、内用薬、疥癬駆虫薬)※あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なります。 かきむしってできた傷から細菌に感染している場合は、抗生剤を使用し、ヒゼンダニを検出する検査は、皮膚の表面を引っかいたりセロテープを使ったりしてフケやかさぶた、皮膚片を採集し、ヒゼンダニがいないか顕微鏡で見ます。しかし、ヒゼンダニの感染があっても検査では検出されないことも多く、その場合は日を替えて数回にわたり検査を行います。疥癬症の疑いが強い場合は治療を先に始めることもあります。また、シャンプーでフケを取り除き皮膚を清潔に保つことも治療の一助になります。フケは無理にはがしてしまうと出血するので、角質溶解剤などが含まれるシャンプーを用い優しく洗うようにしましょう。 しかし、疥癬症により体が弱っている場合はシャンプーが負担になることもあるので、獣医師に相談してください。また、同居している動物(哺乳類)がいる場合も治療が必要か獣医師に聞いてみましょう。


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