脳・神経の病気

■ 顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)

【原因】

顔面の神経が麻痺することによって発症しますが、麻痺の原因は基礎疾患の影響によるものと特発性(原因不明)によるものがあります。基礎疾患では、中耳炎や感染症、腫瘍や外傷、甲状腺機能低下症や脳炎、脳腫瘍などが考えられます。また免疫介在性の場合もあります。中高齢の猫に多く見られる傾向があります。

【症状】

顔面神経が麻痺している状態です。まばたきができない、口唇の下垂、耳の下垂などの症状が表れます。左右対称ではなく、片側の口唇だけが下垂するような場合もあり、まばたきができないことで角膜が乾燥し、乾性角結膜炎を引き起こしたり、口唇の緊張が失われることで過剰によだれが出る流涎が見られたりします。また、麻痺している部分に飲み込めない食物がたまったり、口から食物をこぼしたりするようになり、上手く食餌ができなくなります。三叉神経麻痺やホルネル症候群を併発する可能性があります。

【治療・対策】

原因が脳や内耳の疾患、外傷などの基礎疾患に特定できた場合は、それに対する治療を行います。例えば原因となりやすい中耳炎の場合、細菌や真菌に対する抗生物質や真菌剤などの投与や炎症を抑えるための抗炎症剤の投与を行います。状況に応じて外科手術や鼓膜を破って内耳の中を洗浄する場合もあります。原因不明の特発性の場合、治療方法はなく、まばたきができないことによる眼の乾燥治療など、二次的な治療や予防が中心となります。顔面神経の変性が起こっている場合、改善は望めないとされています。


■ 自律神経障害 (じりつしんけいしょうがい)

【原因】

自律神経の正常な伝導に障害を生じる変性性ニューロパシーが原因ですが、その発生メカニズムについては解明されていません。若年齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

自律神経は呼吸、循環、消化、吸収、排泄、内分泌などの様々な機能を不随意的に調節する役割を担っています。さらに交感神経と副交感神経に分けられ、各臓器や細胞に拮抗的に働きかけています。交感神経は瞳孔の拡大や心拍数の増加、血圧や血糖値を上昇させ、副交感神経は縮瞳や心拍数の減少、消化吸収や排泄を促進させます。自立神経に障害が起こると、散瞳、涙量減少、嚥下困難、嘔吐や吐出、排泄障害、便秘や下痢、体重減少、不整脈(徐脈)などの様々な症状が表れます。症状の程度には個人差があり、症状は急性的か慢性的に進行していきます。

【治療・対策】

生前診断は困難とされています。治療方法が確立されていないため、症状に合わせて対症療法を行います。嚥下困難や吐出の症状が見られる場合は、誤嚥性肺炎などを起こさないように、フードを柔らかいものに変えたり、食餌の入った食器を高い場所に置いて立位で食べさせるようにしたりします。嘔吐や下痢が続く場合は、脱水症状を防ぐために輸液を投与します。排泄障害の場合は補助を行い、栄養補給と保温をして体力を温存させます。症状の完治は難しいとされています。


■ てんかん(てんかん)

【原因】

てんかんの原因は、脳の疾患、脳以外の疾患、特発性(原因不明)に分けられます。脳の疾患の場合、脳腫瘍や脳炎、水頭症や脳血管障害、蓄積症や外傷などが考えられます。脳以外の疾患では、血液は脳に栄養などを供給しているため、血液の異常がてんかんの原因になる場合があります。主な疾患は低血糖症や低カルシウム症、高カルシウム症や低酸素症などです。血液は、脳に栄養をあたえ、また、腎臓や肝臓の疾患の影響も考えられます。他に、ストレスも原因になる場合があります。

【症状】

神経細胞がてんかん放電と言われる異常発火を起こすことで興奮状態となり、体のコントロールを失っている状態です。てんかん発作はひきつけとも言われる全身の痙攣(大発作)から、体の一部分の麻痺(小発作)まで、様々です。その前兆として、落ち着きがなくなり、感情の起伏が見られ、一点を見つめるなどの様子が見られます。大発作では、全身の痙攣から意識の消失、よだれや泡を吹く、失禁などの症状を表す場合もあります。発作が治まると正常な状態に戻ります。

【治療・対策】

症状やMRI検査やCT検査などで診断されます。治療は抗てんかん薬を投与して、発作をコントロールします。基礎疾患が影響している場合は、その治療を行います。てんかん発作時の飼い主さんの対応として、通常は自然に発作が治まるのを待ちますが、嘔吐を伴う場合は嘔吐物が軌道に入って呼吸困難になるのを防ぐために、異物を口から取り除くようにしましょう。また落ち着きがなくなり、感情の起伏が見られる、一点を見つめるなどの前兆が見られたら、発作を起こしても大丈夫な場所へ移動させるようにしましょう。


■ ホルネル症候群(ほるねるしょうこうぐん)

【原因】

交感神経の異常によるもので、障害は視床下部から脊髄までの中枢性障害、脊髄から頭頸部神経節までの節前性障害、頭頸部神経節から眼とその周辺までの節後性障害の3つに分かれます。中枢性障害は、外傷や腫瘍が原因ですが発生はまれです。節前性障害は、椎間板ヘルニアなどの胸椎の障害や腫瘍などが原因です。節後性障害は、外耳炎・中内耳炎などが原因です。しかし発症したホルネル症候群の半数近くは原因不明とも言われています。

【症状】

間脳視床下部から眼球までを通る頸部交感神経が、眼とその周辺で異常を生じている状態です。ホーナー症候群とも呼ばれます。交感神経は瞳孔を開いたり発汗を促したり、血圧を上昇させたり気管支を拡張したりなどの役割を担っており、交感神経の異常によってその働きが妨げられます。主に眼に症状が表れ、瞳孔が小さくなる縮瞳や、瞼の下垂、瞬膜の突出、軽度の眼球陥没などが見られます。これらの症状から、眼を細めて開きにくそうな様子に見えます。症状は多くの場合、片側にだけ表れます。

【治療・対策】

原因を特定し、それに合わせて治療を行います。例えば外耳炎であれば、外耳道を洗浄して軟膏や抗炎症剤などの投与や、ダニの駆除などを行います。腫瘍や重度の椎間板ヘルニアであれば、外科手術を行う場合もあります。原因は特定できない場合、治療方法はありませんが、4カ月以上経過して自然に治癒する場合もあります。事故での頚椎損傷を防ぐために室内飼育にしたり、外耳炎などを防ぐために清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ 灰白脳脊髄炎(かいはくのうせきずいえん)

【原因】

原因は、いまだ解明されていませんが、特発性(原因不明)の疾患です。

【症状】

進行性脳疾患の非化膿性脳脊髄炎で病原体が特定されていません。主な症状は後肢の不全麻痺を伴う脊髄反射の低下や運動失調です。若齢猫の場合は、脊髄の障害や進行性の発作を起こす場合があります。頸部の企図振戦(震え)が表れる場合もあります。症状は2,3ヶ月かけて徐々に表れます。神経症状以外は、脳脊髄液検査で単核球数や蛋白濃度の上昇が見られるだけで、特に異常はありません。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査、脳脊髄液検査で単核球数や蛋白濃度の増加が見られるかどうかを確認しますが、生前診断は、困難です。治療方法はなく、まれに、自然に回復するケースもありますが、多くは、予後不良とされています。


■ 虚血性神経筋症(きょけつせいしんけいきんしょう)

【原因】

血栓が形成されて詰まることで、筋肉に虚血性の障害や横紋筋細胞崩壊が起こり、抹消の神経障害が引き起こされることが原因です。心疾患が影響していると考えられ、特に猫では心筋症の影響で、左心房で形成された血栓が外腸骨動脈分岐部に詰まるケースが多いとされています。また、大動脈弁や僧房弁に起こる感染性心内膜炎でも血栓が全身に流入するため、原因になると考えられます。

【症状】

血液が何らかの原因で塊を形成して血栓となり、動脈に詰まることで大動脈血栓塞栓症が起こります。塞栓状態になると、その動脈から供給を受けていた筋肉に虚血性の障害や横紋筋細胞崩壊が起こり、抹消の神経障害を引き起こします。それにより、後肢への血流が悪化して、大腿動脈拍動の欠如や肉球の赤みが失われます。筋肉へ十分な血液が供給されないことで、痛みが生じ、肢は徐々に冷たくなって、動かなくなります。壊死する場合もあり、また、神経障害として麻痺するため、筋肉が弛緩して反応が見られない状態に陥ります。

【治療・対策】

X線検査や超音波検査、血液検査や血管造影検査などで診断されます。血流を改善する必要があるため、血栓溶解剤を投与したり、外科手術で血栓を摘出したりします。しかし、虚血状態にあった組織や臓器に血液を供給すると、壊死した周辺細胞から有害物質が発生して細胞を傷つける再灌流障害を起こす場合があります。基礎疾患への治療も合わせて行います。虚血状態が続くと様々な障害が発生するため、早期に発見・対応する必要があります。獣医師と相談して基礎疾患の適切な治療を行い、日頃から猫の様子をよく観察しておきましょう。


■ 硬膜外血腫(こうまくがいけつしゅ)

【原因】

頭部への外部から圧力が加わることによって、硬膜の外側の毛細血管が損傷して出血し、頭蓋骨との間に血がたまることが原因です。交通事故や転落によって発症するケースが多く見られ、室内飼育でも、棚などから落下した物や倒れてきた物などに当たり、壁に激突し、発症することがあります。毛細血管の損傷の度合いによっては、外傷を受けた直後に発症する場合もあれば、時間が経って徐々に症状が表れる場合もあります。

【症状】

脳と脊髄を覆う髄膜の一番外側の硬膜と、頭蓋骨との間にできる血腫です。何らかの原因で硬膜と頭蓋骨の間に血がたまり、脳を圧迫することで様々な症状が表れます。痙攣や片側の麻痺、視覚障害や運動障害、知的障害などの症状が表れ、麻痺によって不自然な歩き方をしたり、視覚障害から物にぶつかったりする様子も見られます。症状の程度は、脳の圧迫の程度によって様々です。原因によっては頭部や体に外傷が確認できる場合もあります。重症の場合、頭蓋内圧が高まることで脳がすきまから押し出される脳ヘルニアを引き起こす危険性があります。後遺症が残ることもあるため、早期の対応が必要です。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査で頭部の様子を確認して診断されます。頭蓋内圧を下げる必要があるため、グリセオールなどの脳圧降下薬が投与されます。また状態に応じて外科手術を行い、血腫を除去します。少量の血腫であれば、投薬のみでたまった血液は自然に吸収されて消失します。外傷を受けないようにすることが予防策です。交通事故などを防止するために室内飼育にして、安全な飼育環境を整え、日頃から猫の行動に気を付けておくことで予防できます。


■ 三叉神経麻痺(さんはんしんけいまひ)

【原因】

三叉神経の炎症が原因と考えられます。炎症が発生する原因は解明されていませんが、外傷や腫瘍が原因となる場合もあります。中高齢の猫に多く見られます。

【症状】

脳神経の一つ、三叉神経で運動神経障害から咀嚼筋の麻痺が生じている状態です。麻痺から顎が垂れ下がり、口を閉じることができなくなります。それに伴って食餌が上手くできず食べ散らかしたしたり、水を上手く飲めず顔を濡らしたり、過剰によだれを出したりします。感覚異常はなく、食物を飲み込むことはできる状態です。ホルネル症候群を併発する可能性があります。猫ではまれな疾患です。

【治療・対策】

対症療法が中心です。発症初期にステロイド剤が投与される場合もあります。食餌をとりづらくなるため、手から食餌を与え、注射器で水を飲ませる場合もあります。ほとんどの場合、2~⒋週間程度で自然に回復するケースが多いとされています。予防方法はありません。発症した場合は食餌や水の器をできるだけ大きくして高い位置に置いて、フードを柔らかくして食べやすいようにしてあげましょう。


■ 水頭症(すいとうしょう)

【原因】

脳や脊髄の周囲を循環する脳脊髄液が、何らかの原因で循環経路が断たれ、過剰生産されてしまい、上手く循環できなくなることで発症します。循環障害の原因は、先天性と後天性に分かれます。先天性は遺伝的要因で発育不全や出生前のウイルス感染などが考えられます。特にシャム猫に多く発症が見られます。後天性では脳腫瘍、脳炎、髄膜炎、脳内出血などが原因と考えられます。しかし猫では、伝染性腹膜炎ウイルス感染症の影響から脳炎を引き起こし原因となる場合が多いとされています。

【症状】

脳や脊髄の周囲を循環する脳脊髄液が過剰に貯留され、脳を圧迫している状態です。知能障害、行動異常、食欲不振または過食、視力障害、元気消失、頭痛などの知覚過敏、ぼんやりしたり異常な攻撃性を示す、突然鳴きだす、歩行障害などの症状が表れます。また脳脊髄液が貯留されることで頭が膨らむ場合もあります。進行すると麻痺や痙攣を起こし、昏睡状態に陥る危険性があります。症状の程度は様々で、ほとんど症状が表れない場合もあります。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査、伝染性腹膜炎ウイルスや猫白血病ウイルスの抗体検査などで診断されます。対症療法が中心です。脳脊髄液を減らして脳への圧迫を軽減するために、排尿によって体内の水分量を減らす利尿剤、ステロイド剤、副腎皮質ホルモン薬などを投与します。また外科手術で、脳と腹腔や心臓を連絡するバイパス手術が行い、脳にたまった脳脊髄液を流す場合もあります。基礎疾患の影響があれば、合わせて治療を行います。しかしながら、根治の難しい病気とされています。


■ 脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)

【原因】

先天性と後天性に分かれます。後天性の場合、脊髄の外傷や腫瘍、ウイルス性脊髄炎や髄膜炎、椎間板ヘルニアや脊椎奇形、後頭骨形成不全症候群などの疾患に続いて発症すると考えられます。しかしながら、空洞ができるメカニズムについては解明されていません。原因不明の特発性の場合も、あります。

【症状】

何らかの原因で脊髄内に空洞が形成され、空洞内に脳脊髄液が貯留している状態です。内側から脊髄を圧迫することで脊髄が機能障害を起こし、様々な神経症状が表れます。段差を乗り越えられなくなったり、ふらついたり、いつも寝るようになったりします。全般的な運動失調や頸部痛などの症状も表します。空洞の大きさなどによって症状の程度は異なりますが、徐々に進行していき、重症化すると四肢の麻痺や筋力の低下などの症状が表れる場合もあります。

【治療・対策】

X線検査やMRI検査、CT検査などで診断されます。根本的な治療方法は確立されていません。内科治療を中心に、利尿剤やステロイド剤、鎮痛補助剤などの投与を行います。内科治療で改善できない場合、外科手術を行うこともできますが、限られた施設のみで行われておりまだ一般的ではありません。基礎疾患の治療も合わせて行います。例えば椎間板ヘルニアの場合、消炎剤やステロイド剤が投与や肥満の場合は栄養管理や運動管理によって体重を減らして椎間板への負担を軽減します。外科手術で漏出した髄核や膨らんだ繊維輪を除去する場合もあります。


■ 脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)

【原因】

遺伝子の変異が原因とされていますが、そのメカニズムについては解明されていません。食餌の栄養バランスやストレスなどの要因との関連が推察されています。

【症状】

脊髄の腫瘍は発生場所から3種類に分類されます。脊髄内にできる腫瘍の硬膜内髄内腫瘍、脊髄とその周りの硬膜にできる腫瘍の硬膜内髄外腫瘍、脊髄の外側にできる腫瘍の硬膜外腫瘍です。最も発症が多いのは、リンパ腫で、他に髄膜腫や血管肉腫、星細胞腫などがあります。症状は、発生箇所によって異なり、同じ脊髄を圧迫することから、その症状は、椎間板ヘルニアと類似しています。胸腰部では、背中を痛がり、動くことを嫌がります。また、後肢の麻痺、起立困難などの症状が表れます。頸部では、頭を上げるのを嫌がる、前肢の麻痺、首を触ると痛がるなどの症状が表れます。進行すると全身麻痺を引き起こす可能性があります。

【治療・対策】

X線検査で抹消神経出口の椎間孔の拡大、MRI検査やCT検査での画像診断で、椎間板ヘルニアや脊髄軟化症などと鑑別されて診断されます。治療法は腫瘍の種類や状態に合わせて、硬膜外腫瘍と硬膜内髄外腫瘍は外科手術での摘出の対象となりますが、猫に多く発症するリンパ腫の場合は放射線治療や抗がん剤治療のほうが有効な場合もあります。腫瘍の侵襲度が高い場合や、星細胞腫などの硬膜内髄内腫瘍の場合、完治は難しいと考えられています。


■ 脊椎奇形(せきずいきけい)

【原因】

先天的な疾患で、胎児期に形成異常が生じることが原因です。

【症状】

代表的な先天的脊椎奇形として、半側脊椎、二分脊椎、移行脊椎があります。半側脊椎は脊椎の分骨である1つの椎骨の半分が骨化していない状態です。胸椎に発生することが多く、成長するに従って奇形の椎骨は圧力に耐えれなくなり、背側に押されていくことで内部の脊髄も圧迫されるようになります。後肢の麻痺、ふらつきや起立不能、排泄のコントロールができないなどの神経症状が表れ、二分脊椎は通常は、背側に1つだけある棘突起が、癒合不全により、2つ存在します。症状は、表れず、猫ではまれな奇形です。移行脊椎は、胸椎から腰椎や腰椎から仙椎といった移行部分で腰椎化や仙椎化が起こり、一部の椎骨の形状が変わります。腰助という腰椎に除骨が付いていたり、一部の肋骨が欠けていたりします。こちらも、症状は表れませんが、猫では、比較的よく発生します。

【治療・対策】

X線検査で診断されます。無症状の場合は、偶然発見される場合がほとんどです。半側脊椎は成長に従って神経症状が表れますが、根本的な治療方法はなく、保存療法が一般的です。状態に応じて外科手術で脊髄に圧力がかからないように改善し、脊椎の固定などを行います。二分脊椎や移行脊椎は、症状を表さず生活に支障をきたさない場合が大半のため、特に治療は行いません。


■ 線維軟骨塞栓症(せんいなんこつそくせんしょう)

【原因】

外傷や運動などによって線維軟骨が脊髄の血管内に入り込むことが原因と考えられていますが、そのメカニズムについては、解明されていません。高齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

椎間板などを構成する結合組織と軟骨の中間にあたる線維軟骨が、何らかの原因で脊髄の血管内に入り込み閉塞を起こしている状態。特に、肢へと繋がる神経が出入りする脊髄の頸膨大と腰膨大の部分で発生しやすい。初期は、痛みを感じる場合もありますが、数時間から1日程で痛みを伴わない虚血性の不全麻痺、または、麻痺の状態になります。麻痺の程度や四肢の麻痺の範囲は閉塞を起こした部分によって異なり、頸部の場合は、椎間板ヘルニアと同じく四肢の不全麻痺、胸腰部の場合は、後肢の不全麻痺になります。片肢のみに症状が表れる場合が多く、重度の場合は両肢に症状が表れます。麻痺を起こすと突然起立困難になり、腫れや発熱が見られる場合もあります。頸部に重度の塞栓が発生すると、呼吸困難に陥り死に至る危険性があります。症状は、発生当初が最も重く、徐々に回復してくる場合もありますが、重度の場合や麻痺が長期間続いた場合は、後遺症が残ることもあります。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査、脳脊髄液検査や触診などで診断され、麻痺症状が表れるリンパ腫や脊髄腫瘍、椎間板ヘルニアなどの疾患との鑑別は必要になります。発生当初は脊髄神経の壊死を食い止めるためのステロイド剤や必要に応じて抗生物質などを投与する場合があります。その後は、運動機能を回復させるためのストレッチやリハビリテーションなど、状態の様子を見ます。発見が遅れると後遺症が残る場合もあるので、日頃から猫の様子をよく観察し、早期発見に努めるようにしましょう。


■ 椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)

【原因】

椎間板の内部の髄核が外部に漏出した状態や、髄核を包む線維輪が膨らんで脊髄などを圧迫することで発症します。外圧と肥満、老化が主な原因と考えられています。外圧は交通事故や転落など瞬発的に強い力が加えられることでその衝撃に耐えられず髄核の漏出が起こります。肥満の場合は日常生活で徐々に負担がかかり蓄積されて発症します。老化は髄核を包む繊維輪が弱化することで衝撃に弱くなり発症します。また短足や小型の猫種は発症しやすいとされています

【症状】

椎間板は背骨を構成する椎骨の骨の間に存在する円形の線維軟骨で、椎骨にかかる衝撃を吸収する役割を担っています。その内部にゼリー状の髄核があり、それが何らかの原因で外部に漏出した状態や、髄核を包む線維輪が膨らんで脊髄などを圧迫するのがヘルニアです。胸腰部では背中を痛がる、動くのを嫌がる、後肢の麻痺、起立困難などの症状が表れます。頸部では、頭を上げるのを嫌がる、前肢の麻痺、首を触ると痛がるなどの症状が表れます。進行すると後肢が完全に麻痺をして前肢のみで歩く場合もあります。

【治療・対策】

軽度の場合、消炎剤やステロイド剤が投与されます。また肥満の場合は栄養管理や運動管理によって解消を試みます。重度の場合、外科手術で漏出した髄核や膨らんだ繊維輪を除去します。また神経に障害をきたしている場合には、排泄や歩行の補助も必要になります。事故や転落などの外傷を防ぐために、室内飼育にして安全な生活環境を整え、食餌の栄養管理や運動管理をして、肥満にならないように日頃から気を付けることが予防策です。


■ 特発性前庭障害(とっぱつせいぜんてんしょうがい)

【原因】

前庭系と言われる脳幹、小脳、内耳の異常によるものですが、異常をきたす原因は解明されておらず、中高齢の猫に多く発症します。また、猫では、夏と初秋に多発する傾向があり、その関連性も解明されていません。

【症状】

平衡感覚を司る脳幹や小脳、内耳の前庭に異常が生じている状態。急に首を傾ける斜頸や、眼がグルグル回る眼振、運動失調、嘔吐や食欲不振などの症状を表します。自分の置かれている環境や人が分からなくなるなどの見当識障害を引き起こす場合もあり、平衡感覚異常になるため、立ち上がることさえ困難になります。ふらついたり、転倒してケガをしたりする場合もあるため、注意が必要です。また、急性内耳炎とよく似た症状が表れます。

【治療・対策】

中内耳炎や脳腫瘍等でも同様の症状が表れるため、正しい鑑別が必要です。CT検査やMRI検査、耳鏡検査、X線検査などを行い確定診断されます。治療方法は、確立されていませんが、感染の可能性がある場合には、抗生物質を投与します。転倒による外傷を防ぎ、栄養状態を保って体力を温存させるなどの支持療法が中心です。数日から数週間で徐々に回復するケースが多いとされています。しかし回復後も斜頸などの後遺症が残ることもあります。


■ 脳血管障害(のうけっかんしょうがい)

【原因】

原因は、解明されていませんが、基礎疾患との関連性が推察されています。また高齢の猫で発症が多いとされています。

【症状】

脳の血管の一部が閉塞や出血などによって閉栓し、脳が壊死や軟化を起こしている状態です。脳出血や脳梗塞も脳血管障害に含まれます。突然神経の機能障害を起こすのが特徴です。症状は障害の生じた箇所によって異なりますが、麻痺や痙攣、意識障害や歩行障害、嘔吐や旋回などの行動異常などの症状を表します。比較的長いてんかん発作を引き起こす場合もあります。急激に状態が悪化して昏睡状態に陥り死に至る危険性があるため、早期の対応が必要です。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査、X線検査や超音波検査などで診断されます。基礎疾患の影響があればその治療を行います。脳出血が見られる場合は、止血薬を投与しますが、出血が多く脳が圧迫されている場合は、外科手術を行うことがあります。状態に合わせて、脳圧を下げ、脳浮腫を抑制する薬の投与や、てんかん発作を防ぐために抗てんかん薬を投与します。脳梗塞の場合、脳へのダメージを保護するためにステロイド剤を投与し、低酸素状態を改善するための酸素吸入、輸液や利尿薬の投与などを行います。軽度の場合は完治することもありますが、障害が残り、場合によっては、死に至ります。


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