耳の病気

■ ミミヒゼンダニ感染症(みみせんだにかんせんしょう)

【原因】

ミミヒゼンダニの寄生によるもので、感染した動物との接触や耳の衛生状態が原因と考えられます。多頭飼育の場合に一匹から感染が広がったり、外出をして他の猫と接触することで感染したりすることが考えられます。ミミヒゼンダニは耳垢や皮膚のかさぶたなどを栄養素とするため、手入れがされず衛生状態の悪い耳は、ダニにとって住みやすい環境になります。

【症状】

ミミヒゼンダニの感染によって、激しい痒みを引き起こしている状態です。黒褐色の耳垢がたまる、悪臭がする、ひどく痒がり耳を掻いたりこすりつけたりする、頭を振るような動作をするなどの症状が表れます。掻きむしることで耳を傷つけたり、脱毛したりする場合もあります。耳垢を分泌する腺組織を刺激されたり、ミミヒゼンダニの排泄物がたまったりしていくため、大量の耳垢が見られるのが特徴です。進行すれば外耳炎や耳血腫を引き起こす場合もあります。

【治療・対策】

耳垢を調べてダニの有無を確認することで診断されます。耳垢のたまった箇所を洗浄して、駆除剤を投与するのが一般的です。再感染を防ぐために定期的な耳のケアが必要になります。室内飼育にして他の猫との接触を避けることや、飼育環境を清潔に保つこと、定期的に耳のケアを行うことが予防策になります。耳のケアは10日に1回が目安で、耳の垂れている種類の猫はもっと頻繁に必要になります。市販のクリーニングローション等を活用してケアをする習慣を作りましょう。猫が嫌がる場合は、動物病院で相談してみてください。


■ 外耳炎(がいじえん)

【原因】

猫の外耳炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。

◎寄生虫
ミミヒゼンダニによる耳疥癬がある場合、ダニが付けた傷や放出した排せつ物が引き金となって炎症が起こります。頻度は低いものの、ニキビダニ、ヒゼンダニ、ネコショウセンコウヒゼンダニが原因になることもあります。
◎アレルギー
アトピー性皮膚炎や接触性アレルギーなどが耳に現れることがあります。
◎異物
腫瘍、ポリープ、過剰な耳垢、被毛、植物の種などの異物が炎症を引き起こすことがあります。
◎菌の感染
ブドウ球菌、シュードモナス属、プロテウス属、コリネバクテリウム属、大腸菌といった細菌や真菌が炎症を引き起こすことがあります。特にブドウ球菌は、耳の奥にある水平耳道でよく発見されます。
◎折れ耳
スコティッシュフォールドなど折れ耳の猫は湿気が耳にこもりやすいため、外耳炎にかかりやすい傾向があります。
◎耳掃除不足
飼い主が適切な耳のケアを怠っていると、外耳炎に気づかないまま症状を悪化させてしまうことがあります。

【症状】

猫の外耳炎とは、音の通り道である外耳道(がいじどう)に炎症が発生した状態で、「外耳道炎」とも呼ばれます。猫の外耳道には、耳のひらひら部分(耳介)から垂直方向に降りる縦穴のような「垂直耳道」と、垂直耳道の突き当りから水平方向に伸びる横穴のような「水平耳道」があります。「外耳道の炎症」とは、垂直か水平どちらか、もしくは両方の耳道に炎症が発生した状態のことです。

外耳道の表面を構成しているのは、皮膚の最上部に当たる<表皮>、表皮の下で皮膚の形状を維持する<真皮>、そして<アポクリン腺>と呼ばれる分泌腺などです。

【治療・対策】

◎寄生虫の管理
 ミミヒゼンダニを始めとする寄生虫が原因になっている場合は、洗浄剤を用いて耳をきれいにし、抗ダニ薬を局所的に塗布します。 その後殺疥癬効果のある薬を投与します。なお洗浄液を使用する場合は、事前に鼓膜が破れていないことを確認しておかなければなりません。
◎アレルゲンの除去
 アトピー性皮膚炎や接触性アレルギーなどが原因になっている場合は、アレルギーを引き起こしているアレルゲンを環境中から一掃するよう努力します。
◎異物の除去
 耳の中の異物が炎症を引き起こしている場合は、異物を除去します。耳垢、被毛、植物の種などは簡単ですが、腫瘍やポリープといった場合は時として手術が必要になることもあります。
◎殺菌
 ブドウ球菌を始めとする細菌や真菌が原因になっている場合は、抗菌薬や抗真菌薬が投与されます。原因菌を正確に突き止めておくと治療効果が高まります。
◎耳のケア
 飼い主による定期的な耳のケアが外耳炎予防になり、また早期発見につながります。


■ 耳ダニ感染症(耳疥癬)(みみかいせん)

【原因】

耳ダニ(耳ヒゼンダニ、耳疥癬虫)と言われるミミヒゼンダニの寄生が原因です。0.3mmほどのちいさな白いダニが猫の耳介に寄生することで発症します。耳ダニは表皮から組織液を吸ったり、剥がれた表皮の断片や耳垢を食べたりしています。排泄物や耳ダニによって皮膚が傷つけられることで多量の垢が出て炎症を引き起こします。主に、多頭飼育や外飼いの場合の感染した猫との接触によって感染します。子猫の場合は母猫から感染してしまうことが多いようです。

【症状】

耳疥癬とは、猫の耳の中でダニが繁殖し、それにより諸症状が表れている状態のことを指します。耳の中に垢がたまり悪臭がする、耳が黒ずむ、ひどく痒がり耳をこする、頭を振るような動作をするなどの症状が表れます。まれに耳介に病変が見られることもあります。また、耳疥癬はかゆみが強く感じられることが多いので、耳を頻繁に前あしなどでこすることによって引っかき傷ができやすく、さらにそこからなんらかの感染症に罹患することもあります。

【治療・対策】

耳の中を洗浄し、注射や外用薬、内服薬などの方法で抗ダニ駆除剤を投与します。つよいかゆみがある場合には、ステロイド剤を投与することもあります。耳ダニが駆除された後、外耳炎の症状が見られれば継続治療が必要です。飼育環境を清潔に保ち、他の猫との接触を避けること(完全室内飼育)、日頃からの耳のケアが予防措置になります。また外飼いの猫の場合は、ダニ等に寄生されやすい環境にいるため、定期的な駆除も効果的です。


■ 耳の腫瘍(みみのしゅよう)

【原因】

猫の耳腫瘍は、人間でいう耳たぶ(耳介)の先の部分と、耳の中をのぞくと見える部分(外耳道)に発生することがあります。原因はできる場所によって異なります。
耳介にできやすい腫瘍は扁平上皮ガンです。扁平上皮ガンは、皮膚や口腔粘膜にできる悪性腫瘍で、猫だと耳の先や鼻にできることがあります。主な原因は太陽の紫外線と考えられています。まず被毛が薄い耳や鼻が、紫外線の刺激によって日光皮膚炎を起こし、そのあとも同じ部分が紫外線の刺激にさらされ続けることで、扁平上皮細胞がガン化することがあります。特に白っぽい猫は注意が必要です。紫外線から身を守るメラニン色素が少ないため、紫外線の悪影響を受けやすく、日光皮膚炎や扁平上皮ガンになるリスクが高まります。続いて外耳道にできる腫瘍について触れていきます。外耳道には耳垢腺という汗腺が分布しており、それが腫瘍化してイボのようなできものを作ります。良性の場合は耳垢腺腫、悪性の場合は耳垢腺ガンと呼ばれています。耳垢腺が腫瘍化する原因は特定されていませんが、外耳炎による慢性的な炎症が一因だと考えられています。イボは見た目が様々で、色も形も猫によって異なります。ただし性質は変わらず、大きくなって耳の穴を塞いでしまったり、耳の奥に進行して鼓膜の向こう側にある中耳や内耳、さらにリンパ節を侵したりすることもあります。概ね片方の耳だけに症状が出ますが、まれに両耳に発症することもあります。なお、扁平上皮ガン、耳垢腺腫、耳垢腺ガンは、いずれも高齢猫での発症が多い病気です。そのため、免疫力の低下が発症に関与している可能性もあります。

【症状】

◎耳介の腫瘍「扁平上皮ガン」の症状は、猫の耳介に扁平上皮ガンができると、耳の先に以下のような初期症状が見られます。皮膚がカサついている。脱毛している。すり傷のようなものができている。かさぶたができる。初期の段階では、一見、耳にすり傷ができているようにしか見えないため、いずれ治ると踏んで放置しがちです。かさぶたはできてははがれ、またできて…を繰り返し、やがて耳に次のような症状が現れます。潰瘍ができる。出血する。膿が出る。さらに進行すると、耳の先がどんどん削れて失われ、顔面に影響が及ぶこともあります。外耳道の腫瘍「耳垢腺腫」「耳垢腺ガン」の症状
耳垢腺腫もしくは耳垢腺ガンでは、外耳炎とよく似た症状が見られます。耳を気にして引っかく。耳から悪臭がする。耳だれ。出血。痛みやかゆみが出るため、猫は気にして後ろ足で耳をかいたり、壁などに耳を押し付けたりします。耳垢腺の出す分泌物の中で細菌などが大量に繁殖し、悪臭を放つこともあります。また、イボが外耳道から中耳、さらに内耳に達することもあります。内耳は三半規管、前庭部、蝸牛から構成され、聴覚や平衡感覚を司る非常に大切な器官です。そのうち、前庭部が腫瘍の影響を受けると、首がねじれたり(捻転斜頸)、ねじれた方向に体が旋回したり、うまく歩けなくなるといった前庭障害が現れます。さらに眼球が勝手に動いてしまう眼振や、瞳孔が縮んで眼球が奥に入り、瞬膜が飛び出るホルネル症候群といった神経症状が起きることもあります。

【治療・対策】

耳介の腫瘍「扁平上皮ガン」の対策は、耳介の扁平上皮ガンの場合、外科手術で患部を広範囲に切除します。放射線治療を行ったり、ガン細胞の増殖を抑える分子標的薬を使ったりすることもあります。耳介などの皮膚の扁平上皮ガンは、紫外線が大きく関係しているため、猫を日光に長時間あたらせないようにしましょう。もし白っぽい猫が、外出や窓辺での日光浴を欠かさない場合は、ペット用の日焼け止めを活用するのも一つの手です。被毛が薄い部分に塗りましょう。
外耳道の腫瘍「耳垢腺腫」「耳垢腺ガン」の対策は、外耳道の耳垢腺腫や耳垢腺ガンの場合、外科手術で耳道をすべて摘出します。場合によって中耳の鼓室包切開術や放射線治療を併用することもあります。また、手術が難しい場合にも、放射線による緩和治療を行います。耳垢腺腫や耳垢腺ガンは外耳炎による慢性的な炎症が原因の一つと考えられているため、猫が外耳炎を発症したら、必ず完治させて長引かせないことが大切です。また、高齢になると発症しやすいため、定期的に動物病院で耳の検査を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。


■ 耳血腫(じけつしゅ)

【原因】

猫同士のケンカや事故などによる打撲によって皮膚内部で出血を起こしている場合や、傷口から細菌やウイルスに感染して炎症を起こして血液が溜まり腫れあがる場合があります。傷口ができる原因として、ケンカや事故の他に耳ダニに感染や外耳炎のため掻きむしることが考えられます。また耳ダニ感染や外耳炎のために頭を強く振ることで、軟骨が皮膚から剥がれて毛細血管を傷つけて血腫となることがあります。耳ダニの感染は感染した他の猫との接触や、外での飼育や散歩中の寄生が原因となります。

【症状】

耳介部が腫れあがり、内部に液体が溜まりぶよぶよとした触感になります。内部では耳介の血管が切れて血の混じった膿が溜まっています。痛がる様子はあまり見られませんが、違和感を覚えて掻いたりこすりつけたり、頭を振るような動作を表す場合があります。症状が進行すると、耳介の軟骨が変形をして引きつれたような状態になったり、鼓膜へと続く外耳道を塞いでしまったりする可能性があります。

【治療・対策】

血腫が小さければ患部に溜まった内容液を吸い出します。大きい場合は麻酔をして切開をし、内容液や腐敗組織を切除するようになります。感染や炎症が起こっている場合は抗生物質や抗炎症剤の投与を行います。治療の際はエリザベスカラーをつけて耳を保護する場合もあります。また耳ダニ感染が見られる場合は、ダニ駆除剤の投与をします。耳ダニ感染を防ぐために、他の猫との接触を避けたり室内飼育をしたり、飼育環境を清潔に保つことが予防策になります。


■ 中耳炎(ちゅうじえん)

【原因】

中耳炎は、おもに外耳炎の悪化や慢性化により、鼓膜の奥にある中耳にまで炎症や感染が広がることが原因で起こります。また、中耳は耳管を通して咽頭の奥につながっているため、咽頭炎から中耳炎が起こることもあります。そのほか、腫瘍が原因で起こることもあります。

【症状】

中耳炎は外耳炎に続いて起こることが多いため、外耳炎の一般的な症状が見られるほか、耳(頭)を傾けたり、頭を振ったりといったしぐさがよく見られます。痛みが強いため、元気がなくなったり、頭部を触られるのを嫌がったりすることがあります。また、発熱することもあります。
中耳炎から、中耳の奥にある内耳(聴覚と平衡感覚をつかさどる器官)やその周辺組織にまで炎症が広がると、平衡感覚が失われ、歩き方が不自然になり、よろけるようになります。ときには、顔面の神経麻痺や目の揺れ(眼振)、ホルネル症候群(眼球が陥凹して瞬膜が飛び出して見えたり、まぶたが垂れ下がったりする症状が見られる病気)を併発することもあります。

【治療・対策】

中耳炎の治療は、炎症の原因となっているのが細菌や真菌の場合には、抗生物質や抗真菌薬を投与し、かつ炎症を抑えるために抗炎症薬を投与します。しかし、中耳炎は抗生物質などによる内科的治療だけでは症状がなかなか改善しないことがあり、その場合は手術を行うこともあります。


■ 内耳炎(ないじえん)

【原因】

すでに中耳炎を患っている場合、炎症が隣接している内耳に波及してしまうことがあります。内耳の病変、外耳や耳管といったルートを通してではなく、内耳そのものの中に腫瘍やポリープが発生し、炎症を引き起こすことがあります。何らかの感染症にかかっているとき、ウイルスや細菌が血液に乗って内耳にたどり着き、そこで炎症を引き起こすことがあります。外耳炎や中耳炎の治療の一環として洗浄液を用いた場合、液体が内耳にまで侵入して炎症を引き起こすことがあります。こうした形での発症を「医原性の内耳炎」といい、鼓膜が破れているにもかかわらず、アミノグリコシド、ヨード化合物、クロルヘキシジン、クロラムフェニコールといった消毒薬を使用したときに発生します。

【症状】

内耳は聴覚に関わる「蝸牛」(かぎゅう)という器官と、バランス感覚に関わる「三半規管」(さんはんきかん)という器官から構成されています。前者は「蝸牛神経」を通して音を脳に伝え、後者は「前庭神経」を通して体の位置情報を脳に伝えるのが役割です。両者を合わせて「内耳神経」(ないじしんけい)、もしくは「第八脳神経」といいます。内耳炎の症状は、蝸牛神経と前庭神経のどちらに炎症が発生したかによって違ってきます。主な症状は以下です。
◎蝸牛(かぎゅう)神経の炎症 難聴(呼びかけに無反応など)
◎前庭神経の炎症 足元がふらつく・まっすぐ進もうとしても目が回った時のように回転してしまう・眼振(目玉がこきざみに震える)・頭の傾斜・吐き気・嘔吐

【治療・対策】

内耳炎が外耳炎や中耳炎に引き続いて発生しているような場合は、まずこれらの疾患に対する治療が優先されます。具体的には、炎症を引き起こしている病原体を特定して抗菌薬や抗生物質を投与するなどです。また腫瘍やポリープがある場合は外科手術が必要となります。症状がひどい場合は、鼓膜を人為的に切って中耳を露出し、そこを温めた滅菌生理食塩水で洗浄することがあります。ただしアミノグリコシド、ヨード化合物、クロルヘキシジン、クロラムフェニコールといった消毒薬は、逆に内耳炎を悪化させる可能性があるため避けられます。内耳炎が前庭神経に波及してバランス感覚が障害されているような場合は、怪我を予防するため運動を制限します。具体的には交通量の多い場所を散歩しない、水のある場所は避けるなどです。


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