生殖器の病気

■ 子宮がん(しきゅうがん)

【原因】

犬の子宮がんの原因は、はっきりとはわかっていません。また、子宮がん(子宮の悪性腫瘍)になりやすい犬種は特に報告されておらず、遺伝による原因なのかも不明です。・腹部触診・X線検査・超音波検査・膣分泌物があれば顕微鏡で観察・病理組織検査(卵巣子宮摘出術の後)などです。食欲不振等のどの疾患でも現れるような症状がある、または全身の状態を把握する必要がある場合は血液検査なども行われます。

【症状】

症状は特にみられないことが多く、高齢での避妊手術や子宮蓄膿症で卵巣子宮摘出術を行ったときなどに、発見されることがしばしばあります。さらに、がんができた子宮自体からの症状はなく、子宮がんが転移した場所の症状により動物病院を受診する例もみられます。子宮がんでは症状が出ないことも多いため、発見されたときにはがんが進行していることも多いです。子宮がんの症状としては、血が混じった膣分泌物(おりもの)が出る、食欲があまりない、元気がなくなるなどが挙げられます。また、腫瘍がかなり大きくなった場合には腹部が膨れて見えることもあります。・症状がないことも多い・血が混じった膣分泌物・食欲不振・体重が減る・腹部に不快感を示す・お腹がふくれるなどがある。

【治療・対策】

子宮がんになるのを予防するには、避妊手術を行うことです。子宮がんの治療は卵巣子宮摘出術です。平滑筋腫などの良性腫瘍は卵巣と子宮を手術で摘出すれば、治癒します。一方、悪性腫瘍(子宮がん)では、転移がなく手術により完全切除が可能であった場合は同じく経過は良好ですが、切除できない、または転移がある場合は、経過は厳しいものとなります。


■ 子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)

【原因】

犬のメスの発情前後の時期は、普段とじている子宮頚管が部分的に開き、膣内にいた雑菌が子宮内膜に取りついて炎症を起こします。この雑菌は、膣に常在しているありふれた菌がほとんどです。この時期の子宮内は、発情期に放出されるエストロゲンによって子宮内膜が分厚く変化しており、子宮腺の奥に入り込んだ細菌を無菌化できずに炎症をおこすことがあります。出産経験のない高齢犬に多く、年齢が上がるほど発生率は増加するとされます。

【症状】

子宮の内部を覆っている子宮内膜と呼ばれる部分に炎症が発生した状態で、下腹部の痛み、微熱、おりものや不正出血、多飲多尿、腹部拡張などがみられます。子宮内膜炎が長引き、子宮内に膿がたまってしまうと子宮蓄膿症を発症し、そのままにしておくと、腹膜炎や敗血症をおこし、貧血や腎不全を併発、高齢ですでに心不全を起こしている場合には、手術が危険で困難になることがあります。

【治療・対策】

心臓疾患や著しい貧血など他の重篤な疾患が存在し、外科手術に耐えられないと判断した場合は内科治療を行います。炎症を引き起こしている細菌を特定し、最も効果が高いと思われる抗生物質を投与します。子宮を収縮させる薬や黄体ホルモンの働きを抑える薬を処方する場合もあります。繁殖を計画していない犬においては、卵巣と子宮の摘出手術を行うこともあります。避妊手術が最大の予防となります。


■ 膣炎(ちつえん)

【原因】

膣炎の原因として、膣やその付近の解剖学的異常(先天的な奇形など)、膣内異物、膣腫瘍などが挙げられますが、そのような異常がみられず原因が不明なものも多くあります。原因不明の膣炎は体の免疫の状態やホルモンの影響などが要因になっていると推測されますが、膣炎と発情の関係ははっきりとは分かっていません。発情周期を終えるとともに膣炎が治っていく犬もいれば、慢性膣炎を発症している未避妊の雌犬で、発情が膣炎を解消する可能性もあります。

【症状】

膣炎とは、子宮から体の外につながる道である膣に炎症が起きた状態です。膣炎は一般的にどの犬種でもかかります。また、若齢、老齢など年齢を問わず、避妊の有無や発情のどの段階かも関係なく発症します。発情前、または1~2回目の発情を迎えた子犬が膣炎になることがあり、大型犬や短頭種で多くみられます。早くて3か月齢の子犬で発症がみられます。膣炎になった犬では外陰部から分泌物が出ることが多いです。外陰部を頻繁に舐めたりすることもあります。また、膣炎では尿路感染が併発する場合もあります。・外陰部からの分泌物・外陰部をしきりに舐めるなどです。

【治療・対策】

膣炎の予防方法は特にはなく、どの雌犬でも膣炎にかかる可能性があります。膣の分泌液や外陰部を気にする様子などが見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。内科的治療では、抗生剤の内用薬や外用薬が処方されます。このとき、必要であれば膣分泌物の細菌や有効な抗生剤を特定する細菌培養・感受性検査が行われます。膣洗浄が行われることもあります。


■ 包皮炎(ほうひえん)

【原因】

包皮炎の原因は、ペニスを包む包皮が病原性の細菌に感染し、炎症を起こす病気です。細菌感染は、先端部分が長い毛で覆われている犬などは特に注意が必要で、排尿の時に毛の先端が地面などに接触し、病原性の細菌に感染する確率が高くなります。また、ワンちゃんの陰茎は包皮に包まれている包茎が正常なので、包皮内に汚れや粘液などの分泌物が溜まりやすく、通気性も悪いことから常在細菌にとっては増殖しやすい条件が揃ってしまっています。

【症状】

オスのワンちゃん特有の病気で、包皮炎はペニスを包む包皮が病原性の細菌に感染して炎症を起こす病気です。ワンちゃんの包皮には多くの細菌がいて、膿が出ていることは珍しいことではありませんが、病原性の細菌に感染すると包皮の炎症がひどくなり、黄色い分泌物が普段よりも多く出るように感じられます。痛みも感じるようになり、違和感からペニスの先端を気にしてよく舐めます。また、痛みのために排尿を細切れにすることもあります。

【治療・対策】

軽度であれば自然治癒することもありますが、改善がみられず、重度の場合は早めに治療することが大切です。治療方法としては、抗生物質の投与で感染と炎症を抑え、膿で汚れた包皮の洗浄を行います。洗浄は、包皮の中をぬるま湯や生理食塩水、消毒液などで洗浄します。繰り返し発症する場合は去勢手術を行うこともあります。


■ 乳腺炎(にゅうせんえん)

【原因】

乳腺炎は授乳中に傷が付くなどしてそこから細菌が感染することが原因となります。また、授乳中でなくても、未避妊の雌犬が偽妊娠になったときに乳汁が分泌され、それがたまることで乳腺炎になることがあります。・乳房の触診・血液検査・乳汁を顕微鏡で見る・乳房のFNA(穿刺吸引細胞診:せんしきゅういんさいぼうしん)・細菌培養・感受性試験・超音波検査などです。他にも、発熱や元気、食欲がないなど全身的な症状が出ている場合は、血液検査なども行われます。

【症状】

乳腺炎の症状として、乳房が熱を持っていたり、痛がったりします。乳房にしこりができる、腫れるなどの症状も現れます。乳汁も黄色がかる、茶色っぽくなる、血が混じるなど、炎症により白血球や赤血球が出てきて色が変わります。病状が進むと、元気や食欲がなくなるといった全身に影響する症状もみられるようになります。重症の場合、乳腺に膿の袋(膿瘍:のうよう)ができたり、細菌感染により組織が壊死し腐敗する壊疽(えそ)を起こしたりすることもあります。さらに、乳癌の種類のひとつである炎症性乳癌は乳腺炎と似ていることがあり、場合によっては注意が必要です。・乳房の熱感・痛み・乳汁の色が変わっている・乳房のしこり・授乳を嫌がる・発熱・元気がない・食欲不振などです。

【治療・対策】

乳腺炎のはっきりした予防方法というものはありませんが、特に授乳中は衛生的な環境を保つことが重要です。母犬が授乳を嫌がる、授乳がされないので子犬が鳴き続ける、子犬に元気がない、犬が乳房を気にしてしきりに舐めるなどの様子がみられることがあります。このような異常が見られたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。


■ 停留精巣(ていりゅうせいそう)

【原因】

睾丸は、生後半年位までに下腹部に降りてきて、陰嚢に納まります。遅くても生後18ヶ月までには睾丸が降りてきますが、それを過ぎてしまうと睾丸は腹部に残ったままになります。停留精巣が起きる原因は特定されていませんが、ホルモン障害などがあげられます。睾丸は細胞分裂を繰り返して精子を作っているため、お腹の中に留まっていると精巣腫瘍になりやすいです。原因となる細胞の種類はセルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫の3種があり、停留精巣でなりやすい腫瘍はセルトリ細胞種です。腫瘍化して大きくなると他の臓器を圧迫する場合もあり、手術をしても命を落とす危険性が生じます。

【症状】

オス特有の病気で、睾丸(精巣)の異常です。睾丸は生後間もなく陰嚢に納まりますが、降りることなく腹部に留まってしまう状態をいいます。睾丸がお腹に残った停留精巣のままにしておくと、腫瘍化して悪性腫瘍になってしまうことが多くあります。通常の10倍近い確率で精巣腫瘍を形成する、というデータもあります。また、それによって女性ホルモンを分泌し始め、毛が抜けたり、貧血を起こしたりすることがあります。

【治療・対策】

一番の治療法としては、停留精巣が判明した段階で切除手術を行います。この病気ではワンちゃんに体力があり、どこも悪くない状態でもあるため、外科的手術をすることに抵抗のある飼い主さんも多くみられます。しかし、いずれ悪性腫瘍になる可能性が高いものなので、早期発見と早めの決断が大切です。


■ 前立腺肥大症(ぜんりつせんひだい)

【原因】

前立腺肥大の原因ははっきりとしていませんが、男性ホルモンの分泌が影響すると考えられています。そのため、加齢によって男性ホルモンのバランスが崩れたことが原因といわれています。去勢をしていない中高齢のワンちゃんに多くみられます。

【症状】

前立腺肥大は老齢犬に多くみられ、便秘や排尿困難などの症状がみられます。初期ではほとんど症状はみられませんが、肥大が進むにつれて、場所の近い腸や膀胱、尿道などの臓器を圧迫し、症状が起こり始めます。排尿量が減り、回数が増えることや、便が出にくくなる、少量の便が少しずつ出るといった状態になります。また、血尿がみられる場合もあります。細菌感染も起こりやすくなるため、細菌性膀胱炎などを併発することもあります。

【治療・対策】

前立腺肥大が小さい状態であれば、ホルモン剤を投与して、肥大を抑えることができます。また、肥大によって腸を圧迫して便秘を起こしているようであれば、食事療法を取り入れて改善することもできます。前立腺肥大が腫瘍化する懸念もあるので、予防としては肥大する前に去勢手術を行うことも1つの方法です。高齢になる前に去勢手術を施すことで発症を防ぐことができます。


■ 前立腺腫瘍(ぜんりつせんしゅよう)

【原因】

前立腺腫瘍のはっきりした原因はわかっていません。

【症状】

前立腺腫瘍では血便や血尿、しぶり※がみられます。通常、痛みも伴います。前立腺腫瘍は転移率が高く、骨へよく転移します。具体的には骨盤や腰椎、腰椎のそばにあるリンパ節(免疫細胞が集まり免疫に関わる場所)などへ転移がみられます。骨に転移すれば歩行異常もみられるようになります。進行すれば尿路閉塞が起こり、排尿ができなくなることもあります。・しぶり・血便・血尿・痛み・元気がない・食欲がない・体重減少などです。前立腺腫瘍は老齢(診断時平均年齢10歳)で発生する傾向があり、かなり進行してから発見されることも多いです。また、前立腺腫瘍になりやすい犬種としては、・シェットランド・シープドッグ・スコティッシュ・テリア・エアデール・テリア・ドーベルマン・ピンシャーなどです。

【治療・対策】

前立腺腫瘍の主な検査は・触診・直腸検査・血液検査・X線検査・超音波検査・尿検査・尿道カテーテルの吸引による採材・細胞診などです。前立腺腫瘍の発生に対する明確な予防方法は存在しません。血尿など異常がみられたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。


■ 前立腺炎(ぜんりつせんえん)

【原因】

前立腺炎は細菌感染が原因となり、尿道に侵入した細菌が前立腺に感染することが多いです。

【症状】

前立腺炎は、未去勢雄や最近去勢したばかりの中~老齢の雄犬によくみられ、突然発症し激しい症状が現れる急性と比較的軽い症状が長期間にわたりみられる慢性があります。急性の前立腺炎では前立腺の強い痛みや発熱、元気食欲の低下や尿の異常などの症状がみられます。重症例では敗血症という血液が細菌に感染し内臓が機能不全に陥っている状態になります。・元気消失・食欲不振 ・しぶり・血尿・にごったような尿・体を触られるのを嫌がる・体が当たるとキャンと鳴く・歩き方や立ち上がりがぎこちない・嘔吐・発熱・脱水などです。

【治療・対策】

去勢を行うことで前立腺肥大症や肛門周囲腺腫なども抑えることができます。前立腺炎の治療は抗生剤を投与します。尿や前立腺液の細菌培養・感受性試験の結果をもとに選択されます。適切な抗生剤の投与を最低1か月は続けます。他にも症状や状態に合わせ、脱水していたら輸液療法、炎症や痛みを抑えるために抗炎症剤(鎮痛剤)、血尿なら止血剤などを使用します。急性前立腺炎の場合、敗血症※や全身的な炎症、または他の臓器の機能障害を招くことがあるのでしっかりと治療を行うことが重要であり、状態により入院が必要になることもあります。※敗血症とは、血液が細菌に感染し内臓が機能不全に陥っている状態です。さらに、感染が治まり犬の状態が安定したら補助的な治療として去勢手術を行います。これは、精巣を切除すると前立腺に影響するホルモンがなくなり、前立腺が小さくなることで感染している組織も小さくなることを期待して行います。


■ 子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)

【原因】

不妊手術をしていないメス犬に発症し、細菌感染によって子宮内に膿が溜まってしまう病気です。通常、子宮の中は免疫機能で守られ無菌状態となっています。発情期になると頸部がゆるんで子宮内の免疫機能も落ちる状態になり、そこに大腸菌やブドウ球菌などの細菌が侵入して感染します。発情期が終わると子宮頸管が閉じ、細菌が侵入したまま残って増殖します。膿が溜まり、外陰部から出てこない閉塞性の場合は症状が重くなり、進行すると尿毒症や腎不全などの合併症を起こすこともあります。

【症状】

避妊手術を行っていない中高齢のメス犬に多く発症し、また若年齢でも発情期に感染の危険性が高まります。症状は、お水をたくさん飲み排尿量が多くなる、多飲多尿がみられます、また、お腹が膨らんできて、触ると風船のようにパンパンに張っているように感じられます。陰部から膿が出ているのがみられ、血が混じった血膿が出る場合もあります。悪化すると貧血や腎不全を起こすことがあり、食欲がなくなって発熱や嘔吐がみられるようになります。膿が溜まった子宮が破れてしまうと、腹膜炎を併発し命の危険が生じます。

【治療・対策】

子宮蓄膿症の診断は、X線とエコー検査、血液検査で白血球の状況を調べます。白血球が3万を超えている場合、X線検査などで子宮の状態を調べれば、すぐに状況が把握できます。治療は基本的に外科的手術で、子宮と卵巣を摘出します。術後は抗生物質で炎症を抑え、白血球を正常値に戻します。予防策は避妊手術です。繁殖の予定がない場合は、若くて体力のあるうちに避妊手術を行うことで病気の予防をすることができます。


■ 膣脱(ちつだつ)

【原因】

膣の一部が外陰部から出てしまっている状態のことです。膣脱は、2~3歳以下の未避妊の若いメス犬、特に大型犬の発情時によくみられます。膣脱は発情のときに分泌される性ホルモンにより起こりやすくなります。発情前期や発情期にはエストロゲンという性ホルモンが多く分泌され、このエストロゲンが膣に作用し、膣が腫れたり、厚くなったりします。膣脱は、エストロゲンに膣が過剰に反応し、膣の腫れや厚さが過度に起きたときに発症しやすくなります。また、発情期や発情前期ほどではないですが、出産時や発情休止期にエストロゲンが増加するときがあります。その際に膣脱が再発する例もみられます。

【症状】

膣脱の症状は分かりやすく、外陰部から丸いドーナツ状の粘膜のかたまり(飛び出した膣)がみられます。程度により、外陰部から出ている膣の大きさはさまざまです。粘膜が出たままになっていると、乾燥し膣粘膜が損傷してしまい、乾燥した粘膜に亀裂が入る、ただれるなどして、粘膜表面に感染も起こりやすくなります。草など刺激のあるものや床や土、泥などに出ている膣が接触する状況だとさらに膣の状態が悪化したり感染の機会が増えたりします。また、膣のどの部分までが外陰部から脱出して、どのように他の組織を巻き込むかにより変わってきますが、排尿が困難になることもあります。

【治療・対策】

子宮卵巣摘出術によりエストロゲンの分泌がなくなり、膣脱が起こりにくくなります。避妊手術をしてない場合は、犬の発情の時期をしっかりと把握しておくこと、そのときの犬の様子を観察しておくことが大切です。発情期が終わりエストロゲンの分泌が低下すると、膣の腫れや厚みは自然に治まっていきます。卵巣子宮摘出術をするとエストロゲンは分泌されなくなるので、発情期が終わるのを待たずに膣脱を解消でき、再発もしにくくなります。卵巣子宮摘出術は状態が安定しているときに治療として行われます。





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