脳神経の病気

■ てんかん(てんかん)

【原因】

犬のてんかんは、「特発性」、「症候性」、「おそらく症候性」に分けられます。特発性は、・関連している遺伝子や遺伝的背景が特定されているもの・犬種における有病率などのデータ解析から遺伝性が疑わしいが具体的な特定はされていないもの・原因不明だが脳の構造上の異常はみあたらないものがあります。犬のてんかんのほとんどは特発性で、特発性てんかんの犬では1~5歳で初めての発作が起きていることが多いです。症候性てんかんは、症候性てんかんは脳の構造に異常が出るような病気により、てんかん発作が起きるようになったものです。・脳腫瘍・脳炎・外傷・脳血管障害・奇形などが挙げられます。おそらく症候性てんかんは、おそらく症候性では、症候性が疑われるがあらゆる検査上で異常が見つからないてんかんがここに分類されます。例えば、外傷や交通事故などで頭に大きな衝撃や損傷を受けた後で治療に反応しにくい慢性的な発作を発症したが、検査上では異常が見つからないなどです。また、発作は脳の疾患によるもの(てんかん発作)だけではなく、さまざまな原因があり、診察で明らかにしていく必要があります。脳疾患ではない発作の原因としては、・低血糖・低Ca血症 ・肝不全(重度)・腎不全(重度)・高Na血症・心臓疾患・血液疾患・甲状腺機能低下症(重度)・中毒などがあげられます。

【症状】

てんかんは、大きく「特発性(とくはつせい)」と「症候性(しょうこうせい)」に分けられます。・特発性:脳の病変はなく、検査上では異常がみられないもの・症候性:脳腫瘍や脳炎、奇形など脳に明確な病変がある。また、症候性が疑われても検査などで原因が特定できない「おそらく症候性」のてんかんもあります。てんかん発作は、主に部分発作(焦点性発作とも呼ばれる)と全般発作に分けられます。部分発作(焦点性発作)とは脳の一部のみが異常に興奮しているときに起きる発作で、全般発作とは脳の全体が異常に興奮している状態で起こる発作です。部分発作から全般発作へと広がることもあります。部分発作は口周りなど部分的な筋肉の収縮が現れたり、口をくちゃくちゃと噛むような様子がみられたりします。全般発作では全身にけいれんや硬直などが現れます。部分発作の症状は、・部分的な筋収縮(口から眼周りなど)・一定リズムで筋肉が収縮する・口をくちゃくちゃ噛む・ハエを追うように空中を噛む・一点を見つめる・よだれを多量に垂らす・行動異常(不安や落ち着きのなさ、短時間の性格変化など)など。全般発作の症状は、・全身性の筋硬直の後の、一定リズムでの筋収縮や遊泳運動※遊泳運動とは空中で足かきの動作をすること。・全身的な筋肉の硬直・一定リズムの筋収縮・脱力、筋肉に全く力が入っていない状態などです。発作は一時的で、通常数秒から数分で治まりますが、5~10分以上発作が継続することもあります。これを重積(じゅうせき)発作といい、長時間続けば大きな脳損傷からの後遺症や、最重度であれば命も落とす恐れもある重い発作です。発作から回復した後には、ぼーっとした様子や徘徊、攻撃性、視覚の消失、後ろ足の麻痺などがみられることもあります。この発作後の様子は個々で異なり、水をたくさん飲む犬や食事をたくさん食べる犬もいます。これは症状にもよりますが、回復後数分から長ければ数週間続く場合もあります。

【治療・対策】

<発作が起こったときの検査>・神経学的検査・血液検査・X線検査・超音波検査・心電図・脳波測定・CT検査/ MRI検査などです。てんかんになるのを予防する方法はありません。てんかんの犬に関しては、できるだけ大きなストレスになるような状況は避けましょう。実際、てんかん発作が起こったときの注意点は下のようなものがあります。てんかん発作時の注意点は、・犬をゆする、大声(大きな音)を出す、強い光を当てるなどをしない。さらなる刺激を与えることになる可能性があるため・口の周りなどを不用意に触らない。意識なく噛んでお互いけがをしてしまうおそれがあります。犬は、舌が詰まって呼級困難になるということは基本的にはない。部分発作(頭だけ震わせるなど)の場合、優しく声をかけたり背中を撫でたりして注意をそらすと発作が中断される例もあります。しかし、そうでない場合もあるので、無理はしないようにしましょう。


■ 水頭症(すいとうしょう)

【原因】

水頭症は先天性の水頭症が一般的であると考えられ、生後数か月で診断されることも多いです。しかし、犬の水頭症ではなりやすい犬種はあるものの、具体的にどのように遺伝学的な要因が関わっているのかは明らかにされてはいません。水頭症の発生率の高い犬種は・チワワ・マルチーズ・ポメラニアン・ヨークシャー・テリア・パグ・ペキニーズ・ボストン・テリア・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどです。後天性の水頭症の原因としては、・腫瘍・炎症・脳内出血などが挙げられ、これらにより脳脊髄液の流れなどに異常が出て脳が損傷されると水頭症になります。

【症状】

脳は頭蓋や脊柱内でぶらさがり、脳脊髄液(CSF)中に浮かんでいます。これは軟らかい臓器である脳を衝撃などから保護する仕組みで、水頭症とはこの脳脊髄液(CSF)が異常にたまり、脳を圧迫して脳の正常な構造や機能が害されてしまう病気です。脳の構造には脳室と呼ばれる空洞があり、脳脊髄液(CSF)で満たされています。その脳室で、脳脊髄液(CSF)が血液から作られ、脳室や頭蓋内、脊柱管内を巡り、また血管内に吸収されることで適切な量を保っています。脳脊髄液(CSF)の流れが妨げられる、生産量が増える、吸収が十分にできないなどの原因によりそのバランスが崩れると水頭症の発生を招きます。水頭症の症状は主に神経症状を示し、障害が及んでいる脳の部位に関連してさまざまな症状が現れます。先天性の水頭症と思われる犬の見た目としては、頭部がドーム状に張り出していたり、両方の黒眼が外側に向かって斜め下に位置していたりします。水頭症の症状には、・落ち着きがない・行動異常・旋回(せんかい)・うまく歩けない・けいれん・視覚障害・意識障害などです。

【治療・対策】

内科的治療は、脳脊髄液(CSF)の産生を抑え、頭蓋内圧(頭の中の圧力)を低下させることで、水頭症の症状をやわらげる目的で行われます。・ステロイド・利尿剤・抗けいれん薬(発作が起こった場合)など。利尿薬にはさまざまな種類があり、病院で血管の中に点滴のように流すものもあります。症状が軽度であったり、安定していたりすれば家庭で内服薬を投与することになります。けいれんなどの発作が起こった場合は抗けいれん薬を使用します。水頭症の外科的手術は、脳室内の脳脊髄液(CSF)を腹腔に排出するようにチューブのようなものを設置する方法が行われています。内科的治療に反応しない場合や、進行性で内科的な治療では症状が抑えきれなくなった症例などで外科的治療が考慮されます。ただし、どの症例でも行えるわけではなく、腫瘍が原因のときや、症状がないあるいは軽度な場合、また脳脊髄液(CSF)や腹腔での感染や炎症がある場合などは適応ではありません。MRI検査まで行い、経過や症状、各種検査を含め判断されます。外科的治療のデメリットとしては、感染の危険性が高まる、設置器具(シャントチューブ)の閉塞が起こった場合は交換手術の必要がある、脳脊髄液(CSF)の排出量が過剰になる恐れがあるなどのデメリットはありますが、適応かつ必要であれば治療方法として提示されます。この手術はどの動物病院でも行える手術ではなく、二次診療施設などへ紹介されることが多いです。


■ 前庭疾患(ぜんていしっかん)

【原因】

前庭は末梢(内耳)と中枢(脳)で場所が分かれることを前述しましたが、発症する前庭疾患の多くは末梢性のものです。中枢性前庭疾患は比較的まれで、経過も悪いです。原因もそれぞれ末梢と中枢で分けられます。末梢性の前庭疾患の原因として主なものは中耳炎、内耳炎、老犬での特発性前庭疾患です。他には内耳の腫瘍や外傷、先天性のものなどあります。一方、中枢性の前庭疾患では外傷や出血、髄膜脳炎、腫瘍、脳梗塞などが挙げられます。末梢性前庭疾患の主な原因は、・中耳炎、内耳炎・老犬の特発性前庭疾患・内耳腫瘍・外傷・先天性・聴毒性のある薬剤、化学物質などです。中枢性前庭疾患の主な原因は、・脳炎・腫瘍・脳梗塞・外傷や出血などです。

【症状】

犬の前庭疾患の主な症状は、首を傾けたように頭が斜めになる捻転斜頸(ねんてんしゃけい)、眼球が意思とは関係なく小刻みに揺れる眼振(がんしん)、一方向に円を描くようにぐるぐる回る旋回などの神経症状です。眼振は動物ではわかりにくいですが、白眼の動きを観察するとわかりやすいです。眼球が揺れる方向が縦方向か横方向かなどが病態把握のヒントとなります。嘔吐や食欲不振、元気消失が伴うことも多く、歩くとよろめいて横転し、立っていられない状態になることもしばしばあります。・斜頸・眼振・旋回・倒れる、横転する・食欲不振・よだれを大量に垂らす・嘔吐・元気消失などです。

【治療・対策】

犬の前庭疾患の中に中耳炎や内耳炎が原因で起こっているものがあり、外耳炎が進行し炎症が広がって中耳炎や内耳炎になる例も少なくありません。外耳炎の早期治療により予防できる場合もあります。老齢の犬では突然原因不明で前庭疾患が発症することがあります。この場合、飼育環境を日ごろから整えておくことで、突然発症した後の状況の悪化を防ぐことができます。よって、屋外飼育の場合は絡まったときに傷つく可能性があるのでチェーンは使わず、気温や湿度が高い日、気温が低い日などは室内に入れるなどの住環境を快適にしておくことが結果的に対策になるでしょう。前庭疾患はそれぞれの原因に対し治療しますが、老齢性の特発性前庭疾患に対しての原因を取り除く治療法は特にありません。


■ ホルネル症候群(ほるねるしょうこうぐん)

【原因】

ホルネル症候群は、脳から出て眼の後ろ側につながる交感神経のいずれかの部分に損傷や炎症などで異常があるときに見られる複数の症状です。脳から出た交感神経は脊髄を通り胸椎で脊髄から分かれ反転し、胸や首、中耳腔を通り眼へとつながります。この経路のいずれかの部位で異常があるとホルネル症候群が発症するので、さまざまな原因疾患が挙げられます。炎症や外傷による損傷、あるいは腫瘍(しゅよう)や椎間板突出による物理的な圧迫に起因するものなど多様です。これらのように具体的な原因が分かることもあれば、検査上では異常な所が出てこず原因不明な場合もあります。 ・中耳炎・外傷・脊髄損傷・椎間板突出・梗塞・腫瘍・炎症性疾患などです。

【症状】

ホルネル症候群とは、脳から出て最終的に眼につながる交感神経の異常により、眼やその周りに現れるさまざまな症状の集まりをいいます。その特徴的な外観は神経の損傷や異常を指し示すものなので、他の所見と合わせて異常部位をおおまかに特定できたり、気付かなかった疾患を発見できたりすることがあります。ホルネル症候群は、・縮瞳(しゅくどう)・瞬膜突出(しゅんまくとっしゅつ)・眼瞼下垂(がんけんかすい)・眼球陥没(がんきゅうかんぼつ)の4つの症状から成り、片側のみでみられることがほとんどです。

【治療・対策】

ホルネル症候群が現れる原因のひとつとして中耳炎がありますが、中耳炎は細菌性外耳炎から広がることが多いので、耳のチェックを定期的に行い、異常があれば早めに受診し、外耳炎であればしっかりと治るまで治療を継続することも大切です。他には、交通事故など腕の外傷でもホルネル症候群が出ることがあります。散歩中や外出時は必ずリードを付け、犬をしっかりコントロールできる状態にしておきましょう。さらに、ホルネル症候群に関わる脳から出て眼へとつながる交感神経は首も通るので、リードをつなげるのは首輪や首のしまるようなチェーンではなくハーネスを使用した方が首を損傷する可能性は低くなります。


■ 小脳障害(しょうのうしょうがい)

【原因】

小脳障害を引き起こす疾患は、・外傷・梗塞・出血・脳炎・感染性・免疫異常が疑われるもの・腫瘍 ・変性・奇形・子犬の場合は、ヘルペスウイルス感染などです。小脳障害はどの年齢の犬でも起こる可能性があります。ただ、小脳の変性や奇形は、生まれたときからや早い時期から発症する遺伝性や先天性の疾患です。先天性の小脳の変性が起こる可能性のある犬種は、アイリッシュ・セター、ビーグル、ラブラドール・レトリバーなどといわれています。

【症状】

小脳は脳全体の後ろ側に位置し、平衡感覚や姿勢保持に関わり、感覚情報をもとに運動の制御を行います。小脳障害が起こったときに現れる症状は次のようなものがあります。・立ったときに左右の足の間隔が広い・何か行動をしようとするとゆれる・距離感がつかめず、歩き方や運動の仕方が大げさ、ぎこちない・頭を背側にそらし、前足を伸ばして後ろ足を曲げる姿勢になるなどです。その他には、・普段の状態で頭を傾けている:斜頸(しゃけい)・同じ方向にぐるぐる回る:旋回(せんかい)・意図とは関係なく眼球が一定方向に規則的にゆれる:眼振などの症状がみられることがあります。小脳障害が原因となってこれらの症状が発症するのは、前庭と密接に関係している小脳の腹側の部位(片葉・小節葉)で障害が起こったときです。

【治療・対策】

犬の小脳障害に対する明確な予防方法はありませんが、外傷により小脳が損傷して小脳障害が起こることもあるので、交通事故や転落などが起きないようにすることです。





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