歯・口腔の病気

■ エナメル質の形成不全(えなめるしつのへんけいふぜん)

【原因】

エナメル質は永久歯に生え変わる前の生後4~5ヶ月頃までに形成されますが、高熱や栄養障害、物理的外傷、代謝障害、ジステンバーなどを発症したことが原因でエナメル芽細胞に障害が起こり、エナメル質が十分に形成されなかったことが原因となります。

【症状】

歯は、内側が象牙質、外側が固いエナメル質という組織でできていますが、エナメル質形成不全はエナメル質の発達が不十分で保護層が薄かったり、くぼみがあったりして欠損してしまっている症状です。1本だけでなく複数本で形成不全が確認できます。エナメル質が弱い歯は、表面が変色していて知覚過敏がみられます。またエナメル質が形成不全だと歯垢や歯石が溜まりやすく、虫歯にもなりやすい歯になり、もろくて折れやすい傾向もあります。

【治療・対策】

一度形成されなかったエナメル質が再び形成されるということはありませんので、治療で補います。エナメル質が欠損した薄い歯には象牙質補填剤で覆い、知覚過敏を軽減します。 また、歯が折れやすいので固い物は嚙ませないようにします。補強をしても歯の強度は変わらないので、遊ぶおもちゃなどにも十分注意します。エナメル質形成不全の場合、知覚過敏が起きていても飼い主さんは気づきにくく、その状態で歯石や歯垢がついてしまうと症状がさらに悪化します。歯磨きをしているのに歯垢がつきやすい時は獣医師に相談して、定期的にデンタルチェックを行います。


■ 口唇炎(こうしんえん)

【原因】

口唇炎は怪我をした唇の患部に細菌が入り込んで、二次感染で炎症を起こすことが原因です。また、屋外では草や木などの植物と接触し、撒かれた化学薬品で引き起こる接触性アレルギーも原因になります。食事をするプラスチック容器などが原因になることもあり、唇に生えている毛の根元で炎症を起こして化膿します。代表的な原因菌は黄色ブドウ球菌です。

【症状】

ワンちゃんの口唇症は唇に炎症が起きている症状をいいます。口元に炎症が起きると痛みや痒みが出て、前足でひっかいてしまうことで悪化してしまう場合や、脱毛してしまう場合もあります。炎症部から強い悪臭が出る場合もあります。唇に何らかの原因で傷ができたところに細菌が入った場合や、植物や屋外に巻かれた化学物質などの刺激でアレルギー反応が起きて症状が出ることもあります。唇が垂れている犬種や短頭種に多くみられます。

【治療・対策】

唇に外傷がある場合は患部を洗浄し、抗生物質の投与や抗炎症剤の軟膏などで炎症を抑えます。口の周りを清潔に保つことも大切なので、食事の後は口を拭いて清潔にし、炎症などがないかチェックします。アレルギーが原因の場合は、原因を特定し、生活の中から取り除いておきます。また、屋外に出た時は草むらに顔を入れさせないようにし、小枝を嚙ませたりして遊ばせないように注意し、炎症の原因になりそうな物はできるだけ排除します。


■ 口内炎(こうないえん)

【原因】

口内炎は口腔内の粘膜や幹部組織に炎症が起こっている状態で、口の中で起きた外傷や、レストスピラ症や天疱瘡のような免疫性疾患やウィルス感染の他、アレルギー性皮膚炎、真菌などの細菌感染が原因となる場合があります。また、糖尿病や進行した腎臓病、ビタミン欠乏症などの全身疾患があって、その病気の症状のひとつとも考えられます。口腔内の衛生状態が悪く、虫歯や歯周病にかかって起こる場合もあります。

【症状】

口の中の粘膜に赤い発疹や潰瘍ができて口臭がきつくなります。口の中が気になるのか、何も食べていないのに口をクチャクチャさせたり、前足で口元を足で搔いたりします。よだれも多くなり、おもちゃで遊んだ後に血のついたよだれが出たりすることもあります。また、微熱や食欲不振といった症状も現れます。症状に気づいて口の中を見ると、赤く腫れてただれたりしています。食欲不振で体重が落ちてしまうこともあります。

【治療・対策】

口内炎の原因になっている基礎疾患があれば、疾患の治療を行います。感染症を起こしている場合は抗生物質を投与して炎症を抑え、口内炎そのものに消炎剤を塗布して炎症を抑えます。痛みが強い場合は、食事をやわらかく消化の良い物にして、食欲が落ちないように気をつけます。予防としては口の中に怪我をさせないように気をつけて、日ごろから口の中の清潔を保てるように歯磨きやブラッシングでケアすることが大切です。


■ 歯根腫瘍(しゅこんしゅよう)

【原因】

歯根腫瘍の原因は歯髄という部分が細菌に感染し、歯の根元に化膿性炎症が起きることで膿みの袋状の腫瘍ができます。他の病気が原因で発症することもあります。外傷で歯が折れ、歯がこすれたことで磨耗が起きて、歯髄が露出して細菌に感染してしまったことが原因になる場合もあります。血液を介して細菌が広がったためにできる歯石沈着や歯周病の悪化が原因になることもあります。できる場所が歯の根元であるため気づきにくい病気です。

【症状】

根尖周囲腫瘍とも呼ばれる歯根腫瘍を発症すると、発熱や口臭、よだれとともに、口の中に激しい痛みや顔の腫れ、食欲低下などが症状として現れます。また、固い物を食べるのを嫌がり、どちらか片方で嚙もうとするなど、食事の際で異変が現れることがあります。部位が歯根なので気づきにくく、悪化しやすい傾向にあります。

【治療・対策】

基本的には歯の抜歯を行います。また、感染した歯髄を除去して感染部位の洗浄をします。腫瘍の状態によっては抗生物質や消炎剤の投与など内科的治療も行います。予防としては、口の中を清潔にケアしておくことが基本なので、毎日の歯磨きを徹底します。ワンちゃんが高齢の場合は、歯垢の溜まりにくいフードを与えるのも良いと思います。また歯が欠けるなどの外傷を避けるため、固いおもちゃを与えないようにします。


■ 歯周病(ししゅうびょう)

【原因】

歯周病の原因は、口腔内のケアを怠ることで歯に歯垢が溜まり、口の中は細菌に感染して不衛生になることがあげられます。歯垢は3日程度で歯石になるといわれ、こびりついた歯石は歯磨きでは落ちなくなります。歯肉は炎症を起こして歯肉炎になり、悪化すると歯周病になります。放置しておくとどんどん進行し、歯肉に膿みが溜まる歯槽膿漏になって、口臭はひどくなります。年齢とともに歯垢・歯石はつきやすくなり、抵抗力も落ちるので感染症も発症しやすくなります。

【症状】

歯周病にかかると口臭がひどくなり、歯肉が腫れて出血を伴い、悪化すると歯と歯肉の間に隙間ができて歯がグラグラして固い物が食べられなくなり、食事もままならない状態になります。歯肉が腫れて炎症があると食欲が低下し、活発でなくなるために元気がなくなったように見えることもあります。歯周病菌が血管から血流に乗って心臓、腎臓、肝臓に入って内臓疾患の原因になることもあります。

【治療・対策】

症状が軽度であれば、毎日の歯磨きを習慣にして、口の中の清潔を保てば改善していきます。歯磨きの際は歯だけでなく、歯周ポケットの汚れも落とします。一番の治療法はスケーリングで歯石や歯垢の除去を行います。基本的にスケーリングは全身麻酔で行います。炎症を起こしていれば抗生物質の投与など内科的治療も行い、歯周病を起こしている場合は、歯肉炎の治療を行います。症状が重い場合は、治療法が歯を抜くしかなくなる場合もあります。


■  舌炎(ぜつえん)

【原因】

原因のひとつに口の中の外傷があります。木や骨の破片が歯に挟まることや異物を口にしたことで、口の中に傷をつけてしまったことが原因になります。おもちゃで遊ぶ時や屋外にいる時は、何を口にしているか必ずチェックします。また、化学薬品を誤って舐めた場合や、電気コードを噛んで感電や火傷などがあります。感染症の原因としては、レストスピラ症や、真菌などのカビ細菌による感染症も疑われます。

【症状】

舌炎になると舌が炎症を起こして赤く腫れます。また、白い潰瘍ができることや、舌の表面が白くただれることもあって、よだれの量が多くなり口臭もきつくなります。舌に痛みがあり、食べ物がしみたりする場合は、食欲が落ちることや、食べ方もいつもと違うようになります。口の周りを気にして前足で顔をひっかく仕草をすることもあります。

【治療・対策】

レストスピラ感染症や細菌感染がある場合は、感染症の治療を行います。真菌や細菌感染が疑われる場合も抗生物質の投与などの内科的治療をします。歯の病気があれば、歯や歯肉の治療で原因疾患を治し、口の中に傷があれば、消毒や消炎剤で炎症を抑えます。治るまでの間はやわらかい食事で口の中の負担を軽減し、ビタミン剤なども投与します。お水も刺激の少ないぬるま湯にすると飲みやすくなります。また、基本的には口の中を清潔に保ち、感染症や歯周病などを防ぐ予防をします。


■ 虫歯(むしば)

【原因】

虫歯は歯磨きを怠ったことで歯垢の中で作りだされた酸やタンパク質の分解酵素が、歯のエナメル質や象牙質を溶かすことが原因です。ワンちゃんの唾液は人よりもアルカリ度が高く、歯垢になりやすい特徴があります。難しいかもしれませんが、1日1回の歯磨きは日課にして、口の中の環境を整えることが必要です。

【症状】

ワンちゃんは人よりも虫歯になりにくいといわれていますが、それでも虫歯になることがあります。虫歯になると人と同様に患部は初期段階の茶色から進行すると黒色に変色し、歯がもろくなって穴があき、口臭もひどくなります。初期の頃は、あまり症状はありませんが、進行すると食べ物がしみ、痛みが出て食欲が落ちます。虫歯が進行すると歯の内部の歯髄にまで達し、歯髄炎になってしまい、最後は歯髄が壊死して歯が折れることもあります。

【治療・対策】

虫歯の治療は全身麻酔をかけて、虫歯になってしまった歯の病変を削り取ります。削った部分は詰め物などをして修復します。虫歯が悪化して歯の治療だけでは改善できない場合や、歯肉炎や歯槽膿漏を発症している場合は、その治療も行います。症状が重い場合は、歯を抜く場合もあります。歯の磨き方は、指に湿らせたガーゼを巻いて1本1本を磨く方法や、歯ブラシを使う方法など様々です。ガーゼで磨く方法は歯周ポケットの中まで汚れを取り除くことができないので、歯ブラシを推奨する獣医師も多いようです。歯磨きは一生続くので子犬の頃から口の中を触っても抵抗しないワンちゃんに育てておきます。


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