骨・関節の病気

■ 関節炎(かんせつえん)

【原因】

関節の骨は表面が滑らかで弾力のある軟骨や潤滑油の役割を果たす滑液で守られていて、衝撃を吸収しスムーズに動くことができるつくりになっています。この関節軟骨が何らかの原因で傷ついたり、加齢などによって磨り減ると、骨と骨が直接触れ合って痛みが出たり、骨が変形してしまいます。加齢だけでなく、肥満で余計な負荷がかかるなど、運動不足や自己免疫性疾患、感染症が原因となって発症することもあります。

【症状】

関節炎になると関節がスムーズに動かなくなり、動くたびに痛みを感じ関節の可動域が狭くなります。関節炎を起こしやすい部位は足や脊椎などなので、動きが鈍る症状が現れます。とくに高齢のワンちゃんに症状がでやすく、初期症状では起き上がるのに時間がかかる・散歩の時に止まって歩かなくなる・遊んでいる時に急に痛がる・乗り降りのジャンプを躊躇するなどの症状が現れます。さらに進行すると、散歩に行きたがらない・階段を嫌がる・足を引きずって歩く・足を触られるのを嫌がる・食欲低下など、様々な症状が現れます。

【治療・対策】

関節炎や進行性の病気なので、食事の管理や運動制限と内服薬を組み合わせて炎症を抑え、痛みなどの負担を緩和します。また、対症療法としてはサプリメントなどを用いて軟骨の保護やサポートを行い、関節軟膏の修復を補います。関節炎の原因が骨の変形による場合は、外科的手術を行います。関節炎は痛みを伴うので、早期発見と早期治療が大切です。


■ 変形性脊椎症 (へんけいせいせきついしょう)

【原因】

痛みの原因ともなる骨の棘や橋状に繋がった脊椎の変形は、胸椎の下側や腰椎の上側にできやすいといわれています。ボクサー犬は変形性脊椎症になりやすい遺伝的な素因を持つことが分かっており、特に変形性脊椎症を発症しやすい犬種として知られています。・過度な運動などにより繰り返される関節の微小な傷・大きな外傷・変形性脊椎症になりやすい犬種などです。

【症状】

犬の変形性脊椎症は無症状であることがほとんどです。しかし、中には背中の痛みが出てくることもあります。2歳以下での発症はまれで、主に老化に伴って現れ、進行することが多いです。・無症状が多い ・歩きにくそうにする・背中を痛がる。などです。

【治療・対策】

変形性脊椎症の主な検査は、・神経学的検査・X線検査などです。背中の痛みが原因で起こる症状(元気がない、あまり活発に動きたがらないなど)に対する原因を探るためには、変形性脊椎症だけでなく他の疾患の可能性も検出または除外する必要があります。そのため、血液検査など他の検査が行われることもあります。変形性脊椎症の明確な予防法はありません。しかし、他の関節疾患にも言えることですが、体重管理を行い適切な体重を保つことが重要になってきます。ほとんどの変形性脊椎症が無症状なので、特に早期には骨の異常に気が付きません。定期的な健康診断でX線検査を行った際に発見されるということも多くみられます。もしこの時点で肥満であれば、体重管理(減量)を始めることができ、脊椎への負担が軽減されます。変形性脊椎症は無症状では治療は行いませんが、将来痛みや異常が出てくる恐れのある要因を把握することは大切です。


■ 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

【原因】

膝蓋骨脱臼の原因には先天性と後天性に分けられます。小型犬はさまざまな血統と交配を繰り返してきたため、ほとんどが先天性によって発症するといわれています。先天性の場合、生まれつき膝蓋骨周辺の筋肉や骨の形成・靱帯に異常がある(滑車溝が浅いなど)ことが原因です。また、年齢が上がるにつれ症状が悪化することもあります。後天性の場合は、高い場所からの落下や交通事故、脚をぶつけたことで膝蓋骨を損傷するほか、栄養障害により骨が変形する(フードが充実している現在ではまれ)など育て方での原因が挙げられます。

【症状】

・片足を上げたままにして歩くことがある・脚を触ると痛がる・脚を引きずって歩く(跛行:はこう)・散歩中に急に立ち止まって動かなくなる・激しい運動をしたがらなくなる・極端なX脚(外方脱臼)やO脚(内方脱臼)・すねのねじれなど膝蓋骨脱臼は、症状の重症度によって以下のように「グレード1~4」の4つの段階に分けられます。膝蓋骨脱臼は「グレード1、2」など軽度であれば脱臼しても屈伸などにより自然に整復することもあります。ソファーの上り下りや散歩中にキャンと鳴いて片足の挙上やスキップがみられたものの、少し歩くと歩き方が戻るものが「グレード1、2」のレベルです。「グレード1、2」の内科的治療では膝蓋骨の位置を手で戻し、必要であれば痛み止めが処方されます。グレードが進むと骨格の変形や筋肉が縮んで伸縮しにくくなるなどして、手では整復できない状態になっていきます。「グレード1」ではときどき脱臼するものの普段の生活にあまり支障は出ませんが、「グレード4」にもなると常に脱臼した状態で歩行が困難になります。重症度によっては手術をしても完治が見込めない場合や手術ができない場合もあるので、取り返しがつかない状態になる前に予防や早期発見をするように心がけましょう。

【治療・対策】

膝蓋骨脱臼を予防するにはまず、膝に負担をかけないように注意する必要があります。室内で飼育する場合は、硬くて滑りやすいフローリングなどの床にじゅうたんやマットを敷くようにしてください。滑らないように足の裏の毛を短くカットするほか、ソファーへの上り下りや急に向きを変えるような運動を避けることも予防につながります。また、肥満は膝蓋骨脱臼や関節炎の要因のひとつでもあるので、体重管理も重要です。膝蓋骨脱臼と診断された場合は重症度(グレード)を上げないようにすることも大切です。


■ 股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)

【原因】

股関節形成不全は骨盤のくぼみが小さく、大腿骨頭がはまりきらずに不安定な状態になっていて、動くたびに軟膏同士がぶつかったりこすれたりして痛みが生じます。遺伝性疾患が原因と考えられていますが、最近では遺伝疾患に加え、成長期の運動量や生活環境、栄養状態なども骨盤形成に影響しているということがわかってきました。肥満や滑りやすい床での生活、激しい運動をさせたことなどが悪化の一因になっているようです。

【症状】

子犬の頃には大きな症状は見られませんが、6ヶ月を過ぎる頃から足を引きずるように歩いたり、ウサギ跳びのようにしたり、後ろ足を揃えて地面を蹴る走り方やスキップするような歩き方をします。胴の長いダックスやコーギー、大型犬では腰を左右に振るような歩き方が見られます。症状があまり出ないワンちゃんもいますが、注意深く見ていると立ち座りをする時に一度止まってみたり、座る時にも横座りになったりすることがあります。太りすぎてしまうと、股関節に負担がかかり症状が悪化させることがあります。ひどくなると歩行困難になる場合もあります。

【治療・対策】

治療方法は、ワンちゃんの年齢や体重、痛みの度合いなどを考慮して決定します。検査は触診やレントゲンの画像診断、必要に応じてCTやMRIなどを使って、どのように変形しているか検査します。ワンちゃんが若齢や成長期で軽度の場合は、食事コントロールや運動量を制限して悪化させないようにしながら、鎮静剤や抗炎症剤で痛みの緩和を続けていきます。症状が重い場合は外科的手術を行います。症状によって手術方法も様々なので、手術費用や術後の状態などを獣医師と十分に話し合います。


■ 股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)

【原因】

通常は骨盤の寛骨(くぼみ)に大腿骨の付け根である大腿骨頭がすっぽりと収まっている状態ですが、高いところからの落下や交通事故、転倒などが原因で骨をつなぐ靱帯が切れて外れてしまう状態が股関節脱臼です。また、遺伝性疾患である股関節形成不全などが原因で脱臼することもあります。フローリングなど滑りやすい床で股関節に負担がかかる生活をしていると、形成異常が悪化することがあります。肥満が原因で股関節に負担がかかる場合もあります。

【症状】

ある日突然足を引きずるように歩いたり、歩行困難がみられたり、足を地面に着けない状態になり、痛がる様子をみせます。不慮の事故による靱帯損傷などが原因ですが、大型犬などでは遺伝性疾患も考えられます。左右の後ろ足の長さが違って見えることで症状に気づくことがあります。また、痛みに我慢強いワンちゃんは脱臼した足でもうまく歩いてしまうことがあり、治ったと勘違いしてしまうと症状を悪化させてしまいます。

【治療・対策】

脱臼が軽度なものであれば、股関節を元の場所に戻す整復を行いますが、痛みを伴うので全身麻酔で処置します。簡単に戻せる脱臼は再発しやすい傾向にあるので、術後は安静にし、滑りやすい床にはマットを敷いたり、高いところから飛び降りたりしないように、股関節に負担をかけない生活ができるよう、飼育環境を見直します。また、靱帯が切れて骨折を伴う場合は外科的手術を施します。


■ 骨軟化症(ほねなんかしょう)

【原因】

成犬に見られる病気で、骨端線閉鎖が完了した骨の成長後に発症します。何らかの要因で骨の脱灰がおこり骨が軟化してく病気です。深刻な日光浴でビタミDの合成が不十分となって発症する場合や免疫力低下、食餌の栄養バランスの偏り、特にリンの過剰摂取などによっておこります。寄生虫が原因となることもあります。先天性酵素欠損によるビタミンD代謝異常や消化器疾患によって栄養素の吸収不足が原因となることもあります。

【症状】

クル病と呼ばれることもあります。特に大型犬種の子犬の成長時期にみられることが多く、足の骨の変形(特に長管骨)が主な症状でそれにともない、跛行、骨の痛みなども出てきます。これにより骨軟化症を発症した犬は歩く際に歩幅を縮めて歩く、スキップをするように歩くなどの行動をみせます。また骨軟化症はビタミンDの合成の不足によって骨が弱ってしまうことが原因ですので、骨が変形するだけでなく、少しの衝撃を与えただけで骨折してしまうこともあります。

【治療・対策】

カルシウム剤やビタミン剤の投与で不足している栄養素を補いながら経過観察を行います。病気に起因する栄養素不足が問題の場合は、その基礎疾患の治療を施します。カルシウムやビタミンDだけでなく良質なたんぱく質など、栄養バランスに優れた食餌を与え、日光浴を心がけることは、治療だけでなく発症予防としても効果があります。また、強い骨の形成には運動が欠かせないため、散歩や外での運動が発症予防につながります。


■ 膝の前十字靱帯断裂(ひざのぜんじゅうじ じんたいだんれつ)

【原因】

前十字靱帯断裂は股関節疾患の中でも代表的疾患のひとつで、高いところからの落下や事故、急激に圧力がかかることで断裂します。走っていたワンちゃんが急激なターンやダッシュを繰り返すなど激しい運動をしている時にも起こります。慢性断裂になると、加齢や肥満で負荷がかかることが原因で発症することがあります。また、膝蓋骨脱臼や骨の形成異常がある場合も、靱帯に負担がかかって発症する要因になります。

【症状】

前十字靱帯断裂が起きると股関節の安定性がなくなります。急性断裂では、後足を上げたまま足を引きずるように歩いたり、足が着けなくなったり、体重が支えられないほどの痛みがある仕草をします。数日すると痛みがひいてしまうことがあります。放置すると慢性化し、強度が弱くなったり、加齢が原因で完全に切れてしまったりすることもあります。足を引きずるように歩き、立ったり座ったりの動作がつらそうな様子も見られます。さらに症状が悪化すると大腿骨が後ろにずれ、膝の半月版が損傷するなど、激しい痛みを伴うようになります。

【治療・対策】

靱帯の状態やワンちゃんの年齢、体重、運動量などで治療方法は異なります。内科的治療では、鎮痛剤の抗炎症剤の投与で痛みや炎症を抑え、運動制限や食事コントロールで体重管理をします。症状が緩和され、日常生活が送れる場合は長期的に継続して行います。症状が重い場合は、外科的手術で靱帯を再建する手術や人工靱帯などを代用する方法など、症状に適した手術を行います。費用や術後のケア方法などを獣医師とよく相談して手術を行います。


■ ウォーブラー症候群(うぉーぶらーしょうこうぐん)

【原因】

大きくは二つの病態に分けられ、発症源も異なります。一つは、成長期の超大型犬種に発生する脊椎の形成異常によっておこる頸椎および胸椎の脊髄圧迫。もう一つは、中高齢の大型犬にみられる慢性の椎体不安定症を原因として、二次的に椎体周囲の靭帯、椎間板線維輪および関節包などの組織が肥厚し、脊髄が圧迫されるというものです。歩様検査およびX線撮影、必要に応じて脊髄造影を行い総合的に診断します。

【症状】

一般的に、頚部が長い・頭部の重い、大型・超大型犬種にみられ、頚部脊髄の圧迫病変により頚部痛、運動失調、虚弱、左右対称性の神経学的症状(後肢の左右への動揺)、四肢麻痺などの症状を引き起こします。初期症状の多くは頚部痛と後肢のふらつき歩行がみられます。頚部痛がある場合、頭をまっすぐにしたまま低い位置に保とうとする特徴的な姿勢が見られます。多くに進行性があり、早急な診断と治療が必要になります。

【治療・対策】

内科的治療と外科的治療があり、外科的治療法の中での手術方法がいつくかあります。運動制限、ステロイド療法などにより一時的に症状が軽減する事もありますが、多くの症例で慢性進行性(時に急性進行性)の経過をたどり、重度な四肢不全麻痺、歩行困難な状態になることがあります。発生しやすい犬種といわれているワンちゃんは、なるべく首に力がかからないようにハーネス選びを注意するなどの予防をしましょう。


■ クル病(くるびょう)

【原因】

1ケ月~3か月の子犬に多く見られる病気で、室内飼いなどで日光浴不足が深刻になると、ビタミンDの合成が不十分になり、骨石灰化が阻害されることにより発症することがあります。このほか、免疫力低下、食餌の栄養バランスの偏り、特にリンの過剰摂取などによっておこります。寄生虫が原因となることもあります。先天性酵素欠損によるビタミンD代謝異常や消化器疾患によって栄養素の吸収不足が原因となることもあります。

【症状】

関節が膨らんだり、四肢の変形が見られたり、足を引きずったり頭を下げて後肢の歩幅を狭めたりするなどの歩行障害も出てきます。おすわりの時に内股になったり、横座りしたりすることもあります。痛みがあるため、散歩やジャンプなどの運動や触られる事を嫌がったり、筋肉が低下してふらついたりするようになります。また、軽い打撲などでも骨折やすくなります。胃腸炎などがある場合には栄養状態がさらに悪化して危険性が増します。

【治療・対策】

カルシウム剤やビタミン剤の投与で不足している栄養素を補いながら経過観察を行います。病気に起因する栄養素不足が問題の場合は、その基礎疾患の治療を施します。カルシウムやビタミンDだけでなく良質なたんぱく質など、栄養バランスに優れた食餌を与え、日光浴を心がけることは、治療だけでなく発症予防としても効果があります。また、強い骨の形成には運動が欠かせないため、散歩や外での運動が発症予防につながります。


■ レッグ・ペルテス(レッグ・パーセス)病(れっぐ・ぺるてす(れっぐ・ぱーせす)びょう)

【原因】

レッグ・ペルテス病は大腿骨頭壊死症とも呼ばれ、ワンちゃんの後ろ足にある大腿骨頭(後ろ足と骨盤がはまっている部分)への血行がなんらかの原因で阻害され壊死してしまう病気です。病気になる原因は、未だ判明していませんが、遺伝性の可能性もあるようです。

【症状】

レッグ・ペルテス病の症状は、後ろ足を引きずって歩いたり、足に力が入らなかったり、症状が突然現れ、徐々に悪化していきます。痛みを伴い、足が地面に着けない状態にもなります。痛みから、食欲の低下や股関節部分を触られるのを嫌がります。大抵は片足に起こることが多いですが、まれに両足にもみられます。10kg未満の小型犬種に多く、月齢も6ヶ月~7ヶ月の成長期の子犬によくみられます。

【治療・対策】

レッグ・ペルテス病と診断された場合、症状が軽い場合は激しい運動を避けるよう運動制限を行いながら、鎮痛剤などを使って痛みを緩和する内科的治療を行います。ただ、薬では進行を抑えることはできないので、最終的には外科的手術を行います。手術では、大腿骨頭を切除します。手術後のケアや手術費用、リスクなどは獣医師とよく相談します。予防は難しい病気ですが、小型犬の子犬が足を引きずる仕草をした時はすぐに病院の診察を受けます。





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