腫瘍の病気

■ リンパ腫(りんぱしゅ)

【原因】

ウイルスの感染が原因と考えられています。特に猫白血病ウイルスに感染している猫での発症率が高いとされています。また猫免疫不全ウイルスに感染している場合は猫白血病ウイルスへの感染率が高くなるため、リンパ腫の発症率も高くなります。中高齢の猫に多く発症する傾向があります

【症状】

リンパ腫は腫瘤のできる場所によって様々な型に分けられます。多中心型、消化器型、縦隔型、腎型などがあり、症状が異なります。多中心型は、リンパ節が腫れて痛みを伴います。発熱や食欲不振、元気消失などの症状が表れます。消化器型は腸内のリンパ節の腫れや腸管組織に腫瘤ができ、嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が表れます。腫瘤が破裂すると腹膜炎を引き起こす可能性があります。縦隔型は、胸腺は左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた縦隔に腫瘤ができます。胸水がたまることで呼吸困難を起こし、咳やチアノーゼ、食欲不振や嘔吐などの症状が表れます。腎型は腎臓が腫瘍細胞によって肥大化します。腹部の腫れや腎機能の低下、食欲不振や嘔吐などの症状が表れます。これらの型以外にも、鼻腔内に発生して鼻炎の症状が表れたり、背骨に発生して神経症状が表れたりする場合もあります。猫に発症が多いのは縦隔型です。

【治療・対策】

細胞診や組織生検を行い診断されます。また猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスへの感染も確認します。リンパ腫は複数箇所に発生している場合が多いため、抗がん剤を用いて全身的な治療を行います。副作用の影響も考慮しながらQOL(生活の質)を維持できるように検討する必要があります。他に薬物療法や放射線治療などを行う場合もあります。原因となる猫白血病ウイルスへの感染は、ワクチンの接種で予防することができます。猫免疫不全ウイルスへの感染をふせぐために、室内飼育にして他の猫との接触を避けたり、ストレスの少ない飼育環境を整えたりすることが予防策です。


■ 基底細胞腫(きていさいぼうしゅ)

【原因】

遺伝子の変異が原因とされていますが、そのメカニズムについては、解明されていません。比較的中高齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

表皮の下層(基底部)にある細胞にできる腫瘍で、悪性の確立は低いとされています。表皮の様々な場所で発生する可能性があり、その外貌の大半は、硬いしこりのようなものですが、柔らかい嚢胞状のものの場合もあります。腫瘍が発生した場所で脱毛する場合があります。皮膚の表面に腫瘍が形成される以外に症状は見られず、良性の場合は転移もほとんどしませんが、まれに基底細胞腫から悪性の基底細胞がんへ移行するケースがあります。そのままにしておくと、徐々に浸潤していくため、早期に切除する必要があります。

【治療・対策】

扁平上皮がんや毛包腫、皮脂腺腫や皮膚血管腫などとの鑑別が必要です。切除組織の生検によって確定診断されます。外科手術で腫瘍の摘出を行います。転移や再発の可能性は低いため、切除以外に特に治療は行われません。予防方法はありませんが、日頃から猫の体をよく確認しておき、早期に発見できるようにしましょう。


■ 胸腺腫(きょうせんしゅ)

【原因】

遺伝子の変異が原因とされていますが、そのメカニズムについては解明されていません。中高齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

胸腺は左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた縦隔の前方に位置し、そこが腫瘍化します。咳が出たり、呼吸が荒かったり、といった症状が表れます。呼吸が苦しくなることで、胸を広げるように息を吸い込んだり口で呼吸したりする様子が表れます。胸水がたまることで、拡張不全を引き起こし、重度の呼吸困難に陥る場合もあります。また、皮膚炎や多発性筋炎を引き起こすケースもあり、手術後は、巨大食道症や重症筋無力症を続発する可能性があります。

【治療・対策】

同じ縦隔にできる腫瘍としてリンパ腫があり、胸腺腫と治療方法が異なるため鑑別が必要です。X線検査やエコー検査、細胞診などで診断されます。胸部X線検査で前縦隔に塊状物が見られるのが特徴です。外科手術での切除が一般的です。切除や困難な場合には放射線治療を行います。放射線治療によって腫瘍を小さくして切除手術を行う場合もあります。また手術後は巨大食道症や重症筋無力症などを続発する可能性があるため、注意が必要です。予防方法はありません。日頃から猫の体や様子をよく確認しておき、早期に発見できるようにしましょう。



■ 骨肉腫(こつにくしゅ)    

【原因】

遺伝子の変異が原因とされていますが、そのメカニズムについては解明されていません。中高齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

骨の組織である骨膜や皮質骨、骨髄ががん化した状態でその多くが悪性です。体の様々な場所で発症し、特に後肢の膝付近で多く見られます。症状は発症する場所によって異なりますが、腫れや痛みによる食欲不振、元気消失などの症状は共通します。四肢に発症した場合、足を引きずるように歩いたり、痛みから歩くのを嫌がって運動量が減ったりします。頭部に発生した場合、顔面が変形し、くしゃみや鼻水、眼球の突出や呼吸が苦しくなるなどの症状が表れます。脊椎であれば麻痺を起こし、大腿骨であれば排泄に影響が出たりします。

【治療・対策】

X線検査やCT検査を行い診断されます。肺やリンパ節へ転移するケースがあるため、合わせて検査される場合もあります。発症する場所によって治療方法は異なりますが、骨肉腫は痛みを伴うため共通して鎮痛剤等が投与されます。四肢に発症した場合、外科手術での断脚が一般的です。断脚した場合でも日常生活に支障はきたさないとされており、実際多くの猫が3本足でも走り回ることができています。四肢以外の場所に発症した場合、外科手術による切除が一般的ですが、頭部など切除が困難な場合は化学療法や薬物療法を行います。日頃から猫の体や様子をよく観察して、早期に発見できるようにしましょう。



■ 脳腫瘍(のうしゅよう)    

【原因】

遺伝子の変異が原因とされていますが、そのメカニズムについては解明されていません。食餌の栄養バランスやストレスなどの要因との関連が推察されています。

【症状】

脳腫瘍は原発性と続発性に分かれます。原発性はそこから発生したもので、最も多い髄膜腫で他に脈絡叢乳頭腫、グリア細胞腫、上衣腫、下垂体腺腫などがあります。続発性では、血管肉腫などの転移したものと、隣接組織での頭蓋骨腫瘍などがあります。症状は腫瘍の発生場所によって様々です。痙攣発作や性格の変化、歩行障害や食欲不振、行動パターンの変化、食餌の飲み込み困難、四肢麻痺、意識障害などの症状が表れます。大きな症状が見られないこともあるため、気づきにくい場合があります。

【治療・対策】

MRI検査やCT検査などで診断されます。治療は腫瘍の箇所や猫の体力などに応じて、放射線治療や化学療法、外科手術による切除が行われます。猫で最も発症の多い髄膜腫の場合、外科手術での切除が一般的です。リンパ腫の場合は転移が多いことから、化学療法が効果的とされています。腫瘍の種類や状況に応じて、様々な治療法を組み合わせていきます。また症状を緩和するために、痙攣があれば抗痙攣剤の投与や腫脹や腫瘍に関係する炎症に対してステロイド剤の投薬などを行う場合もあります。


■ 鼻咽頭ポリープ(びいんとうぽりーぶ)

【原因】

ポリープの発生メカニズムについては解明されていません。大半が2歳未満の若年齢の猫に発生していることから、先天的な要因との関連が推察されています。

【症状】

鼻咽頭の上皮粘膜や耳管、中耳に発生する非腫瘍性の腫瘤です。ポリープが腫大化すると、鼻汁が蓄積して鼻炎を引き起こしたり、鼻呼吸がしづらくなったりします。くしゃみや鼻水、異常呼吸音などの症状が表れ、鼻呼吸がしづらくなることで嚥下時に、不快感や嘔吐をします。進行すると呼吸困難やチアノーゼ、失神などを引き起こす場合もあります。また中耳に影響して中耳炎を引き起こした場合、眼振やめまい、斜頸や旋回、顔面の神経麻痺、不自然な歩き方などの神経症状を表します。細菌感染を引き起こすと、耳垢や膿、出血なども見られます。症状はポリープの進行する場所によって様々です。また症状の程度も個人差があり、症状が表れないまま徐々に進行している場合もあります。合併症としてホルネル症候群を引き起こす可能性があります。

【治療・対策】

X線検査や鼻咽頭内視鏡検査、MRI検査やCT検査などを行い診断されます。ポリープの状態と内耳等の炎症の有無を確認します。麻酔の上、内視鏡を用いてポリープを確認し、鉗子で切除します。中耳炎を引き起こしている場合は、腹側鼓室胞を切開する必要がありますが、神経障害を引き起こす可能性もあります。細菌が感染している場合には抗生物質を投与し、切除後の炎症を抑えるための点耳薬を投与する場合もあります。再発の可能性があるため、経過観察が必要です。予防方法はありませんが、日頃から猫の様子をよく確認しておき、早期に発見できるようにしましょう。


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