呼吸器の病気

■ 鼻咽頭狭窄所(びいんとうきょうさくしょう)

【原因】

先天性の鼻孔閉鎖や、感染症による粘膜潰瘍、瘢痕性の搾取が考えられます。先天性の場合は、口蓋(こうがい)が影響している場合があります。感染症は主にカリシウイルス感染症やヘルペスウイルス感染症で、他にアレルギーが原因となる場合も考えられます。

【症状】

何らかの原因で鼻孔から鼻咽頭道にかけて、膜が形成され、粘膜の肥大が起こることで鼻道が狭くなり、呼吸がしづらくなった状態です。鼻で呼吸がしづらくなるため、口で呼吸するようになります。カリシウイルス感染症やヘルペスウイルス感染症の場合、粘膜潰瘍が見られる場合があります。

【治療・対策】

主に内視鏡検査で診断します。腫瘍などの場合は外科手術を行い切除します。また狭くなっている鼻咽頭道を広げるために全身麻酔の上、内視鏡を用いてバルーンダイレーターを入れて拡張する場合もあります。先天性の場合は外科手術によって形成や切除が行われ、状況に応じて抗生物質やステロイド剤が投与されます。感染性を防ぐために、室内飼育にして他の猫との接触を避け、ワクチンを接種することが予防策です。


■ 気胸(ききょう)

【原因】

外傷性による場合と、基礎疾患の影響による場合が考えられます。外傷性の場合は、交通事故などにより肺が衝撃を受け、何かが刺さってしまうことによって、また猫同士のケンカによる傷つけられることが考えられます。基礎疾患の影響の場合は、肺炎や腫瘍、肺気腫、気管支炎などの疾患が考えられ、炎症や腫瘍による気管の損傷や咳き込む時の衝撃によって穴が開くことで発症します。

【症状】

横隔間と助骨に囲まれた部分を胸腔と言い、胸腔内に空気がたまることで肺が伸縮するためのスペースを確保できなくなり、膨れることが出来なくなり、呼吸困難を引き起こしている状態です。呼吸が荒くなり、次第に酸素不足によって舌が紫色になり、歯茎にチアノーゼが見られるようになります。またよだれや触られるのを嫌がり、外傷性の場合は血を吐くなどの症状が表れる場合もあります。空気が入る量によって症状の程度も様々で、状況によっては、呼吸ができず死に至る危険性があります。

【治療・対策】

X線検査やCT検査、胸腔鏡検査などで診断し、空気が侵入してくる位置を確認することができます。外科手術でチューブを挿入したり、注射針を用いたりして口腔内の空気を抜き、肺が正常に伸縮できるようにします。状況に応じて酸素を吸入し、基礎疾患の治療を行います。室内飼育にして事故を防ぎ、他の猫との接触をできるだけ避けることが、予防策になります。


■ 胸水(きょうすい)

【原因】

胸腔内にたまる液体は様々です。その液体によって原因が異なります。主に膿が溜まる膿胸、乳糜(にゅうび)が溜まる乳糜胸、血液が溜まる血胸などがあります。膿胸では感染症や猫同士のケンカによる外傷、呼吸器疾患での炎症が原因となり出る膿がたまります。乳糜胸では外傷や心臓疾患、腫瘍などは原因で、乳びという腸管からの脂肪球を含むリンパ球がたまります。血胸では胸部への衝撃や腫瘍などによって血液がたまります。

【症状】

胸腔内に液体がたまっている状態で、十分に肺が伸縮できず、機能低下を招くことがあります。主な症状は、呼吸困難や発熱、食欲不振、咳などがあります。肺の機能低下によって酸素不足が起こり、チアノーゼが見られる場合もあります。また胸部に痛みを感じるため、触られるのを嫌がります。進行のスピードは様々ですが、液体がたまるに従って呼吸はどんどん苦しくなり、死に至る危険性があります。

【治療・対策】

X線検査で液体がたまっているかどうかを確認することで診断します。まず胸腔内にドレインチューブを挿入して液体を吸引します。吸引された液体を解析し、その成分から考えられる原因の中から特定して治療を行います。膿胸の場合は膿を排出後に洗浄し、抗生物質を投与します。乳糜胸の場合は乳糜を排出して基礎疾患の治療を行ったり、腫瘍が見られる場合は外科手術で切除したりする場合もあります。血胸の場合は、血液を排出して必要であれば外科手術をしたり輸血を行ったりします。室内飼育にして事故を防ぎ他の猫との接触を避けること、また感染症を防ぐためのワクチンの接種が予防策です。


■ 熱中症(ねつちゅうしょう)

【原因】

高温多湿な環境に閉じ込めておくことが原因です。猫は汗腺が肉球や鼻などの限られた場所にしかないため、体温調節が得意ではありません。夏場に高温多湿の室内や車内、キャリーケースの中に閉じ込められることで発症します。また一般的に体温調節能力の低いとされる幼猫や老猫、肥満の猫や疾患を持つ猫は引き起こしやすいと考えられます。ペルシャやヒマラヤンのような鼻の極端に短い猫種も他と比べて呼吸がしづらいため熱中症になりやすいと言われています。

【症状】

高温多湿な環境にいることで急激に体温が上昇し、熱中症になり様々な症状が表れます。呼吸が荒く多量のよだれが見られ、脈拍数と心拍数の増加、食欲不振やぐったりした様子、眼や口腔内の充血症状が表れます。悪化すれば嘔吐や下痢、意識がなくなり、血尿や血便、痙攣や眼振を引き起こし、最悪の場合ショック症状を引き起こし死に至る可能性があります。猫は犬と違って、体を舐めて体温を下げる習性を持つため、荒い呼吸が表れると危険のサインである可能性が高いです。

【治療・対策】

涼しい場所に移動し、猫の体を冷やし、上がった体温を下げます。タオルで保冷剤をくるんで首の後ろや脇の下に当てたり、霧吹きで水を吹きかけたりする方法があります。応急処置後は、速やかに、動物病院を受診しましょう。室内飼育の場合は窓を開けたり換気扇を回して風通しをよくしたり、エアコンでの除湿、カーテンで直射日光を避けるなどの対策があります。猫の好む高いところにはどうしても熱気が溜まりやすいため、空気を循環させる必要があります。水分補給しやすいように、水を飲める場所を複数設けるのも予防策になります。


■ 肺炎(はいえん)

【原因】

ウイルス・細菌・真菌の感染、寄生虫、誤嚥など様々な原因が考えられます。ウイルスではカリシウイルスやヘルペスウイルスなど、細菌ではパスツレラ菌や気管支敗血症菌など、真菌ではクリストコッカスなどによる感染です。寄生虫ではフィラリアや肺吸虫などがいます。誤嚥では嘔吐や吐出によって加齢などに伴います。またホコリやカビによるアレルギーや薬剤の影響なども原因になります。

【症状】

肺が炎症を起こしている状態で、正常なガス交換ができない状態になり、咳や嘔吐、発熱や食欲不振、くしゃみや鼻水などの症状が表れます。呼吸がしづらいため、進行すれば呼吸困難を引き起こし死に至る危険性があります。気管支炎から肺炎が引き起こされる場合もがあれば、肺炎から気管支炎を引き起こす場合もあります。原因によっては進行が速いので、早期の対応が必要です。

【治療・対策】

抗生物質や抗真菌薬、駆虫薬などが投与されます。気管支拡張薬や沈咳薬が投与される場合もあります。投与方法には薬剤を霧状に噴射して吸入させる方法があります。また状態に応じて酸素吸入や点滴などの処置が行われます。感染を防ぐためのワクチンの接種やストレスが少なく清潔な飼育環境を整えることが予防策です。進行すれば死に至る危険性があるため、初期段階で気づけるように普段からよく観察しておきましょう。


■ 肺水腫(はいすいしゅ)

【原因】

心臓が原因の場合と肺などの心臓以外が原因の場合があり、心臓の場合は、心不全や僧帽弁閉鎖不全症などが原因で心臓の機能が低下することによって、全身に十分な血液が送り出されず、毛細血管の圧が急激に上昇します。そのため血液やリンパ液の液体成分が押し出され肺の内部にたまり、発症すると考えられます。心臓以外の場合は、肝硬変などの疾患や中枢神経の障害が原因の場合があります。血液中のタンパク質が減少して水分を維持できなくなり、肺へと流出して発症すると考えられます。

【症状】

肺の中の肺胞や気管支に水がたまり、機能不全に陥っている状態です。咳を繰り返したり、よだれや吐き気、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をしたり、口を開けて呼吸するような様子がみられます。次第に呼吸の苦しさから動くのを嫌がり、じっと座ったままの状態になる場合があります。進行すれば死に至る危険性があります。

【治療・対策】

肺にたまった水を除去するために利尿薬が投与されたり、呼吸が苦しそうな場合には酸素が吸入されたりします。毛細血管を拡張するための薬が投与される場合もあります。基礎疾患が影響している場合、その治療を行い、直接的予防策はありませんが、基礎疾患が影響している場合が多いため、それぞれの疾患の適切な治療を行っていくことが予防策です。


■ 肺線維症(はいせんいしょう)

【原因】

肺胞と肺毛細血管の間にある間質に結合組織が増加することで硬くなり、線維化して発症します。線維化の原因は、人の間質性肺炎と同様にⅡ型肺胞上皮細胞の働きによるものと推察され、肺胞のI型上皮細胞が損傷するとそれを修復するためにⅡ型肺胞上皮細胞が増殖します。Ⅱ型肺胞上皮細胞で合成・分泌される蛋白質の中に線維化の要素となる物質が含まれると考えられ、中高齢の猫に多く発症する傾向があります。

【症状】

肺胞と肺毛細血管との間にある間質という部分に炎症が起こり線維化することで、肺が十分に機能できなくなった状態で、間質性肺炎とも呼ばれています。咳を繰り返し、次第に呼吸が苦しくなり、口を開けて呼吸する様子が見られます。進行するとあまり動かなくなり、口腔内にチアノーゼが表れ、十分に呼吸が行われない呼吸不全の状態に陥ることもあります。酸素が十分に取り込めない状態が続くと、肺高血圧症や心不全を引き起こす可能性があります。呼吸困難から死に至る危険性が高い疾患のため、早期の対応が必要です。

【治療・対策】

X線検査を行い診断されます。慢性気管支炎などとの鑑別がするためには肺細胞の生検を行う必要がありますが、全身麻酔が必要なため猫への負担も大きくなります。肺の炎症を抑えるための抗炎症剤や抗生物質、気管支拡張剤や利尿薬などが投与されます。また呼吸が苦しそうな場合には酸素吸入を行い、心不全などを引き起こした場合はそれに合わせて治療を行います。死に至る危険性の高い疾患のため、日頃から様子をよく観察し、早期発見が重要です。


■ 鼻咽頭ポリープ(びいんとうぽりーぶ)

【原因】

ポリープの発生メカニズムについては解明されていませんが、大半が2歳未満の若年齢の猫に発生していることから、先天性な要因との関連が推察されています。

【症状】

鼻咽頭の上皮粘膜や耳管、中耳に発生する非腫瘍性の腫瘤です。ポリープが腫大化すると、鼻汁が蓄積して鼻炎を引き起こしたり、鼻呼吸がしづらくなったりします。くしゃみや鼻水、異常呼吸音などの症状が表れ、鼻呼吸がしづらくなることで嚥下時に不快を感じたり、嘔吐したりします。進行すると呼吸困難やチアノーゼ、失神などを引き起こす場合もあります。また中耳に影響して中耳炎を引き起こした場合、眼振やめまい、斜頸や旋回、顔面の神経麻痺、不自然な歩き方などの神経症状を表します。細菌感染を引き起こすと、耳垢や膿、出血なども見られます。症状はポリープの進行する場所によって様々です。また症状の程度も個人差があり、症状が表れないまま徐々に進行している場合もあります。合併症としてホルネル症候群を引き起こす可能性があります。

【治療・対策】

X線検査や鼻咽頭内視鏡検査、MRI検査やCT検査などを行い診断されます。ポリープの状態と内耳等の炎症の有無を確認します。麻酔の上、内視鏡を用いてポリープを確認し、鉗子で切除します。中耳炎を引き起こしている場合は、腹側鼓室胞を切開する必要がありますが、神経障害を引き起こす可能性もあります。細菌が感染している場合には抗生物質を投与し、切除後の炎症を抑えるための点耳薬を投与する場合もあります。再発の可能性があるため、経過観察が必要です。予防方法はありませんが、日頃から猫の様子をよく確認しておき、早期に発見できるようにしましょう。


■ 鼻炎(びえん)副鼻腔炎(ふくびくうえん)

【原因】

感染症や異物の混入、腫瘍や鼻炎の悪化が原因と考えられます。最も多いケースは感染症などによる鼻炎が悪化して副鼻腔まで広がることです。また歯周病によって上顎がに発生した炎症が影響している場合もあります。カビやほこりによるアレルギー性や有害物質を吸い込むことによる刺激も、原因と考えられます。

【症状】

鼻とその奥の空洞部分の副鼻腔の粘膜に炎症が起こっている状態です。くしゃみや鼻水が主な症状ですが、鼻水は粘液性があり膿が混ざり、血が混ざる場合もあります。鼻が詰まった状態になるため、口で呼吸するようになります。進行すると炎症や腫瘍によって鼻から額にかけての辺りが腫れて、骨が破壊されて変形する可能性もあります。また副鼻腔内に膿がたまると蓄膿症を引き起こす場合もあります。

【治療・対策】

血液検査やX線検査によって診断されます。鼻炎の悪化の場合には抗生物質や抗真菌剤を投与します。鼻と歯は密接な関係ですので、歯周病などの基礎疾患が影響している場合は、その治療を行います。呼吸が苦しそうな場合には、を用いて内部に薬剤を入れて炎症を抑えます。腫瘍の場合は外科手術や放射線治療が行われる場合があります。日頃から猫の様子をよく観察して、くしゃみや鼻水の症状に早く気づき、鼻炎を悪化させないこと、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


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