骨・関節の病気

■ ムコ多糖症(むこたとうしょう)

【原因】

遺伝子性の疾患で、猫での発症は極めてまれとされています。人では難病に指定されている疾患です。

【症状】

ムコ多糖とは細胞の周囲で水を蓄えておく機能を持つ、タンパク質を中心とした複合体です。このムコ多糖を分解する酵素が欠損することで、ムコ多糖が蓄積し、様々な異常を表します。骨や関節といった結合組織に蓄積しやすく、骨の変形や股関節・膝関節の脱臼、角膜の混濁などの症状が見られます。またこの疾患の猫は、鼻が低く平坦で耳が小さい特徴的な顔になります。進行すれば椎骨を圧迫して、麻痺症状が出る危険性があります。

【治療・対策】

X線検査や血液検査、尿検査などを行い、総合的に診断されます。骨や関節の様々な症状に加え、尿検査で多量のムコ多糖が検出された場合に診断されます。確立された治療法はなく、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心です。


■ アキレス腱断裂(あきれすけんだんれつ)

【原因】

交通事故や転落などによる外部からの衝撃が原因と考えられます。室内でも、ドアに足を強く挟んだり人に踏まれたりして起こることもあります。

【症状】

アキレス腱は踵に見られる太い腱で、断裂すると歩行障害が見られます。断裂するとアキレス腱は緊張を失いゆるんだ状態になり、断裂しているほうの足に体重がかかると、全く支えられず足根関節がまがりかかとが床に着くようになります。多くの場合、外傷によって突然歩行障害を示し、損傷当初は痛みを伴う場合もあります。まれに徐々に損傷して断裂する慢性タイプも見られます。

【治療・対策】

X線検査から診断されます。外科手術が一般的です。手術では麻酔をしてアキレス腱の外皮延ばして切断面を縫合します。またアキレス腱に過度の緊張がかからないように創外固定を行う場合もあります。手術後は運動制限をして経過を観察します。室内飼育にして事故を防ぎ、安全な飼育環境を整えることが予防策です。


■ 外傷性脱臼(がいしょうせいだっきゅう)

【原因】

外傷性脱臼の原因で最も多いのが交通事故です。足根関節、手根関節、股関節、膝蓋骨、脊椎など関節のあるところ全てに脱臼する可能性があります。交通事故によるものでは、脱臼以外に骨折や靭帯損傷などもみられることが多いので、特に猫が屋外に出ることがある飼い主様はいつもとは違う歩き方を見かけた際は、すぐに獣医師に診てもらいましょう。家飼いの猫にも外傷性脱臼を起こしてしまう原因は潜んでおりカーテンをよじ登って高いところから落ちてしまったり、しっぽを踏んでしっぽが脱臼したりすることもあります。

【症状】

関節を脱臼すると骨折のときと同様にとても痛がり、地面に足をつかなくなります。手根関節(手首)、足根関節(足首)場合、不自然な方向に足首や手首が曲がります。股関節の場合、一見脱臼している側の足が短くなったように見えたり、ふらつきがみられたりすることがあります。膝蓋骨の場合、内側に脱臼する内方脱臼が多くみられます。

【治療・対策】

軽めの脱臼であれば、手術を行わずに脱臼を手で元の位置に戻すことができるのも多いです。ただし、手で正常な位置に戻したままでは、また脱臼してしまうので正常な場所に戻した後は、ギプスや副木を当てて関節を固定します。中等度〜重度の脱臼であれば、外科手術による整復をすることがあります。さらに重度の場合は、脱臼のみならず、骨折や靭帯の損傷が同時に起こっていることもあります。


■ 変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)

【原因】

猫の変形性関節症の主な原因は明らかになっていませんが、股関節形成不全や前十字靭帯断裂といった別の疾患から、変形性関節症になることが一つの原因といわれています。また、外傷や加齢、肥満による関節軟骨のすり減りが原因で起こることもあります。加齢による軟骨のすり減りを抑えることは難しいかもしれませんが、肥満によるすり減りは防止することが可能です。特に猫の変形性関節症は明らかな症状が見られないので、肥満によって動かなくなったのか、変形性関節症によって動かなくなったのかの区別が難しいため、きちんと原因を見つけるためにも、体重管理はしっかり行いましょう。

【症状】

猫の変形性関節症の症状は、最近急に動かなくなった、高いところに登りたがらなくなった、元気がないといったなど、関節の痛みとは一見関係のないような症状でも、よく調べると実は変形性関節症を発症している場合があります。主な症状は、・急に動きたがらなくなった・元気がない・階段の上り下りを嫌がる・足を触ると痛がる。など。猫の変形性関節症の症状は、・急に動きたがらなくなった・元気がない・階段の上り下りを嫌がる・足を触ると痛がる。など。

【治療・対策】

関節自体の損傷による変形性関節症では完全な治療法はありません。そのため、関節の痛みの緩和や症状の進行を遅らせることが治療方法の1つになります。関節痛を抑えることは、猫が快適に生活するためにとても大切なことです。痛みが続くときには、非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる鎮痛薬を使います。さらに症状の進行を遅らせるために、関節軟骨の修復を行うサプリメントを使う場合もあります。またリハビリテーションといった、マッサージ療法やレーザー療法なども変形性関節症の治療に有効といわれています。


■ 股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)

【原因】

猫が股関節形成不全になる主な原因は遺伝です。そのため、親猫が股関節形成不全の場合、その子猫も股関節形成不全になる可能性があります。特に、ペルシャ、メインクーン、ヒマラヤンでは遺伝的に発症する可能性が高いといわれています。しかし、猫の股関節形成不全はまだ研究段階で、発症の原因は不明なところが多いのが現状です。

【症状】

猫の股関節形成不全の症状は、股関節の発育不全の程度と股関節の脱臼の程度によってさまざまな症状を示します。股関節の発育不全によって生まれつき寛骨臼(かんこつきゅう)が浅いと、股関節が脱臼しやすくなります。片方だけではなく、左右両方の股関節に生じることが多いのも特徴です。 主な症状は、・足を触ると痛がる・跳ねるように歩く・腰を振るように歩く・ジャンプなど動くことを嫌がる・階段の昇り降りを嫌がる・運動や遊びをしなくなる。

【治療・対策】

症状が重度の場合は、外科手術を行うことがあります。手術方法としては、大腿骨頭切除術(だいたいこっとうせつじょじゅつ)が挙げられますが、猫の股関節形成不全はまだ治療方法も確立されておらず、難しい手術になる可能性が高いため、外科手術が治療方法の選択の1つになるかはまだ不明な点が多いのが現状です。


■ 骨折(こっせつ)

【原因】

猫の骨折原因として最も多いのは、交通事故や落下事故によるものです。また、発症はまれですが、骨の腫瘍やホルモン疾患、栄養の偏りなどで、骨がもろくなり骨折することがあります。

【症状】

一般的に骨折部位は次第に腫れ、熱感をもち、痛みを伴います。また、骨折の場所によって、症状は様々です。四肢の骨折では、肢を床に着けずに歩く症状、腰部にある骨盤を骨折した場合には、排尿や排便が困難な症状、顎の骨折では摂食障害(食べることが困難な状態)などが見られます。交通事故や落下事故では、骨折のみならず内臓や頭部にも損傷を受けていることがあり、その場合、損傷を受けている部位によって様々な症状が起こります。

【治療・対策】

骨折の治療法は骨折の状態や部位、ねこちゃんの年齢などによって選択されます。基本的には手術を行う外科的治療と、手術を行わずにギブス固定や運動制限のみを行う方法があります。外科的治療では手術により、ピンやプレートなどの固定具を使い、骨折部位を整復します。術後、骨折部位の骨がくっつくまで安静と、運動制限が必要となります。


■ 前十字靱帯断裂(ぜんじゅうじじんたいだんれつ)

【原因】

交通事故や転落などによる外部からの衝撃が原因と考えられます。また日頃の行動のなかで、激しく膝をねじったり、膝を過剰に伸ばしたりするような力が加わる動きをすることで断裂します。肥満も膝に必要以上の負担がかかるため、断裂を引き起こしやすいと考えられています。

【症状】

膝の中にある靭帯で、脛骨を制限することで膝関節の安定性を維持しています。そのため、前十字靭帯が断裂すると、膝関節が不安定になり、歩行障害が見られます。断裂は急性断裂・慢性断裂・部分断裂の3つに分けられ、急性・部分断裂の場合は症状が表れるだけで、数日後には正常な歩行状態に戻ることもあります。慢性化すると半月板損傷や変形性関節疾患を発症し、激しい痛みを感じ明らかな歩行異常が見られるようになります。痛みから足をずっと上げたままの状態にしている場合もあります。

【治療・対策】

症状が軽度な場合には外科手術は行わず、消炎鎮痛剤などで痛みのケアをし、膝への負担を減らすための体重管理を行うことで症状の改善を目指します。症状が改善されない場合や重度の場合には、外科手術を行います。特に半月板損傷や変形性関節疾患を発症している場合には手術が一般的です。手術方法は様々な術式があり、画一化されていません。手術後は運動制限をしながら経過を観察します。室内飼育にして事故を防ぎ、他の猫との接触を避けること、膝への負担を減らすために食餌の管理をして肥満を防ぐことが予防策です。


■ 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

【原因】

膝蓋骨脱臼は小型犬に多いイメージですが、猫でもまれにみられます。猫は犬よりも高いところから飛び降りたり、ジャンプしたりするのでもともとの体の作りがクッション性に優れている動物ですが、強い外力がかかると膝蓋骨が脱臼することがあります。膝蓋骨脱臼は、生まれつき脱臼しやすい先天性膝蓋骨脱臼と、外からの圧力やケガによる外傷性膝蓋骨脱臼に分かれます。

【症状】

猫の膝蓋骨脱臼の症状は、・足を痛がる・足を引きずって歩く(跛行:はこう)・足が曲がって伸びなくなる・足がねじれる・歩くのを嫌がる・高い所に登らなくなる。など。脱臼の程度が軽症であれば、膝蓋骨は自然に元の位置にすぐ戻るか無症状のこともあります。重症化している場合は、膝蓋骨が正常な位置に戻らず、常に痛がったり、歩き方がおかしくなったりします。

【治療・対策】

治療方法は症状によって変わります。症状が軽い場合は、鎮痛薬の投与や、運動制限をすることでよくなります。脱臼の程度が重症の場合は外科治療が必要になることもあります。手術方法の一つとして膝蓋骨が収まる滑車溝(かっしゃこう)を深くすることで、膝蓋骨が脱臼しないようにする大腿骨滑車形成術(だいたいこつかっしゃけいせいじゅつ)という方法があります。手術後は再脱臼しないように、1~3ヶ月かけて運動制限や体重管理を行いもとの生活に徐々に慣れさせていくことが大切です。 グレード1 :膝蓋骨を手で押すと脱臼し、通常は滑車溝に収まっている状態です。普段症状はないですが、ときどき症状が出ます。グレード2:膝蓋骨が自然に脱臼と整復を繰り返し、無症状から重度の跛行まで状態はさまざまです。グレード3:膝蓋骨は手で整復できますが、普段は脱臼している状態です。骨格の変形が目立ち跛行するようになります。グレード4:膝蓋骨は常に脱臼しており、手で整復ができません。滑車溝が浅いもしくは欠損し、骨格の変形が重度で跛行するようになります。


■ 化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)

【原因】

事故などの外傷や、猫同士のケンカによる咬傷が原因と考えられます。特にケンカによる咬傷の場合が多く、主に口腔内のパスツレラ菌などの細菌が関節に感染することで発症するケースが多く見られます。また細菌が血液中に入ると、全身を巡り関節で発症する場合もあります。

【症状】

外傷による、細菌が関節内に侵入して、炎症が起こる状態です。関節が腫れて熱を持ち、微熱が出たり、痛がったり元気がなかったりする症状が見られます。進行するとリンパ節の腫れや関節に膿が見られる場合もあります。外傷の大小に関わらず、内部で感染が広がり悪化する可能性があるので、注意が必要です。

【治療・対策】

血液検査や関節液検査などで診断されます。抗生物質を投与して感染を抑えます。痛みがある場合には、一時的に鎮痛剤が投与されます。関節で膿が見られる場合には、切開して洗浄する場合もあります。室内飼育にし、事故を防ぐためにも、他の猫との接触を避けることが予防策です。多頭飼育の場合は、特にワクチンの接種や衛生管理を行いましょう。


■ 骨軟骨形成異常(ほねなんこつけいせいいじょう)

【原因】

原因は、遺伝によるものといわれ、スコティッシュフォールドの特徴的な折れ耳は、骨軟骨形成異常によるもので、折れ耳のスコティッシュフォールド同士を交配させると高確率で骨軟骨形成異常が発症します。耳の折れたスコティッシュフォールドは、足や尻尾にも骨格異常が起こることが多いのも特徴です。 耳の立ったスコティッシュフォールドも存在し、原因となる遺伝子を持っていないように思えますが、実際には遺伝子を持っていることが多いので注意が必要です。

【症状】

症状は骨軟骨のある全ての関節で異常が出る可能性があります。スコティッシュフォールドの耳もその症状のひとつです。特に、足根関節の異常が多く、関節が腫れる、変な歩き方をする、ジャンプをしなくなるなどの症状がみられます。最近では、猫がソファーの上で人のように座る姿を見ることもありますが、これも骨軟骨形成異常が原因で、痛みを抑えるための楽な姿勢なのではないかともいわれています。 また、手根関節や尻尾の関節にも異常がみられ、尻尾では短く変形するのも特徴的です。耳の折れたスコティッシュフォールドでこれらの症状が見られることが多いですが、耳の折れていないスコティッシュフォールドでも骨軟骨形成異常になる可能性は十分にあります。子猫のときに異常がみられなくても成猫で突然発症することもあるので注意が必要です。症状だけでは他の関節の疾患と区別がしにくいので、歩行異常や関節の腫れに気づいたら、すぐに動物病院に連れていきましょう。 ・関節が腫れる・変な歩き方をする・しっぽが短く変形する・足や手を痛がる・ジャンプなど激しい動きをしなくなる。などです。

【治療・対策】

骨軟骨形成異常は遺伝病のため予防することはできません。そのため、骨軟骨形成異常の遺伝子をもった猫同士の繁殖を避けることです。病気が見つかっても進行を遅らせることはできません。負担を減らすことは可能ですので、骨軟骨形成異常が出やすい猫種を飼っている飼い主様は、定期的に健康診断に行くなどして、早期発見に努めましょう。骨軟骨形成異常の治療方法はまだありません。痛み止めや放射線での治療により、痛みや進行を抑える方法しかありません。骨軟骨形成異常が原因となって、他の疾患になってしまっているときは、まずその疾患の治療を行いましょう。骨軟骨形成異常そのものを治すことはできないので、骨軟骨形成異常の兆候がみられたら、進行しないように注意しながらみていくようになります。


■ カリシウイルス性関節炎(かりしういるすせいかんせつえん)

【原因】

カリシウイルス生ワクチンの接種や、自然感染が原因と考えられています。生後⒍~12週の猫に多く見られ、特に外飼育や多飼育では感染率は高くなります。ウイルスが関節炎を引き起こすメカニズムについては解明されていません。

【症状】

カリシウイルスに感染することで、多発性関節炎を引き起こす場合があります。全身のこわばりや知覚過敏、歩行障害や発熱などの症状が表れます。カリシウイルス感染症へと移行した場合には、舌や口蓋の潰瘍、くしゃみやよだれ、上部気道炎などの症状が表れます。カリシウイルス生ワクチンの接種後に発症する場合は、1週間以内に発症し、発症後2、3日で回復すると言われています。

【治療・対策】

血液検査や、粘液などからの検体を採取しての検査で診断されます。2、3日で自然に回復するケースがほとんどです。状況に応じて、二次的感染を防ぐためや、上部気道炎が悪化して、鼻の詰りによって口で呼吸するような状況であれば抗生物質を投与します。室内飼育をして他の猫との接触を避けるなど、免疫力の低下を防ぐためにストレスの少ない飼育環境を整えることが予防策です。


■ 進行性多発性関節炎(しんこうせいたはつせいかんせつえん)

【原因】

原因は解明されていませんが、発症した猫の60%以上が、猫白血病ウイルスに感染していることから感染症の影響が推察されています。また、免疫抑制療法を行うと症状が緩和することから、自己免疫との関連も推察されています。

【症状】

全身の様々な関節に多発的に炎症が生じている状態です。関節の炎症には、リンパ球形成細胞性骨膜炎や関節リウマチ、びらん性など様々な種類があります。発熱や関節の腫れ、歩行障害などの症状が表れます。髄膜に炎症を起こし、頸部の痛みが表れる場合や、また全身性の知覚過敏を引き起こし、痛感や温感、触感の異常から動くのを嫌がるようになる場合があります。

【治療・対策】

X線検査や血液検査、関節液検査などで診断されます。一般的には、ステロイド剤が投与されます。また状況に応じて、免疫抑制剤や非ステロイド系抗炎症剤、軟骨保護剤などが投与されます。完治は難しく、生涯にわたり治療が必要なケースがほとんどです。ウイルス感染を防ぐためのワクチンの接種や、ストレスによる免疫力低下を防ぐために、ストレスの少ない環境を整えることが予防策です。


腫瘍の病気 皮膚の病気感染症の病気 眼の病気 呼吸器系の病気 骨・ 関節の病気 耳の病気 消化器系の病気 脳・ 神経の病気 排尿器の病気生殖器の病気 循環器系の病気血液の病気 ホルモンの病気 筋肉の病気歯の病気 その他の病気

03-5428-8779