感染症の病気

■ 猫ウイルス性鼻気管炎(ねこういるすせいびきかんえん)      ≪FVR≫

【原因】

猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)の感染が原因です。ウイルスは感染動物の唾液や鼻汁、排泄物などに含まれるため、くしゃみでなどでの飛沫感染や排泄物との接触が主な感染経路となります。また多頭飼育の場合のグルーミングや食器の共有、人が感染猫を触った後に他の猫に触れることなどで起こる間接的感染、母体から胎児への母子感染なども原因になります。

症状を表していない猫でも保菌している場合があるため、感染源となります。本病特徴の1つは、回復後、中枢神経内にウイルスが潜伏し、持続感染することが多いことで、ウイルスキャリアーとよびます。健康な時は、免疫系の働きにより、ウイルスは、細胞内に閉じ込められるが、闘争、妊娠、出産などのストレスが加わると免疫力が低下し、唾液などに排泄され、再発するばかりでなく、感染源となります。

【症状】

猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)の感染は、鼻から侵入し、成猫では、主に、上部気道粘膜(鼻腔、咽頭、扁桃、気管、上部など)で増殖し、組織を破壊します。ウイルスの特性から、外気に触れて体温の下がる鼻・口・目の周りを中心に症状が表れます。急性期と慢性期に分けられ、急性期では発熱を起こし、くしゃみや鼻水、涙や目やに、口内炎やよだれ、咳や食欲不振などの症状が表れ、進行すると結膜炎から潰瘍性角膜炎を引き起こし、穿孔(穴)を生じる場合もあります。また鼻の辺りにヘルペス性の皮膚炎や下痢などの消化器症状が見られることもあります。幼猫では進行が早く、死に至る危険性があります。慢性期では症状が落ち着くものの、ウイルスは三叉神経節に残るため保菌化します。保菌状態は数年間続き、唾液や鼻汁、排泄物からウイルスが排出され、感染の拡大に繋がる可能性があります。

【治療・対策】

猫ヘルペスウイルスへの抗ウイルス薬はないため、対症療法が中心です。栄養補給や保温、免疫力を高めるインターフェロンや二次感染予防のための抗生物質の投与、鎮痛剤や解熱剤の投与などを行います。また結膜炎や潰瘍性角膜炎を引き起こしている場合にはその治療を行います。くしゃみや鼻汁によってウイルスが排出されるため、多頭飼育の場合は感染した猫を隔離して飛沫感染などを防ぐ必要があります。感染猫の使った食器やトイレなどを次亜塩素酸ソーダ等で消毒するようにしましょう。猫ヘルペスウイルスは、一般的な三種混合ワクチンの接種で予防できます。早めにワクチンを接種しておくこと、室内飼育にして感染動物との接触を避けること、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ 猫カリシウイルス感染症(ねこかりしういるすかんせんしょう)

【原因】

猫カリシウイルスの感染が原因です。ウイルスは感染動物の唾液や鼻汁、排泄物などに含まれるため、くしゃみでなどでの飛沫感染や排泄物との接触が主な感染経路となります。多頭飼育の場合は、グルーミングや食器の共有でも感染します。また人が外で感染猫を触ったり、衣服にウイルスが付着したりして、それに自宅の猫が感染する間接的な感染もあります。カリシウイルスの感染力は強く、一度でも感染すると回復後もウイルスが残り保菌状態になります。そのため症状を表していない猫でも保菌している可能性が高く、感染源として注意する必要があります。

【症状】

猫カリシウイルス感染症は、猫ウイルス性鼻気管炎に酷似しており、発熱、食欲不振、元気消失、鼻や眼からの分泌量などの増加がみられます。また、舌などの口腔内に潰瘍が形成され、痛みを伴う場合があります。カリシウイルスの感染によって起こる、上部呼吸器感染症で頻発度の高さから猫風邪とも言われています。猫伝染性鼻気管炎との混合感染も多く見られます。口内炎や舌炎が最も多く見られ、他にくしゃみや鼻水、結膜炎や目やに、発熱や食欲不振、口腔内や鼻粘膜の水泡や潰瘍などの症状が表れます。口内炎や口腔内の潰瘍から食餌が食べにくくなったり、多量のよだれを出したりする場合もあります。重症化して肺炎を引き起こす場合もあり、死に至る危険性があります。猫伝染性鼻気管よりも比較的症状は軽いとされています。冬に感染が多く見られます。

【治療・対策】

猫カリシウイルスへの抗ウイルス薬はないため、対症療法が中心です。栄養や水分の補給や保温、免疫力を高めるインターフェロンや二次感染予防のための抗生物質の投与を行います。重症化していなければ、多くは1~2週間程で回復します。くしゃみや鼻汁によってウイルスが排出されるため、多頭飼育の場合は感染した猫を隔離する必要があります。感染猫の使った食器やトイレなどは小まめに次亜塩素酸ソーダ等で消毒するようにしましょう。猫カリシウイルスは、一般的な三種混合ワクチンの接種で予防できます。早めにワクチンを接種しておくこと、室内飼育にして感染動物との接触を避けること、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ フィラリア症(ふぃらりあしょう)

【原因】

フィラリア症は蚊が媒介する寄生虫が原因です。フィラリア感染をしている動物を蚊が吸血したときにフィラリアが蚊の体内に入ります。そこで気温が一定以上であれば蚊の体内でフィラリアが他の動物に感染可能な段階まで成長します。その蚊が他の動物を吸血するときにフィラリアが動物の体内に侵入することで感染します。

【症状】

・咳をよくする。・繰り返す嘔吐。・辛そうな呼吸をする。・呼吸の回数が多い。・呼吸困難など、呼吸器などの激しい症状がみられる。

【治療・対策】

フィラリアの予防薬を毎月投与することが予防となります。猫のフィラリア症では、抗原検査や抗体検査で陽性が出たり、超音波検査で虫体が発見されたりしない限りは、すべての検査が陰性であってもフィラリア感染を否定はできません。フィラリア予防薬の投与で、猫にフィラリアを感染させないことが一番です。治療は、・ステロイド剤・気管支拡張薬・フィラリア予防薬などです。また、治療と並行して定期的にフィラリアの抗原検査や抗体検査を行います。フィラリア予防薬の中にはノミやダニ予防もできる滴下タイプ(首の後ろに液剤を垂らす)のものもあるので、ノミとフィラリアの予防と合わせて行うことも可能です。


■ バルトネラ症(ぱるとねらしょう)

【原因】

感染している猫との接触が原因と考えられます。バルトネラ・ヘンセラ菌は感染猫の口腔内や爪の内側に存在するため、ケンカによって咬み傷やひっかき傷ができることで感染します。唾液などに含まれるため飛沫感染やグルーミングなどによって経口的に感染します。またネコノミなどの吸血昆虫が感染猫を吸血することで感染し、体内で菌を増殖して他の猫を刺咬したり排泄物を出したりすることで感染が拡大していると考えられます。

【症状】

バルトネラ・ヘンセラ菌の感染によって発症しますが、ほとんどの猫の体内に不顕性感染の状態で存在するため、発症はまれなケースです。外傷から感染することが多く、患部が赤く腫れたり、発熱やリンパ節の腫脹などの症状が表れたりします。重症化すると、リンパ節炎や血管腫、髄膜炎や脳炎、ブドウ膜炎などを引き起こし、症状の程度は様々ですが、軽度な場合がほとんどです。またバルトネラ・ヘンセラ菌は、猫にひっかかれたり、咬まれたりした時に人が発症する猫ひっかき病の原因菌です。人が感染すると傷口に丘疹や水泡ができてリンパ節が腫れます。まれに重症化すると脳炎や心内膜炎などを引き起こす場合があります。

【治療・対策】

症状が軽症の場合、自然に治癒するため治療を行わない場合が多いです。重症化した場合、抗菌剤を投与し、症状に合わせた治療を行います。バルトネラ・ヘンセラ菌のワクチンはありません。室内飼育にして他の猫との接触を避けることや、小まめに爪の手入れやシャンプーなどをして体を清潔に保つこと、ネコノミを防止するために清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ ネコエイズ(ねこえいず)ネコエイズ(ねこえいず)

【原因】

既に感染している猫との接触が原因です。体液の接触によって感染し、最も多い原因は猫同士のケンカです。また交尾による感染は、交尾自体の感染率はそれほど高くないものの、ネックグリップという雄猫が雌猫の首元に噛みつく行為が感染の大きな原因と推察されます。ウイルスの感染力は弱く、多頭飼育の場合の食器の共有ではほとんど感染しないとされていますが、ケンカやじゃれ合いによって感染が拡大している可能性が考えられます。また母体の胎盤を通しての子猫への感染も見られます。

【症状】

ネコ免疫不全症候群と呼ばれ、急性期、無症状キャリア期(潜伏期)、エイズ発症期分けられ症状も異なります。感染後の数か月が急性期で、リンパの腫れや風邪、下痢の症状が見られますがほとんど症状が表れない場合もあります。次の無症状キャリア期は、症状は表れませんが病態がゆっくりと進行して、免疫力が段々と低下している状態です。期間は4~10年以上と様々です。ゆっくり進行していた病態が発症するのがエイズ発症期です。症状は様々ですが口腔内トラブルが多く、歯肉炎や歯周病、口内炎や口臭、よだれが主な症状です。他にも風邪の症状や慢性的な下痢、それに伴う体重減少や免疫力低下による日和見感染が起こります。様々な臓器にも影響を与え、最終的に死に至ります。

【治療・対策】

ウイルス自体に対する効果的な治療方法は確立されていないため、発症した場合は対症療法を行います。症状に合わせての治療になるため、口腔内であれば抗生物質や抗炎症剤の投与、慢性的な下痢であれば抗菌剤や抗真菌剤の投与が行われます。発症期には骨髄が侵されて貧血が見られることも多く、輸血を行う場合もあります。またインターフェロンを用いてウイルスを弱めて免疫力を高めるための治療も効果的とされています。また症状を悪化させないために、ストレスの少ない飼育環境の整備や他の感染症を防ぐためのワクチン接種などが必要です。猫免疫不全ウイルスに対するワクチンは日本にはありません。他の猫との接触を避けたり、避妊・去勢手術をしてケンカをさせないようにするのが予防策です。


■ カンピロバクター感染症(かんびろばくたーかんせんしょう)

【原因】

カンピロバクター菌の感染が原因で、感染動物から感染すると考えられます。カンピロバクター菌は鳥類や豚や牛、犬や猫の腸管に常在していますが、犬や猫での保菌率はそれほど高くないとされています。感染動物の排泄物との接触や、牛や豚や鶏の生肉を食べたり、殺菌していない水や牛乳を飲料したりすると感染すると考えられています。不顕性感染の状態の動物の排泄物にも菌が含まれるため、感染源として注意が必要です。また子猫や他の疾患の影響で免疫力が低下していると、発症の可能性が高くなります。

【症状】

カンピロバクター菌に感染することで発症します。菌が腸管に感染することから、腸炎の症状を表します。発熱や食欲不振、嘔吐や腹痛、下痢などの症状が見られます。下痢は水様性で粘膜や血液が混ざる場合があり、頻繁に便意を示します。また下痢や嘔吐で体液が失われることによって脱水症状を引き起こすこともあるため、注意が必要です。症状には個人差があり、無症状の場合もあれば長期化する場合もあります。

【治療・対策】

抗菌剤の投与のみで回復するケースも多く見られます。脱水症状などを起こしている場合は輸液の投与、栄養補給や体力を温存させます。基礎疾患の影響や、混合感染などを引き起こしている場合は、それに合わせて治療を行いますが、カンピロバクター菌のワクチンは開発されていません。感染動物との接触を防ぐために室内飼育にしたり、新鮮な食餌を与えて生肉は与えないようにしたり、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ パスツレラ感染症(ぱすつれらかんせんしょう)

【原因】

パスツレラ感染症には、常在するパスツレラ菌が発症する場合と、外部から感染する場合があります。ほとんど全ての猫にパスツレラ菌は常在しています。主に口腔内や上部気道粘膜上、鼻腔などに常在しており、症状が表れない不顕性感染の状態です。外傷を受けたり、体力や免疫力が低下したりすることで発症します。また、パスツレラ菌は土壌や水、様々な動物の体内に存在しているため、ケンカなどでの外傷やグルーミングなどで菌は局所的に増殖します。その際免疫力が低下していれば感染を起こします。

【症状】

ほとんどの猫に常在するパスツレラ菌が、何らかの原因で抵抗力が弱まると日和見的に発症して様々な症状が表れます。膿性の鼻汁や結膜炎、中耳炎や内耳炎、皮下腫瘍など症状は局所的です。重症化すると肺炎や子宮膿種、髄膜脳脊髄炎や敗血症などを引き起こし、死に至る危険性があります。症状の程度は原因や猫の免疫力などにより様々です。またパスツレラ菌は人にも感染する人獣共通感染症です。

【治療・対策】

抗菌剤の投与や外傷部分の消毒を行います。また結膜炎が見られる場合にはステロイド点眼薬や内服薬を投与します。中耳炎や内耳炎の場合は、抗生物質や抗炎症剤の投与、内部の洗浄などを行います。栄養や水分の補給や保温して体力を温存させる支持療法も行います。パスツレラ菌のワクチンは開発されていません。室内飼育にして他の猫との接触を避けること、外傷を負った場合は速やかに消毒すること、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ ヘリコバクタ―感染症(へりこばくたーかんせんしょう)

【原因】

ヘリコバクター菌への感染が原因で。、猫を含めた様々な動物の胃にヘリコバクター属の細菌が常在しています。菌は胃内の強い酸性を中和できる酵素を持つため、定着することができます。胃を胃酸から保護する粘膜の細胞を栄養源にして増殖するため、粘膜細胞は破壊されて胃炎が起こると考えられます。感染動物の排泄物や汚染された土壌や水から経口的に体内へ侵入して、幽門部分に定着後発症すると考えられます。またグルーミングなどで感染する場合もあります。多くの猫が保菌していると考えられているため、感染源として注意が必要です。

【症状】

ヘリコバクター菌に感染することで発症します。菌は胃の幽門部分に定着して発症するため、消化器症状が表れます。慢性胃炎を引き起こして長期的な嘔吐が続き、進行すると糜爛や潰瘍化します。その場合、吐血や黒色便が見られる場合があります。また幽門部分から感染が広がり、十二指腸炎を引き起こして下痢や嘔吐、多飲多尿、体重減少や口臭などの症状が表れます。

【治療・対策】

比較的長期間、抗菌剤の投与を行い除菌します。脱水症状などを引き起こしている場合は輸液を投与したり、栄養補給や体力を温存させます。ヘリコバクター菌のワクチンは開発されていません。感染動物との接触を防ぐために室内飼育にしたり、清潔な飼育環境を整えたりすることが予防策です。しかしながら多くの猫が保菌していると考えられており、生後まもなく母猫からグルーミングなどを通して感染するケースも多く予防は困難とされています。


■ オーエスキー病(おーえすきーびょう)

【原因】

猫での発生は極めてまれですが、豚ヘルペスウイルス1型の感染が原因です。感染経路は、感染動物との直接接触や関節接触、感染した豚の生肉の摂食などによって経口や経気道的に広がります。感染動物の鼻汁や唾液には多量のウイルスが含まれるため、くしゃみなどでの飛沫感染が多く見られます。感染した場合ほとんどは数日で死亡しますが、回復した場合三叉神経にウイルスが残り、保菌状態になります。

【症状】

豚ヘルペスウイルス1型の感染によって発症する感染症で、その病態が狂犬病と似ていることから、仮性狂犬病とも呼ばれます。豚に感染しているウイルスのため、日本をはじめ養豚を行う国に常在しています。ウイルスは知覚神経から脊髄や脳に侵入し、髄膜脊髄炎を引き起こします。脳の中枢神経が侵されることで、狂犬病と類似した神経症状が表れます。主な症状は、痙攣や四肢の麻痺、昏睡などで、体を掻きむしる掻痒症状も見られます。妊娠中に感染すると、流産や死産を引き起こします。感染した猫の大半は、数日後に死に至ります。

【治療・対策】

治療方法は確立されていません。万が一感染した場合は、安楽死されます。また生ワクチンと不活化ワクチンが開発されていますが、猫用のものはありません。予防は、特に豚との接触を避けることと、食餌で生肉を与えないことが予防策です。室内飼育にして他の動物との接触を避け、清潔な飼育環境を整えるようにしましょう。


■ ロタウイルス性腸炎(ろたういるすせいちょうえん)

【原因】

レオウイルス科ロタウイルスの感染が原因です。ロタウイルスは様々な哺乳類に感染するため、感染動物や保菌動物の下痢に含まれるロタウイルスが、経口的に広がります。体内に入ったロタウイルスが腸管を主とする消化管に感染することで、腸炎を引き起こします。ロタウイルスに感染して回復した場合保菌状態となるため、症状の見られない動物と接触した場合でも感染する可能性があります。

【症状】

ロタウイルスに感染することで発症する腸炎です。潜伏期間は数日で、発症すると黄白色の水様性の下痢や軟便が見られます。まれに発熱や嘔吐、脱水症状が表れる場合もあります。症状は数日から1週間程度続き、その程度は様々です。幼猫に感染しやすい傾向にあります。症状が重度化して脱水症状を引き起こした場合など、死に至る危険性もあります。

【治療・対策】

急性の下痢症状は他に多数の疾患が考えられるため、鑑別が必要になります。下痢便中に多量のウイルスが含まれるため、電子顕微鏡で確認して診断されます。ロタウイルスへの抗ウイルス薬などがないため、対症療法が中心になります。電解質の補給や脱水症状を防ぐための輸液の投与、保温や食餌制限などを行います。また下痢便中には多量のウイルスが含まれるため、その都度消毒が必要です。多頭飼育の場合は、他の猫への感染の確認と、感染猫の隔離を行いましょう。ロタウイルスのワクチンは開発されていません。室内飼育にして感染動物との接触を避けることと、清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ 猫白血病ウイルス感染症(ねこはっけつびょうういるすかんせんしょう)

【原因】

感染した猫との接触が原因です。唾液によって感染すると考えられています。猫同士のケンカや、多頭飼育の場合の食器の共有や舐め合いによって感染します。また妊娠中の母猫の胎盤を通じて子猫に感染するケースもあります。

【症状】

猫白血病ウイルスより引き起こされる感染症です。感染初期には発熱や下痢、食欲不振や体重減少、リンパの腫れ口内炎などの症状が見られます。初期段階でウイルスを排除できない場合はそのまま体内にウイルスが潜伏した状態になります。1~2年くらいの潜伏期間を経てウイルスは再び活性化するケースが多く、リンパ腫や白血病の症状が表れる可能性があります。骨髄に侵入した場合、白血球減少症や再生不良貧血などの症状を引き起こすことで免疫力が低下し、日和見感染や様々な症状が見られます。衰弱した状態になり、死に至る可能性の高い危険な疾患です。

【治療・対策】

感染初期の場合には、二次的な感染を防ぐための抗生物質の投与や、ウイルスを弱めて免疫力を高めるためのインターフェロンの投与が行われます。また進行してリンパ腫などを発症した場合には抗がん剤治療になり、ひどい貧血の場合には輸血が行われます。日和見感染を防ぎ、ストレスを減らすためには清潔で快適な飼育環境を整える必要があります。室内飼育にして他の猫との接触を避け、ワクチンを接種しておくことが予防策になります。


■ 猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)

【原因】

猫伝染性腹膜炎は、コロナウイルスの一種である猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスにより引き起こされる感染症です。多くの猫が猫腸コロナウイルスに感染している可能性が高いため、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスは、腸コロナウイルスが、体内での突然変異により発生すると考えられています。しかし、はっきりしたことは分かっていません。猫コロナウイルスでは、猫腸コロナウイルスは糞便中に、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスは口や鼻からの分泌物や糞便、尿中に排泄され、それらが口や鼻から入り感染しますが、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスを持つ猫すべてで猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症するわけではなく、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスの中でも、その病原性(発症しやすいものか、発症した後にどのぐらい重症になりやすいか)には差があり、発症には感染したウイルスの病原性の高さ(発症しやすさや重症度)と猫の免疫状態などが関連しているとされています。

【症状】

猫伝染性腹膜炎は、症状から・ウェットタイプ・ドライタイプに分けられ、ウェットタイプは滲出型(しんしゅつがた)、ドライタイプは非滲出型(ひしんしゅつがた)主な症状は、・元気消失・食欲不振・発熱・嘔吐・下痢・体重減少・黄疸などです。

【治療・対策】

・血液検査・X線検査・超音波検査・腹水、胸水の検査(ウェットタイプ)・猫コロナウイルス抗体検査(外部機関へ依頼)・尿検査・眼科検査(ブドウ膜炎など眼の症状で)・神経学的検査(神経症状で)・胸水、腹水や病変部の免疫染色。猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断は非常に難しいのが現状です。特にドライタイプでは、ウェットタイプのように胸水や腹水のようなわかりやすい所見がみられない場合もあり、さらに判断を難しくしています。


■ 猫ヘルペスウイルス感染症(ねこへるぺすういるすかんせんしょう)

【原因】

猫ヘルペスウイルス感染症では、猫ヘルペスウイルス1型が病原体となり、さまざまな症状を引き起こします。さらに、症状が回復しても猫の三叉神経の神経節(神経細胞が節状に集まる部分)に潜伏し、抵抗力が弱まると再発します。

【症状】

猫ヘルペスウイルス感染症とは、猫ウイルス性鼻気管炎とも呼ばれ、猫に結膜炎や鼻炎などを引き起こす感染症のひとつですので、症状には、<結膜炎>:・目やにが増える・眼の充血・涙が流れる・結膜が腫れる。<角膜潰瘍・びらん(まれ)呼吸器感染>:・多量の鼻汁・くしゃみ・咳(まれ)・肺炎(重度で)・発熱・食欲不振・元気消失・多量のよだれを垂らすなどがみられます。子猫が初めて猫ヘルペスウイルスに感染し重度の結膜炎になった場合、眼球癒着といって眼球とまぶたや結膜同士がくっついて離れなくなってしまう状態になることもあります。猫ヘルペスウイルス感染症は他にもさまざまな症状と関連していると考えられており、流産、皮膚炎、神経症状や歯肉炎、口内炎なども報告されています。猫ヘルペスウイルス感染症は結膜炎や鼻炎などの上部気道炎を主とし、最初は、くしゃみや眼が赤く涙っぽいなどという症状から始まります。そして、発熱や元気消失、食欲不振などを伴います。 症状は回復してもウイルスは体の中に隠れており、慢性的な鼻炎や結膜炎などにつながることもあります。

【治療・対策】

猫ヘルペスウイルス感染症の検査:・眼科検査・血液検査・X線検査。猫ヘルペスウイルスにはワクチンがあり、完全ではありませんが予防することができます。具体的には、ワクチン接種を行うことで症状の軽減化や発症期間の短縮を図れます。また、猫ヘルペスウイルス感染症は抵抗力が弱まったときに発症するので、過度なストレスを避ける、屋外に出さず(完全室内飼育)感染の機会を減らすなど飼育環境を整えることも大切です。


■ 猫パルボウイルス感染症(ねこぽるぼういるすかんせんしょう)

【原因】

猫パルボウイルス感染症の原因は、パルボウイルスを撃退する免疫を持っていない猫の体内にウイルスが侵入し、感染したことによるものです。感染経路は感染猫の糞便へ直接接触することもあれば、体、被毛や物(食器や床、カーペットなど)に付着したウイルスにより感染することもあります。

【症状】

猫パルボウイルス感染症は、猫汎(はん)白血球減少症、猫伝染性腸炎とも呼ばれ、初期症状は高熱や元気がなく、食欲不振など他の病気でもみられるような症状が現れることが多く、嘔吐や下痢などの消化器症状がこれに続きます。(下痢症状がない場合もある。)感染してもわかりやすい症状は特に現れず、急激に悪化することも多いです。主に、・高熱・元気がなく暗い様子・食欲不振・嘔吐 ・下痢・脱水・体重減少などです。

【治療・対策】

パルボウイルスの子猫の場合、通常、出産後数日間の母乳中にはパルボウイルスに対する母親からの抗体(移行抗体という)が含まれているので、その抗体がある間は感染に対して抵抗力を持ちます。 しかし、その抗体が8~12週間ほどでなくなってくると、免疫力の低い子猫は特にウイルスに感染しやすい状態になります。ただ、移行抗体の量が多い早い時期にワクチンを接種しても免疫が十分に作られないことがあるので、獣医師の指示に従いワクチンを接種しましょう。感染を予防するために一番大切なことは、ワクチン接種を継続してしっかり受けることです。成猫でも、パルボウイルスを撃退する抗体をワクチン接種で十分量体の中に作れる状態にしていないと、ウイルス感染を引き起こします。多頭飼育の場合は、すべての猫にワクチン接種を行いましょう。


■ 大腸菌症(だいちょうきんしょう)

【原因】

大腸菌は猫を含む様々な動物の体内に常在していて、通常は無害です。しかし一部の病原性を持つ大腸菌が体内に侵入して増殖することで発症します。感染経路は、感染動物の排泄物との接触や汚染された食物を食べる事によって経口的に体内に入り、感染・増殖すると考えられます。正常な状態であれば増殖できませんが、病原性大腸菌が大量に侵入したり免疫力が低下していたり、何らかの理由で常在菌が弱体化していたりする場合などには増殖してしまいます。感染して回復した場合も菌が体内に残り保菌化するため、感染源として注意が必要です。

【症状】

大腸菌は猫の体内に常在していて通常は無害ですが、大腸菌はその表面の抗原によって様々な種類に分類され、その中の一部は病原性を示します。それらの大腸菌が体内に侵入して腸管で感染・増殖すると発症します。発熱や食欲不振などに加え、下痢や嘔吐などの消化器症状を表します。下痢の多くは水様性で、感染した大腸菌によっては粘膜や血液が混ざる場合があります。頻繁に便意を示すものの排泄できない状態が見られたり、脱水症状を引き起こしたりして衰弱する場合があります。また大腸菌は腸管細胞を破壊するため敗血症を引き起こす危険性があります。症状の程度は様々で、子猫は重症化しやすいとされています。

【治療・対策】

抗菌剤の投与を行い除菌します。脱水症状対策として輸液を投与したり、栄養補給や保温を行ったりして体力を温存させます。大腸菌のワクチンは開発されていません。感染動物との接触を防ぐために室内飼育をし、食餌は新鮮なものを与えて生肉を与えないようにしましょう。免疫力の低下を防ぐためにストレスの少ない清潔な飼育環境を整えることも予防策です。


■ 狂犬病(きょうけんびょう)

【原因】

狂犬病ウイルスの感染が原因です。狂犬病ウイルスは人を含む全ての哺乳類に感染するため、感染動物から咬まれることによって唾液に含まれるウイルスが伝播していきます。特に犬や猫、きつねやアライグマ、イタチやノネズミなどとの接触による感染が多く見られます。日本では犬に対して狂犬病ウイルスの予防接種を義務化して、輸入動物の検疫を徹底したことで、1957年以降は発生していません。しかしながら海外では、発展途上国を中心に年間数万人もの人々が狂犬病ウイルスによって亡くなっているため、旅行先で感染する場合も考えられます。

【症状】

狂犬病ウイルスの感染によって発症する感染症で、人を含めた全ての哺乳類に感染します。感染後、1週間から1年ほどの潜伏期間があります。多くは1カ月程です。初期症状は食欲不振や挙動不審が表れます。病型は狂躁型と麻痺型に分かれます。狂躁型は噛みつくなどの凶暴性を示し、性格は変わります。唾液にウイルスを含むため、感染した動物に噛みつかれることで感染は広がります。ウイルスが三叉神経や舌下神経まで達すると、水に反応して全身が痙攣する恐水発作を起こすようになります。次第に麻痺状態になり、筋肉の痙攣や嚥下麻痺、異常歩行などの症状が表れます。恐水症状と嚥下麻痺から水を飲めない状態になります。意識障害や運動障害を引き起こし、通常は発症から1週間前後で衰弱して死亡します。麻痺型は沈うつ型とも言われ、凶暴性は示さないものの感染後すぐに麻痺状態になり、昏睡してその多くは数日で死亡します。しかし麻痺型はまれで、感染したほとんどが、狂躁型になります。

【治療・対策】

治療方法は確立されていません。万が一感染した場合は、安楽死させられます。狂犬病ワクチンの接種によって予防できます。猫でも海外渡航時や帰国時にワクチン接種が義務づけられる場合もあります。国内で感染する確率は現状では低いものの、猫を連れて海外へ渡航する場合には注意が必要です。


■ レオウイルス感染症(れおういるすかんせいしょう)

【原因】

レオウイルス科には、レオウイルス以外にロタウイルスやオルビウイルスなどの様々なウイルスが存在し、人を含めた哺乳類や鳥類、魚類や昆虫類、植物にまで広く存在しています。ウイルスは感染動物の唾液や鼻汁、排泄物などに含まれるため、くしゃみでの飛沫感染や排泄物との接触が主な感染経路となります。ウイルスは経口や経気道的に伝播して呼吸器や消化器、神経などを侵し、数日間の潜伏期間を経て発症すると考えられています。

【症状】

レオウイルスは、呼吸器や腸管から分離されたものの病気との関連が不明であるウイルスとされています。感染すると、咳や嘔吐、発熱や食欲不振、くしゃみや鼻水などの呼吸器症状が表れます。進行すれば呼吸困難を引き起こす場合もあります。また胃腸炎、下痢便や血便、腹痛や嘔吐、発熱や食欲不振などの消化器症状も表れます。重度の場合には脱水症状を引き起こす場合もあります。まれに脳炎を引き起こし、てんかん発作や麻痺、運動失調などの症状を表すこともあります。様々な箇所に影響を及ぼしますが、猫では呼吸器症状を表す場合が多いとされています。重症化するケースは少なく回復しますが、ウイルスは体内に残り保菌化すると考えられています。

【治療・対策】

レオウイルスへの抗ウイルス薬はなく、治療方法は確立されておらず対症療法が中心です。電解質の補給や脱水症状を防ぐための輸液の投与、保温などを行い、体力を温存させます。猫では呼吸器症状が表れやすいため、多頭飼育の場合は感染した猫を隔離して、飛沫感染などを防ぐ必要があります。レオウイルスは消毒に比較的弱いとされているので、床面などを次亜塩素酸ソーダ等で消毒するようにしましょう。レオウイルスのワクチンは開発されていません。室内飼育にして感染動物との接触を避けることや清潔な飼育環境を整えることが予防策です。


■ 猫免疫不全ウイルス感染症(ねこめんえきふぜんういるすかんせんしょう)

【原因】

既に感染している猫との接触が原因です。ウイルスは猫の唾液を介して感染するため、最も多い原因は猫同士のケンカでの刺咬です。また交尾による感染は、交尾自体の感染率はそれほど高くないものの、ネックグリップという雄猫が雌猫の首元に噛みつく行為が感染の大きな原因と推察されます。ウイルスの感染力が弱いため、食器の共有やグルーミングでは感染しないとされています。しかし多頭飼育の場合ケンカやじゃれ合いによって感染が拡大している可能性が考えられます。また母体の胎盤を通しての子猫への感染もあります。

【症状】

ネコエイズとも呼ばれ、免疫機能を低下させるため様々な病気にかかりやすくなります。症状は急性期、無症状キャリア期(潜伏期)、エイズ発症期によって異なります。感染後の数か月が急性期では、発熱や全身のリンパの腫れ、下痢などの症状が表れますが無症状の場合もあります。次の無症状キャリア期は、症状は表れませんが病態がゆっくりと進行して、免疫力の低下に伴って口腔内のトラブルや鼻炎、結膜炎や慢性の下痢などの症状が表れます。期間は4~10年以上と様々です。エイズ発症期では、口腔内トラブルや慢性の下痢などの症状が悪化して、体重減少や免疫力低下による日和見感染、悪性腫瘍が発生します。様々な臓器にも影響を与え、痩せ細り衰弱して最終的に死に至ります。

【治療・対策】

抗ウイルス薬はありません。また、治療方法も確立されていません。対症療法を中心に行います。口腔内であれば抗生物質や抗炎症剤の投与、慢性的な下痢であれば抗菌剤や抗真菌剤の投与が行われます。発症期には骨髄が侵されて貧血が見られることも多く、輸血を行う場合もあります。また免疫力を高めるインターフェロンの投与も行い、他疾患を発症した場合はそれに合わせた治療を行います。猫免疫不全ウイルスに対するワクチンは日本では使用されておらず、進行をふせぐためには、室内飼育にして他の猫との接触を避け、ストレスの少ない飼育環境を整えることが予防策です。


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