ホルモンの病気

■ クッシング症候群(くっしんぐしょうこうぐん)

【原因】

ホルモンバランスが崩れていることによって引き起こされる病気に「クッシング症候群」という病気があります。このクッシング症候群は「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれ、ホルモンのひとつ「副腎皮質ホルモン(コルチゾール)」の過剰分泌によって起きるホルモンの病気です。

【症状】

クッシング症候群の場合、この糖尿病の症状と似た状態となり、さらには「お腹が膨れている」ことが挙げられ、「脱毛が著しく増える」「皮膚が薄くなる」といった特徴が見られます。また、脱毛の特徴として左右対称に脱毛していくことや、皮膚が薄くなることに加え、血管が見えるほどに皮膚が透けるようになっていきます。こうした皮膚の異常から、皮膚が裂け出血をしてしまうこともあります。このほか、皮膚が黒ずんでいくこともあります。

【治療・対策】

クッシング症候群の原因は、「炎症の制御・免疫の反応」や「炭水化物を代謝する」など、体の様々な部分に影響を与えている「副腎皮質ホルモン」の過剰分泌によって引き起こされることが原因となっています。さらには、糖尿病を併発してしまう場合も少なくありません。残念ながらクッシング症候群に有効な予防策はなく、早期発見・早期治療が一番の対抗策となります。年齢も高齢になるにしたがってクッシング症候群を発症する場合が多いので、「高齢による脱毛」や「高齢による皮膚の異常」と思ってしまう場合や、先にも挙げた食欲の増進による「お腹の膨らみ」と思ってしまう場合などと、非常に判断がしにくいので、それぞれの症状に当てはまるようであれば、一度、病院で検査をしてみても良いかもしれません。

■ 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

【原因】

甲状腺に良性または悪性の腫瘍や腺腫瘍過形成ができることによって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるのが原因です。腫瘍や腺腫瘍過形成が発生するメカニズムは解明されていません。6~10歳以上の高齢の猫に多く見られるのも特徴です。また以前はほとんど症例がなかったものが、近年増えてきていることから、環境の影響があると推察されています。

【症状】

甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌が異常に活発になる状態で、様々な症状を引き起こします。活動が活発になり、食欲旺盛だが痩せる、多飲多尿、攻撃的になる、嘔吐や下痢、毛ツヤが悪くなるなどが主な症状です。進行すれば食欲不振や活動低下が見られ、心筋症を引き起こす場合もあります。一見元気が良いように思え疾患に気づきにくいため、食べるのに痩せてきたり性格が変わったように感じたりした場合には甲状腺機能亢進症を疑う必要があります。また普段は触ることのできない甲状腺が、腫大して触れるようになるのも特徴です。

【治療・対策】

外科手術で腫瘍の切除を行う場合や、抗甲状腺薬剤の投与を行う場合があります。外科手術の際、もし左右にある2つの甲状腺両方を切除すると一生涯ホルモン投与が必要になるため、注意が必要です。また切除手術を行わず、抗甲状腺薬剤を投与する場合は、原因の腫瘍がなくならないため、一生涯投与が必要になります。予防方法はありませんが、日頃から猫の様子をよく観察しておき、早く異変に気づいて対応することが大切です。

■ 甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)

【原因】

先天性の場合と後天性の場合がありますが、ほとんどは後天性です。後天性の場合、自己免疫システムの乱れによる甲状腺への攻撃、甲状腺の委縮、他の疾病の治療の影響が原因と考えられています。自己免疫システムの乱れや萎縮の原因は解明されていません。基礎疾病の治療のために、両側の甲状腺の切除手術を行った場合や、抗甲状腺薬を過剰に投与した場合には、機能の低下が見られます。またストレスによって甲状腺ホルモンの分泌が低下する場合があるとも考えられています。

【症状】

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの機能が低下している状態で、様々な症状を引き起こします。元気がなくなる、食欲不振、肥満、脱毛、体温と血圧・心拍数の低下、毛ツヤが悪くなるなどが主な症状です。進行すれば脂漏症や膿皮症などの皮膚病を引き起こしたり、食欲不振による栄養状態の悪化、除脈を引き起こしたりして死に至る危険性もあります。老化の症状と見分けがつきにくく、発見が遅れる可能性もあるので注意が必要です。猫における甲状腺機能低下症は極めてまれです。

【治療・対策】

投薬治療が一般的です。甲状腺ホルモン薬を与えることで症状を改善できますが、与える量によっては甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があるので、症状を確認しながら量を調整していく必要があります。また基礎疾病の影響がある場合には、その治療を行います。予防方法はありません。

■ 尿崩症(にょうほうしょう)

【原因】

猫の尿崩症は抗利尿ホルモンが関係して発症します。抗利尿ホルモンは脳で生成されて脳下垂体を通り、腎臓に作用します。そのため尿崩症の主な原因は脳や腎臓の異常となります。まず脳の異常については抗利尿ホルモンを生成する役割を担う視床下部や抗利尿ホルモンの通り道となる脳下垂体に炎症や腫瘍が生じていると尿崩症を起こす原因となります。このように発症する尿崩症は中枢性尿崩症といいます。以下に上げる疾患が原因で引き起こされる尿崩症を腎性尿崩症といいます。慢性腎不全、高カリウム血症、低カリウム血症、腎盂腎炎、クッシング症候群、子宮蓄膿症。利尿薬や抗痙攣薬、ステロイドなどの薬によって尿崩症を発症することもあります。

【症状】

猫の尿崩症の主な症状は多飲多尿です。水を飲む量が著しく増加し1回あたりの尿の量が増加しているときには尿崩症を発症している可能性を疑ってください。多飲多尿については異変を察知しやすい症状といえます。日頃から飼い猫をしっかりと観察していれば猫に表れている変化に気付いてあげられる可能性が高まりますので、猫を観察することを習慣化してあげてください。とはいえ四六時中飼い猫のそばに居ることは難しいと思われます。そのような場合は猫が1日に飲んだ水の量を計測することが有効です。朝の時点で毎日決まった量の水を容器に入れるようにするなどの方法で猫が飲んだ水の量を把握できるので実践してみてください。

【治療・対策】

尿崩症の治療は原因に応じた形で施されます。抗利尿ホルモンの異常の場合には、定期的に抗利尿ホルモンが投与されたり、腫瘍を切除したりするための外科手術が行われる場合もあります。腎臓の異常の場合は、影響している疾患の治療や薬剤の投与量の調整が行われます。日頃から腎臓に負担をかけないような食餌を与え、水を飲む量や尿量を把握して早期に異常に気づけるようにしましょう。

■ 上皮小体機能低下症(じょうひしょうたいきのうていかしょう)

【原因】

上皮小体の異常または、甲状腺の部分切除が原因と考えられます。上皮小体の異常は、腫瘍ができたり炎症を起こしたりしているため、ホルモンの分泌量が減少して低下症を引き起こす場合があります。甲状腺の部分切除は、腫瘍の切除などのために甲状腺自体を部分切除したために、ホルモンの分泌量が減少して低下症を引き起こす場合があります。以前に甲状腺機能亢進症を発症し、腫瘍の切除手術を行った場合などに起こると考えられます。

【症状】

上皮小体(副甲状腺)のホルモン作用が低下している状態で、様々な症状を引き起こします。上皮小体ホルモンはパラトルモンと呼ばれ、主に血液中のカルシウム濃度増加の働きを担っています。そのため作用が低下することで神経過敏、全身性テタニー(筋肉の持続的硬直・痙攣)、元気がない、骨密度の低下、麻痺などの症状が表れます。テタニーはてんかんの発作ほど激しくないものの急に発現し、ストレスや運動によって誘発される傾向があるとされています。

【治療・対策】

血液中のカルシウム濃度を適正にするために、カルシウムとビタミンDの補給を行います。カルシウムは補給しすぎると高カルシウム血症を引き起こす場合もあるため、症状を見ながら調整が必要になります。腸管からのカルシウム吸収を促すビタミンDも合わせて補給します。また補給は一生涯必要になります。発作や麻痺の症状が表れる場合には、グルコン酸カルシウムなどを静脈に投与する場合もあります。また基礎疾患が影響している場合は、それに対する治療を行います。

■ 糖尿病(とうにょうびょう)

【原因】

猫の糖尿病には、糖尿病の症状が一時的に出る場合と、慢性的に糖尿病になる場合の2つがあります。はっきりとした原因はわからないことが多く、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。「肥満」「長期間のストレス」「膵臓の病気」「薬の影響」「遺伝的疾患」「自己免疫疾患」などが要因とされています。また、老化に伴う「内分泌機能の低下」「運動量の低下」によっても糖尿病の発症リスクは上がるといわれており、9歳を超えた老猫は特に発症しやすい傾向にあります。

【症状】

初期症状としては、「飲水量が増えて尿量が増す(多飲多尿)」、「食欲があるのに体重が減少する」といった症状がみられます。症状が進行すると、血液中にケトン体という有害な物質が生じてケトアシドーシスという状態になり、嘔吐や下痢などの症状を引き起こし、さらに重症になると神経障害や昏睡などを起こし、死に至ることもあります。また、高血糖が長く続くと、さまざまな臓器に障害が出てきます。ワンちゃんでは白内障や腎臓疾患、ネコちゃんでは神経障害による後肢の運動失調、その他には肝疾患、細菌感染症などの合併症がみられることもあります。

【治療・対策】

インスリンに反応するタイプの糖尿病の場合には、必要に応じてインスリンの投与を行います。またインスリンに反応する、しないにかかわらず、生活習慣の改善や食事療法、運動療法などによる血糖値のコントロールを行います。基礎疾患や併発疾患が血糖値のコントロールに影響が出ることが多いため、これらの治療も同時に行います。現在のところ、ワンちゃんやネコちゃんに利用できるインスリンは数種類あり、種類によって「最もよく効果が表れるまでの時間」や「効果が持続する時間」が異なります。 また、それぞれのどうぶつの体格や食事量、食事の種類、食べ方、運動量など、さまざまな要因によってインスリンの必要量や投与回数も変わってきます。そのため、糖尿病のどうぶつそれぞれに最も合ったインスリンの種類、投与量、投与間隔を通常、数日間入院して調べます。具体的にはインスリンを皮下注射したあと、数時間置いて血糖値を測定し血糖曲線(血糖値の変動をグラフにしたもの)を作成します。その結果をもとにインスリンの効果を評価し、最も適正な血糖値が維持できるインスリンの種類、投与量、投与間隔を決定します。インスリン投与の方針がある程度決まったら、基本的には自宅で1日1回あるいは2回、インスリンを皮下注射して血糖値をコントロールしていきます。食事量や運動量によってもインスリンの効果は変わってきますので、できるだけ規則正しく食事量や運動量が一定になるように心がける必要があります。Ⅰ型に近い糖尿病の場合には生涯インスリンの投与が必要になりますが、Ⅱ型に近い糖尿病や併発疾患を伴う糖尿病の場合には、減量や生活習慣の改善、併発疾患の治療等によって、インスリンの投与量を減らし、食事療法のみで維持することが可能になることもあります。

■ 上皮小体機能亢進症(じょうひしょうたいきのうこうしんしょう)

【原因】

原因は、原発性、栄養性、腎性の3つが考えられます。原発性は、腫瘍ができたり炎症を起こしたりしているため、ホルモンの分泌量が過剰になり亢進症を引き起こすと考えられます。栄養性は食餌がカルシウム不足やカルシウムとリンのバランスが悪い、ビタミンDの不足などになった場合に引き起こされます。またカルシウム吸収要因の日光不足も原因となります。腎性は腎機能が低下して尿中にカルシウムが排出されてしまったり、ビタミンD生成不足になったりして血中カルシウム濃度が低くなり、ホルモンが過剰に分泌されると考えられます。

【症状】

上皮小体(副甲状腺)のホルモン作用が強まっている状態で、様々な症状を引き起こします。上皮小体ホルモンはパラトルモンと呼ばれ、主に血液中のカルシウム濃度増加の働きを担っています。そのため作用が強まると、骨密度の低下、筋肉の萎縮、尿結石などの症状に加え、高カルシウム血症の症状である多飲多尿、食欲不振、嘔吐などの症状が表れる場合があります。発育中の幼猫が発症した場合、背骨が変形して神経が麻痺する可能性もあります。

【治療・対策】

原発性の場合、腫瘍の切除手術を行い、切除後に必要であればカルシウムの補給を行います。栄養性の場合、食餌の見直しを行い、カルシウムを適度に含みカルシウムとリンが1:1になるように改善します。市販の総合栄養食のキャットフードであれば、通常栄養バランスが保てるように作られています。ビタミンDも不足していれば補います。腎性の場合、基礎疾患が影響していればその治療を行います。カルシウム濃度が調整できなくなっている場合には、カルシウムとビタミンDの補給とリンの抑制を行い調整します。


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