排尿器の病気

■ 結晶尿(けっしょうにょう)

【原因】

猫では少ない<ストルバイト結晶>は、膀胱で増殖したウレアーゼ産生菌という細菌が出す物質により尿がアルカリ性に傾くことで、尿中に結晶が出る場合があります。そのため、細菌性膀胱炎を治療し細菌が無くなれば、尿のpHが正常になり、ストルバイト結晶もなくなることがあります。これとは別に、細菌が原因でない結晶尿に関しては、はっきりとした原因は分かっていません。おそらく、食事のバランスや血統(体質)などが結晶のできやすさに関わっているのではないかと考えられています。

【症状】

血液中の老廃物を濾しとる役割を担う糸球体が、炎症を起こしている状態です。炎症を起こすことで、糸球体でろ過した原尿量の減少や、タンパク質が原尿に漏れ出すようになります。症状は急性腎不全・慢性腎不全と同じ症状が表れます。主な症状は、食欲不振、嘔吐、腎機能の低下による貧血、高血圧による眼底出血や網膜剥離などです。進行すれば神経障害を引き起こす場合があります。またタンパク尿が見られ、重度の場合は血管内での凝固を防ぐための成分が尿中に排出され、血栓症を引き起こす場合もあります。

【治療・対策】

尿検査によってタンパク尿が見られるかどうかで診断されます。その段階で下部尿路疾患と区別できないため、腎組織検査で確定診断がされます。腎不全に対する治療が中心です。他に基礎疾患の影響が見られる場合は、その治療を行います。免疫抑制剤が有効と考えられていますが、まだその効果は実証されていません。感染症を防ぐために、ワクチンの接種や室内飼育にして他の猫との接触を避けることが予防策です。

■ 腎不全(じんふぜん)

【原因】

腎不全は、排尿の異常と、腎臓への血流の低下が主な原因と考えられます。排尿の異常で多く見られる原因としては、猫の下部尿路症候群があります。尿結石や細菌感染によって尿道が炎症を起こしたり閉鎖されたりしてしまい、尿毒症を引き起こす場合があります。事故などにより尿路を損傷した場合も原因となります。腎臓への血液量の低下は心不全や心筋症によるものや、熱中症などで脱水状態になった場合、また事故などで大量に出血した場合などが考えられます。その他に中毒によって腎臓に支障をきたす場合も考えられます。

【症状】

腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全に分けられ、症状が異なります。急性腎不全は急激に腎臓の働きが低下して、尿の量が極端に減ったり、全く出なくなったりします。食欲不振、嘔吐などの症状が表れます。進行すれば体温の低下、尿毒症、高窒素血症、代謝性アシドーシスなどを引き起こし、昏睡状態に陥り死に至る危険性があります。慢性腎不全が急激に悪化する場合もありますが、何の前触れもなく突然発症するケースが多く見られます。

【治療・対策】

原因によって治療法は異なります。例えば、尿毒症を引き起こしている時は、ろ過を助けるための輸液の投与や輸血、点滴や透析を行ったりします。尿路が閉鎖していたり損傷が見られたりする場合には、手術を行う場合もあります。細菌感染を防ぐためのワクチンの接種、下部尿路症候群を防ぐための食餌の管理、中毒を防ぐための環境整備が予防策になります。急性腎不全は急激に症状が悪化するため、日頃から猫の様子をよく見ておき、すぐ異変に気づいて対処できるようにしておきましょう。

■ 下部尿路感染症(かぶにょうろかんせんしょう)

【原因】

ウイルスや細菌の感染によって炎症が起こることが原因です。ウイルスや細菌は、体外から侵入してきて尿道に入り、膀胱に至ります。さらに進行して腎臓に至ると、腎盂腎炎を引き起こす可能性があります。尿道が太くて短い雌に起こりやすい傾向にあります。結石あるなど、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスへの感染が、ウイルスや細菌の感染の原因疾患となっていると考えられます。

【症状】

膀胱炎や尿道炎が下部尿路感染症にあたります。血尿や頻尿、尿の色が濃く濁っている、臭い、発熱や食欲不振、尿が出ないなどの症状が表れます。進行すれば尿道閉塞を引き起こしやすく、雌猫の方が発症しやすい傾向にありますが、雄猫は尿道が長く細いため注意が必要です。炎症を伴う場合には痛みがあり、何度も排泄したり、しきりに陰部を舐めたりするようになります。進行すると、尿道閉塞による尿毒症や腎盂腎炎を引き起こす可能性があるので、早期の対応が必要です。

【治療・対策】

尿検査を行い、尿中の細菌や白血球、赤血球を確認して診断されます。抗生物質を投与して感染を抑えるのが一般的です。尿が排出されない状態であれば、尿道カテーテルでの排出を行う場合もあります。また出血が多い場合は止血剤を投与することもあります。結石や腫瘍がある場合、外科的手術で摘出しり、基礎疾患の影響があればその治療を行います。原因となる結石化を防ぐために、栄養バランスの良い食餌と飲水量に気をつけて、ストレスの少ない飼育環境を整えることが予防策になります。

■ 高窒素血症・尿毒症(こうちっそけっしょう・にょうどくそ)

【原因】

腎機能が低下したことで、老廃物が体内に蓄積されることが原因です。腎機能の低下の原因としては、猫の下部尿路症候群などによる排尿の異常と、腎臓への血流の低下が主な原因と考えられます。腎臓への血液量の低下は心不全や心筋症によるものや、熱中症などで脱水状態になった場合、また事故などで大量に出血した場合などが考えられます。その他に中毒によって腎臓に支障をきたす場合も考えられます。また糸球体腎炎や腎盂腎炎、多発性嚢胞腎、腫瘍、高カルシウム血症や低カリウム血症など、様々な腎疾患の影響も考えられます。

【症状】

通常腎臓から排出される尿素や窒素などの老廃物が、腎機能の著しい低下により体内に蓄積することで、高窒素血症が起こります。この高窒素血症の状態が続くことで、有害な尿毒素が体内に蓄積し、尿毒症が起こります。食欲不振や嘔吐、下痢や便秘、口臭(アンモニア臭)、体重減少、脱水症状、毛ツヤが悪くなる、貧血や不整脈などの症状が表れます。進行すると、痙攣や意識場外を起こして昏睡状態に陥り、死に至る危険性があります。

【治療・対策】

尿毒症を引き起こしている場合、ろ過を助けるための輸液の投与や輸血、点滴や透析を行ったりします。尿路が閉鎖していたり損傷が見られたりする場合には、外科手術を行います。症状が改善されない場合には、血液透析や腹膜透析を行う場合もあります。慢性腎不全の場合、食欲があれば低タンパク食とミネラルバランスをとれるようにする食餌療法を行い、基礎疾患の治療も行います。細菌感染を防ぐためのワクチンの接種、下部尿路症候群を防ぐための食餌の管理、中毒を防ぐための環境整備が予防策になります。

■ ネフローゼ症候群(ねふろーぜしょうこうぐん)

【原因】

糸球体腎炎や腎アミロイドーシスが主な原因です。糸球体腎炎を発症する原因は、免疫や遺伝子との関連が推察されていますが、原因は解明されていません。アミロイドーシスとは蛋白質様物質がいろんな臓器に沈着する病気で、腎アミロイドーシスを発症する原因は先天的要因と炎症疾患が影響していると推察されていますが、原因が不明なケースも多くあります。また免疫異常や循環器疾患などの影響も推察されています。

【症状】

タンパク尿やアルブミン血症、高コレステロール血症、浮腫や腹水などの症状が見られる腎臓疾患をまとめたものです。糸球体腎炎や腎アミロイドーシスが疾患名としてあげられます。症状は、糸球体腎炎や腎アミロイドーシスの症状が表れるため、タンパク尿や低タンパク血症、血中のコレステロール値の上昇、食欲不振などが主な症状です。それに加えて、腹水による腹部の下垂や足のむくみなどの症状が表れます。また肺血栓症を引き起こして呼吸困難になり、大腿動脈などの血栓症による麻痺症状が表れる場合もあります。

【治療・対策】

糸球体腎炎や腎アミロイドーシスの治療方法を用いて、食餌療法と運動制限を行います。糸球体への負担を減らすために、低タンパクの食餌を与えます。症状に応じて、たまった腹水を抜き、血栓化を防ぐための薬を投与する場合もあります。高血圧の場合は、食餌のナトリウムを抑え、血管拡張剤を投与する場合もあります。

■ 血尿症(けつにょうしょう)

【原因】

膀胱炎や結石症、腎臓疾患や腎臓腫瘍が原因で発症します。最も多い膀胱炎では、尿道からウイルスや細菌が侵入して膀胱に達することで発症したり、結石などによって膀胱が傷つけられて発症したりします。結石症は食餌の栄養バランスの偏りや飲水量、ストレスが原因と考えられます。食餌の栄養バランスが偏ることで尿が酸性またはアルカリ性になります。

【症状】

尿に血液が混じっている状態です。原因が膀胱炎や結石症であるため、膀胱炎と結石症の症状である、血尿に加えて、食欲不振や発熱、尿の色が濃く濁る、強い臭い、尿の回数が増えるなどの症状が表れます。また腎臓腎炎によって血尿が見られる場合もあり、多飲多尿や食欲不振、発熱や嘔吐などの症状が表れます。

【治療・対策】

結石化が起こりやすくなります。また特発性腎出血の場合も腎臓からの出血による血尿が見られますが、発症の原因は解明されていません。

■腎周囲偽嚢胞(じんしゅういぎのうほう)

【原因】

原因は、解明されていませんが、高齢の猫に発症するケースが多く、腎臓の片側にだけ発症する場合と両側に発症する場合があります。

【症状】

腎臓と、腎臓の周りを覆う被膜の間に液体が溜まっている状態です。液体は滲出液や血液、尿などで構成されています。主な症状は腹部の腫れで、痛みは伴いません。腎不全を伴う場合もあるため、注意が必要です。

【治療・対策】

X線検査や超音波検査で診断されます。治療は定期的にたまった液体を吸引したり、外科手術を行ったり、腎被膜の切除をする場合があります。症状によっては、治療を必要としない場合もあります。また腎不全を伴うケースもあるため、発症していないかを定期的に確認する必要があります。

■ 糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)

【原因】

原因は解明されていません。免疫が関係していると推察され、猫伝染性腹膜炎や猫白血病ウイルス感染症、リンパ腫や全身性エリテマトーデス、骨髄増殖性疾患との関連が知られています。また遺伝子との関連も推察されています。

【症状】

血液中の老廃物を濾しとる役割を担う糸球体が、炎症を起こしている状態です。炎症を起こすことで、糸球体でろ過した原尿量の減少や、タンパク質が原尿に漏れ出すようになります。症状は急性腎不全・慢性腎不全と同じ症状が表れます。主な症状は、食欲不振、嘔吐、腎機能の低下による貧血、高血圧による眼底出血や網膜剥離などです。進行すれば神経障害を引き起こす場合があります。またタンパク尿が見られ、重度の場合は血管内での凝固を防ぐための成分が尿中に排出され、血栓症を引き起こす場合もあります。

【治療・対策】

尿検査によってタンパク尿が見られるかどうかで診断されます。その段階で下部尿路疾患と区別できないため、腎組織検査で確定診断がされます。腎不全に対する治療が中心です。他に基礎疾患の影響が見られる場合は、その治療を行います。免疫抑制剤が有効と考えられていますが、まだその効果は実証されていません。感染症を防ぐために、ワクチンの接種や室内飼育にして他の猫との接触を避けることが予防策です。

■ 糸多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)

【原因】

ネコ1000頭に1頭の割合で多発性嚢胞腎をもつと推測されています。ネコE3染色体に含まれる「PKD1」と呼ばれる遺伝子の変異で引き起こされることが判明しています。ペルシャなどの長毛の猫に発症する傾向があり、遺伝性の疾患と考えられています。

【症状】

両側の腎臓に嚢胞ができ、それが3個以上になると多発性嚢胞腎となります。嚢胞は内部に液状成分を持ち、単層の上皮に覆われた球状の嚢様構造物です。嚢胞が大きくなることで腹部が腫れたり、嚢胞が腎臓を圧迫して腎不全を引き起こしたりします。腹部に触れると腎臓の腫れが分かる場合もありますが、通常痛みは伴いません。腎不全を引き起こすと、食欲不振や多飲多尿などの症状が表れます。

【治療・対策】

液体成分の吸引:嚢胞が巨大化して他の臓器を圧迫したり、痛みを引き起こしたりするような場合は、中に含まれる液体成分を吸引してサイズを縮めることがあります。しかし月に数回の割合で定期的に行う必要がありますので、猫にとって負担になることは間違いありません。投薬治療:腎臓が細菌感染によって炎症を起こしているような場合は抗生物質が投与されます。外科手術:嚢胞が片方の腎臓にだけ存在し、なおかつ腎不全の症状が見られないような場合は、嚢胞がある方の腎臓を摘出してしまうことがあります。しかし残された方の腎臓に障害が起こると終わりですので、慎重に判断しなければなりません。また多くの症例が両側性であるペルシャでは推奨されません。腎不全のコントロール:嚢胞の数が増えたり、サイズが大きくなったり、腎実質を圧迫して濾過機能を低下させ、慢性腎不全を引き起こします。腎臓の中から嚢胞だけをきれいに切除することはできませんので、腎不全をコントロールしながら病気と付き合っていく必要があります。

■ 膀胱腫瘍(ぼうこうしゅよう)

【原因】

原因は解明されていません。猫での発症はまれです。人間の場合は、喫煙や有機溶媒の吸引が膀胱がんの発生に関連しています。動物の場合も合成添加物を使っていたり、農薬が残っているような食品を与えたりすることは控えていただく事をお勧めします。

【症状】

膀胱で見られる腫瘍は様々で、悪性のものでは移行上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、平滑筋肉腫などがあり、良性のものでは平滑筋腫や乳頭腫があります。猫に発生する膀胱腫瘍は悪性の場合が多く、そのほとんどは移行上皮がんです。その症状は膀胱炎に類似し、血尿や頻尿、痛みによる排尿困難などの症状が表れます。腫瘍が肥大化して尿管を塞ぐことで腎不全を引き起こし、悪性腫瘍が尿道や尿管に浸潤してリンパ節や骨などに転移する場合もあります。また移行上皮がんは、腎臓や尿道、尿管や前立腺などにも発症が見られます。

【治療・対策】

X線検査や超音波検査、尿検査によって診断されます。症状が軽度であれば、外科手術で腫瘍の切除を行います。進行していると膀胱全体を摘出する場合もあります。切除が行えない場合は消炎薬などを投与したり、放射線治療を行ったりします。日頃から尿の回数や量を把握しておき、早く異変に気づいて対応できるようにしておきましょう.

■ 膀胱結石(ぼうこうけっせき)

【原因】

原因は解明されていません。免疫が関係していると推察され、猫伝染性腹膜炎や猫白血病ウイルス感染症、リンパ腫や全身性エリテマトーデス、骨髄増殖性疾患との関連が知られています。また遺伝子との関連も推察されています。

【症状】

結石ができると、愛猫の様子が変わることがあります。膀胱結石では結石が刺激になったり細菌感染が起こったりして膀胱炎となります。・何回も排尿する・排尿姿勢を何度もとる(尿はほとんど出ないか少量)・尿量が少ない・血尿・トイレ以外の場所での排尿・外陰部を気にして舐めるなど、普段と違う症が現れます。また、それとは逆に、分かるような症状がないこともありますので、定期的な健康診断は重要です。

【治療・対策】

日頃から、飲水させる工夫が必要です。猫は気に入った場所や状態でないと水をあまり飲まないことがあります。例えば、流れている水がいい、お風呂のお湯や水を好むなど、嗜好性があります。水を循環させて流水を発生させる飲水器を使うなど、こまめに水を変えることや、お風呂で水を飲むことが好きな場合は、飲めるようにしておくなど、猫の好みを観察し、工夫しましょう。十分な量を飲水することは十分な尿量につながり、排尿により膀胱内を洗い流すという尿の大事な働きのひとつを正常に機能させることができます。また、質の良い食事を与える。排泄の把握ができる環境で飼う事も大事です。膀胱結石や泌尿器関係の異常に気付くのにまず必要なのが、排泄の把握です。屋外に出ての排泄では、把握ができません。室内飼育であれば排泄状況の把握がしやすくなります。排泄の異常が分からないと症状の発見が遅れることになり、尿道閉塞などの緊急性のある病気では特に重要になります。 結晶尿の早期発見・早期治療は、結晶尿になっているときは膀胱内で結石が形成されやすい状態になっています。治療を行うことで結晶や結石ができにくい状態に持って行くこと、そして結晶や結石ができやすい体質であれば、そのことを定期的な検査や治療などを通して把握し、対策することができます。

■ 排尿障害(はいにょうしょうがい)

【原因】

排尿は、自律神経と体性神経に支配され、排尿障害の原因は多様です。排尿に関わる神経を損傷したことによるもの、物理的に尿道が閉塞したもの、排尿筋の損傷、炎症による刺激など多岐にわたります。・脊髄障害(外傷や交通事故)・骨盤部に及ぶ骨折、外傷や手術・尿道閉塞・排尿筋の損傷による収縮不全・膀胱炎、尿道炎、膀胱結石などによる刺激・反射性筋失調・先天性異常・老齢性失禁・大脳、小脳疾患によるものなどです。

【症状】

排尿障害は、二つに分類して考えていきます。膀胱が拡張する場合と、そうでない場合です。膨満した膀胱を伴う尿貯留には、神経学的障害と解剖学的な閉鎖性障害があります。神経学的な障害は、脊髄と骨盤神経に圧迫、損傷、変性などを引き起こす疾患で起こりうるものです。上位運動ニューロン障害、下位運動ニューロン障害、反射性失調、機能的尿道閉塞があります。膀胱が長時間過度に拡張すると、膀胱排尿筋の興奮が低下して、神経学的失禁が起こります。自律神経障害でも、下位運動ニューロン障害性の失禁が起こって、排尿筋の衰弱と不全を伴います。尿漏れや失禁は、収縮性の亢進や尿道流出抵抗の低下によるものなので、一般的には、膀胱の拡張はみられません。異所性尿管や膣狭窄などの先天異常でも、膀胱の拡張を伴わない尿失禁が起こりえます。尿失禁は、尿貯留があっても、膀胱内圧が流出抵抗を上回ると起こります。尿道が閉塞気味であれば、尿が漏れるという、矛盾した所見となり、矛盾性失禁や尿が溢れる状態であることから、溢流性失禁とも言います。

【治療・対策】

排尿障害の中には結晶尿や膀胱炎、膀胱結石から尿道閉塞を引き起こす例があります。尿道閉塞は結晶尿や膀胱炎などを早期発見し、しっかり治療を行えば防げることも多いです。排尿障害は排泄状況を日ごろから把握しておくことで早期発見ができます。

■ 尿毒症(にょうどくそ)

【原因】

腎臓自体の異常と心臓の異常による血流の低下による排尿の異常が主な原因と考えられます。腎臓の異常は、腫瘍や炎症、中毒などにより腎機能に支障をきたすことが原因になり、腎不全や糸球体腎炎などの疾患を引き起こされている場合もあります。心臓の異常は、心不全や心筋症などによって腎臓に送られる血液量が低下することが原因になります。排尿の異常は、下部尿路症候群によって尿を上手く排出できないことが原因になります。

【症状】

何らかの原因により、尿として排出されるはずの有害物質が血中に残り、濃度が高まっている状態です。血液を通して全身へ運ばれ、臓器に様々な影響を与える危険性があります。腎不全を発症した結果、尿毒症になるケースが多く見られ、食欲低下や下痢、嘔吐や貧血、口臭(アンモニア臭)や便秘、ふらつきなどの症状が表れます。進行すれば体温が低下して痙攣を起こし、昏睡状態に陥って死に至る可能性があります。

【治療・対策】

血液検査を行い、血液中の窒素化合物などの量を測定することで進行状況を把握することができます。点滴を行い、大量の水分を体内に送ることで有毒物質の排出を促します。状況に応じて利尿剤を投与したり、血液透析や腹膜透析を行ったりする場合もあります。また、結石による尿路の閉鎖や損傷が見られる場合は、外科的手術を行ったり、血液量が著しく低下している場合には、輸血を行ったりします。腎臓に負担をかけないような食餌や、細菌感染を防ぐワクチンの接種が予防策です。尿毒症は、死に至る危険性もあるため、日頃から猫の様子を観察し、異変に気づいて対処できことが重要です。

■ 尿道閉塞(にょうどうへいそく)

【原因】

猫の尿道閉塞の最も多い原因は、膀胱や尿道の炎症により出てきたかけら、膿や粘液、結晶尿からの結晶などがかたまった尿道栓子(にょうどうせんし)が栓となり尿道を塞ぐことです。他には結石、腫瘍(しゅよう)、尿道炎により尿道の途中で組織が盛り上がり尿道が狭くなることなどが原因として挙げられます。

【症状】

尿道閉塞は、尿道が塞がれることによって尿が出なくなる症状です。よって猫は、排尿姿勢をしきりに取りますが、尿がぽたぽた垂れる、あるいは全く出ない状態になります。排尿できず膀胱が最大限に張った状態になるので、強い痛みを伴います。そして、時間が経過すると排尿できないことにより急性腎不全や尿毒症が進行していきます。症状は、・しきりに排尿姿勢はとるがほとんど、あるいは全く尿が出ない・異常な鳴き声を上げる・外陰部をしきりに舐める・暗いところや家具の後ろなどに隠れる・体を触ると嫌がる、怒る・しんどそうに呼吸をする・食欲不振・元気消失・嘔吐・ぐったりする。など。

【治療・対策】

尿道閉塞の予防方法は、・水をよく飲むように工夫する・トイレをこまめにきれいにし、十分な数を用意する・膀胱炎、結石、結晶尿の早期治療または継続治療。など。そして尿道閉塞になってしまった場合、最も大切なのは早期発見し、なるべく早く閉塞を解除し結晶尿や膀胱結石、腎不全などがあればその治療を行うことです。そのためには、・日頃から、排泄状況の把握・異常があればすぐに受診などが非常に重要になります。

■ 尿管結石(にょうかんけっせき)

【原因】

尿管結石のある猫では腎結石もよくみられ、腎結石が尿管へと流れて尿管結石となることもありますが、腎結石や尿管結石ができる直接のメカニズムは分かっていません。猫の尿管結石は主にシュウ酸カルシウムという成分でできていることが多いといわれています。シュウ酸カルシウムはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と並び、結晶尿や結石でみられる主な二つの成分のうちのひとつです。(※これらの成分の詳細は「猫の結晶尿」の記事を参照してください)尿管結石で行われる検査は以下のようなものが挙げられます。

【症状】

尿管結石の症状でよくみられるのは食欲不振と元気消失です。他には血尿や頻尿など排尿の異常がみられたり、膀胱結石や結石が尿道に詰まる尿道閉塞を同時に併発したりすることがあります。 尿管結石の症状:・食欲不振・元気消失・血尿・頻尿・嘔吐・腹痛・尿が出ない。など。 ただし、片側だけで尿管結石が起こっている場合は、もう一方の腎臓の働きがそれを補います。よって尿管結石がない方の腎臓で、機能が低下したり尿管結石などの障害が起こったりしない限りは分かりやすい症状が現れないことが多いです。両側の完全な尿管閉塞が起こっている場合は2~3日で死に至りますが、多くの尿管結石は片側のみで起こります。また、尿管結石により腎不全が進行すると、尿管結石を取り除いても生涯腎不全が残る場合があります。

【治療・対策】

尿管結石の検査:・尿検査・血液検査・X線検査・超音波検査・静脈性尿路造影・CT検査・尿の細菌培養・感受性検査など。静脈性尿路造影(※)とは、静脈から造影剤を注入し一定時間ごとにX線検査を行うことで、腎盂(じんう)、尿管、膀胱の形態や腎臓の排泄機能などを調べる検査です。尿管結石は超音波検査やX線検査など複数の画像検査により判断されます。ただし、画像検査で異常所見がみられない、または異常が軽度で発見が難しいこともあります。 尿管結石の内科的治療:・輸液療法と並行して-利尿剤-αアドレナリン遮断薬。輸液療法と利尿剤により尿量を増量させ結石を押し流し、αアドレナリン遮断薬で尿管の抵抗を弱め結石を膀胱へと通過しやすくします。しかし、犬や猫ではまだ十分に有効性が証明されておらず、前述の通り猫では尿管結石が通過することはあまりありません。
また、内科的治療を試みるにあたって、全身や内臓、血液の状態が良好でないとすすめられていません。そして、内科治療中は、水腎症や水尿管、腎障害の悪化、感染症などの状態にならないかを治療と並行して定期的な検査が必要となります。これらの条件がそろっても1~2週間で尿管結石が通過しなければ外科的治療が選択されます。体の状態が悪い場合は、可能であれば早期に外科的治療を行います。外科的治療の中でどのような方法が選択されるかまたは組み合わされるかは結石の部位や腎結石の有無など状況によります。尿管結石の外科的治療は以下のようなものがあります。 尿管結石の外科的治療:・尿道切開術・尿管の移設・尿管ステント・尿管バイパス術など。 外科的治療では主に尿道切開術(結石摘出)や尿管を膀胱へつなげ直す尿管移設が実施されます。さらに、腎結石や複数の尿管結石でなどで再発が予想されたりする場合は、ステントという管を尿管内に入れる尿管ステント術や、腎臓から膀胱に尿管の代わりとなる装置をつなげる尿管バイパス術などが適応であれば治療方法として選択されます。これらの手術を行っても、尿管結石の再発や術後の治癒反応や炎症による尿管の狭窄や閉塞により再手術が必要になることもあります。尿管結石は場合により発見されにくい病気ではありますが、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。

■ 腎盂腎炎(じんうじんえん)

【原因】

腎盂腎炎の原因は、下部尿路感染症から起こる細菌感染です。このとき、難治性や再発性の下部尿路感染症が腎盂腎炎の原因となることがありますが、そのような下部尿路感染症では、他の病気により膀胱が感染しやすい状態になっていることが多いです。また、細菌尿が尿道閉塞などにより腎臓に逆流する場合もあります。細菌の他には、数は多くないはないものの、真菌(カビ)や血液からの感染、腎臓への寄生虫の感染によるものも報告されています。感染を起こしやすくなる病気は、糖尿病・クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)・膀胱結石・膀胱腫瘍(しゅよう)・猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症。など。

【症状】

腎盂腎炎は、元気や食欲の低下、または発熱や嘔吐など、他の病気でもよくみられる症状を表すことがあります。症状は、・発熱・元気消失・食欲不振・嘔吐・腎臓のあたりを痛がる-背中を丸めるようにする-あまり動きたがらない・水をよく飲む・尿量が多いまたは少ない。など。腎盂腎炎が進行すると腎不全に移行していき、腎盂腎炎の治癒後に慢性腎不全が残る場合があります。

【治療・対策】

治療は、・抗生剤の投与、輸液療法などです。腎盂腎炎の原因となった感染を抑え、さらに腎盂腎炎による腎障害の程度に合わせて腎臓の働きを助ける治療を行います。乏尿(ぼうにょう)など深刻な腎障害を示している場合は、集中的な治療をするため入院することが必須となります。治療中は、治療の経過を確認するために、治療後は投薬終了後にしっかり治療ができていたかの確認と、尿に関する症状の異常が再度見られたときに尿検査など必要な検査を行うことになります。また、腎盂腎炎を引き起こしやすい病気の治療があれば、そちらも継続して治療を行います。腎盂腎炎は診察を受けしっかり治療をして、治療終了後も猫の排泄を含め注意して観察し、治療効果の確認のための診察、異常があれば受診という形が重要になります。おかしい様子があれば早めに動物病院を受診しましょう。

■ 糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)

【原因】

原因は解明されていません。免疫が関係していると推察され、猫伝染性腹膜炎や猫白血病ウイルス感染症、リンパ腫や全身性エリテマトーデス、骨髄増殖性疾患との関連が知られています。また遺伝子との関連も推察されています。

【症状】

血液中の老廃物を濾しとる役割を担う糸球体が、炎症を起こしている状態です。炎症を起こすことで、糸球体でろ過した原尿量の減少や、タンパク質が原尿に漏れ出すようになります。症状は急性腎不全・慢性腎不全と同じ症状が表れます。主な症状は、食欲不振、嘔吐、腎機能の低下による貧血、高血圧による眼底出血や網膜剥離などです。進行すれば神経障害を引き起こす場合があります。またタンパク尿が見られ、重度の場合は血管内での凝固を防ぐための成分が尿中に排出され、血栓症を引き起こす場合もあります。

【治療・対策】

尿検査によってタンパク尿が見られるかどうかで診断されます。その段階で下部尿路疾患と区別できないため、腎組織検査で確定診断がされます。腎不全に対する治療が中心です。他に基礎疾患の影響が見られる場合は、その治療を行います。免疫抑制剤が有効と考えられていますが、まだその効果は実証されていません。感染症を防ぐために、ワクチンの接種や室内飼育にして他の猫との接触を避けることが予防策です。

■ 多飲多尿症(たいんたにょうしょう)

【原因】

腎臓の糸球体でろ過された原尿は、99%以上が再吸収されて濃縮された尿が膀胱から排出されますが、その再吸収メカニズムが異常をきたすことで、十分に濃縮されない状態の尿が多量に排出される状態が尿崩症です。腎性尿崩症では先天性の場合と様々な腎疾患の影響が考えられます。中枢性尿崩症では脳下垂体の異常で、腎臓の尿細管や集合管で水の再吸収を促す抗利尿作用を持つホルモンのバソプレッシン分泌が不足することが原因と考えられます。ストレスが原因となる場合もあります。

【症状】

多量の水を飲み、多量の尿を排出する疾患で、尿崩症の症状としても知られています。尿崩症はその原因から腎性尿崩症と中枢性尿崩症に分けられます。多量の水分を尿として排出するため、水分が不足して多量の水を飲むようになります。進行すると体重減少が見られたり、水分が得られなければ短時間で脱水症状を引き起こしたりします。また様々な腎疾患や糖尿病、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能亢進症などでも同様の症状が見られます。

【治療・対策】

中枢性尿崩症の場合、バソプレッシンを投与します。腎性尿崩症の場合は、低タンパク低ナトリウムの食餌に変えて食餌療法を行い、基礎疾患の影響があればその治療を行います。多飲多尿の症状は、他の疾患でも多く見られるため診断が難しいですが、猫は水分欲求が少ないため、多量に水を飲む場合には何らかの異常が考えられます。日頃から猫の様子をよく観察し、早期に発見・対応できるようにしましょう。


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